映画『シェイプオブウォーター』あらすじネタバレ | 半魚人との珠玉の愛の物語

言葉を話せない女性と半魚人の愛を描いたファンタジーロマンス映画。異端の恋でありながら、ピュアなスト―リーは他にはない美しさです!2017年、第74回ベネチア国際映画祭の最高賞である金獅子賞の受賞を皮切りに、第90回アカデミー賞最多13部門ノミネートを記録し、作品賞、監督賞、美術賞、音楽賞の4部門を受賞しました。

同年の作品賞にノミネートされていたのは、ゴールデングローブ作品賞を受賞した『スリービルボード』やゲイリー・オールドマン主演の『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』、スティーブン・スピルバーグ監督の『ペンタゴンペーパーズ/最高機密文書』など秀作揃い。

これらを抑えて作品賞を受賞した『シェイプオブウォーター』の魅力とは?ネタバレあらすじアリで解説していきます。

ギレルモ・デル・トロ監督の集大成『シェイプオブウォーター』

クリーチャー(化け物、想像上の生き物)映画の代名詞ともいえるギレルモ・デル・トロ監督。彼の過去の作品を遡ることで彼がシェイプオブウォーターにかける思いが見えてきます。『クロノス』(1992年)は吸血鬼になった老人を描いたダークファンタジー映画で、メキシコアカデミー賞8部門を受賞したデル・トロ監督が故郷メキシコから生み出した処女作といえる作品です。

アメコミ原作の『ヘルボーイ』(2004年)では、キャラクター造形やVFXを駆使したデル・トロ監督の個性が光り、着実にコアなファンを集めはじめます。『パンズラビリンス』(2006年)は1940年代スペインの暗い社会情勢の中、幻想世界で恐怖に退治する少女を描いた比類ない作品といえるでしょう。

今作でアカデミー賞美術賞など3部門を受賞して、ダークファンタジー映画で広く名を知られるようになりました。クリーチャーの造形美へのこだわりとセンスを世に知らしめたデル・トロ監督は、『シェイプオブウォーター』で現実社会が抱える問題や闇を「おとぎ話」という体裁で描きました。

彼が細部まで徹底して作り上げた世界観が物語に説得力を持たせているといえるでしょう。

シェイプオブウォーター
出典:映画FOXサーチライト・ピクチャーズFacebook

10秒でわかる『シェイプオブウォーター』

出典:映画『シェイプオブウォーター』予告編

舞台は1962年アメリカ。政府の極秘研究所で清掃員として働く女性イライザ。生まれつき声が出ない彼女は、毎日決まった日課をこなしながら一人で孤独に暮らしていた。理解者は、同僚の女性とご近所に住む画家の男性だけ。ある日、施設に半魚人が運び込まれてくる。

アマゾンで神と称えられていたその生物とイライザは次第に心を通わせるようになる。しかし、政府は軍事目的でその生き物を解剖しようと動き出す。半魚人を守るため友人に力を借りて救出を試みるが…。

物語のキーマンは半魚人です。つやと滑り気がありそうな鱗をまとった人型の体。そしてくりくりとした大きな目。怖いと思うか魅力的と思うかは人それぞれですが、物語が進むにつれ、その生き物に愛着を抱く人も少なくないはずです。ラブストーリーでありながら、現代社会の多様性を描いた奥深いヒューマンドラマは観る人の心にあたたかさを残すでしょう。

『シェイプオブウォーター』あらすじ

【あらすじ①】政府機密研究所での出会い

1962年、冷戦下のアメリカ。言葉を話せない女性イライザは、毎日同じルーティーンで、食事をとり身支度をして仕事へ行く単調な日々を送っていた。彼女が住む映画館の上にあるアパートには、友人である売れない画家のジャイルズも暮らしている。

イライザが深夜から朝まで働いているのはアメリカ政府の機密機関の「航空宇宙研究センター」。お喋りで世話焼きな同僚のゼルダといつも一緒に清掃作業をしている。そこへ、国家最高機密の謎の生物が運び込まれてくる。

