映画『湯を沸かすほどの熱い愛』ネタバレあらすじとみどころに衝撃のラスト!
『湯を沸かすほどの熱い愛』は、2016年に公開された宮沢りえ主演の映画です。公開当時、宮沢りえの演技がとにかくスゴイ!と話題になりました。
そして有名人含め口コミの力でヒットした『泣ける映画』。それは悲しみのなかにも、勇気が湧いてくる清々しい涙でした。
命の限りを告げられた時、人はどう生きるのか?家族のあり方や、自分のやり残したことそれらを銭湯という舞台を通して描かれる『湯を沸かすほどの熱い愛』。タイトルのもつ意味に気づくラストには中野量太監督、何者ですか?と思わずにいられません。
映画『湯を沸かすほどの熱い愛』のあらすじ・ネタバレと登場人物・キャスト紹介・みどころに撮影裏話、ラストシーンの解説をお伝えしていきますね。
目次
映画『湯を沸かすほどの熱い愛』について
『湯を沸かすほどの熱い愛』の中野量太監督・脚本の映画。
中野量太監督は、2013年の自主製作映画『チチを撮りに』により、国内外の映画祭で受賞し話題になった若手の注目監督です。本作が商業映画デビュー作となり、続く『長いお別れ』『浅田家!』と話題作が公開されています。
本作のテーマは“死にゆく母と、遺された家族が紡ぎだす愛”です。
普遍的な母の愛を想像を超える展開とラストによって、驚きと感動の詰まったストーリーにしました。
優しさと強さをあわせもつ人間味溢れる“お母ちゃん”を宮沢りえが見事に演じ、母の死に向かい合い成長していく安澄を杉崎花が圧倒的な力で演じ切り、二人のシーンは観る者の心をとらえて離しません。
憎めないお父ちゃんにオダギリジョー、人生を見つめ直していく青年役に松坂桃李、篠原ゆき子、駿河太郎など豪華キャストがスクリーンを彩りました。
全編に流れるお母ちゃんのやり残したことにまっしぐらな生き方に、背中を押されます!
10秒で分かる!映画『湯を沸かすほどの熱い愛』の簡単なあらすじ
幸野家は一年前まで銭湯「幸 (さち)の湯」を営んでいた。しかし、父一浩(オダギリ・ジョー)が1年前にふらっと出奔 し銭湯は休業状態だ。母・双葉(宮沢りえ)は、ひとりでもたくましくパートをしながら、娘を育てていた。そんなある日、双葉は突然、末期がんで余命わずかという宣告を受けてしまう。悲嘆に暮れるもすぐに気持ちを切り替えた双葉は、その日から「やっておくべきこと」を決め実行していくのだった。
- 家出した一浩を連れ帰り、家業の銭湯を再開。
- 気が弱い引きこもり寸前の娘(杉咲花)を独り立ちさせる。
- 娘をある人に会わせる。
その母の行動によりすべての秘密が明らかになり、ぶつかり合いながらもより強い絆で結びついていく家族。そして家族は、究極の愛を込めて母を葬(おく)るのだったーー。
映画『湯を沸かすほどの熱い愛』のネタバレあらすじ
【あらすじ1】余命発覚!その時母は……。
出典:IMDb
父・幸野一浩(オダギリジョー)が1年前に蒸発し銭湯・幸の湯は今も休業中。幸野家の母・幸野双葉(宮沢りえ)はパン屋のパートの仕事をしながら娘・幸野安澄(杉咲花)を育てていた。
そんなある日、双葉は職場で倒れた。そして診察の結果、末期ガン“余命わずか”との宣告を受けるのだった。
幸の湯で泣き崩れる双葉だが、安澄からの電話を受けいつものように夕食を作る。そして安澄には病気のことを話さず、死ぬまでにやっておくべきことを決め、遂行していくことを決意するのだった。
安澄は、優しいが気の弱いところがあり、学校ではクラスメイトからいじめを受けていた。今日もお腹痛いと行きしぶるが、双葉は休んではだめ!と行かせるのだった。
幸野家には毎年4月25日に、沼津の酒巻君江(篠原ゆき子)という女性から高足ガニが送られていた。彼女がどういうわけで蟹を毎年送ってくるのか安澄は知らなかった。そこには大きな家族の秘密があった。
【あらすじ2】父帰り、娘立ち上がる!
