SF界の名作『ブレードランナー』の名言特集
全てのサイバーパンクの祖である『ブレードランナー』はSFにおける近未来描写に新たな風を吹き込んだエポックメーキングな作品です。多くの名作と呼ばれる作品の元を辿ると『ブレードランナー』に辿り着くことが多いです。世界的に有名な日本の作品『攻殻機動隊』や『AKIRA』、更に世界的にヒットした『マトリックス』なども本作の影響を受けています。
そして『ブレードランナー』は重厚かつ緻密な世界観と哲学的なストーリーで今もって根強い人気を誇り、2017年には35年ぶりの続編である『ブレードランナー2049』が作られました。
この記事ではそんな『ブレードランナー』の印象的な名言を紹介していきたいと思います!
目次
- あらすじ
- 『ブレードランナー』心に響く深い名言集
- 【名言①】「返事はこれだ」/リオン(ブライオン・ジェームズ)
- 【名言②】「宇宙都市(オフワールド)があなたを待っている。チャンスと冒険がいっぱい。希望の土地へどうぞ」/広告飛行船
- 【名言③】「二つで充分ですよ!」/店主(ロバート・オカザキ)
- 【名言④】「生きているうちはよかった。だがお前には劣る」/ブライアント(M・エメット・ウォルシュ)
- 【名言⑤】「人工かい?」/リック・デッカード(ハリソン・フォード)
- 【名言⑥】「彼女もレプリカントだな」/リック・デッカード(ハリソン・フォード)
- 【名言⑦】「我が社は人間以上のロボットを目指している。彼女はその試作品だ」/エルドン・タイレル博士(ジョー・ターケル)
- 【名言⑧】「天使も焼け落ちた。雷鳴とどろく岸辺。燃え盛る地獄の日」/ロイ・バッティ(ルドガー・ハウアー)
- 【名言⑨】「フォークト=カンプフ・テストだけど……受けたことある?」/レイチェル(ショーン・ヤング)
- 【名言⑩】「もう俺たちだけだ」/ロイ・バッティ(ルドガー・ハウアー)
- 【名言⑪】「俺たちはコンピュータじゃない」/ロイ・バッティ(ルドガー・ハウアー)
- 【名言⑫】「人間よ。”我思うゆえに我あり”」/プリス・ストラットン(ダリル・ハンナ)
- 【名言⑬】「明るい火は早く燃え尽きる。君は輝かしく生きてきたんだ」/エルドン・タイレル博士(ジョー・ターケル)
- 【名言⑭】「俺はお前ら人間には信じられぬものを見てきた。オリオン座の近くで燃えた宇宙船や、タンホイザー・ゲートのオーロラ。そういう想い出もやがて消える。時が来れば、雨の中の涙のように……。その時が来た」/ロイ・バッティ(ルドガー・ハウアー)
- 【名言⑮】「彼女も惜しいですな。短い命とは」/ガフ(エドワード・ジェームズ・オルモス)
- まとめ
あらすじ
2019年。地球は人口過密状態となり環境破壊は破滅的なまで進み、人類は宇宙開拓を進めていた。
そんな中、人造人間”レプリカント”の最新型ネクサス6型の一団が人間を殺して宇宙船を奪い、地球に降下する事件が発生する。
人との見分けのつかないレプリカントは人間社会に紛れ込み、LAにに潜伏する。
この事態を重く見たロサンゼルス市警はレプリカント専門の捜査官”ブレードランナー”ホールデン(モーガン・ポール)を派遣するも、捜査中に殺されてしまう。
それに対して上司のブライアント(M・エメット・ウォルシュ)が次に白羽の矢を立てたのは、元凄腕のブレードランナー、リック・デッカード(ハリソン・フォード)だった。
『ブレードランナー』心に響く深い名言集
ブレードランナーは悪のレプリカント集団を倒すような勧善懲悪エンターテインメントではありません。レプリカントにはレプリカントなりの正義があり、そして必死に生きようともがいています。そんな彼らと人間に果たしてどんな違いがあるのか。
そんな人間性という哲学的なテーマがブレードランナーにはあります。
本記事ではそんなブレードランナーの一端が掴めるような名言を紹介していきたいと思います。
【名言①】「返事はこれだ」/リオン(ブライオン・ジェームズ)
映画冒頭、ホールデンはリオンという名の男をレプリカント判別方法。通称”フォークト=カンプフ・テスト”にかけます。いくつかテストの質問をしていくなか、ホールデンは彼の反応が人間らしくないことに気が付きます。
そしてリオンも同様に、自身が疑われていることに気が付きます。そして彼はフォークト=カンプフ・テストの答えの代わりに「返事はこれだ」と銃弾を放ちます。
【名言②】「宇宙都市(オフワールド)があなたを待っている。チャンスと冒険がいっぱい。希望の土地へどうぞ」/広告飛行船
映画冒頭。近未来都市ロサンゼルスを映し出したあと、地上から見上げるように、空を広告飛行船が横切ります。
毒々しい電飾に彩られた広告飛行船は、宇宙開拓地への移住を呼びかけています。
鬱々とした都市の情景に似合わぬ明るい声は、非常に欺瞞に満ちたものを思わせます。
