『ビルド・ア・ガール』原作者、キャリトン・モランにインタビュー

ひとっとび編集長

 

イギリスで作家・コラムニストとして活動するキャトリン・モランの半自伝的小説を映画化した『ビルド・ア・ガール』を、『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』『レディバード』で強烈な印象を残したビーニー・フェルドスタイン主演で10月22日より全国公開される。

ビルド・ア・ガール
©MONUMENTAL PICTURES, TANGO PRODUCTIONS, LLC, CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION, 2019

本作の主人公で高校生のジョアンナは、イギリスの田舎町に暮らしながらもありふれる表現欲求や自己実現を持て余し、兄に勧められるがまま勢いで音楽雑誌のライターに応募。単身ロンドンの編集社に乗り込み、仕事を勝ち取った彼女は髪を真っ赤に染め、大胆奇抜な衣装に身を包み、音楽ライター”ドリー・ワイルド”に大変身。音楽ライターとしての才能を開花しちえく様子が描かれる。

原作者であるキャトリン・モランも同じようにイギリスの田舎町で育ち、15 歳でイギリスの新聞「オブザーバー」紙の若者レポーター賞を受賞。17 歳タイム紙の週刊コラムニストとなり、音楽番組の司会者に抜擢され、それ以降も多様な賞を毎年のように受賞するなど、まさにイギリスのエンタメ界で第一線を走り続けている女性だ。

映画では、若くして活躍を魅せるジョアンナが音楽ライターとして活躍し続けていくうちに徐々に自分の心を見失ってしまい、過激な批評を繰り返す“辛口”音楽ライターとなって数々の失敗や挫折を経験するも、そこから彼女のやり方で再起していく姿が描かれる。

思春期の少女の心を描き、”今”を生きる女性を勇気付けたいという思いから、執筆にはなんと2年もかけたという彼女本人に話を聞いた。

Q. 日本での公開が迫ってきましたが、映画化しようと思ったきかっけは?

キャリトン・モラン:

原作小説の『How to Build a Girl(原題)』を書こうと思ったのは、30代に自分の人生を振り返った時。

「私はイギリスの公団住宅に住む労働者階級の子で、狂ったヒッピーたちに福祉手当をもらいながら育てられ、何のコネもないのに16歳で音楽ジャーナリストとなり、世界中を飛び回ってロック・スターに会う仕事を手に入れたんだ。」って。

それから「ちょっと待って。マット・デイモンが動物園を買う話を映画にできるなら、私の話だって映画にしていいんじゃない? 私にとっては面白い話だから、映画を作ってみよう」と思ったの。

ビルド・ア・ガール
©MONUMENTAL PICTURES, TANGO PRODUCTIONS, LLC, CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION, 2019

Q. 奇抜で類稀な才能を持っているジョアンナを主人公にしながらも10代の普遍的な苦悩も描かれていて、観ていてとにく楽しめる作品でもありました。

キャリトン・モラン:

実は自分がやりたいことをリストアップしていた時に気付いたことがあって、それは一般的に女性のキャラクターは映画の中でちょっとした拷問を受ける傾向があるということ。私が一番やりたくなかったのは、女の子が間違いを犯して、泣きながらゴミ箱に放り投げられて、「私は学ばなければならない。旅に出るわ」と言うような映画を作ることだった。主人公の女の子に、本当の意味での悪いことが起こらないようにしたかったの。

彼女には少し傲慢なところがあって、いくつか間違いを犯し、そこから学んでいく。自傷行為について、映画の中で面白おかしく書いたり話してはいけないとされているんだけど、私は今世紀に入ってからの10代の女の子の自傷行為の統計は知っているし、私自身も数週間、自傷行為をした経験がある。

でも、それを秘密の、暗い、怖い、重いテーマとして、真面目な顔でしか語れないようにはしたくないの。女の子が実際に人生の中で抱えている困難について取り上げることが、彼女たちにとって大きな助けになると私は思う。困難を笑い飛ばし、自分を笑い飛ばすことで、自分が抱えている重荷を軽くする方法を教えてあげるのよ。

私は16歳の時に、一時的に自傷行為をしたことがあって、その時は自分が何をしているのかよくわかっていなかった。10代の女の子というのは多くの場合、常に頭が混乱しているものだから、こういうことを取り上げるのも重要だと私は思う。

ビルド・ア・ガール
©MONUMENTAL PICTURES, TANGO PRODUCTIONS, LLC, CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION, 2019

13歳の時、母が言ったことを覚えているわ。「今後10年、あんたをワードローブに閉じ込めることができるなら、そうしたいわ。あんたはこれから地獄を見ることになるのよ」って。「10代がどれだけ危険で、ダークになることを私は知っている。それをすべて映画にぶち込むから、一緒に見ましょう。最後には何もかも万事解決するから」と言ってくれる作品が必要なのよ。

