現れたのは、2,458人のオオカミ達…『SNS 少女たちの10日間』が暴くネット上の真実を解説

たかなし亜妖

 

2021年4月に公開されたドキュメンタリー映画『SNS 少女たちの10日間』。人々の度肝を抜く衝撃的な映像を突き付け、ネット上ではたちまち話題に昇っています。デジタルな社会だからこそ目を逸らしてはならないリアルを、ここまで描いた作品はそうありません。

今一度インターネットという存在を、そして人と人との在り方を考えさせられることでしょう。今回は本作のネタバレを含みながら、この世で横行している現実について詳しく解説していきます。

映画『SNS 少女たちの10日間』について

SNS 少女たちの10日間 解説
映画『SNS 少女たちの10日間』公式サイト

本映画は台本ありのフィクションではありません。現実に起こったことをそのままカメラに収めたドキュメンタリー映画で、我々が見せられているのは全て真実なのです。

今この世の中で、子供達がインターネットに触れることは最早当たり前のこと。小学生でさえスマートフォンを持つ時代ですから、当然SNSを使いこなしているのです。しかし大人と違って彼らは怖いこと・危険なことについての判断ができません。

れがゆえに、犯罪へ巻き込まれてしまったり、危ない目に遭う可能性も非常に高いもの。近頃の誘拐事件なども「SNSを通じて知り合った相手と」という内容が圧倒的に増えているのです。監督・ヴィート・クルサク氏はその点を見逃さず、今回の映画製作へ取り掛かりました。

映される映像は全て作り物なし。あまりの衝撃に“問題作”とまで言われましたが、スタッフ・女優一同体当たりの撮影には賞賛の嵐!プチョン国際ファンタスティック映画祭や、ベルゲン国際映画祭など、数々の場所へ正式出品されました。今後もますます広がりを見せることでしょう。

映画『SNS 少女たちの10日間』のあらすじ

株式会社ハーク

巨大なスタジオに作りこまれた3つの子供部屋、幼い顔立ちの成人した女優が3名――。監督のヴィート・クルサクは彼女らにSNSで12歳のふりをするように命じる。それぞれの部屋にはパソコンを設置し、女優に近づいてきた男性らの有様をとらえる撮影を挙行した。

12歳のふりをした女優たちと偽のアカウントに対し、驚くべき男性の数が来訪する始末。メッセージだけではなくビデオチャットも当たり前、そして性的な要求、強要、恐喝を働く人間まで……。思わずため息が漏れてしまうほどの悪質な行為が露呈されていく。

果たして実験の10日間を経て、どれほどの“オオカミ”が現れるのだろうか。

本作における“撮影”のルール

女優さんを起用した撮影とのことで、監督が用意したルールをしっかりと守るようにと序盤で説明されています。オオカミ(=偽のアカウントに寄ってきた男性たちのこと)の尻尾をうまく炙り出すべく、定められたものは以下の通り。

  1. 自分からは連絡しない(男性の連絡を待ち、来たもののみ対応する)
  2. “12歳”と年齢をハッキリと告げる
  3. 誘惑や挑発は一切しない(相手を刺激することはしない)
  4. 露骨な性的指示は断る
  5. しつこく頼まれた時のみ裸の写真をこちらから送る(尚、合成した偽の写真)
  6. 会う約束をこちらからしない
  7. 撮影中は現場で控えている弁護士や精神科医に適宜相談する(女優のメンタルをケアするため)

撮影に協力してくれる女優の精神面まで考慮した内容となっています。

女優3名は本当の12歳に見えるよう、プロのヘアメイクアップアーティストを起用して子供らしい風貌へ大変身。そして肝心のアカウントは制作側が偽物をきちんと用意しています。検証を悟られないためにも、子供同士(※実際は女優同士なのだが※)の写真をアップしたり、リアルさをとことん追求。

そしてビデオチャットで映る部屋も子供であることに信ぴょう性を持たせるべく、作り込みました。出演する彼女らが本当に子供時代使っていたおもちゃなどを持ち込んでいます。

オーディションへ来た女優たち

出演者を決めるべく、序盤ではオーディションの様子が写し出されています。12歳、つまり幼く見えることが必須条件です。実際にやってきた女性は確かに子供らしく見える人ばかりなのですが、その多くが“ネット上で何らかのトラブルに遭っていた”とか……。

後述しますが、12歳という思春期にはかなりショッキングな経験も。ただ映画に出たいだけではなく、事情を抱えているケースも複数見られたのでした。

 

映画『SNS 少女たちの10日間』で描かれる現実

SNS 少女たちの10日間 解説
映画『SNS 少女たちの10日間』公式Twitter

その①10日間で訪れた男性の数は、なんと2,458人

撮影期間は10日、3人の女優が偽のチャットルームを通じて男性らの現実を暴き出すのが作戦です。製作側も本気で作り込んでいますから、これが一種のワナであることに気づく人などいません。

