映画『アメリ』のあらすじを簡単に解説|幸せな気持ちになれる不思議話題
コミュニケーション不全を題材に、妄想と現実を混ぜて描いた映画『アメリ』。
美しいパリを舞台に描かれるファンタジックな世界観が可愛い!と世の女性たちから絶賛され、クリームブリュレ旋風を巻きおこしました。
監督をつとめたのは『ロストチルドレン』『エイリアン4』などで知られるジャン=ピエール・ジュネ。ビビッドな色彩や作りこまれた世界観など、「声」以外のあらゆる方法でコミュニケーション不全のアメリの感情を伝える表現力が素晴らしい作品です。
本記事では、そんな映画『アメリ』のネタバレあらすじ・登場人物(キャスト)・見どころについて紹介。ジュネ監督が拘りぬいて作り上げた、本作品の世界観についても徹底解説していきます!
※記事にはネタバレが含まれているため、未視聴の方はご注意ください。
目次
映画『アメリ』について
出典:IMDb
2001年に公開されたフランス映画『アメリ』。
「幸せになる」というキャッチコピーで宣伝された本作はパリ・モンマルトルを舞台に描かれ、その映像美とブラック・ユーモアの絶妙なさじ加減がフランス国民の心を掴みました。
物語の主人公となるのは人との接し方がわからず、妄想の世界で生きる少女アメリ。演じたのはフランス女優のオドレイ・トトゥで、本作への出演をきっかけにデビュー5年目にして一躍大ブレイクしています。
妄想大好きなアメリ視点で描かれる日常はちょっぴり風変わりで、ファンタジック。世界観を作りこむ上でのこだわり、繊細な抽象表現など映像の隅々まで計算しつくされており視聴後は妙な幸福感を与えてくれる映画です。
世界中にクリームブリュレブームを起こした作品でもあるので、クリームブリュレ好きは必見ですよ!
10秒で分かる!映画『アメリ』の簡単なあらすじ
父親に心臓病だと誤診されたばっかりに、家から出してもらえず学校へも通えなかったアメリ(オドレイ・トトゥ)。神経質な母親と無関心な父親以外との触れ合いがない上に、友人も出来たことがないアメリは妄想の世界に現実逃避する日々を送っていました。
22歳になり、このままではいけないと思ったアメリは一人暮らしを始めパリの喫茶店で働きはじめますが相変わらず友人も恋人もおらず、妄想がやめられません。
ある日、アパートの壁の中に古びた宝箱を発見したアメリはふと持ち主に返してあげたいと思いたち持ち主を探して回ります。無事に返却できたアメリは、持ち主が奇跡だと涙を流すのを見て人助けに目覚めますが……?
映画『アメリ』のネタバレあらすじ
【あらすじ①】空想と共に生きた少女
出典:IMDb
医師である父に心臓病だと誤診され学校に通わせて貰えなかったアメリ(オドレイ・トトゥ)は、友人と呼べる存在もおらず、空想の世界へ現実逃避する日々を送っていた。
22歳になったアメリはパリの中心部に位置するカフェ「ドゥ・ムーラン」で働きはじめるが、相変わらず友人はおろか恋人もおらず妄想ばかり。
カフェには店員・ジーナ(クロティルド・モレ)の元カレ・ジョセフ(ドミニク・ピノン)が毎日来店してはジーナの動向を監視している。
あるとき偶然アパートの壁の中から誰かの宝物箱を見つけたアメリは持ち主に返してあげたいと思い、無事に見つけて箱を返却できたら自分の殻を飛びだしてみようと決意する。
当時の住人を知っている人々に話を聞いて回ったアメリは、探し人が「ブルドトー」だと突きとめた。
