アメリカの闇を描いた衝撃の実話『スノーデン』のあらすじネタバレ解説
2013年6月に起きた「スノーデン事件」を元に制作されたノンフィクション映画『スノーデン』。
当時29歳だったNSA・CIAの元局員のスノーデンは、彼が仕事上で知り得た恐ろしい監視プログラムの実態を全世界に向けて暴露しました。まだ10年にも満たないほど最近の大スクープだったので、あのときの騒動を覚えている方も多いのではないでしょうか?
「インターネットが怖い」というのは周知の事実ですが、その一番の原因は「誰でも見れる情報だから」という部分が大きいですよね。個人的なメールやチャットは基本的に当人同士だけの秘密のやり取りであり、恋バナも愚痴も自由なはずです。
しかしスノーデン事件で明かされたのは、その個人的なやり取りでさえもアメリカ政府に収拾され監視下にあるという実態でした。このデータ収集はNSAによって行われ、日本もその対象に入っていたといいます。
もし彼が告発しなければ、今でも私達のプライベートは収拾され続けていたかもしれない……。そう考えると背筋に冷たいものが走りますね。
本記事では、とても他人ごとではいられないスノーデン事件の全貌を映画化した『スノーデン』のあらすじ・キャスト・見どころを紹介していきます。
※ネタバレが含まれるため、未視聴の方は注意してください。
目次
映画『スノーデン』について
実話に基づいて制作された恐怖の大スクープ
映画『スノーデン』はオリバー・ストーン監督、ジョセフ・ゴードン=レヴィット主演のノンフィクション物語。本作は2013年6月、イギリスのガーディアン誌で告発されたアメリカで秘密裏に行われていた監視プログラムの実態を映画化したものです。
監視は2004年~2013年にかけて全世界の人々を対象に行われ、同盟国である日本も監視対象に入っていたのだとか。内部告発者のスノーデンは実際に日本に住み、指示に従ってマルウェアを仕込んでは人々の監視を続けていたといいます。
スノーデン事件とは?
本作の元ネタになった「スノーデン事件」とは、2013年にエドワード・スノーデンによってアメリカの大量監視システム情報が暴露された事件のこと。
その内容は、世界中の全人類を対象にネットはもちろんメール・チャット・通話などあらゆる情報が秘密裏に監視されているというもので、この告発は世界中の人々を震撼させる大スクープになりました。
この告発によりスノーデンは国を追われ、アメリカ国籍を失効。今はロシアで暮らしているそうです。
10秒でわかる!映画『スノーデン』の簡単なあらすじ
2013年6月。エドワード・スノーデンの申し出であるホテルの一室に集められた記者たちは、恐ろしい国家機密情報をリークされる。それはNSAによって全国民のあらゆる情報が無許可で収集され、監視されているという内容だった。
元CIA・NSAの局員だったスノーデンは時系列に沿って、自身の活動内容と告発に至った経緯を語る。世界を震撼させた恐ろしい監視プログラムの実態とは?
映画『スノーデン』のネタバレあらすじ
【あらすじ①】平凡な日々のはずが…
2013年の香港。あるオブジェクトの前で待ち合わせをしていたエドワード・スノーデン(ジョセフ・ゴードン=レイウッド)とドキュメンタリー作家、イギリスの大手新聞記者は合言葉を確認しあいホテルの一室へ。部屋に入るなりスノーデンは2人の携帯電話を電子レンジに入れて本題へと移る。
スノーデンはアメリカ国家安全保障局 (NSA)・中央情報局 (CIA) の元局員で、彼は今までに知ったある重大な機密情報を暴露するために2人を呼んでいた。
元々愛国心の強かったスノーデンは家庭の事情で高校を中退した後、軍隊へ所属し訓練を受けていた。しかし無理が重なって足を疲労骨折してしまい、除隊を余儀なくされてしまう。
その後、コンピューターオタクでもあったスノーデンはCIAの面接を受け、コンピューター技師として就職。同期よりも秀でた能力と発想力が買われてあっという間にオブライアン・コービン教官(リス・エヴァンス)の秘蔵っ子へと駆けあがり、リハビリ期間中にネットで出会ったリンゼイ(シェイリーン・ウッドリー)とも交際をはじめるなど順風満帆な日々を送っていた。
【あらすじ②】エックスキースコア