ルール①にもある通り、こちらから連絡をせずとも登録直後には来訪(アカウントのアクセスなど)の嵐……。なんと10日間で2,458人のオオカミ達がやってきたのです!簡単に計算すると1日で250人前後が少女とコンタクトを取ろうとしている、なんと恐ろしい話なのでしょうか。

その中でもルール②の“年齢をハッキリと告げる”ことをしても、「気にしないよ」と返す相手ばかりなことには驚きを隠せません。

その②チャットルームに訪れる男性の真の姿

リアルドキュメンタリーであるため、実際にビデオチャットをする男性には薄いモザイクがかけられています。しかしボカした画面越しでも伝わるくらい、どの人も顔がニヤついているのです……。明らかに下心ミエミエな感じが分かり、男性が観たとしても鳥肌が立つことでしょう。

恐ろしいのはそれだけではありません。ヘアメイク担当の女性が、画面に映るオオカミを見て「この人知り合いかもしれないわ」とポツリ。なんと彼が子供を扱う職業に就いていたことが、徐々に明らかになっていくのです。そんな人物でも12歳へ対し、性的な欲望をぶつける……。あまりの下劣さに、思わずため息が漏れてしまいます。

その③欲望のために子供を誘惑するオオカミたち

作中では少女らに群がる男性を“オオカミ”と表現しています。残念ながらその表わし方は本当にぴったりで、自分の欲望を満たすために相手のことなど考えやしません。あの手この手で服を脱がそうとする、裸の写真を要求するなど本当にさんざん。

もっと悪質な場合だと「お小遣いをあげるから」とお金で子供を釣ろうとさえします。大人とは思えない卑劣さに思わず口があんぐり。そして思ったような対応が得られないと、12歳相手に恐喝をする男性もいるのでした。この行為は“大人げない”の一言で終わらせられるものではありません。

画面越しだからこそ強気でいられるというのもありますが、やはり彼らからすれば子供を見下しているほかないのです。自分よりも弱者にしか強く出られない、そんな悲しき一面が露呈しているとも言えるでしょう。

その④写真を送ることに抵抗がない子供たち

男性らの行為は確かに許されるものではありませんが、子供たちのリテラシーにも驚くべき部分があります。実際に要求されれば簡単に肌を見せた写真を送ってしまうなど、監督自身もこの現実には戸惑いを隠せなかったとか。近年の子供あちはお金欲しさに、プライベートな部分まで売りものとしてしまうのです。

これはデジタル社会が悪いのではなく、きっちりとその点を教えてこなかった大人に原因があるのは間違いありません。インターネットが身近にある世の中だからこそ、危険と恐怖を説明せねばならない。重要な部分があいまいになっている以上、漬け込んでくるオオカミが消えることはないのです。

その⑤「カフェで会おう」と誘ったオオカミは……

ネット上だけに留まらず、実際に会うことを提案してくるのもまた恐ろしい部分です。12歳とリアルで会って性行為を働こうと目論む男性……。

チャットでは登場しなかった人物を連れてきて3Pを提案する事例まであり、観ていてゲンナリした人も多いでしょう。どこまでいっても下劣で常識を疑ってしまうような行為の連続です。

映画『SNS 少女たちの10日間』にて露呈された、性被害のリアル

SNS 少女たちの10日間 解説
映画『SNS 少女たちの10日間』公式Twitter

「これは映画の中のことだから」と、割り切って考えてはいませんか?冒頭でも述べた通り、我々が目にしているのは全てが現実。嘘偽りない人間の有様なのです。本作で露呈された性被害のリアルについて言及します。

チェコだけではなく、日本でも……

制作が海外だとどうしても“遠い国の話”と考えてしまう人もいるでしょう。実際に筆者も鑑賞後、とある女性2人が「これってチェコならではの話だよね?」「日本ではこんなことあるの?ないよね?」と話しているのを耳にし、少々がっかりとしてしまいました。しかしながら身近な人間に被害が降りかかるか、自分が直面していないと想像がつきづらいのかもしれません。

日本でもネット上での性被害は横行しており、SNSで10代の若者へ性器の写真を送る、年齢や性別を偽って近づくなどの行為をする大人はいるもの。決して本作を観て、“他人事”と思ってはならないのです。

子供達の傷は癒えない

オーディションにやってきた女性も複数名、過去にSNS上で恐ろしい経験をしていると語っていましたね。WEBカメラを乗っ取られて部屋の様子を覗かれた、など、何とも怖い話です。彼女は未だにその写真がどこかへ出回っていないか不安に思っているそうで……。思春期にそんな経験をすれば、親にも正直に話せないはず。こうして傷は深くなるのです。

どう考えても少女へ悪影響を与える男性が悪いのですが、彼らは先のことまで考えていません。浅はかな姿勢が、多くの子供達を傷つける結果をもたらしてしまうのです。

映画『SNS 少女たちの10日間』が国へもたらした影響とは?

