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冒頭の「日付」を見逃すな!『君の名は。』ネタバレ考察 | 時系列順に伏線をおさらい!

ひとっとび編集長

2016年に公開され、社会現象を引き起こすほどの大ヒットを収めた映画『君の名は。』。本作は、各所に細かい伏線や設定、また新海誠監督が手掛けた過去作のオマージュなど、多くの要素が含まれており、何度観ても楽しめる内容となっています!

この記事では、『君の名は。』の作中のキーワードや、劇中歌とその歌詞、登場人物の設定・伏線・小ネタなど、あらゆる面から詳しく見ていきながら、映画の内容について考察していきます。

「一度観た」という人でも、この記事を参考にして『君の名を。』をもう一度観れば、違う楽しみ方を見つけることができるはずです。

なお、この記事には物語の重大なネタバレが含まれますのでご注意ください!

目次

映画『君の名は。』について

映画『君の名は。』は、東京で都会暮らしをする男子高校生の立花瀧(神木隆之介)と、岐阜県のとある田舎で暮らす女子高校生の宮水三葉(上白石萌音)の2人の中身が入れ替わってしまうという物語です。

「入れ替わり」を繰り返しながらも、互いに惹かれていく2人の間には、実は3年間という時の隔たりがありました。物語が展開するにつれ、この時間差の間に潜むある重大な事件と、それに関わる謎が徐々に解き明かされていきます。

『君の名は。』は、時空を超えて入れ替わる2人のラブストーリーなのです。

出典: 映画『君の名は。』予告編

『君の名は。』ネタバレ有の簡単なあらすじ

1,200年に一度の彗星が地球に接近するとニュースで騒がれる年。東京に暮らす高校生男子・瀧(神木隆之介)と岐阜県糸守町という田舎に暮らす女子高生・三葉(上白石萌音)は、夢の中で入れ替わりが起こっている事に気付く。しかし、それは夢なんかではなく”現実に起こっている事”だった!

性別も暮らしも全く正反対である互いの生活を守る為、2人は入れ替わった時の生活を互いのスマホにメモしておくことに。そうして二人は、直接顔を合わせる事の無いまま暫く入れ替わりを続けていたが、ある日を境にぱったりとそれがなくなってしまう。瀧は三葉に会いたくて電話をかけるも、繋がらない。そこで、彼女に直接会いに行こうと微かな記憶を頼りに岐阜県を訪れるが、そこで衝撃の事実を知る。

なんと「糸守町」は、3年前に彗星の落下で壊滅した町だった——。

瀧は三葉の、そして糸守町の”過去”を救う為、本作のキーワードである三葉が残した「口噛酒」を飲み、3年前の三葉の体と再び入れ替わりに成功する。そして、彗星落下を町民に知らせ、避難させる事に成功する。その最中、カタワレ時(黄昏時の方言)の奇跡によって、3年の時差があったはずの三葉と瀧は同じ時間、同じ場所で顔を合わせる事が叶った。限られた時間の中で、2人は「必ずまた会いに行く」と約束する。

それから5年が経ち、瀧は大学4年生に。就職活動に追われ、三葉や糸守町の存在をすっかり忘れてしまっていたが、偶然乗っていた電車の反対側の電車に乗っている女性を見て、ハッとしたように電車を飛び降り、追いかける。

なんと、その女性こそが過去を変え、生き延びる事が出来た「三葉」だったのだ。

記憶の無い2人は無事に再会し、何かを確認するように、失われた記憶を取り戻すかのようにこう問いかけるのでした。

「君の、名前は——。」

『君の名は。』が大ヒットした4つの理由!

主題歌である「前前前世」はテレビやラジオなどのメディアで連日流れ、タイトル「君の名は。」が2016年の流行語大賞候補に選ばれるなど、社会現象を巻き起こすほどの大ヒット作となった映画作品『君の名は。』。

国内での興行収入は『アナと雪の女王』(2013)に次いで歴代4位、日本映画としては歴代3位となる250億円に到達しました。また、アニメーション映画監督として興収100億円超に至ったのは、宮崎駿氏に次いで新海誠監督が2人目となるなど、数々の偉業を達成しました。

異例の大ヒットを収めた本作『君の名は。』ですが、実はその裏には多くの理由がありました。この項では、『君の名は。』が異例の大ヒット作となった理由について、説明していきます!