一足遅れてガーディアン誌のイーウェン・マカスキルがホテルに到着し、彼の携帯電話も他2人と同様にレンジへ入れたスノーデンは次々と身分証を提示し、情報の信頼性を証明する。スノーデンの望みはただ一つ、これから暴露する内容をメディアに掲載して欲しいということだった。
スノーデンは同僚が疑われないようにあえてコンピューターに痕跡を残してきたと言い、もし掲載されなければ家族ともども破滅し、自分はCIAの拷問を受けるだろうと続ける。
そして2007年。最初の任務地として赴任したのはジュネーブだった。
そこでスノーデンは物事の発端である「エックスキースコア」の存在を知る。エックスキースコアはいわばGoogleのような存在でキーワードを入れると検索結果が表示される仕組みだ。ひとつ大きく違うのはネットに掲載されていないメールやチャットなどの個人的なデータもすべて一覧できるという点だった。それも特定の個人だけでなく、世界中の人々が対象なのだ。
あるときリンゼイとパーティーに参加したスノーデンは、上司からサウジ関連の銀行家を1人見つけて弱みを握り、協力者にしろとの命令を受ける。投資家のふりをして気のいい銀行家マルワンと知り合ったスノーデンは、さっそくエックスキースコアを使って本人・家族などの情報を盗み取る。
エックスキースコアの使用には令状が不要で、パソコンなどのカメラ・マイクの起動もお手軽にできると知り驚くスノーデン。調査の結果マルワン自身はクリーンだったが娘の交際相手が違法滞在者だと判明し、スノーデンはそこを突こうと決める。
【あらすじ③】CIAに対する疑念
マルワンとクラブで待ち合わせたスノーデンは、「君と出会ってから人生が散々」だと言われてしまう。なんと彼の娘が恋人の強制送還にショックを受けて大量の睡眠薬を飲み、死にかけたというのだ。
マルワンはスノーデンの上司・チャールズがビザを手配してくれたことで事態は丸く収まったと続け感謝の言葉を述べはじめる。話についていけないスノーデンが隙をみて上司にどういうことかと詰めよると、彼は貰った情報をもとに効果的かつ迅速に動いただけだと突き離す。
人を人と思わないような扱いにショックを受けるスノーデン。だがもっとショッキングなことが待ち構えていた。チャールズはベロベロ状態のマルワンに運転させ、弱みを握って操り人形にしようといていたのだ。
目的のためなら人の一人やふたり死んでも構わないというスタンスに耐えきれなくなったスノーデンはCIAを辞めてしまう。その頃、アメリカではブッシュ政権からオバマ政権へと移行し、情報の透明性を高めていくことが公約として宣言される。
彼の政治に期待したスノーデンは、状況が良くなることを信じてNSAに就職し日本で暮らしはじめる。だがここでも日本政府の許可なくマルウェアを仕込んではインフラを操り、国民の生活を監視する作業が行われていた。万が一、日本とアメリカの同盟関係が破綻したとき有意に立つために。
最初はテロから国民を守ると信じていたスノーデンも、やがてテロは口実で本当に守っているのは政府の覇権だと気づきはじめる。やがてスノーデンはカメラを向けられることに恐怖を覚えるようになるが、その理由をリンゼイに話すわけにもいかず、喧嘩が増えたことに愛想を尽かしたリンゼイは日本を発ってしまう。
【あらすじ④】転職先に待ち受けていたのは…
3か月後。
リンゼイを追いかけてメリーランドに発ったスノーデンは「変わる」と約束して仲直りし、再び同棲しはじめる。そしてCIAにコンサルタントとして戻ったスノーデンは、高額プログラムを扱い民間の契約スタッフとして働いていた。一時的には不安から解放されたと思ってスノーデンだが、今度はNSAを内部から変えようとした人々が次々と処分されていることを知って衝撃を受ける。
ある日、コービンから紹介されたジム・ローウェルにオアフのNSAで始動開始目前の中国サイバー・チーム誘われたスノーデン。返事の猶予を貰ったスノーデンは受けるべきか否か悩み続け、てんかんを発症してしまう。
最初はオラフ行きに消極的だったリンゼイだが、今回のことで行くことでストレスが減るならとオラフ行きを了承し、スノーデンは仕事を受ける返事をする。
新たな上司トレバーのもとでNTOC(防衛担当)として勤務し始めたスノーデンは、勤務初日にしてかつて自分が集中型データベースとして構築したエピックシェルターが攻撃用途として使われていることを知ってしまう。
【あらすじ⑤】CIAからの監視とスノーデンの決断