SNS 少女たちの10日間 解説
映画『SNS 少女たちの10日間』公式Twitter

チェコでの公開後は多くの子供を持つ親、国民から大反響!そして警察からは性犯罪の証拠となる協力姿勢を求められ、実際の逮捕者が数名ほど出ているそう。まだ逮捕には至らなくとも、捜査を進めている対象者は50名を超えている状態です。

また突き動かしたのは警察だけでなく、なんとチェコの政治家まで!子供達を守るべく、サイバー犯罪への取り締まりを強化する運びとなりました。それと同時に若者の性に関するリテラシーをも向上させねばならない――。そう判断した結果、性教育の年齢を引き下げ、小学校3年生より性にまつわる知識をつけさせることが決定したのです。

性に関する正しい知識と視点を持っていれば、「簡単に相手へ肌を露出しない」ことも理解ができることでしょう。映画が国全体を動かす、素晴らしい起爆剤となったのです。ぜひ日本でも現実から目を背けず、この機会に新たな対策を導入してほしく思いますね。

 

映画『SNS 少女たちの10日間』の見どころ

SNS 少女たちの10日間 解説
映画『SNS 少女たちの10日間』公式Twitter

ドキュメンタリーでありながら、映画という1本の作品としても優秀な『SNS 少女たちの10日間』。見どころをしっかりとチェックした上で映画館へ足を運びましょう。

その①目を逸らしてはならないオオカミの姿

初めはあまりの衝撃に目を逸らしたくなるでしょう。ニヤニヤと12歳相手に卑猥な言葉を口にする、性的な要求を繰り返す、挙句自身の性器を見せつけるなどなど……。ショッキングな映像の数々につい頭を抱えたくなってしまいます。

いくらモザイクがかかっていると言えど、送られてきた男性器の写真が続々と映し出されるシーンは鳥肌が立ちました。いつもは普通の顔をしている男性が裏でこんなことをしているのには、誰しもがビックリ。なんだか見てはならないものを見たような感覚へ陥りますが、残念ながらこれが“現実”なんですよね。

更に驚くべきは、少女へ接触する人の多くが小児性愛(俗に言うロリコン)ではないこと。妻や家族がありながら、分かっていた上で近づくのですから、こちらも理解に苦しみます。

その②ホラーテイストの演出に思わずゾクッ

現実をしっかりと映し出したいからこそ、あえてユーモアはゼロ。緊迫した空気が最後まで張り詰めています。そして男性たちの恐ろしき行為を見せつけるべく、BGMもかなり不穏な感じ(笑)耳に残る不快な音楽で、より物事の重要性や空気を高めているのでしょう。

画面越に映る男性も、どこかモザイクが怖く思える恐怖仕様。心霊など全くいないのに、ホラー映画以上のゾクゾク感を覚えてしまいます。

映画『SNS 少女たちの10日間』が視聴者へ伝えたいこと

SNS 少女たちの10日間 解説
映画『SNS 少女たちの10日間』公式Twitter

本作が伝えたいことは、ただ“ネット上では恐ろしいことが横行している”事実だけではありません。確かに近寄る大人が100%悪いのですが、それを断絶することも、子供にスマートフォンやパソコンを与えないといったこともできないでしょう。1人でも多く卑劣な人間を排除するためにも、誠実な大人が子供達を守らねばならないのです。

スマホやパソコン、SNSが必要不可欠ならその使い方を教える、サイト側が未成年にはフィルタリングをかけるなどできることは山のようにあるはず。ついつい避けがちな性教育も正しく行うことで、貞操観念を大切にすることへと繋がります。

もし事件に巻き込まれてしまった場合でも、身近な大人が気づくことで事態の悪化を防げたり、子供の心が深く傷つく前に救えることだってあるでしょう。インターネットが普及したことよりコミュニケーション不足が目立ち、悲しい結末を迎えていることだって少なくはないのです。

近づくオオカミを消すだけ、性教育をするだけ、この映画を観るだけ、要するに○○だけでは根本解決にはならないということ。それほど深刻な犯罪だからこそ、みんなで考えていく必要があるでしょう。起こりうる事件の理由は一つだけでない、そのことを全編通して伝えてくれる作品だと思います。

まとめ

現代だからこそ、どの子供にも起こりうる恐ろしき真実を伝えてくれる映画です。「問題作」と称されていますが、今を生きる人々にとったら決して避けては通れない“問題”であるはず。ショッキングな映像の数々ですが、ぜひ勇気を持って劇場へ足を運んでいただければと思います。

監督の踏み切った行動が、実際の事件解決へ繋がっているのも素晴らしいこと。本作を観て、多くの方へ伝わるものがあることを願うばかりです。

この記事を書いた人
たかなし亜妖
たかなし亜妖

フリーライター&シナリオライターの映画好きサブカル女子。ライター歴は一年半くらいでまだまだひよっこ。 「感動よりも恐怖を、お涙よりもスリルを!」を基準に映画を選ぶ人。ホラー、スリラーサスペンス、鬱になりそうな作品が特に好き。でもハッピーな気分になれる海外ドラマも好き。キャラクターものもアニメも好き。要するにかなりの雑食です。