【『君の名は。』みどころ①】新海誠監督がこだわる“美しい風景”


映画 君の名は。
出典:映画『君の名は。』公式Twitter

映画『君の名は。』の制作に当たって、新海誠監督は、原作・脚本・絵コンテ・編集など、多くの部分に携わりました。

新海誠監督は、制作におけるほとんどの作業を自身の手で行った自主製作アニメ作品『ほしのこえ』(2002)が高く評価され、注目を集めました。

その他の新海作品として、『雲のむこう、約束の場所』(2004)、『秒速5センチメートル』(2007)、『星を追う子ども』(2011)、『言の葉の庭』(2013)といった代表作が挙げられますが、いずれの作品でも、製作から監督・脚本・絵コンテ・演出等まで、新海監督自らの手によって手掛けられています。

これらの作品で共通しているのは、風景描写の緻密さ、また、独特な影や光の使い方が用いられており、印象的な描写がなされているということです。

本作『君の名は。』は、新海監督の集大成として、切なくすれ違うラブストーリーを軸に置きながらも、壮大なSFものであり、かつ風景描写にこだわった美しい映像という点が特徴です。

彗星が地球に近づくシーンの夢の世界のような色使い、瀧や三葉たちの息遣いまでが伝わってきそうな鮮明な生活描写、東京の高層ビル群や、岐阜の田舎町の風景などの映像美は、本作の大きな魅力であると言えます。

【『君の名は。』みどころ②】随所に散りばめられた「日本文化へのリスペクト!」

『君の名は。』のタイトルの由来は、万葉集に収録されているこちらの歌から来ています。

「誰そ彼と われを名問ひぞ 九月の 露に濡れつつ 君待つわれそ」

出典:『万葉集』

ちなみに作中では、この和歌について、三葉の古典の先生であるユキちゃん先生(花澤香菜)が授業で解説しています。

「誰そ彼」という部分は、現代語に訳すれば「誰だあの人は」となり、『君の名は。』のタイトルにつながることが分かります。

『君の名は。』の作中では、「ムスビ」「組紐」「口嚙み酒」「カクリヨ(幽世)」「黄昏時」といった、日本の文化に深く関わるものが多数登場します。これらの言葉の全てが、『君の名は。』のストーリー展開に大きく影響を及ぼしているのです。こちらについては、のちの作品解説の項にて詳しく説明します。

また、『君の名は。』冒頭で、三葉が妹の四葉(谷花音)と共に宮水神社に奉納する舞は、歌舞伎役者で女形のホープである中村壱太郎氏が、実際に振付・実演した舞から絵を起こしたものです。ここからも、新海監督の日本文化への強いこだわりが見て取れます。

【『君の名は。』みどころ③】“感情グラフ”による徹底したストーリーの展開!


出典:新海誠公式Twitter

新海監督自身のツイートによると、『君の名を。』の脚本を製作する際、ストーリー展開において“感情グラフ”を用いていたとのことです。

“感情グラフ”とは、作品を見ると同時に、観客がどういう感情を抱くか、どういうテンションになるかを緻密に分析するもので、新海監督がアニメーション制作を通して、長年の経験を元に作成したものであることが明かされています。観客が作品を楽しむことを一番に据えた、徹底した仕事ぶりであることが伺えます。

新海監督の「観客を楽しませたい」という思いが、『君の名を。』の大ヒットにつながったことは間違いありません。

【『君の名は。』みどころ④】RADWIMPSが担当した映画と相性抜群の音楽!


出典:『RADWIMPS』公式Facebook

『君の名は。』の音楽を担当したのは、日本の4人組ロックバンドであるRADWIMPSです。本作ではこのRADWIMPSの音楽が、他の映画とは一味違う非常に画期的な使われ方をしています。

※上記画像真ん中がボーカルの野田洋次郎)

主題歌でもある『前前前世』は空前の大ヒットを記録し、itunesチャートでは2018年7月に初登場して以降、約半年間トップ10入りをキープするという偉業を成し遂げました。映画は観ていなくても、曲は聞いた事がある!という方もいらっしゃるのではないでしょうか?

『君の名は。』が傑作となった理由の一つは、RADWIMPSが手掛けた劇中歌の歌詞が、映画の内容と密接にリンクし、とても効果的に使われているということです。2019年公開の「天気の子」でも新海誠監督とタッグを組んでおり、新海作品の映像の美しさとRADWIMPSの音楽は、奇跡のように相性抜群で独特の世界観を確立させています。

本記事の後半で、『君の名は。』の劇中歌4曲についての解説をしていますので合わせてぜひご覧ください!