双葉はまず探偵の滝本(駿河太郎)に依頼し、蒸発した一浩の行方を突き止めた。双葉は一浩を訪ね、自分の余命を告げ双葉のことを頼む。一浩は一年間どうしていたかというと、昔の浮気相手に再会し、あの時の子供がいるから一緒に暮らして欲しいと言われそうしていたのだ。しかし女性は子供を置いて家を出て行っていた。
双葉は一浩とその浮気相手との娘・片瀬鮎子(伊東蒼)を家へと連れ帰る。一浩は鮎子を妹と安澄に紹介するも、安澄はそんな父と異母姉妹を受け入れられない。
そして双葉はパートを辞め、幸の湯を再開させる準備をしていく。 子供たちにも銭湯の手伝いを命じ、4人で営業を再開させるのだった。銭湯の再開を待ちわびた常連さんで銭湯は賑わう。
そんななか、体育の授業後に安澄の制服が盗まれる事件が起きる。
翌朝学校を休もうとする安澄と、今日諦めたら二度と行けなくなるという双葉は揉み合いになる。安澄は結局、体操服で学校に行く。そして母の言葉を思い出し、勇気を奮って体操服を脱ぎ捨てると、制服を返して!と訴えた。その後、制服は無事に戻ってきた。
心配でずっと家の前で待っていた双葉は、制服姿で帰って来た安澄を抱きしめるのだった。
【あらすじ3】家族の秘密
出典:IMDb
銭湯の営業も軌道に乗ってきたある日、双葉は安澄と鮎子を連れて沼津への旅行へ出発する。喜ぶ子供達を車に乗せて運転する双葉。途中でサービスエリアに寄った時、ヒッチハイカーの拓海(松坂桃李)という青年に出会い車に乗せることになる。
目標もない旅を続ける拓海の本音を聞いた双葉は彼を思い切り抱きしめてやり、日本の最北端を目指すのがあなたの目標だと諭す。双葉から本当の家族の愛を感じた拓海は目標が達成できたら報告に行くと約束した。
無事沼津に到着するも、双葉の体調は悪くなっていた。次の昼、食堂で高足ガニをみんなで食べ、双葉は子供たちを外に行かせ独りで会計をする。そして応対してくれた耳の不自由な女性店員の頬を突然ビンタした。驚く女性店員、彼女は安澄の産みの母だった。
車に戻った双葉は先ほどの店員が酒巻君江で、毎年蟹を送ってくれている人だ、と安澄に話す。そして彼女が安澄の産みの母であることも告げた。双葉が何を言っているのか理解できないまま、車から降ろされる安澄。そこに安澄が自分の娘だ、と気付いた君江がやってくる。君江は安澄が手話で会話出来る事に驚く。いつか役に立つからと双葉が安澄に勉強させていた。
夕方、双葉は安澄を迎えに来た。しかし双葉の体力は限界を迎えていた。安澄が車に戻ると、双葉は倒れ病院に運ばれた。
病院に一浩が駆けつける。安澄たちは双葉の病を知った。
【あらすじ4】結末の赤い煙の意味
病院へ入院した双葉は、自分を捨てた母が迎えに来る夢を見るようになっていた。
しかし、母が見つかったと探偵の滝本から連絡が来たのだ。その後結婚した母は娘や孫と暮らしていると聞き、母の家まで滝本と訪ねた。しかし、そんな娘はいないと否定されてしまった。
双葉は落胆する。そしてだんだんと病状は悪くなっていった。
安澄は君江と連絡を取り続け、君江は幸野家に遊びに来た。同じ日、目標を達成した拓海が報告にやって来る。
みんなが揃ったところで、一浩はお願いがあるという。それは双葉が新婚旅行でみたかったピラミッドを組み体操で作るというものだった。
病室からその人間ピラミッドを見て遺していく家族を思い涙する双葉は「生きたい」と泣き崩れる。その後、安澄に看取られ双葉は逝った。
幸の湯の富士山をバックに、祭壇が作られ葬儀が執り行われた。依頼された滝本が霊柩車を運転するが、出棺後に火葬場には向かわず、河原へ行く。
銭湯に家族たちが浸かり、そのあたたかさを噛みしめる。煙突からは双葉が好きな赤い色の煙が昇っていたーー。
映画『湯を沸かすほどの熱い愛』の登場人物・キャスト
幸野双葉/宮沢りえ
双葉は、末期がんで余命数ヶ月と宣告される女性。
一浩が1年前に蒸発したため、それまで営んでいた銭湯を閉めてパン屋で働いています。いじめられている安澄に、立ち向かうよう学校に行かせる母親です。
幸野双葉を演じたのは宮沢りえさんです。脚本を読んでぜひ演じたいと思ったと語る宮沢さんは、癌に侵されながらも、家族のためにやるべき事を着々とやっていく双葉を真に迫った演技で見せてくれました。
幸野安澄/杉咲花
安澄は幸野一浩と双葉の娘。父の一浩が蒸発したため、双葉と2人で暮らしており、高校ではいじめられています。
安澄を演じたのは杉咲花さんです。CMでのイメージから大食いというイメージを持たれるという杉咲花さん。この映画では気の弱い高校生をリアルに演じ、また母親が実母ではない、と知った時の演技は鳥肌ものです!