その数日後、銃声と共に威圧的な軍人のストリックランドが血を流して生き物がいる研究室から出てきた。その部屋を掃除するよう命じられたイライザは、半魚人と出会いたちまち興味を惹かれる。

シェイプオブウォーター
出典:映画『シェイプオブウォーター』公式ホームページ

【あらすじ②】半魚人との交流

翌日からイライザは密かに半魚人のもとを訪れ、一緒に好物のゆで卵を食べたりレコードを聴いたり、手話で意思疎通をとりながら心を通わせていく。一方で、ストリックランドは半魚人を政府の対ソ連の切り札にしようとたくらんでいた。ある日、ストリックランドにより痛めつけられた半魚人の痛ましい姿を発見する。

研究を担当していたホフステトラー博士は実はソ連のスパイであったが、イライザと半魚人の交流を知り半魚人に知性があることを確信して痛めつけるのを辞めさせようとする。しかし、視察に来ていたホイト元帥の指令により生体解剖が決まってしまう。

なんとしてでも半魚人を助けたいイライザはジャイルズをどうにか説得して救出作戦を敢行する。ジャイルズは仕事を得られなかった上、意中の男性に差別的にふられていたのだった。

【あらすじ③】半魚人救出作戦

監視カメラを動かして死角を作り、ジャイルズの車に半魚人を搬送しようと試みるイライザ。ゼルダとホフトステラ―博士も手を貸して寸でのところで半魚人を連れ出すことに成功する。しかも去り際に、ストリックランドの自慢の高級な新車に傷をつけるという仕返しを図らずもやってのけたのだった。

翌日から躍起になって犯人捜しをするストリックランドだったが、まさか清掃員のイライザがやったとは思わないのだった。塩水を入れた自宅の浴槽に入り、どうにか生きながらえた半魚人を、雨の日に海へ逃がそうと決めるイライザ。画家の猫を食べてしまったり、一階の映画館へとひとりで行ってしまう半魚人。

イライザとの関係は一層深まり、ふたりはバスルームいっぱいに貯めた水の中で結ばれる。だが時間が経つにつれて半魚人は次第に生気を失っていくのだった。

シェイプオブウォーター
出典:映画FOXサーチライト・ピクチャーズFacebook

【あらすじ④】海へ

雨の夜、半魚人を逃がしに波止場まで行ったイライザとジャイルズ。ホフステトラー博士の正体を知ったストリックランドが、彼に自白させてゼルダの家を押しかけ、犯人がイライザだと気付いたのだった。

波止場に駆け付けたストリックランドは半魚人とイライザを銃で撃ち殺してしまう。倒れた半魚人だったが、意識を取り戻したストリックランドの喉を切り裂く。悲しみに暮れるジャイルズからイライザを抱き上げ、海に飛び込む。水中で漂う二人、首にあった傷がエラのように開き意識を取り戻したイライザ。半魚人とイライザは踊るように抱き合って海の中で微笑み合うのだった。

『シェイプオブウォーター』のキャスト

サリー・ホーキンス/イライザ

シェイプオブウォーター
出典:映画FOXサーチライト・ピクチャーズFacebook

1976年イギリス、ロンドン出身。1998年から舞台『ロミオとジュリエット』などに出演しはじめます。2008年マイク・リー監督の『ハッピー・ゴー・ラッキー』でその演技力を高く評価され、第58回ベルリン国際映画祭銀熊賞や第66回ゴールデングローブ賞主演女優賞(ミュージカル部門)など数々の賞を受賞しました。

2013年『ブルージャスミン』、2017年『シェイプオブウォーター』での演技でさらに名を馳せ、アカデミー賞助演女優賞にノミネートされました。英国の人気作『パディントン』や『GODZILLA』に出演するなど幅広く活躍する実力派女優の一人です。

マイケル・シャノン/ストリックランド

シェイプオブウォーター
出典:映画FOXサーチライト・ピクチャーズFacebook

1974年アメリカ、ケンタッキー州出身。シカゴで舞台に出演したのち、1993年ビル・マーレイ主演の『恋はデジャヴ』で映画デビューしました。2008年レオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレット出演の『レボリューショナリーロード』で助演男優賞にノミネートされます。