『君の名は。』ネタバレ | 複雑な時系列をおさらい

映画 君の名は。
出典:映画『君の名は。』公式Twitter

『君の名は。』における入れ替わりは、時間を超えて発生しています。そのため、時系列が非常にややこしくなっています。作中で瀧と三葉は入れ替わりを繰り返しますが、物語が進むにつれ、二人の間には「3年間のズレ」があることが分かります。

時系列を整理して考えてみましょう。『君の名は。』の冒頭、三葉が糸守高校に行くと、授業風景で見える黒板の日付が「9月3日火曜日」となっています。しかし、周囲の人間の反応や、ノートにあった「お前は誰だ?」の書き込みから、その前日である「9月2日月曜日」に、三葉の中に瀧が入っていたことが分かります。これが、作中における初めての「入れ替わり」です。

一方、三葉が初めて瀧の中に入ったのは、「9月5日月曜日」です。この日付は、瀧の友人である司(島﨑信長)から「学校に遅刻するぞ」というメールが来た時に見える、スマホのカレンダー表示から分かります。

同じ月曜日でありながら、3日間日付がズレているのは、2人の間に3年間のズレがあるためです。

【『君の名は。』時系列①】瀧は過去、三葉は未来に


出典:映画『君の名は。』公式Twitter

2人が入れ替わるようになったのは、それぞれ高校2年生の9月~10月です。この時、瀧の時間軸では2016年、三葉の時間軸では2013年です。つまり、三葉の方が3歳年上ということになります。

瀧は3年前の過去へと、三葉は3年後の未来へと入れ替わっているのです。


出典:映画『君の名は。』公式Twitter

【『君の名は。』時系列②】三葉は瀧に会いに行くが…

瀧と奥寺先輩(長澤まさみ)とのデートの前日、三葉は学校をさぼって瀧の暮らす東京へと足を運びます。三葉の中に入って、三葉として生活していた瀧。初対面であろうが、自分の顔をわかってくれるはずだと、期待を込めて瀧に会いに行きます。

しかし、電車の中で会った瀧からは「お前、誰?」という言葉をぶつけられてしまうのでした。

なぜなら、この時三葉が会った瀧は、「2013年の瀧」で、三葉との入れ替わりが起こる前の、中学生の瀧だからです。つまりこの時の瀧は、3年後に自分の身に入れ替わりが起こることなど予想だにしておらず、よって三葉の存在も知るすべはありません。

状況が把握できない三葉は、大きなショックを受けてしまいます。三葉は自分の髪を結っていた「組紐」を中学生の瀧に渡し、糸守町へと帰るのでした。

【『君の名は。』時系列③】東京に行った次の日に彗星が降る

三葉の時間軸では、三葉が東京に行った次の日が糸守町のお祭りの日で、この日がティアマト彗星が最接近する日とされていました。

一方瀧の時間軸では、その日は奥寺先輩とのデートの約束の日です。

奥寺先輩とのデートが散々な結果に終わり、スマホのメモを開いた瀧は、「デートが終わるころには、ちょうど空には彗星が見えるね」という三葉のメッセージを見つけます。

瀧の時間軸は2016年であるため、彗星が見えるはずはありません。「何言ってんだ、こいつ…」と怪訝に思った瀧は、ふと思い立って三葉の携帯番号に電話をかけますが、電話はつながりません。

【『君の名は。』時系列④】入れ替わらなくなる

この日を境に、三葉との入れ替わりがぱったりとなくなってしまいます。

実は、ティアマト彗星の落下により、三葉は死亡してしまったのです。死んでしまっていては、入れ替わりが発生することはあり得ません。

突然三葉とのつながりが絶たれた瀧は、何かに駆り立てられたように、自分の記憶の中にある糸守町の風景を一心不乱にスケッチします。しかしそれだけでは満たされず、司と奥寺先輩と共に、いよいよ三葉の故郷へ足へ運ぶのでした。

【『君の名は。』時系列⑤】瀧が三葉に会いに行くが…

三葉に会うために、岐阜県の田舎を訪ねる瀧。しかし三葉が暮らしているはずの糸守町は、「3年前に隕石が落下して壊滅的な被害を受けた場所」として、立入禁止区域になっていました。瀧の記憶の中では丸い形だったはずの糸守湖は姿を変え、瓢箪のような形をしています。