NSAの行動をおかしいと思い始めたスノーデンは、信頼できる同僚たちに情報収集の現状を明かし、意見を募る。
一方CIA側もスノーデンの変化に気づき、探りを入れ始めていた。コービンにリンゼイを監視しているとでもいうような、脅迫とも取れる話をされたスノーデンはリンゼイに監視されていることを告げ、これまで通り普通に振る舞いつつ、異変を感じたらすぐに暗号化したメールを送るよう指示を出す。
そしてついに行動を起こすことを決意したスノーデンは、ローラに待ち合わせのメールを送信。いつも通り出社したスノーデンは、トレバーや他の社員がトラブルでバタついてる隙にパソコンから機密情報をコピーしてマイクロSDカードへ移していく。
そしてすべてのデータを移し終えたスノーデンはマイクロSDカードをルービックキューブの中に仕込み、空と合流したのだ。
2013年6月5日。
スノーデンの人生をかけた暴露記事が大々的に記事になり、あらゆるメディアで取り沙汰されるように。オバマ政権も監視システムについての先式なコメントを発表し、世界は大きな衝撃を受けることになった。
最後の仕上げとしてスノーデンは顔出し暴露動画を放送し、国民たちに問いかける。監視されるとは、どういうことなのか。このままでいいのか。真偽を疑う人は、高給取りの楽園生活を捨ててまで、世界最高峰の機関を敵に回す理由があるのか考えてほしい…と。
暴露から5日後。
ついに潜伏先ホテルが割れたスノーデンは、記者に変装して協力者と逃亡する。アメリカ政府はスノーデンをスパイ容疑・窃盗・国有財産の横領で告訴し、香港側に身柄の拘束を要求していた。スノーデンは数日を難民施設で過ごし、モスクワ(ロシア)へ。ロシアはスノーデンの逮捕を拒み、憤ったアメリカはスノーデンのパスポートを無効にした。
無国籍者となったスノーデンは国境を越えることができず、ロシアで暮らし始めるように。ロシアの講演会に呼ばれたスノーデンは、全てを失ったが自分のしたことに後悔はないと話す。
現在スノーデンは移住してきたリンゼイと共にモスクワで生活中。
この暴露はアメリカ政府に大きな影響を与え、オバマはNSAによる大量データ収集を廃止。2015年にはNSAの通話データ収集に違法判決が下された。その後、NSAは監視を修正し、オバマは米国自由法に署名する。
これによって議会は通話記録の収集方法変更を検討し、秘密裁判所のさらなる透明性確保を指示したのだった。
映画『スノーデン』の登場人物・キャストを紹介
エドワード・スノーデン/ジョセフ・ゴードン=レイウッド
本作の主人公。愛国心が強いタイプで高校中退後、軍に入隊したが怪我で除隊を余儀なくされた。
その後CIAに入局し国のために尽力するが、少しずつ見えてきた実態に疑心を抱きはじめる。リハビリ中に知り合ったリンゼイと交際中。
スノーデン役を演じたのは、ジョセフ・ゴードン=レイウッド。本作の最後はスノーデン本人が登場しているのですが、よく見なければ気づかないほど瓜二つなことに驚きました。
世の中には3人似た人がいると言いますが、まさかここまでとは…って感じです。
コービン・オブライエン/リス・エヴァンス
CIA時代の教官でスノーデンの抜きん出た才能に目をつけ、期待を寄せている。コービン役を演じたのはリス・エヴァンス。
『アメイジング・スパイダーマン』に登場するヴィランのカート・コナーズ博士役で知られています。本作では、スノーデンを可愛がるCIAの大物役を演じました。
リンゼイ・ミルズ/シェイリーン・ウッドリー
リハビリ中のスノーデンとサイトで出会い、交際するようになったカメラマン。リベラル派。
リンゼイ役を演じたのは『ビッグ・リトル・ライズ』で注目を浴びたシェイリーン・ウッド。ときに衝突することもあれど、仕事柄隠し事の多いスノーデンを献身的に支える恋人役を熱演しました。
ガブリエル・ソル/ベン・シュネッツアー
出典:IMDb
CIA時代の同僚で、コンピューター技師。スノーデンにエックスキースコアの存在を教えた張本人。ガブリエル役を演じたのは、アメリカ俳優のベン・シュネッツァー。
『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』『エンテベ空港の7日間』などに出演しています。
ちょっぴりお気楽な同僚であり、スノーデンに告発のきっかけを与えたある意味キーパーソンな役割を演じました。
スノーデンの現在は?ロシアに亡命していた!