【名言③】「二つで充分ですよ!」/店主(ロバート・オカザキ)
これを欠かして『ブレードランナー』は語れないでしょう。
「二つで充分ですよ」は冒頭。ヌードル屋台に入ったデッカードと屋台店主が交わす会話に登場します。
屋台に入ったデッカードは「何にしましょうか?」と聞かれた店主に「四つくれ」と答えます。それに対して店主は「二つで充分ですよ」と答えます。それでもデッカードは頑なに「いや、四つだ。二と二で四つだ」と頼みます。店主も頑ななもので、やはり「二つで充分ですよ」と答えます。
このよくわからない珍妙なやりとりは店主が日本語で言っていることもあって、多くのファンの印象に残ったようです。
それと同時に『ブレードランナー』のロサンゼルスがアジア文化に浸食されているという世界観も如実に表しています。
今でも多くの作品にオマージュとして登場する映画史に残るセリフです。
【名言④】「生きているうちはよかった。だがお前には劣る」/ブライアント(M・エメット・ウォルシュ)
ガフ(エドワード・ジェームズ・オルモス)に連れられ、ロサンゼルス市警のブライアントの前へと連れてこられたデッカードは事件の説明を聞き、「ホールデンに任せろよ」と要請を断ります。しかしホールデンはすでに殺されてしまったことによりデッカードに要請したいブライアントは皮肉を込めてこのセリフを言います。
ブレードランナーの命の軽さがわかると同時にデッカードが優秀なブレードランナーであることが一発でわかるセリフです。
【名言⑤】「人工かい?」/リック・デッカード(ハリソン・フォード)
捜査のため、タイレル社を訪れたデッカードはレイチェル(ショーン・ヤング)の出迎えを受けると同時に部屋を一匹のフクロウが横切る。
それを見たデッカードは「人工かい?」と質問する。それに対してレイチェルは「もちろん」と答える。
この世界では環境汚染により自然の動物は貴重な存在であり、ほとんどの動物がレプリカントのように人の手で造られたことがわかる示唆的なセリフです。
【名言⑥】「彼女もレプリカントだな」/リック・デッカード(ハリソン・フォード)
社長タイレル(ジョー・ターケル)がフォークト=カンプフ・テストの力量を見たいとデッカードに頼み、レイチェルをフォークト=カンプフ・テストにかけることになります。
結果、デッカードは見事レイチェルがレプリカント、それも”ネクサス6型”であることを見破ります。
そう、人工のフクロウを自慢げに話していた彼女も人工物だったのです。
【名言⑦】「我が社は人間以上のロボットを目指している。彼女はその試作品だ」/エルドン・タイレル博士(ジョー・ターケル)
そう語るタイレル氏は表面上レイチェルを姪のように扱っているが、本当は実験品として見ていることがうかがえます。そしてタイレル氏はレイチェルの精神の安定を図るために自身の姪の記憶を植えこんだというのです。
人を人たらしめる要素の一つは記憶、思い出です。それさえも人工的に上書きすることができるのだとしたら、人間の定義は曖昧となってしまいます。
その直後にデッカードが浮かべた表情は、根底にあるものが揺るがされたかのような、不安げなものでした。
【名言⑧】「天使も焼け落ちた。雷鳴とどろく岸辺。燃え盛る地獄の日」/ロイ・バッティ(ルドガー・ハウアー)
レプリカントの眼球を製作しているハンニバル・チョウ(ジェームズ・ホン)の元へと訪れた反逆レプリカントのリーダー・ロイ(ルドガー・ハウアー)のセリフです。
これはイギリスの詩人ウィリアム・ブレイクの詩「アメリカ ひとつの預言」に登場する「Fiery the Angels rose, & as they rose deep thunder roll’d / Around their shores: indignant burning with the fires of Orc」という一節に由来するものです。
ハンニバル・チョウがロイに「その目もわたしが造った」という言葉に対して「この目で見たものをお前に見せてやりたい」と言ったことから、彼が目にしてきたものを表したセリフでもあります。
自身が見たものを詩とからめて表現するあたり、ロイがかなり高度な知性と教養を身に着けていることがわかります。
【名言⑨】「フォークト=カンプフ・テストだけど……受けたことある?」/レイチェル(ショーン・ヤング)
自身がレプリカントだと知り、アイデンティティが根底から覆されたレイチェルはタイレルの元から逃げ出し、デッカードの処分対象になります。
しかし、デッカードはレイチェルに助けてもらった恩から、彼女を見逃すことを決意。
そんなデッカードにレイチェルは聞きます。「あなたはフォークト=カンプフ・テストを受けたことがある?」と。
自身がレプリカントだとなかなか気づけなかったように、デッカードもまた自身が人間でないと言い切ることはできません。