さらに、隕石落下による犠牲者名簿には、三葉や妹の四葉、祖母の一葉(市原悦子)、テッシーこと勅使河原(成田凌)や、サヤちんこと早耶香(悠木碧)の名前が確認されました。

2、3週間前には確かに三葉の中に入って、彼らと生活していたはずなのに。あまりに残酷すぎる現実を目の当たりにした瀧は、三葉として過ごした出来事は、全部自分の夢か妄想だったのではないかという思いに駆られ、三葉の名前さえも一度忘れてしまいます。

しかし瀧の手元には、「組紐」が残っていました。三葉が3年前、まだ中学生だった時の瀧に会いに来た時に渡してくれた、三葉の「組紐」。誰とも知らない人に貰ったその紐を、瀧はお守り代わりにミサンガとしてなんとなく身に着けていたのです。

「組紐」を見て、かつて一葉から聞いていた「ムスビ」の話を思い出す瀧。そして、糸守町の広範囲が消えてしまった中、唯一の手がかりが残っていることに瀧は気づきます。それは、瀧が三葉と入れ替わっている間に一葉とともに「口嚙み酒」を奉納しに行った、宮水神社のご神体です。ご神体は、奇しくも隕石落下の被害範囲の外にありました。

瀧は、宿泊している旅館に司と奥寺先輩を残し、一人でご神体のある祠へと出かけます。

【『君の名は。』時系列⑥】3年よりも前の三葉に入れ替わる

宮水神社のご神体を探し当てた瀧。ここでようやく瀧は、自分と三葉との間に3年間の隔たりがあるということに気づきました。祠の中で、三葉が作った「口嚙み酒」を飲むことで、時空を超えて三葉との間の「ムスビ」を再び試みます。

ふと、祠で足を滑らせて気を失った瀧。しかし目を覚ますと、三葉の姿になっていました!「隕石が落ちて死ぬ少し前」の三葉に、入れ替わりが成功したのです。

この時の「入れ替わり」は、「隕石が落ちて三葉が死ぬ」世界とはまた別の世界になっているのがポイントです。つまり、現行では「隕石が落ちて三葉が死ぬ」というのが本来の歴史ですが、「三葉が生き残る」という未来のための別の世界の時間軸がここで生まれたことになります。

【『君の名は。』時系列⑦】2人が山頂で出会う

映画 君の名は。
出典:映画『君の名は。』公式Twitter

瀧は、自分の姿と入れ替わって宮水神社のご神体の元で眠っている三葉との接触を試みます。

ちょうどその頃、瀧の中に入っていた三葉は目を覚ましており、一度自分が死んだことを自覚していました。山頂に出た三葉は、瀧が自分の名前を呼ぶ声を聞き、必死に彼の声に応えます。

やがて、「カタワレ時」がやってきました。「カタワレ時」、つまり「黄昏時」、「誰そ彼」時。「人の輪郭がぼやけて、この世ならざる者に会える時間」です。生きる時間軸が異なる瀧と三葉が本来の姿で会うことは、普通なら叶うことはありません。「カタワレ時」だからこそ、2人はようやく出会うことができたのです。

そもそも、なぜこれまで瀧と三葉がつながることができたのでしょうか?そこには、「三葉の組紐」の存在がありました。3年前、中学生だった瀧に三葉が渡した組紐を、瀧がミサンガ代わりに身に着けていたことは前述したとおりです。

一葉の話によれば、「組紐は時間そのもの」です。「より集まって形を作り、捻れて絡まって、時には戻って、途切れ、またつながり、それが組紐、それが時間。それが、ムスビ」。

「ムスビ」を表すこの「組紐」を、三葉と瀧がそれぞれ自分の身に着けることによって、3年間の隔たりを超えて、瀧と三葉を結びつける媒体となっていたのだと考えられます。

瀧と三葉のつながりは、三葉の死によって一度途切れていましたが、三葉が作った、三葉の半身である「口嚙み酒」を瀧が身体に入れることによって、2人の魂が時空を超えてつながることに成功したのです。

『君の名は。』ネタバレ | 気になる4つの疑問点を考察

『君の名は。』には、たくさんの疑問点が存在します。瀧と三葉の入れ替わりに関する裏話や、彗星の謎など、一度作品を観ただけでは気づかないような部分にも伏線が含まれていたりします。

作中で明かされている設定やこれらの伏線をめぐって、ファンの間でも様々な考察がされています。その中でも今回は4つの疑問点に焦点を当てて、詳しく解説していきます!