2013年の告発後、アメリカ国籍を失いロシアに亡命していたスノーデン。映画では終盤部分だったためサラっと描かれていましたが、亡命の際もひと悶着あったのだとか。
というのも当初スノーデンが亡命先に希望していたのは、表現の自由を重んじるアイスランドでした。しかし申請が受けいれられなかったため、犯罪者引き渡し協定のないロシアへ渡航。
空港に到着したスノーデンは、乗り換え区画に滞在し「ロシアにはいるけど入国していない状態」でさらに18か国へ亡命申請を行っています。
一方拘束要請を受けたロシア側も「入国手続きが済んでいないため、ロシアの司法権が及ばない」「仮に拘束したとしても、引き渡し協定がないため応じられない」ことを理由にスノーデン拘束を拒否。
とはいえ大手を振って迎えいれることは政治上できなかったのか、アメリカにとって不利益な情報漏洩をしないことを確約したうえで、亡命を受け入れることになりました。
スノーデンは最初こそ拒絶していたものの、亡命先が見つからなかったため最終的にロシアへの亡命を希望したという流れです。しっかりと根回しが行われていない様子を見るに、本当に切羽詰まった状態での暴露だったことが窺えますね。
その後ロシアに住み続けたスノーデンは2020年にロシアの永住権を獲得しています。
亡命したスノーデンを追ってロシアへ移住してきたリンゼイさんとの仲も健在で、子どもにも恵まれました。ロシア国籍を取る予定はないと話していたスノーデンでしたが、ロシア国籍を持つ我が子と離れなくて済むようにと2020年11月にロシア国籍取得の意思を発表しています。
ドキュメンタリー版『シチズンフォー スノーデンの暴露』も存在する!
出典:IMDb
本作品はアメリカ本国で2016年に公開されましたが、実はそれ以前にもドキュメンタリー作品として公開されたことがあります。
ドキュメンタリーのタイトルは『シチズンフォー スノーデンの暴露』。「スノーデン事件」発生の翌年、2014年にオリバー・ストーン監督のもと作成されました。
ドキュメンタリー版の見どころは、映画内でも出てきたホテルでのインタビュー映像が使用されているというところ。エドワード・スノーデン本人が実際に受け答えし証拠データについて説明しているオリジナルデータが視聴可能です。
映画では事の顛末をスノーデンという人間に焦点を当てながらストーリー形式で描いていましたが、ドキュメンタリーは暴露~逃亡までの内容が2時間にわたって放送されました。
映画もなかなかの緊張感をはらんでいましたが、ドキュメンタリー版は実際の映像を使用しているだけあって、ピンと張り詰めた空気感が伝わってくるような緊張感が伝わってきます。
「スノーデン事件」についてもっと知りたい!と思った方はこちらの作品もあわせて視聴するのがおすすめです。ちなみに『シチズンフォー スノーデンの暴露』は第87回アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞を獲得しました。
スノーデンが伝えたい日本への警告とは
本作でも語られたように、2年ほど日本に滞在し人々を監視し続けていたスノーデン。
告発当時、日本でもこのスクープは話題になりましたが即時詳細を調査しはじめたドイツ、ブラジルなどに比べるとどこか他人ごとのような扱いでした。
スノーデンは2017年に日本向けの「スノーデン 日本への警笛」という本を出版しており日本人の情報に対する意識の低さ・当事者意識の欠落に警笛を鳴らしています。
監視社会の行き着く先はどこなのか?情報についてどう考えるべきなのか?携帯やパソコンを一人一台持つのが当たり前の現代だからこそ、いま一度じっくり考える必要があるのかもしれません。
まとめ
まるで映画の中の作り話のようですが、本作で語られたことは紛れもない現実の話。敵国のスパイならまだ理解できる気もしますが、アメリカ本国に住む一般市民や同盟関係を結んでいる日本でさえも監視対象だったというのは末恐ろしい話です。
CIAだのNSAだの、ちょっぴり小難しい映画ではありますが現代人だからこそ一度は見ておくべき作品だと思います!