2013年『マンオブスティール』でスーパーマンの宿敵演じ、2016年『ノクターナルアニマルズ』ではアカデミー賞助演男優賞にノミネートされるなど、個性的な役柄でその演技力を評価されている俳優です。

オクタヴィア・スペンサー/ゼルダ

1972年アメリカ、アラバマ州出身。1992年『評決のとき』で映画デビューしました。2011年『ヘルプ~心がつなぐストーリー~』で主要キャストを演じ、米国、英国アカデミー賞、ゴールデングローブ賞、放送映画批評家協会賞など数々の賞を総なめにして一躍注目を集めました。

最近では、2016年『ドリーム』2017年『gifted/ギフテッド』など主要キャストの一人として比類ない存在感を放ち、ひっぱりだこの女優のひとりです。

リチャード・ジェンキンス/ジャイルズ

1947年アメリカ、イリノイ州出身。舞台監督の経験ののち、1970年代半ばから俳優としてのキャリアを築いてきました。2008年『扉をたたく人』の演技が高く評価され、アカデミー賞主演男優賞にノミネート。そして、映画の普及促進に関する活動を行う世界最古の団体(米国映画批評会議)によるナショナル・ボード・オブ・レビュー

で主演男優賞を受賞しました。『シェイプオブウォーター』で見せた情緒豊かな演技が評価され、アカデミー賞助演男優賞にノミネートされました。2010年『食べて、祈って、恋をして』、2012年『ジャッキー・コーガン』、2015年『スポットライト 世紀のスクープ』など出演作多数の人気俳優のひとりです。

マイケル・スタールバーグ/ホフステトラー博士

1968年アメリカ、カリフォルニア州出身。『スリービルボード』の監督であるマーティン・マクドナーによる舞台『ピローマン』でトニー賞にノミネートされるなど、舞台、テレビ、映画と幅広く活躍中の俳優です。

2009年コーエン兄弟の『シリアスマン』で初主演を果たしゴールデングローブ賞やサテライト賞の主演男優賞にノミネートされました。2017年『ペンタゴンペーパーズ/最高機密文書』、『君の名前で僕を呼んで』に出演しています。

ダグ・ジョーンズ/半魚人

1960年アメリカ、インディアナ州出身。1990年代ごろから映画やテレビに出演し始めます。2004年『ヘルボーイ』で半魚人の役を演じるなど、ギレルモ・デル・トロ作品のクリーチャー担当として常連の俳優です。その付き合いは30年にも及び、『シェイプオブウォーター』でも強い信頼を寄せた監督からのキャスティングだったそう。

2006年『パンズ・ラビリンス』、2007年『ファンタスティックフォー:銀河の危機』、2014~16年テレビシリーズ『ストレイン』など出演作多数の個性派俳優です。

『シェイプオブウォーター』のみどころ

【その①】徹底的にこだわり抜かれた半魚人のデザイン

映像技術の進歩した現在、フルCGで作ることもできただろう半魚人のビジュアルは細部まで手作りで、こだわり抜かれたスーツが使われています。

ギレルモ・デル・トロ監督は「クリーチャーはリアルであると同時に美しいものにしたいと思ったが、これは非常に困難だった。これは私が手掛けた中でも一番厄介なクリーチャーデザインだった。」(フォックスサーチライトマガジンVOL.11シェイプオブウォーターより)と語っています。

監督みずから粘土による模型作りとスケッチを何週間も重ねたのち、『ウルフマン』『アポカリプト』などで活躍する造形家のマイク・ヒルに依頼をして更に細かなデザインを練り上げました。

体表の発光や食事法には、鮮やかな色と毒をもったミノカサゴをモデルにしています。そこから、『アイアンマン』や『パシフィックリム』で知られるシェイン・マハンがチームに加わり、血管や筋肉の動きまで考えられた半魚人のスーツを作り上げていきました。