返事がないデッカードを訝しんで様子を見るレイチェル。デッカードは酒を抱えながら眠りの底へと落ちていました。
【名言⑩】「もう俺たちだけだ」/ロイ・バッティ(ルドガー・ハウアー)
タイレル社の遺伝子工学技師、J・F・セバスチャン(ウィリアム・サンダーソン)の宅に潜入したプリス・ストラットン(ダリル・ハンナ)。
その彼女と合流したロイは言葉を詰まらせながらリオンがデッカードに殺されたことを告げます。そして心底悲しげな表情を浮かべ「もう俺たちだけだ」と。
レプリカントの感情の豊かさを表す一幕です。
【名言⑪】「俺たちはコンピュータじゃない」/ロイ・バッティ(ルドガー・ハウアー)
セバスチャンに正体を明かすロイとプリス。それに対してセバスチャンは「君たちの機能の一部は自分が作った」と誇らしげに話す。
この時点から笑みが消え、内心ムカついているような表情をするロイ。そしてセバスチャンに「君たちの機能を見せてくれ」と言われると「俺たちはコンピュータじゃない」と反論します。
プリスは余裕な笑みを浮かべているあたり、「作った」と言われるのは自身より劣る存在と思っている反応で、プライドの高いロイにとっては許されがたい発言であることがわかります。
【名言⑫】「人間よ。”我思うゆえに我あり”」/プリス・ストラットン(ダリル・ハンナ)
先述のロイのセリフに続けてプリスが発したセリフです。
我々は感情があるから人間である、我々は思考ができるから人間であると、シンプルにそう訴えています。
【名言⑬】「明るい火は早く燃え尽きる。君は輝かしく生きてきたんだ」/エルドン・タイレル博士(ジョー・ターケル)
タイレルの元へ赴き「長く生きたいんだよ畜生」と切に訴えるロイ。
ネクサス6型は頭脳も肉体も優れているのにも関わらず、寿命は4年と短く設定されているためであり、反逆してまで地球に潜伏したロイの目的は自身と仲間の寿命を伸ばすためだったのです。
しかし、ロイはタイレルから寿命を伸ばすことは物理的に不可能であることを知ります。失意の底にいるロイを見て、タイレルは「君たちは完璧だ」と評します。それに対してロイは「寿命が短い」と訴えます。
しかしタイレルはそれがさも素晴らしいことかのように「明るい火は早く燃え尽きる」と熱に浮かされたかのように言います。
しかしタイレルは結局失望したロイにキスされながら頭を潰されて殺されます。
ロイは完璧であることなどどうでもよくて、ただ長生きしたかっただけだったことがわかります。
タイレル氏のエゴとロイの人間らしさが際立つ名シーンです。
【名言⑭】「俺はお前ら人間には信じられぬものを見てきた。オリオン座の近くで燃えた宇宙船や、タンホイザー・ゲートのオーロラ。そういう想い出もやがて消える。時が来れば、雨の中の涙のように……。その時が来た」/ロイ・バッティ(ルドガー・ハウアー)
このセリフは説明不要かもしれません。SF史に残る名セリフです。
最後のネクサス6型になったロイ・バッティ最期のセリフです。
戦闘マシンとして生きた彼は仇であるはずのデッカードを助け、白い鳩を愛おしそうに抱きかかえながら最期の言葉を言います。
その詩的に並べられた美しい言葉は”生”に対する賛歌に溢れていて、多くの観客の印象に残りました。
一人また一人と仲間を失い、自身も死にゆくなかで、彼の見つけた答えはなんだったのか。それを決めるのは外でもない観客一人一人です。
無限の解釈が存在する『ブレードランナー』を名作たらしめているセリフの一つです。
【名言⑮】「彼女も惜しいですな。短い命とは」/ガフ(エドワード・ジェームズ・オルモス)
ロイ・バッティが死亡し、任務を終えたことになるデッカード。そこにガフが現れ、レイチェルの命がロイ・バッティ同様短いことを告げます。
急いで帰宅し、互いの愛を確かめたデッカードとレイチェルは共に逃走することを決意します。そしてレイチェルがエレベーターに乗り込んだところで、デッカードの足元に折り紙があることに気が付きます。それは劇中で散々見せたガフの折り紙でした。
その形はまるでユニコーンのよう。それは、劇中でデッカードが見た夢(ディレクターズ・カット版での追加)とあまりにも酷似していました。まるで自分の脳みそからそのまま取り出したかのように。
もしや、自身も記憶を埋め込まれたレプリカントなのでは?
そう予感させたところでこの映画は終わります。
まとめ
出典:映画『ブレードランナー』Warner Bros公式サイト
以上がブレードランナーの名言集でした。
ブレードランナーは難解な本編に加えて、いくつものバージョンが存在します。それはつまり、見た数だけの解釈が存在するということです。
だからこそいまもなお語り継がれるような作品になったのかもしれません。
あなたも本編をご覧になって、自身だけの結末を見てみてはいかがでしょうか?