【中国映画の最高傑作】映画『ライオン少年』のあらすじネタバレ解説|映像美が凄い大人向け中華アニメーション!
獅子舞は国内でも有名な伝統芸能ですが、競技が行われているのを知る日本人はあまり多くないかもしれません。
映画『雄獅少年/ライオン少年』は獅子舞に魅了された少年チュンの物語。田舎で貧しい暮らしをしながらも、仲間たちと共に競技の全国大会を目指す感動のストーリーです。
世界最高クオリティといっても過言ではないCGにもご注目いただきたいところ。中国アニメに馴染みがない方も、その美しさに圧倒されること間違いなしでしょう。
本作のストーリーネタバレや見どころだけでなく、獅子舞の基本知識も併せて解説します。ぜひ最後までご覧くださいね。
目次
映画『『雄獅少年/ライオン少年』について
映画『『雄獅少年/ライオン少年』は2019年にプロジェクトが誕生し、2021年12月に中国にて公開されました。
2022年にはマカオ、香港へと上映が広がり、興行収入は日本円で約50億円!総動員数は約638万人と大ヒットを記録します。
日本では2022年に行われた中華映画が揃う「电影祭」での上映を経て、ようやく正式にスクリーンへ登場。
「电影祭」では『雄獅少年 少年とそらに舞う獅子』の名で上映され、中国アニメーション界の実力に驚かされた人たちは非常に多かったとのことです。
監督は多くの3Dアニメーションを手掛けるソン・パイポン。アニメ制作は驚きの独学なんだそう。
2008年より短編作品を制作し、『美食大冒险』シリーズで知名度を大きく上げました。各賞レースで優秀な成績を残す、超実力派の映画監督です。
10秒で分かる!映画『『雄獅少年/ライオン少年』の簡単なあらすじ
チュン(花江夏樹)は広州に出稼ぎに行ったきりの両親を待ちながら、祖父と田舎で暮らしています。
ある日、街では獅子舞によるバトルが行われており、大人を圧倒して勝利を掴んだ少女と出会いました。
少女の名前は偶然にも同じ、チュン(桜田ひより)。なんと彼女の正体は獅子舞の全国大会の優勝者だったのです。少女チュンは去り際に獅子頭をプレゼントしてくれました。
獅子舞を始めるよう促されたチュンは一気にやる気が湧いて、友達のマオ(山口勝平)とワン公(落合福嗣)を誘って広州で開催される大会を目指します。
けれども、肝心の舞を教えてくれる人はおらず、貧しい街で育つ3人にはアテも力も道具もありません。
そんな中、彼らの師匠となるであろう魚売りのチアン(山寺宏一)を紹介され、この出会いがそれぞれの運命を変えていくきっかけとなり……。
映画『雄獅少年/ライオン少年』のネタバレあらすじ
獅子舞をテーマにした『『雄獅少年/ライオン少年』はどんな物語なのでしょうか?
以下、核心に触れる部分がありますので観鑑賞の方はご注意ください。
【あらすじ①】少女との出会い
チュン(花江夏樹)は広東省の田舎に住む18歳。もうすぐ春節がやってくる。街の広場では獅子舞で盛り上がっており、自転車を飛ばして踊りを観に行くチュン。
気が急いて無理矢理最前列へ割り込み、大興奮。
だがガタイのいい男性が揃った獅子舞チーム黒獅子の面々に文句をつけられ、お年玉を奪われてしまう。チュンの家は貧しく、常に街の人々からバカにされていたのだ。
ショックを受けていると、急に赤い獅子頭を被った人物が現れる。黒獅子は相手の挑戦状を受け取り、2人は勝負に出るが赤獅子が圧勝。チュンのお年玉袋を取り返してくれた。
謎の人物にざわつき、プライドを傷つけられた黒獅子は大激怒。チュンは赤獅子を自転車の後ろに乗せて逃亡すると、中に入っていたのが少女だったことを知る。
彼女の名前は偶然にも同じ、チュン(桜田ひより)。これも何かの縁、と少女チュンは使っていた獅子頭を少年へプレゼント。
少女の正体は、獅子舞の全国大会の優勝者。広州で行われる第6回大会のポスターを見て、チュンは心を奪われる一方で……。
【あらすじ②】負けっぱなしの人生なんて嫌だ