その帰り道、アメリは地下鉄で証明写真機の下に入り込んだ写真を漁る二ノ・カンカンポワ(マチュー・カソヴィッツ)という青年と出会う。2人は目が合うが、そのときは互いに声もかけずアメリは彼の横を通り過ぎてしまうのだった。
【あらすじ②】宝箱の持ち主
出典:IMDb
片っぱしからブルドトーを訪ね歩くも、なかなか持ち主に辿りつけずにいたアメリに助け舟を出したのは同じアパートに住む画家・レイモン(セルジュ・メルラン)だった。
彼は「ブルドトーではなくブルトドー」だと教え、アメリは無事に持ち主に辿りつく。
40年ぶりに宝物箱を開けたブルトドーは感涙にむせび、それを見たアメリは周囲の人を幸せにするため自分の空想スキルを活かそうと決意するのだった。
人助けに目覚めたアメリはストーキングするジョセフの意識を別の女性に向けて新たな恋を芽生えさせたり、外出できないレイモンのために面白いビデオを届けたり、部下をいじめる意地悪な店主の店にいたずらを仕掛けたり……と暗躍する。
その最中でニノにも再会するが声をかける前に、ニノはスキンヘッドの男を追って走り出してしまった。あとを追ったアメリは彼の落とした鞄を拾い、家へ持ち帰る。
鞄にはアルバムが入っており、同じスキンヘッドの男の写真がしまわれていた。
【あらすじ③】謎のスキンヘッド男の正体
出典:IMDb
ニノが鞄を探していることを知りながら名乗り出る勇気がないアメリは、レイモンに励まされてニノのバイクに待ち合わせの張り紙を貼りつける。
だが結局、直接返す勇気がなかったアメリは手の込んだやり方で正体を明かさぬままアルバムを返却。正体が気になって仕方のないニノは駅に張り紙を残し、拾い主と再会しようとしていた。
張り紙を見たアメリは仮装して「ドゥ・ムーラン」での待ち合わせを指示する証明写真を撮る。そこに例のスキンヘッドの男が現れ、アメリは彼が証明写真の修理人だと知る。
【あらすじ④】ニノとの再会
出典:IMDb
写真を見つけたニノは「ドゥ・ムーラン」を訪れ、アメリに気がつく。だが自分で正体を打ち明けられないアメリは、ジーナに頼んで彼のポケットに証明写真機で待つといったメモを入れてもらった。
メモを見たニノは証明写真機に向かうが、そこで待っていたのは例のスキンヘッド男だった。彼の正体を知ったアメリは2人が出会えるよう計画したのだ。
のちほどジーナからアメリの部屋を聞いたニノが訪ねてくるが、アメリは居留守を使ってしまう。その様子を影ながら見ていたレイモンはアメリを勇気づけ、彼を追うと決めたアメリは部屋を出たところで戻ってきたニノと鉢合わせる。
想いを確認しあった2人は愛し合うようになり、これまでアメリが背中を押した人々は新たな生き方を見つけて歩き出していた。アメリとニノは幸せそうな表情を浮かべ、パリの街を2人乗りで駆け抜けていくのだった。
映画『アメリ』のキャスト
アメリ・プーラン/オドレイ・トトゥ
出典:IMDb
本作の主人公。父親が検診以外で自分に触れてこないため検診のたびに動悸が激しくなり、心臓病だと誤診されました。学校にも行かせてもらえず、閉鎖的な環境で暮らしていたため妄想の世界へ逃げこむように。
宝箱を持ち主に返した際、泣いて喜ぶ姿が心に刺さり人助けに目覚めます。
ニノに恋をしますが人づきあいの経験が無いに等しいため、なかなか声をかけられず……?