【ネタバレ考察①】ここにも意味があった!瀧と三葉の名前の意味とは

映画 君の名は。
出典:映画『君の名は。』公式Twitter

『君の名は。』に出てくる彗星の名前は、「ティアマト彗星」と名付けられています。「ティアマト」とは、メソポタミア神話に出てくる龍の形をした海の女神です。「ティアマト」は、文献によっては頭が数本に分かれている姿のものもあり、「ティアマト」という名前によって、彗星が分裂するということがすでに示唆されています。

ここで、「瀧」という名前を見てみましょう。「龍」の文字が入っていることがわかります。

「さんずい」、つまり「三」と「龍」で「瀧」になります。「三葉」と「瀧」が入れ替わること、この2人の入れ替わりがティアマト彗星と関係があるということ、ティアマト彗星が分裂することなどが、2人の名前からイメージできるのではないでしょうか?

また、「三葉」の名前の由来は、日本の神話に登場する水を司る女神「ミヅハメ(ミヅハノメ)」であることが、新海監督のツイッターで明かされています。「ミヅハメ」も「ティアマト」も、水に関わりの強い女神であり、近い存在と言えるかもしれません。

【ネタバレ考察②】泣かないで!三葉が涙をながした理由

映画 君の名は。
出典:映画『君の名は。』公式Twitter

瀧が奥寺先輩とデートをする前日、鏡の前で知らず知らず涙を流していた三葉。

三葉は元々入れ替わった自分がデートをするつもりで、瀧と奥寺先輩のデートの約束を取り付けていました。もちろん瀧が奥寺先輩に憧れを抱いていたことも知っているので、入れ替わりが起こったとしてもまあいいか、その場合は瀧にデートの権利を譲ってやろうとすら思っていました。

結局デートの前に2人は入れ替わり、瀧本人と奥寺先輩がデートをすることになります。

入れ替わりを繰り返すうちに、自覚はなくともだんだん瀧に惹かれていた三葉。瀧が他の女性とデートをすることが寂しいと、心の底では感じていたのでしょう。

【ネタバレ考察③】ただものじゃなかった…!?奥寺先輩は何者?

映画 君の名は。
出典:映画『君の名は。』公式Twitter

瀧が密かに思いを寄せるバイト先の先輩でマドンナ的存在、奥寺ミキ。この奥寺先輩の行動が不審であるとして、彼女にも秘密があるのでは?と推察するファンの声もあるようです。

一番の疑問は、「なぜ奥寺先輩は、三葉の居場所を探す旅に同行したのか?」ということ。この疑問に対し、「奥寺先輩は糸守町の誰かと入れ替わりの経験があった」とする説も浮上しています。

奥寺先輩が入れ替わった相手として有力なのは、「繭五郎の大火」で名前が語り継がれる、風呂屋の繭五郎の名前が挙げられています。三葉と瀧の入れ替わりが時空を超えていること、また入れ替わった相手が異性であること、隕石落下に何らかの関わりを持つことなどから、当てはまりそうな人物として繭五郎に白羽の矢が立っているようです。

「繭五郎の大火」といえば、この出来事によって宮水家の文献が全て燃えてしまい、奉納の舞や「口嚙み酒」の伝統の意味が失われた原因として、作中で語られています。

そして、この繭五郎と入れ替わったことがある奥寺先輩は、瀧と糸守町へ同行することで、隕石落下事件の顛末を見届けるという目的があったのではないかとする説がささやかれています。

しかしながら、この説については確かなソースが存在しないため、あくまでも推察の域を出ることはありません。

【ネタバレ考察④】糸守町のヒーロー?宮水家の能力とは

宮水家の実家である宮水神社には、「奉納の舞」、「ムスビ」、「口嚙み酒」、「組紐」といった伝統が代々伝わっています。

しかしその他に、宮水家の女系家族は誰かと入れ替わりを起こすという体質を持っていることも予想されます。このことは、三葉だけでなく、祖母一葉が「少女の頃、不思議な夢を見ていたことがある」と語ったこと、さらに一葉の娘である二葉(大原さやか)にも同様のことが起こっていたことなどから推察されます。

また、宮水家の女性たちの「入れ替わり」体質には、三葉の父、宮水俊樹(てらそままさき)も気がついていたということが考えられます。

この理由として、彗星が落ちるその日、三葉の体に入った瀧が、町長である俊樹の説得を試みるも、激昂して俊樹に掴みかかるシーンが挙げられます。驚いた俊樹は、三葉の姿の瀧に「お前は誰だ?」と問いかけるのです。