チュンが広州の大会に心を奪われる理由は、獅子舞だけではない。彼の両親は長い間広州へ出稼ぎに行ったきりなのだ。大会に出れば親を喜ばせられると考え、早速獅子舞を始めることに。
友達のマオ(山口勝平)とワン公(落合福嗣)を誘いチーム結成!……と思いきや、教えてくれる先生も太鼓も何もない点に気づく。
街中で大々的に宣伝するも、すぐに黒獅子チームへ見つかり絡まれるハメに。「お前らにできるはずがない」とバカにされ、少女チュンからもらった獅子頭を壊されてしまう。
ずっと貧乏で取り柄のない人生に鳴く3人。黒獅子が羨ましいとさえ嘆くが、彼らの練習の様子を見て闘志に火が付いた。
決心して踊りを教えてくれる先生を探すと、いい人を紹介してくれるおじいさんに出会う。
胸を高鳴らせて目的地へ向かうと、そこはただの魚屋。とても師匠には見えない男性が中から出てくると、音楽と共に華麗な舞を見せ、一同は大興奮する。
【あらすじ③】それぞれの夢を叶えるために
魚屋の店主チアン(山寺宏一)に弟子入り志願するも、最初はあっさり弾かれてしまう。
気持ちが折れそうになりながら根気強くアプローチを続け、熱い気持ちを知ったチアンは3人の指導へ入るように。
最初は顔をしかめていたチアンの妻アジェン(甲斐田裕子)も認めてくれるようになり、少年たちを温かく迎え入れる毎日だ。
チアンは20代の頃獅子舞の名人と呼ばれており、高い志を持って踊りを楽しんでいた。
だが、芸能だけで食べていくのは至難の業。現実を考え、結婚を期にアジェンはチアンへ獅子舞を辞めるよう促していたという……。
過去の後悔もあり、アジェンは今回の出来事を心から応援している。3人の努力と師匠の指導やサポートもあり、チームの完成度は上がる一方。
練習試合ではズタボロに負けてしまうが、現実を見せられるとより一層やる気がアップするのだった。
【あらすじ④】厳しい現実
全国大会に出場するには予選を勝ち抜かねばならない。いよいよ当日を迎えて縮み上がるマオとワン公。
チームは魚屋の協賛を受けているため「塩漬け魚チーム」と称しているのに、肝心のチアンが買い物に行ったきり戻らないのだ。
チアンは指導による仕事の穴を、妻が埋めてくれた点をひどく気にしている。
買い物の途中「配達が遅い」「なんであんな夫と一緒にいる?」と怒られている彼女を見て、予選そっちのけで仕事を手伝おうとした。
だが、アジェンは強く反発。勝たなかったら承知しないと旦那の背中を押し、チアンが広場へ向かうとすでに大会が終わっていた……。
3人に結果を聞くと見事に予選突破。広州行きのチケットを手にし大盛り上がりしている最中に、チュンの両親が帰宅する。
幸運が重なったかと思いきや、父が転落事故に遭い意識が戻らないとのこと。チュンは獅子舞よりも家族を支える道を選び、出稼ぎのために広州へ向かう。
【あらすじ⑤】燃え盛る闘志、大会の行方は
チュンは来る日も来る日も働いた。チームの仲間は帰りを信じて練習を続けるも、少年の気持ちは獅子舞を諦める方向へ向かっている。
働いている最中偶然にも少女チュンと再会し、「獅子舞はやっていないの?」と聞かれてドキッとするチュン。
それでも働く道を選び、次の出稼ぎ先へ出発する道中で全国大会の会場に出くわした。友達の誘いで仕方なく足を止めて観戦すると、そこには奮闘するチアン、マオ、ワン公の姿が……。
心を打たれたチュンは宿舎に置いてきた獅子頭を取りに行き、急遽大会へ参戦。無事に決勝まで上り詰め強豪チームとの一騎打ちに。
チュンは足にケガを負うも、相手チームにもひるまず完璧な舞を見せる。
高みを目指す彼は最も高い場所への飛び移りを決心し、素晴らしきパフォーマンスを披露。観客全員がチュンの姿に圧倒され、会場は感動の渦に包まれていく。
もう彼らは負け犬なんかじゃない。後日、チュンは壁に貼られた大会の写真を横目に仕事へと向かうのだった。
映画『雄獅少年/ライオン少年』の登場人物・キャスト
本作は「塩漬け魚チーム」の3名と魚屋のアジェンを中心に物語が展開します。
個性がキラリと光る魅力的なチュン、アジェン、マオ、ワン公の4名を紹介しますよ!
