『シンドラーのリスト』の名言が教えてくれる「人」を想うことの大切さ
トーマス・キリーニーのノンフィクション小説「シンドラーの箱船」を基に制作された1993年のスティーヴン・スピルバーグ監督の映画です。日本では1994年2月に公開されています!
第二次世界大戦時、ナチス・ドイツによってユダヤ人が迫害を受け、虐殺される中、ドイツ人実業家であるオスカー・シンドラー(Oskar Schindler)が、1,200人以上ものユダヤ人の命を救った実話を描いた作品です。
作中でシンドラーが放つセリフは、当初はビジネスが中心でしたが、ストーリーが進むにつれ、人間くささを感じる温かいものへと変わっていきます。
この記事では、1人の男の心の変化が感じられる名言をご紹介していきます。
出典:映画『Schindler’s List』公式Facebook
目次
あらすじ
第二次世界大戦真っ只中の1939年のポーランド。当時のポーランドは、ナチスドイツ軍に占領され、ポーランドの都市クラクフもその占領下に――。
そんな中、ナチス党の党員でもあるドイツ人実業家オスカー・シンドラー(リーアム・ニーソン)は戦争を利用してひと儲けしようと考えた。ポーランドの都市クラクフで事業を始めようと決め、クラクフにあるゲットー(ユダヤ人隔離居住区)の近くにある工場を格安で手に入れる――。
そしてそこに、ユダヤ人会計士イザック・シュターン(ベン・キングスレー)を雇い入れ、工場の経営を任せる。シュターンは、持ち合わせていた経営手腕、安価な労働力としてゲットーのユダヤ人を雇い入れ、財を築き上げていく――。
報酬が安価であってもユダヤ人はすぐに集まった。なぜなら、当時のポーランドでゲットーに住むことが許されていたのは、仕事を持つユダヤ人とその家族だけ。仕事のないユダヤ人は全員強制収容所に集められ、過酷な労働を課され、その先に待ち受けるのは「死」――。
順調に財を築いていくことに喜びつつも、なんの罪のないユダヤ人たち日々殺されていくことに違和感を感じるオスカー・シンドラー。
その状況をさらに悪化させたのが、冷酷な将校アーモン・ゲート少尉(レイフ・ファインズ)。
第二次世界大戦での敗戦が濃厚となり、ユダヤ人迫害の事実を隠そうとゲットーや収容所でユダヤ人を次々に殺害。シンドラーの工場で働くシュターン、ユダヤ人たちにも危機が迫ります。
そんな中、シンドラーの心境には変化が。シンドラーの故郷チェコに1,200人ものユダヤ人を連れていくことを決意し――。
戦争の悲惨さと人間愛を感じる『シンドラーのリスト』の名言
実話が原作になっている作品だからこそ、作中で放たれるセリフは心に深くささるものばかり。戦争の悲惨さに心がキュッと苦しくなり、何の罪もない人々の命が失われるもどかしさますが、シンドラーたちの人間愛を感じられる行動とセリフにより、少し心が救われる思いになります。
【名言①】「私はドイツ人だ。だから何だ」
出典:映画『Schindler’s List』公式Facebook
シンドラーから会計士として工場の経営を任されたシュターン。シンドラーからの打診を受けたとき、シュターンは「法に基づき、言わなければならないことがあります。私はユダヤ人です」と告げます。それを聞いたシンドラーのセリフ。「人種や立場を超えて、人をひととして見る」シンドラーの姿勢には、ハッとさせられるとともに共感を生み出します。
【名言②】「人生に必要な人間が3人いると父は私に言った」
出典:映画『Schindler’s List』公式Facebook
人生に必要な人間は、1.良い医者、2.罪を許してくれる牧師 3.優秀な会計士。
今自分に必要なのは、優秀な会計士と考え、シュターンを選んだシンドラー。
シンドラーにとって、彼がユダヤ人であることは関係なく、いかにシュターンが必要なのか、をスマートに伝えています。ビジネスっぽい印象を受ける部分でもありますが、だからこそシュターンは素直にシンドラーからの申し出を受け入れられたのかもしれません。
【名言③】「私は労働は得意じゃない。得意なのは宣伝だ」
出典:映画『Schindler’s List』公式Facebook
戦争を利用して、ひと儲けしようと考えていたシンドラー。その方法とは、ユダヤ人の会計士であるシュターンに経営を任せ、出資者からお金を募り、ドイツ軍相手にホーロー鍋を売るというビジネスでした。