自分の娘が突然乱暴な行動を取ったら「どうしたんだ?」などと言うのが普通でしょう。

「お前は誰だ?」三葉と初めて入れ替わった時に、瀧自身も使用したフレーズです。俊樹の「お前は誰だ?」という問いかけは、「三葉の中に三葉ではない誰かが入っている」ことを確信した発言であると言えるのです。

この時点では俊樹への説得は失敗に終わります。しかし最終的には、瀧の行動が三葉や俊樹を動かし、糸守町住民の避難の成功へとつながりました。

ところで、なぜこのような「入れ替わり」体質が代々伝わっているのでしょうか?

糸守町のクレーターの真ん中にある宮水神社のご神体の祠には、彗星が落ちる様子を描いた絵があります。1,200年前に一度地球に接近していたティアマト彗星は、分裂して、実際に今の糸守町に落ちたのです。糸守湖が出来た経緯を見てもそれは明らかです。

この時の悲劇を繰り返さないよう、1,200年単位で接近する彗星から糸守町を守るため、宮水家の遠い先祖から現在に至るまで、能力が伝えられていたのではないかと推察できます。「繭五郎の大火」によって燃えてしまった文献には、これらのことが記されていたのではないでしょうか?「口嚙み酒」や「組紐」などに見られる宮水家の「ムスビ」の伝統も、全て「入れ替わり」能力の延長線上にあるのかもしれません。

『君の名は。』での新海誠作品過去作へのオマージュ

新海誠監督が手掛けた作品は、監督自身の過去作のオマージュがよく登場することで知られています。本作『君の名は。』もその例にもれず、多くの過去作品の要素が盛り込まれています。皆さんはいくつ気づきましたか?それぞれチェックしてみましょう!

出典:新海誠『監督作品集&新作特報』

【『彼女と彼女の猫』オマージュ】ローアングルは猫の視点?

『君の名は。』の作中において、効果的に用いられているのが、引き戸や電車の扉の開閉シーンです。三葉の部屋を妹の四葉がガラッと勢いよく開けるシーン、何度も登場するため記憶に残っている人も多いでしょう。

この「引き戸」のシーンは、床から足元までくらいしか映らないような、極めて低い視線から撮られたカットになっていますが、このアングルは「猫の視点」から撮られたものではないかと考えるファンの声もあります。

新海監督の短編アニメーション作品に、『彼女と彼女の猫』という作品があります。この作品は、主人公の女の子が飼い猫の目線を通して、就職活動や親子関係で苦しみながらも困難を乗り越えていく姿が描かれる…という話なのですが、猫は自分の役目と共にその命を終え、また次の猫として主人公と運命的な出会いをします。『君の名は。』の三葉と瀧の関係となんとなく似ていると言えるのではないでしょうか?

なお、猫好きとして知られる新海監督。遊びの要素としてこの「猫の視点」を取り入れているのかもしれません。

【『言の葉の庭』オマージュ】ユキノが登場!

映画 言の葉の庭
出典:映画『言の葉の庭』公式サイト

三葉の通う糸守高校の古典の授業のシーンで登場する先生、通称「ユキちゃん先生」。この人物は、新海監督の手掛けた『言の葉の庭』のヒロインであるユキノと同一人物であるということが、新海監督本人によって明かされています。

本作でのユキちゃん先生は、『君の名は。』のタイトルの由来にもなっている『万葉集』の和歌について解説する、意外と重要な役回りでした。

なお『言の葉の庭』でも、ユキノが主人公にのタカオに『万葉集』の歌を用いて問いかけるシーンがあります。こちらの作品では、ミステリアスな雰囲気でタカオに接するユキノでしたが、「ユキちゃん先生」が『言の葉の庭』の物語のその後の姿なのかどうかについては、新海監督は明言していません。

本作『君の名は。』で再登場させたのは、「自分の作品を見てくれているファンにサービスがしたい」という思いがあったからだと明かしています。

【『秒速5センチメートル』オマージュ】あのコンビニが…!?

映画 秒速5センチメートル
出典:映画『秒速5センチメートル』公式サイト

糸守町に唯一存在する1軒のコンビニ。避難計画を練る三葉たちに頼まれて、この店で買い出しをする早耶香の様子が描かれています。

こちらのコンビニの外観が作中でチラッと映るのですが、この外観が、『秒速5センチメートル』の第2話『コスモナウト』で登場する種子島のコンビニ「アイSHOP」に非常に似ています。

【『言の葉の庭』オマージュ】瀧のバイト先の名前が実は!