チュン(娟)/花江夏樹
獅子舞に憧れを持っていたチュンは、少女チュンとの出会いにより踊りを始める決意をします。
痩せっぽっちで貧しい家庭育ち。コンプレックスだらけの自分を変えたい!と一念発起する場面に、ジーンときた人も多いのでは?
神様のイタズラ……と言わんばかりに厳しい現実にぶつかるチュンですが、一度消えた炎は消えません。
全国大会で飛び込み参加、今までの特訓や過酷な環境で鍛え抜かれたパワーと精神で観客を圧倒!
大会後は再び出稼ぎ生活に戻りますが、獅子舞との出会いは彼を大きく成長させるきっかけとなったことでしょう。
チュンを演じるのは大人気声優の花江夏樹さん。アニメ『東京喰種』の金木研や『鬼滅の刃』竈門炭治郎など、有名キャラクターでお馴染みですよね。
聞いていて耳障りの良い爽やかなボイスが特徴的で、多くのファンを魅了しています。
チアン(強)/山寺宏一
とっても師匠とは思えない普通のおじさんなアジェン(笑)けれどもその実力は本物で、彼もまた夢を諦めきれないうちの1人でした。
少年らの熱い思いを知って指導開始。チュンの穴を埋めるために体にムチを打って大会に出るなど、勇ましい姿を見せます。
チアンもチュンと同じく心に大きな炎を燃やし、「負けたくない」「諦めたくない」気持ちを強く持っていたのです。
それにしても妻アジェンとのラブラブっぷりには見ていて心が温かくなりましたね♡
チアンを演じるのは「山ちゃん」の愛称で親しまれ、日本を代表する大御所声優の山寺宏一さん。
『アンパンマン』では複数の役をこなし、吹替もアニメも何でもござれのオールラウンダー。一度聞いたら忘れない力強いボイス、チアンは超ハマり役のように感じました。
マオ(猫)/山口勝平
見た目はサルなのに名前がマオ(中国語では猫をマオと言う)、アンバランスさに最初はクスッときてしまいましたが。
獅子舞の足と背中部分を担当し、キレがある身軽な動きを見ればサル×猫というのも納得がいくかも……!?
ちょっぴりビビリだけど明るくて仲間想い。チュンやチアンをめいっぱいサポートし、見事優勝へ導きました。
マオを演じるのは山口勝平さん。アニメ『名探偵コナン』の工藤新一や怪盗キッド、『らんま1/2』の早乙女らんま、『ワンピース』のウソップなど有名キャラと言えばこの方!
明るくおちゃめなキャラから『デスノート』のLのような怪しげな人物まで幅広く演じる声優さんです。
ワン公(狗)/落合福嗣
ぽっちゃり系な癒しキャラ(?)&お笑い担当のワン公。持ち前の腕力で太鼓を習得しチームを支えます。
弱気で臆病だけど縁の下の力持ち。マオとチアンと共にチュンの帰りを待ち続け、懸命に練習を続けました。
ワン公を演じるのは落合福嗣さん。2015年に声優デビューしてから続々と出演作が増え、アニメや吹替、ナレーションなど幅広く活躍中。
テレビドラマにも顔出しで出演しており、見たことがある人も多いのではないでしょうか。
映画『雄獅少年/ライオン少年』を鑑賞前の獅子舞基礎知識
獅子舞とは中国大陸発祥の伝統芸能の一つ。(※発祥の地については諸説あり※)
武術、踊り、音楽が一体化され、獅子頭と前足担当&後ろ足と背中担当の合計2名で構成されています。
獅子が厄を払い、幸福と繁栄をもたらしてくれることが信仰されているため、古くから祝い事には欠かせないものとなりました。
祝い事というと旧正月のイメージが強いですが、お店の開店祝いなど様々な場面で獅子舞を見ることができますよ。
北と南とでは流派が異なり、本作では舞台が広東省であることから取り上げられているのは「南方獅子舞」。
同じ南部でも流派がさらに分かれ、種類も豊富なんだとか。獅子舞と一口に言えど、非常に奥が深い世界なのですね。
映画『雄獅少年/ライオン少年』のハズせない見どころ
アニメ映画にしてはボリュームたっぷりの『雄獅少年/ライオン少年』。
多くの人が大絶賛する理由はどこにあるのか?見どころが分かれば、あなたもその魅力に気づくかもしれません。
圧巻のCGアニメーション、全ての美しさに酔いしれて
本作のウリとも呼べる素晴らしいCGアニメーション!登場人物や壮大な自然、獅子舞の動きや中国の田舎町を忠実に再現するリアルさに目を奪われること間違いなし。
本物の人間がそこにいるのか?と錯覚するほどの映像美には、思わず息をのんでしまいます。
あまりの華やかさと踊りの迫力、映像だけでも延々と眺めていられそうな気分になりました。カラフルな獅子舞たちもTHE・中国感を感じられてgood!