幸野一浩/オダギリジョー
一浩は、双葉の夫。両親が早くに亡くなったため、高校を中退して銭湯「幸の湯」を継ぎました。1年前に「1時間だけパチンコ行ってくる」と言い残したまま蒸発しています。
一浩を演じたのは、情けない男を自然体で演じられるオダギリジョーさんです。湯気のように消えた父親で、妻や娘に頭が上がらない無責任ながら憎めない夫でした。
向井拓海/松坂桃李
向井拓海は、ヒッチハイカー。サービスエリアで双葉たちに声をかけて、車に乗せてもらいます。
明るい青年かと思いきや、複雑な家庭環境で愛に飢え虚無感に満ちた青年・向井拓海を演じたのは松坂桃李さんです。さすが幅広い役を演じているだけあって、拓海の両面性をうまく演じていました。
片瀬鮎子/伊東蒼
出典:IMDb
一浩の娘。昔一浩が浮気していた女性(さちこ)との間に出来た子供。母親は、来年の誕生日までには必ず迎えに来るからと手紙を残し出て行ってしまい、幸野家に身を寄せています。
鮎子葉を演じたのは伊東蒼(あおい)ちゃんです。2005年9月16日生まれで、撮影時は9歳でした。
母が迎えに来ないと知って「ここにいさせてください」と頼むシーンは何回見ても号泣です。
酒巻君江/篠原ゆき子
酒巻君江は、幸野家に毎年カニを送っていた。実は安澄の母親であり、18歳の時に一浩と結婚し、19歳の時に出産していたことが明らかになる。ろうあ者である。
篠原ゆき子さんは、2005年の山下敦弘監督の映画『中学生日記』でデビューし、映画『共喰い』、テレビドラマ『相棒』シリーズに出演ししています。
滝本/駿河太郎
滝本は、双葉に雇われる探偵。娘の真由の母親は、真由を産む時に脳出血で亡くなっていた。一浩も双葉の母も探し当てる。
駿河太郎さんは、笑福亭鶴瓶の息子という紹介もいらないほど、いまや演技派俳優として引っ張りだこの活躍です。
映画『湯を沸かすほどの熱い愛』のみどころ
出典:IMDb
『湯を沸かすほどの熱い愛』は、モントリオール世界映画祭など海外の映画祭にも出品され注目を集めました。他にも、東京国際映画祭ではJapan Now部門に正式出品しています。
また『湯を沸かすほどの熱い愛』は国内の映画祭でも、報知映画賞やヨコハマ映画祭など数多の映画賞を受賞しました。
そんな『湯を沸かすほどの熱い愛』のみどころを紹介していきます。
宮沢りえ・杉咲花の迫真の演技!
日本アカデミー賞の最優秀主演女優賞・最優秀助演女優賞W受賞に納得の演技をみせてくれた二人でした。
宮沢りえ
末期がん、もって3ヶ月という余命宣告を受ける双葉が、その限られた時間を生きる意味に使う!という凄まじい決意のもと、逃げた夫にも頭を下げ戻ってきてもらう潔さが双葉の魅力です。宮沢さんが「脚本を読んで心が沸いた。覚悟して臨んだ」と述べた通り、身を削って双葉を演じきりました。すっぴんを晒して、まるで本当に病身のような体つきになることまで、そして一つ一つのシーンに双葉の愛が溢れてる姿を見せてくれました。
杉咲花
「お母ちゃんは、なにもわかってない!」いじめに遭って登校しないという安澄に「立ち向かえ」という母・双葉。杉咲花さんの演技が、リアルすぎて胸が痛くなった方は多いのではないでしょうか?