<好きなこと>
- 豆の袋に手を突っ込むこと
- 映画の見ている人の顔をこっそり見ること
- 映画の中で些細なことを発見すること
- サンマルタン運河での石の水切り
- クリームブリュレのおこげをスプーンで割ること
<嫌いなこと>
- 昔のアメリカ映画に出てくるわき見運転シーン
アメリ役を演じたのはフランス女優のオドレイ・トトゥ。デビューから5年目に本作へ出演し、世界的に有名になりました。
ニノ・カンカンポワ/マチュー・カソヴィッツ
出典:IMDb
スキンヘッド男を追う謎の青年。落とした鞄を匿名で返却してきたアメリに興味を持ち、正体を探ろうとします。
ニノ役を演じたのはフランスの俳優マチュー・カソヴィッツ。実は映画監督・脚本家としても活動しており、1995年に撮影した『憎しみ』が大ヒットしセザール賞、カンヌ国際映画祭監督賞を受賞しています。
レイモン・デュファイエル/セルジュ・メルラン
出典:IMDb
アメリと同じアパートに住む画家の老人。握手で骨折するほど骨が弱く、家にずっと引きこもって生活しています。アメリが宝箱の持ち主の名前を勘違いしたまま探し回っていると知り、本当の名前を教えてあげました。
この一件がきっかけでアメリと急速に仲を深めていき、最終的には自分の殻の前で尻込みするアメリの背中をそっと押してあげるような関係性に。
レイモンを演じたのはフランス俳優のセルジュ・メルラン。本作品への出演で国際的に知られるようになりました。2014年に芸術文化勲章の司令官に選ばれています。
ジョセフ/ドミニク・ピノン
出典:IMDb
ジーナの元カレ。振られて以来、「ドゥ・ムーラン」に足しげく通ってはジーナの動向を監視しテープで録音している、立派なストーカー。
アメリの幸せ計画に巻きこまれ、ジョルジェットと恋に落ちました。
<好きなこと>
- 梱包材のプチプチを潰すこと
ジョセフ役を演じたのはフランス俳優のドミニク・ピノン。本作の監督を務めたジャン=ピエール・ジュネ作品の常連で、彼の作品には必ずドミニク・ピノンの名前が載っています。
フランス国籍ですが、流ちょうな英語も話せる多才な俳優です。
人々を魅了した、映画『アメリ』に潜む3つの見どころ
①本物なのにどこか嘘っぽい?作り込まれた独特の世界観が凄い!
物語の舞台となったのはパリで一番高い丘と言われているモンマルトル。ジュネ監督は本来セットを使ったスタジオでの撮影を好むそうですが、モンマルトルの街並みをセットで作るのはさすがに費用がかかり過ぎるということで、『アメリ』は本物のパリの街並みを使って撮影することに。
妄想癖のある女の子をテーマに世界観を描きたかったジュネ監督は「ニセモノ」感を演出するために撮影場所の車をすべて移動させる・落書きを消す・ポスターの色をよりカラフルなものに変更するなどの多大な努力を惜しまなかったのだとか。
その甲斐あって、リアルなんだけどなんとなく嘘っぽい不思議な世界観が映画全体を包み込み、おとぎ話を聞いているかのような感覚にさせてくれます。
②色調も徹底的にコントロール!
出典:IMDb
次に注目して欲しいのが『アメリ』の色使い。
この独特の世界観を作り上げるためにジュネ監督は色にも徹底的なこだわりを貫き、赤・黄・緑を基調とした世界観を作り上げました。
視覚と聴覚のみで感情・場面を伝える映画にとって色はとても大切な要素で、本作ではアメリの感情表現の一種として色が使われています。
例えば意地悪な店主・コリニョンにリュシアンがイジメられる場面では、アメリがリュシアンを見つめる構図にのみ赤い傘が映され、声には出さずとも彼に温かい気持ちを抱いていることをアピールしました。
人づきあいが苦手なアメリの心を色を使って表現することで世界観やキャラクターを壊さず、補足的な情報を視聴者に伝えているわけですね。
③繊細な表現力。金魚鉢の金魚はアメリの投影
出典:IMDb
映画内で出てきた金魚のエピソードを覚えているでしょうか。外出できないアメリの唯一無二の友人として紹介された直後、金魚鉢から身投げしたあの金魚です。
ナレーターはその事件を「金魚の自殺未遂」と表現しました。
おそらく金魚に自殺願望はなかったと思われますが、金魚鉢の中でしか生きられないという環境を鑑みれば確かにそうなのかもしれません。
このシーンはやや抽象的な描写なので気付かずスルーしてしまった方も多いかもしれませんが、この金魚の境遇は心臓病だと誤診されて学校にも行かせてもらえず、外遊びも許して貰えないアメリによく似ていると思いませんか?