Q. 女の子の悩みといえば、セクシュアルなトピック、性の悩みも赤裸々に描かれていましたね。

キャリトン・モラン:

私がこの映画でやりたかったもう一つの重要なことは、10代の女性のセクシュアリティを楽しく、面白く、重荷にならないものとして表現することだった。繰り返しになるけど、彼女はこの件で魂の旅を経験する必要はないの。重大な教訓を学ぶ必要もない。10代の男の子がセックスするのは見たことがあるけど、10代の女の子がマスターベーションをしたり、何のしがらみもなく男の子とセックスしたりする映画は見たことがない。

でも、10歳の女の子が公園でブランコや滑り台で遊ぶのと同じように、セックスは端的に楽しいことのはずよ。セックスとは基本的にそういうものでしょ。多くの10代の女の子がこの作品を見て、「初めて映画で自分自身の姿を見て、自分が普通だと思えた」と感じるはずだわ。「史上最も輝かしいバージョンの普通」がそこにはあるの。

ビルド・ア・ガール
©MONUMENTAL PICTURES, TANGO PRODUCTIONS, LLC, CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION, 2019

Q. 最後に、『ビルド・ア・ガール』に込められたメッセージを教えてください。

キャリトン・モラン:

この映画は一見すると、素晴らしい才能とスタイルをもった女の子がしばらくの間ロック音楽の世界で過ごして、いくつかの冒険をして教訓を学んでいく笑える映画かもしれない。でも、実際には現代社会で起こっていることをすごく巧妙に寓話化しているの。今日の私は想像上のひげをなでる教授のようになっているわね。10代のロック評論家だった頃の私は、大衆文化について全国誌に書くという、かなり珍しい力を持っていた。

でも、そこで私が選んだのは、あることについて「これは素晴らしい」と言うのではなく、別のものを指して「これはひどい。このバンドは死ぬべきだ。こいつらは最悪だ。この音楽はゴミだ」と書くことだった。それから30年経って、今では世界中の10代の女の子や男の子のほとんどが当時の私と同じ力を持っている。ソーシャルメディアのおかげでね。

そして、彼らがソーシャルメディアでしているのは、何かを指さして嫌いだと言ったり、ゴミだと言ったり、荒らしたり、破壊したりすること。それよりはるかに有益な選択肢は、優れたものを見つけて「これは素晴らしい。ここに未来がある。自分に喜びを与えてくれる」と言うことよ。嫌いなものについて何かを言う必要はないの。自分に喜びを与えてくれるものだけに関心を払うことを学べば、残りの人生を支えてくれるはずよ。

冷笑的な態度は、特に若い人にとっては、最初は大人や他の冷笑的な態度から自分を守るための殻になる。でも、冷笑主義という殻の問題点は、その中にいたままでは成長できないということ。とても制限があって、成長もできなければ、ダンスもできない。

どこかの時点で、冷笑主義の殻を破って、再び何かを信じるようにならなければならないの。実は、それが密かにこの映画の本質的なテーマになっているのよ。若いのに冷笑主義者を気取ってオンラインで生きていると、最後には命取りになるということね。その殻を破って「これが自分の好きなものなんだ」と言わなければならないのよ。

ビルド・ア・ガール
©MONUMENTAL PICTURES, TANGO PRODUCTIONS, LLC, CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION, 2019

映画『ビルド・ア・ガール』は10/22(金)新宿武蔵野館ほか全国ロードショー。

【原作】 キャトリン・モラン著「How to Build a Girl」 
【脚本】 キャトリン・モラン

【監督】 コーキー・ギェドロイツ 

【製作】 アリソン・オーウェン『ウォルト・ディズニーの約束』『エリザベス』、デブラ・ヘイワード『レ・ミゼラブル』『ブリジット・ジョーンズの日記』シリーズ

【出演】 ビーニー・フェルドスタイン、パディ・コンシダイン、サラ・ソルマーニ、アルフィー・アレン、フランク・ディレイン、クリス・オダウド、エマ・トンプソン

【コピーライト】©MONUMENTAL PICTURES, TANGO PRODUCTIONS, LLC, CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION, 2019

【配給】 ポニーキャニオン、フラッグ 
【提供】フラッグ、ポニーキャニオン

【原題】『How to Build a Girl』 2019年/イギリス/英語/105分/DCP/アメリカンビスタ/カラー/5.1ch/R-15

公式サイト:https://buildagirl.jp/ 公式TW/IG:@buildagirl_jp #ビルド・ア・ガール、#ビルドアガール

 

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