全国大会でゾロリと並んだ獅子舞たちに目が釘付けになった人も、きっと多いかと思います。
これぞ世界最高峰の技術、日本のアニメーションではなかなか味わえない世界観をお楽しみください。
みんな大好きスポ根ストーリー!応援したくなるチームの熱さ
『雄獅少年/ライオン少年』は王道的なスポ根ストーリー。
負けっぱなしの彼らが経験と共に成長し、力をつけて頂上まで上り詰める流れですから、話の大筋に関してあまり新鮮味を感じられないかもしれません。
でも、みんな何だかんだでスポ根ストーリーが好きですよね(笑)
それに本作は途中途中で挟まる障害が非常に現実的で、“よくある話”だけでは片づけられない要素が含まれるのです。
勝つとは分かっていながらもついつい応援したくなるチームの熱さ、大人こそ胸を打たれてしまうでしょう!
宴のあとがちょっぴり切なく感じるエンディング
チュンは全国大会に飛び込み参加、ケガを負いながらも無事に華麗な舞を見せて会場を湧かせます。
そのまま大円団でチャンチャンかと思いきや、大会優勝の表彰式の様子や彼の両親がどうなったか等、ラストを敢えて詳しく描いていません。
わかるのはチュンの父親の手が一瞬ピクッと動いたことと、彼が労働を続けていることだけ。
どこまでも王道なストーリーが続くのではなく、宴のあとは現実へ……といった、少し切ない形でエンディングを迎えます。
人によってはここが消化不良と感じるかもしれません。けれども筆者は結末をわざとぼんやりさせるからこそ、『雄獅少年/ライオン少年』の余韻が深いものになると思いました。
全てが夢心地のままではいられない、だから前へ進む。あのラストからはそんな力強いメッセージ性を感じます。
ファンにはたまらない!豪華声優陣が揃う最高のキャスティング
キャストを観れば分かる通り、とにかく有名な声優陣がズラリと並んだ贅沢なキャスティング!
メインキャラクターはもちろんですが、冒頭のナレーションは大ベテランの千葉繁さんが担当するなどアニメファンにはたまらないラインナップとなっていますよ。
ベテラン&実力派が揃いに揃った『雄獅少年/ライオン少年』、エンドロールにあなたの知っているアノ方の名前も載っているかもしれません。
映画『雄獅少年/ライオン少年』が大人向けアニメだと言える理由
軽快なギャグに王道のストーリー、物語の中盤までは子ども向けアニメのような温度感ですが、貧困、出稼ぎ、それぞれの負け人生など過酷でリアルな問題が炸裂。
『雄獅少年/ライオン少年』は無視できない現実までをも描き、「夢」「希望」だけでは終わらない厳しさが作品に込められているからこそ“大人向け”と言えるのです。
自分の希望を捨ててでも家族を守り、家計を支えねばならないチュンの葛藤。今まで夢を叶えられなかった人、何らかの事情で諦めた大人にはとても胸が苦しくなるシーンでしょう。
18歳の少年がひどい環境の中で働き、自動車を少女チュンと再会する場面も経済的な格差を象徴しているように感じました。
物語が終わった後もなんだか考えさせられる複雑なエンディング。
もちろんお子様と一緒に楽しめる作品ですが、最も心に“刺さる”のは、大人の方なのではないか……と筆者は思います。
映し出される壮大な映像と共にストーリーを楽しみ、美しくてちょっぴり儚い『雄獅少年/ライオン少年』の世界をたっぷりと味わってくださいね。
まとめ
2023年上半期のアニメ映画ではナンバーワンの注目度を誇る『雄獅少年/ライオン少年』。
獅子舞に関しての知識がなくとも十分に楽しめる作品です。中国での獅子舞がどんな立ち位置なのかを事前に知っておくと、さらに作品の理解度が深まるかもしれませんね。
王道だけれども少しだけビターな展開に誰もが心を惹きつけられることでしょう。少年たちの成長ぶりやチュンの雄姿をぜひ大スクリーンでご覧ください。