瀧は作中においてイタリア料理のレストランでアルバイトをしていますが、彼が働いているレストランの店名が「IL GIARDINO DELLE PAROLE」であることが、店の外観を映すシーンから分かります。実はこれは、イタリア語版『言の葉の庭』のタイトルなのです。

さらに、この店のモデルとなったレストランは新宿御苑にあり、『言の葉の庭』の舞台も新宿御苑であったことから、新海監督作品のファンにはいっそう嬉しいオマージュとなっています。『言の葉の庭』と『君の名は。』の聖地を2か所同時に回ることができる!と、口コミで話題になりました。

『君の名は。』主題歌の歌詞と作品はこんなにもリンクしてる!

前述した通り、『君の名は。』の音楽は、劇中歌の作詞作曲を含めRADWIMPSが担当しています。これらの歌の歌詞は、作品の内容に非常に密接にリンクしています。4つの劇中歌の歌詞と、歌が流れる場面をそれぞれ見比べてみましょう。

『君の名は。』を総合的に表現した『前前前世』

出典:映画『君の名は。』予告編

RADWIMPSの大ファンだという新海監督は、自分の作品の音楽を手掛けてくれるよう依頼をしました。実はこれは2014年の出来事で、新海監督はRADWIMPSが作ったこれらの曲を軸にして、『君の名は。』という作品を作り上げていったのです。

『君の名は。』の音楽については、「場面に合った音楽を選ぶ」のではなく、「初めから音楽がある状態で、音楽からイメージされる場面を付け加えていく」という手法が取られています。

つまり、『君の名は。』の世界観は、新海監督のものだけではなく、作詞を手掛けたRADWIMPSの野田洋次郎氏の世界観も反映された作品と言えます。映画の内容と歌があまりにもリンクしているのは、このような経緯があるからなのです。

『君の名は。』の劇中歌のうちで最も有名な歌である「前前前世」は、瀧と三葉が自分たちの「入れ替わり」の状況をようやく把握し、「入れ替わってる!?」と叫ぶシーンで流れ出します。

この歌が流れている場面では、2人がお互いのルールを決め合いながらも、それぞれの人間関係を操作したり、三葉が瀧のバイト代を食いつぶしたりするなど、ユーモア溢れるシーンを盛り込みモンタージュしながら、2人の入れ替わりの様子を鮮やかに描き出しています。

「前前前世」の歌詞全体は、作中ですれ違う瀧と三葉そのものであり、『君の名は。』の総合テーマ曲といっていいでしょう。2人が時空を超えて入れ替わることによって生み出される絆で、隕石の落下という困難を乗り越えるということが、歌詞の中で暗示されています。

実は「前前前世 movie ver.」には、収録されていない歌詞が存在します。

私たち 越えれるかな この先の未来 数え切れぬ困難を

言ったろう 二人なら 笑って返り討ちにきっとできるさ

君以外の武器は他にいらないんだ

RADWIMPS/「前前前世 original ver.」より歌詞引用

この部分は、台詞なども被らずとても印象的なシーンで流れているため、頭に残っている人も多いでしょう。

このフレーズは、瀧と三葉の関係性を最も鮮明に描き出している、重要なフレーズです。

三葉と瀧の入れ替わりを示唆する『夢灯篭』

「夢灯篭」は、『君の名は。』のオープニングで流れる歌です。

『君の名は。』の冒頭では、すでに大人になって東京で暮らしている瀧と三葉の様子が描かれており、このシーンがのちにエンディングへとつながります。

「あの日、星が降った日、それはまるで、まるで夢の景色のように、ただひたすらに、美しい眺めだった――。」

物語冒頭、この瀧のモノローグから『君の名は。』が始まりますが、このフレーズの中にも「夢」という言葉が登場します。そして、『君の名は。』における「夢」という言葉は、瀧と三葉の「入れ替わり」も表す大事な単語です。