目はシーンに応じて変えられるように磁石を使い、唇は女性がキスしたくなるような魅力をもつよう繊細に形作られています。

体は水をはじきながら、熱帯魚のように色鮮やかな輝きを放つ、唯一無二の水陸両用の防水スーツが4着完成したのです。この一切の妥協を許さないこだわりが本作の世界観を作り上げているといえます

シェイプオブウォーター出典:映画FOXサーチライト・ピクチャーズFacebook

【その②】マイノリティたちの叫び

言葉が話せないイライザ、同性愛者のジャイルズ、黒人女性のゼルダ。登場人物たちはみなマイノリティとされる人々です。

イライザがジャイルズに必死に手話で語りかけるシーンでは「私は彼のように声が出ない。だから運命で巡り合った。私に何が欠けているかを彼は知らない。彼はありのままの私を見てくれる。」と言っていました。社会から欠陥のある存在として扱われている彼女の心の叫びでしょう。

そして、「彼(半魚人)を助けないんだったら、私たちだって、人間じゃないわ」と言う言葉がジャイルズの心に刺さったように、映画を観ている私たちの心にも突き刺さります。舞台は1962年ですが現在の社会が持つ問題を提起しているといえるはずです。

そこで忘れてはいけないのがストリックランドの存在。イライザやゼルダに差別的な態度をとる彼は、1960年代冷戦下のアメリカの父親像の象徴のようなキャラクターです。広い家に高級車、ブロンドの美人な妻とふたりの子供をもつ絵に描いたような暮らしをしています。

非常に高圧的で横暴なストリックランドですが、家庭ではいつも不満げです。ボルチモアという田舎での暮らし、妻や子たちにいつも黙っていてほしそうです。そんな彼は最後にはのどを切られてしまうという皮肉な仕打ちを受けます。敵役として登場した彼も時代に翻弄された悲しいキャラクターとして捉えることができるのではないでしょうか。

そして、彼が読んでいた本「積極的考え力」の著者のノーマン・ヴィンセント・ピールは、トランプ大統領が師と仰いでいる人物です。現在のアメリカの闇を描きながらも、あえておとぎ話の形をとっている、監督のセンスと手腕が光ります。

【その③】イライザ役サリー・ホーキンスの魅力

デル・トロ監督は、はじめからサリー・ホーキンスに当て書きで脚本を作りました。イライザ役は絶世の美女ではなく、通勤のバスで隣に座っていてもおかしくない普通の女性。そして社会から忘れられた孤独な存在として描きたかったからだそうです。

言葉を話せない彼女のセリフは手話と、ゼルダやジャイルズによって代弁されますが、彼女自身の目や表情から訴えかけてくる感情は言葉なしでも伝わるでしょう。ときには勇敢な力強い眼差しをもち、一方でひとりの女性として愛し愛される繊細さを表現する演技は圧巻です。

映画『ハッピーゴーラッキー』でゴールデングローブ賞など数々の賞を受賞している彼女ですが、イライザを演じるに当たって、ASL(アメリカ手話)を学びダンスレッスンを行ったそうです。半魚人と舞台で踊るシーンでは夢が叶ったことがうれしくてその後は、女優をやめて本屋ででも働けばいいと思ったほどだったとか。

『パディントン』では優しくてチャーミングなブラウン婦人役を演じ、『しあわせの絵の具』では重いリウマチを患いながら素朴であたたかな絵を描くモード役を好演しています。今作では半魚人と心から結ばれて、場合によっては際どくなってしまうラブシーンをロマンティックに演じ上げたのは彼女独特の魅力と演技力があってのことだといえるでしょう。

シェイプオブウォーター
出典:映画『シェイプオブウォーター』公式ホームページ

まとめ

一見すると非現実的なおとぎ話でありながら、現実社会の差別的一面を、愛すべきキャラクターたちの視点から描いた映画だといえます。細部まで徹底したリアリティと、夢心地にさせるような神秘的な芸術性のバランスは他にはないものです。きっと時代を超えて名作と語り継がれるでしょう。

マイノリティのためのヒューマンドラマとして、スリリングなサスペンスとして、そして極上の愛の物語としてそのロマンティックな世界に浸ってみてはいかがでしょうか。

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