ではいったいシンドラーは何をするのか?そんな疑問を抱いたシュターンが「失礼ですが、あなたは何を?」とシンドラーに尋ねます。そこで答えたのがこのセリフ。
シンドラーは事務仕事などは苦手だったが、ナチスの将校に取り入る方法を心得ていたのです。ドイツ軍の弾圧が続くクラクフで、この会社なら安心して働くことができるんだ、ということを暗に示すこのセリフは、シュターンがシンドラーのもとで働くための背中を押す一材料となり得たことでしょう。
【名言④】「“オスカー・シンドラー”の名前を忘れないだろう」
出典:映画『Schindler’s List』公式Facebook
ホーロー製品のビジネスを成功させたシンドラーが、妻に自身のビジネスの成功を語るセリフです。
「これほどのビジネスを成功させた私の名を、この町の人は忘れないだろう!」という意味でしたが、別の意味でその名前を轟かせることになるとは、自分のことながらこの時のシンドラーにはわからなかったでしょう。
【名言⑤】「君が私の部下だったらやめろと言うだろうな。コストがかかりすぎる」
出典:映画『Schindler’s List』公式Facebook
ユダヤ人を自分の故郷チェコに助け出すことを決めたシンドラー。
その方法は、ユダヤ人強制収容所の所長であるゲートに、ユダヤ人1人を解放するごとにお金を渡す、という方法でした。しかし、シンドラーはゲートに大金を払っていることを工場の実質経営者であるシュターンに説明していなかったのです。勝手に工場の売上を使っていたため、シュターンはきっと怒るだろうと感じたシンドラーが放ったセリフです。
そこには、「果たしてこの方法が最善なのだろうか?」というシンドラーの迷いすら感じ得ます。
【名言⑥】「これは善のリストです。このリストは命だ。」
出典:映画『Schindler’s List』公式Facebook
第二次世界大戦での敗戦がほぼ確定になった1944年、ナチスはユダヤ人迫害の証拠隠滅を謀るため、収容所を閉鎖し、アウシュヴィッツに送ろうとします。
それは、ユダヤ人にとって「死」を意味するものでした。それを知ったシンドラーがチェコに連れて行くユダヤ人の名前を記したリスト作りをシュターンとともに始めます。
そう!これこそが『シンドラーのリスト』なのです。そのリストには、1,000人を超えるユダヤ人の名前が。そのリストを手にしたシュターンがシンドラーにこのリストの意味について語ったときのセリフです。このリストは裏を返せば、名前が入っていないユダヤ人は虐殺されることを意味していたのです。
【名言⑦】「死と向かい合ってきた人々に感謝を」
出典:映画『Schindler’s List』公式Facebook
ついに戦争が終わります。シンドラーは工場で働くユダヤ人たちを前に自分に感謝をするよりも、シュターンをはじめとする他の人々に感謝をするようにこのセリフを述べ、黙とうを捧げます。シンドラーが助けたユダヤ人は1,200人。それはユダヤ人のごく一部に過ぎません。
自分たちが生き残ったその裏には多くの人犠牲がある、ということを『感謝』として伝えよう、そんな想いの詰まったセリフです。
【名言⑧】「もっと救えたはずだ。」
出典:映画『Schindler’s List』公式Facebook
1,200人ものユダヤ人を救ったシンドラー。そんなシンドラーに救われたユダヤ人たちは、シンドラーに感謝を意を伝えるべく、金の指輪を渡します。しかし、シンドラーは自らを悔います。「もっと自分の金があったら…」「(ナチス党員を示すバッジを外し)このバッジ1つで1人の命は救えたはずだ…」と涙ながらにこのセリフを漏らすのです。
まとめ
出典:映画『Schindler’s List』公式Facebook
毎日が死と隣り合わせのユダヤ人を取り巻く環境。
その環境を目の当たりにしたシンドラーの心境の変化が、名言の数々から手に取るようにわかります。当初はビジネスのためだけにポーランドに入ったシンドラーが、何の罪もないユダヤ人たちが虐殺されていく姿に、「このままでいいのか?」「私にできることはなんなのか?」と自分を見つめなおします。
実話を映画化した作品なので、セリフひとつひとつに当時の社会背景が感じられると同時に、とても考えさせられるセリフばかりですね!
実話を描いた映画『シンドラーのリスト』のあらすじをネタバレありで解説