金魚鉢というガラスの世界から抜け出したら死んでしまうと思われているこの金魚と同様、外に出るのは自殺行為と思い込んでいたアメリもガラスの内側で生きています。
よくよく観察してみるとハッとするのですが、自分の殻を破れずにいたアメリは常にガラスの向こう側にいるのです。
例えば宝箱を返すシーンもアメリは電話ボックスというガラスの向こう側にいますし、ニノが喫茶店に訪ねてきた際に逃げるのもガラスの向こう側。
映画『アメリ』で描かれるガラスはただのガラスではなく、アメリの心の防御壁でもあるわけです。こういった抽象的な表現に気づくと、新たな視点で映画が楽しめるかもしれませんね。
映画『アメリ』の魅力
「好きなこと」「嫌なこと」あるあるが絶妙
出典:IMDb
映画内の人物紹介として、それぞれのキャラクターが「好き」「嫌い」だと思うことをいくつか紹介されるのですが、それがなんとも絶妙で「わかるわ~!」と笑っちゃうこと間違いなし。
普段嫌だな~と思っても、そこまで大げさなことじゃないので忘れてしまうような小さな「イヤ」と「スキ」が見事に表現されているんですよ。個人的にはアメリの好きなこととして紹介された「豆の袋に手を突っ込む」は、やったことはないけど絶対に気持ちいい音出すんだろうな~と映画を視聴しながら思っちゃいました(笑)
ちなみに、同じくアメリの好きなことのひとつとして紹介された「クリームブリュレの表面をスプーンで割る」が発端となり、日本にクリームブリュレの存在が浸透したそうですよ。確かにクリームブリュレのおこげを割るの、楽しいですよね!
妄想をまじえたファンタジックなストーリー
物語はアメリの妄想と現実が入り混じりながら進められるため、どことなくメルヘンな雰囲気が漂う本作。
1つの出来事をめぐって「もしかしたらこうかも?」と張りめぐらされていく妄想はなんとも独創的で正直わけわからん、という場面も多いのですが妙な幸福感を与えてくれます。
お洒落で独特な世界観を楽しみたい方は、ぜひご覧くださいね。
拗らせ女子が寄り道たっぷりで恋を成就させる過程がキュート
独特な家庭で育ち、すっかり拗らせ女子となったアメリ。心にガラスのATフィールドを展開し続けながらも「変わりたい」と願い行動に移すいじらしさは視聴者の心をくすぐります。
変わりたい、けど変わるのが怖い……。そんな誰しもが一度は経験したことのあるような感情を垣間見せながら自分なりの幸せを見つけていく物語は、不思議なパワーを与えてくれるサプリメントのような効果を感じませんか?
人助けをしたあとの快感に目覚めたアメリが、デメリットとして捉えられがちな妄想癖を他人をちょっとだけ幸せにする特技として使おうとする発想の転換も素晴らしいですよね。
初恋を見つけ、寄り道しながらも自分の幸せを掴もうと殻の中でもがく姿はとっても可愛くてロマンチックですよ。
まとめ
不思議ワールド全開で描かれる『アメリ』。コミュニケーション不全というキャラクターの特徴を壊さぬよう、あらゆる手段を投じて感情表現をしているのが面白く、見れば見るほど新たな発見のある作品です。
キャッチコピーが「幸せになる」なだけあって、見終わったあとは妙な幸福感に包まれるとの声が多数。あなたもぜひアメリワールドに身を投じてみては?