「夢灯篭」という歌によって、瀧の見た流星の美しい光景と、2人の入れ替わりが示唆されているのです。

三葉の父・俊樹の心境も表している『スパークル』

出典:RADWIMPS公式チャンネル

瀧と三葉が「カタワレ時」に初めて邂逅を果たし、互いへの想いを伝えようとしながらも、それぞれの名前の記憶が消えていくという切ないシーンで流れる「スパークル」。

映画の劇中歌用に編集された「スパークル movie ver.」は、三葉と瀧のモノローグ、三葉が強い決意で父を説得しにいく場面、ティアマト彗星から分裂した数々の流星が地球に向かって降っていくシーンといったように、物語の展開に合わせてそれぞれの場面で効果的に使用されています。

「スパークル」は、『君の名は。』のクライマックスを飾るにふさわしい音楽と言っていいでしょう。

まだこの世界は 僕を飼いならしてたいみたいだ

望み通りいいだろう 美しくもがくよ

RADWIMPS/「スパークル movie ver.」より歌詞引用

「スパークル」冒頭の歌詞です。「カタワレ時」が終わり、忘れてしまった三葉の名前を必死に思い出そうとする瀧。この場面から「スパークル」のイントロが始まります。

ちなみに、「美しくもがく」というフレーズは、小説版『君の名は。』の章題にも「うつくしく、もがく」として用いられており、新海監督やスタッフにとってもお気に入りのフレーズであるようです。

愛し方さえも 君の匂いがした

歩き方さえも その笑い声がした

 

いつか消えてなくなる 君のすべてを

この眼に焼き付けておくことは

もう権利なんかじゃない 義務だと思うんだ

RADWIMPS/「スパークル movie ver.」より歌詞引用

坂道で転倒し、絶望的な気持ちになりながらも、瀧が掌に書いた「すきだ」という文字を見て、三葉は生き抜くための決意を新たにするという場面で、この歌詞が流れます。

この「スパークル」が流れる場面では、好き合っていながらすれ違ってしまう瀧と三葉の切ない気持ちを軸にしながら、三葉が糸守町の住民を隕石から守るために奮闘する様子が描かれています。

しかし、糸守町の住民を救う最後の鍵となったのは、三葉の父で糸守町の町長である俊樹の存在です。最終的には、糸守町民は町長である俊樹の命により、「緊急避難訓練をしていた」という体で命が救われました。

三葉が俊樹の元を訪ねてからのことは作中で描かれていないため、二人がどのような会話を交わしたのかは不明です。しかしこの場面の前に、三葉と入れ替わった瀧が俊樹の元に来ていたことも考えると、俊樹はこの時、自分が成すべき使命があるということを悟っていたのかもしれません。

つまり「スパークル」は、瀧と三葉の歌であると同時に、俊樹の心情を表した歌であるとも取れるのです。

「スパークル」は、瀧と三葉のそれぞれの想い、そして俊樹の愛妻であった今は亡き二葉や三葉をはじめとする俊樹の家族への想いが交錯した歌と言っても良いのかもしれません。

三葉と瀧の想いが交差したラストを彩る『なんでもないや』

出典:映画『君の名は。』予告編

隕石落下事件から8年の月日が経ち、かつて糸守町の住人だった人々も、東京での生活に慣れ親しんだ様子を映す場面から、「なんでもないや」の歌は始まります。

そこから、『君の名は。』のオープニングでも流れた、大人になった瀧と三葉のそれぞれの朝の様子を映し出すシーンが再度繰り返されます。

やがて、瀧と三葉がそれぞれ乗った電車がすれ違う時が来て――。

僕らタイムフライヤー 時を駆け上がるクライマー

時のかくれんぼ はぐれっこはもういやなんだ

 

離したりしないよ 二度と離しはしないよ

やっとこの手が 君に追いついたんだよ

RADWIMPS/「なんでもないや movie edit + movie ver.」より歌詞引用

この歌詞は、「なんでもないや」のサビに当たるフレーズです。この部分が流れると同時に、ずっと消化不良な何かを抱えて生きてきたという瀧のモノローグが、電車が交差すると共に、三葉へと視点が切り替わります。「ずっと何かを探していた」のは、瀧だけではなく三葉も同じだったことが分かります。

2人の想いが交わるその瞬間、「なんでもないや」のサビ部分へと音楽は移り、音楽の盛り上がりと共に物語はドラマティックな終結へと向かうのです。

まとめ

『君の名は。』にまつわる多くの疑問点・秘密について、ネタバレを含めながら考察してきました。新海監督が練りに練ったこの作品について、まだ明かされていない謎も数多く存在するのかもしれません。こういった秘密や裏話を頭に入れておきながら、もう一度『君の名は。』を観賞すれば、また違った面白さを発見できるのではないでしょうか!

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