本当につらい思いして育ってきたんじゃないか、と心配するほど真に迫った演技でした。勇気を出して下着姿になったところも、双葉が実の母でないと知り、嫌だ!って叫ぶところもその辛さがじんじん伝わってきました。
本作のクランクアップの日には、杉咲さんはさみしさと感動で大号泣したそうです。
リアルな脚本
また宣告を受けた時、独り営業していない銭湯で泣き崩れるも、安澄からの電話で、すぐに晩ごはんを作る、と言うシーン。
どんなにショックなことがあっても、家族のご飯を作るというその役目はいつも待っているのです。これは母親ならわかるシーンです。また、文句あるなら食べなくて良い、と安澄に言っていた双葉の言葉にも、深くうなずきました。
そして癌になって余命がわかった時、自分でその生き方を決定する人を私は身近で知っていたので、双葉もそのように今まで自分の意志で人生を選んできた人なのだろうと思いました。
なので、双葉が無理をして沼津まで行ったことも、そこで安澄の母娘の絆を取り戻す為、君江の頬を叩いたことも納得できました。
安澄のいじめの問題も、双葉のやり方に異論があるのも当然です。が、まず自分で自分を守るために立ち上がる必要性を教えたかったのでしょう。自分自身に向き合うことは、生きる上でとても大切なことだと思います。
自分の母親に拒絶された時、母の幸せそうな様子を見ていた双葉が、さびしさと嫉妬で思わず物を投げてしまったところもリアルだな、と思いました。
数々の細かな表現が味わったものにはわかる真実味にあふれていました。結末だけは当てはまりませんが……。
主題歌「愛のゆくえ」きのこ帝国
出典:UNIVERSAL MUSIC JAPAN公式YouTube
中野量太監督の熱烈なオファーの末『湯を沸かすほどの熱い愛』の主題歌を担当したのは、ロックバンド・きのこ帝国です。
本作のために書き下ろした曲のタイトルは『愛のゆくえ』です。劇中の最も重要なシーンで流れることもあり、曲が流れる瞬間を秒単位でこだわったとのことです。
「最後は残された家族がこれからしっかりと生きていくと母を想う、ポジティブな心境に観客がすっと寄り添えるような曲を」という監督からのオファーを受け素晴らしい曲が出来上がりました。
きのこ帝国は2015年にメジャーデビューした日本のロックバンドです。現在は2019年年から活動休止中。
魅力的なロケ地
銭湯「幸の湯」
ロケ場所銭湯に立つ中野監督
この物語の中心となる銭湯は、実は2ヶ所の銭湯が使われています。「幸の湯」内部のシーンは、東京で一番古い銭湯「月の湯」で撮影しました。全編撮了後には解体され、今はもうその姿を見ることはできません。富士山の絵は元からあったそうです。場所は日本女子大学のそばでした。
もう1ヶ所が栃木県足利市にある「花の湯」です。撮影中も夜は通常営業されており「湯気のごとく、店主が蒸発しました。当分の間、お湯は沸きません。」という張り紙を、常連のお客さんが本物と勘違いするハプニングもあったそうです。
中野量太監督は銭湯を舞台にした理由を聞かれ、「もともとお葬式は銭湯に似ているって思っていた」と答えています。お葬式は会場に弔問客がきて、お焼香して遺族たちと話して帰って行く。銭湯に来て、湯船に入りお風呂上りに牛乳飲みながらおしゃべりして行く、というのが似ているとのこと。
実はお風呂屋さんの方が亡くなると、実際銭湯でお葬式をしたという方が少なからずいたということを知ったそうで、お葬式のシーンもリアリティーが出せたようです。
静岡県の戸田港
中盤のクライマックス、双葉が安澄に産みの母の事実を告げる車中のシーンは、静岡県の戸田港で撮影が行われました。
君江が働いていて、双葉らが蟹をたべた店は静岡県沼津市の「お食事処 かにや 戸田本店」です。実際、著名人のサインが並ぶ有名店です。あまりの蟹の美味しさにスタッフも舌鼓をうちました。
ラストの衝撃結末!赤い煙の謎を詳しく考察!
病室で安澄は「お母ちゃんを一人ぼっちにはしない」と息絶えていく双葉に伝えましたね。
そして、葬式を銭湯で行いました。
その後列席した人を外に出して、遺影と棺桶を家族が運び出します。霊柩車で出発するも、その車は河原へ向かい停車しました。そしてみんなはそこで昼食を取りました。
「あの人のためなら何でもしてあげたい。その何倍もしてもらっていると思えるからだ」と一浩に語る滝本。
その後、白いドレスを身に着け花に囲まれた双葉が、幸の湯の湯のない浴槽に横たわっています。お湯を沸かすかまどのそばに、花びらがハラハラと落ちていて・・。
そして銭湯の湯に浸かる一浩や安澄らがゆったりと湯を楽しみ、安澄が「すごく暖ったかい」とつぶやきました。
そしてタイトル『湯を沸かすほどの熱い愛』が現れます。
その文字の『湯を沸かすほどの熱い愛』「か」と「ほ」の文字のあたりに足の裏が薄っすら見えますで、ご注目ください 。
そして双葉墓好きな赤い色の煙が煙突から流れていきました。
ということで、わかっていただけましたでしょうか?
双葉が幸の湯のかまどで火葬されたことが、十分推察できる流れでしたね。
まとめ
死を描くことにより、生きる意味を問う映画『湯を沸かすほどの熱い愛』。生きる意味が見えている人にも見えていない人にも、泣けてスッキリして前向きになる映画になっています。
大きな湯船に浸かってじんわり心も温めたい!そんな気持ちにさせられる映画『湯を沸かすほどの熱い愛』ぜひ、お楽しみくださいね!