実は大人向け?映画『桐島、部活やめるってよ』ネタバレ解説

直木賞作家朝井リョウのデビュー作であり、第22回小説すばる新人賞を受賞した『桐島、部活やめるってよ』。2012年に映画化された本作は、第36回日本アカデミー賞で最優秀作品賞を含む3部門を受賞、その年の映画賞を総なめにしました。見る人によって印象が異なり、少し難解な作品ですが、そんな『桐島、部活やめるってよ』をネタバレ徹底解説していきます!

『桐島、部活やめるってよ』とは?

映画『桐島、部活やめるってよ』ネタバレ
出典:映画『桐島、部活やめるってよ』公式Facebook

同名小説を原作とする本作は、ある高校を舞台に、桐島という謎の男に振り回される同級生たちの日常を描いた作品です。しかし、タイトルにある桐島は、最後まで登場しないばかりか、なぜ部活を辞めたのかも一切言及されません。観賞後に多くの謎を残す難解な内容でありながら、スクールカースト学生時代特有の葛藤をリアルに描き、多くの共感を呼びました。

監督は、『腑抜けども、悲しみの愛をみせろ』や『クヒオ大佐』などで高い評価を得た吉田大八監督が担当しています。原作では各章のタイトルが登場人物の名前になっており、オムニバス形式で構成されていますが、映画では曜日をタイトルにし、終わりに近づくにつれ、それぞれの時間が再構築されるという手法で撮影されています。また、神木隆之介さん松岡茉優さん東出昌大さんなど、今をときめく超人気俳優や女優が高校生役として出演しており、彼らの初々しい姿はファン必見です!

10秒でわかる『桐島、部活やめるってよ』のあらすじ

ある日、バレー部のキャプテンである桐島が部活をやめるという噂が学校中を騒がせた。それを聞いたバレー部、桐島の彼女である梨紗、桐島と友達である宏樹の生活は徐々に狂い始める。一方、映画部の前田は自分たちが撮りたい映画であるゾンビ映画を撮ろうとしていた。金曜日から火曜日までの5日間、目まぐるしく変化するそれぞれの学園生活を描く。

『桐島、部活やめるってよ』のネタバレあらすじ

【ネタバレ①】桐島、部活やめるってよ

映画『桐島、部活やめるってよ』ネタバレ
出典:映画『桐島、部活やめるってよ』公式Facebook

金曜日、松籟高校で、とあるニュースが学校中を騒がせた。バレー部のキャプテンである桐島が急に部活を辞めたというのだ。桐島は成績優秀でスポーツ万能、彼女は学校一の美人の梨紗(山本美月)と、誰もが一目を置く存在だ。なぜ部活を辞めたのかはバレー部員や、梨紗も知らない。桐島と仲のいい宏樹(東出昌大)と竜汰(落合モトキ)、友宏(浅香航大)が彼に連絡をとるも、一向に音信不通だ。重要な試合が控えるバレー部は、副キャプテン久保(鈴木伸之)の指示で代役に風介(太賀)を入れる。しかし、その実力差は明らかであり、風介は不安に駆られる。

桐島がいた頃は、宏樹たちは彼の部活が終わるのをバスケをしながら待つ日々だった。この4人は塾が同じであり、帰宅部である竜汰と友宏は手持ち無沙汰から、宏樹とただバスケをしているだけだった。宏樹は野球部の幽霊部員で、野球部のキャプテンから何度も試合に誘われては断るという事を繰り返していた。

そんなバスケをしている宏樹たちを、屋上から見守る生徒がいた。吹奏楽部部長の亜矢(大後寿々花)だ。亜矢は宏樹のクラスメイトであり、宏樹の後ろの席で彼をいつも見つめている。宏樹には沙奈(松岡茉優)という彼女がいると知りつつ、片思いを続ける。屋上でサックスを練習しながら宏樹を見つめるのが彼女の日課となっていた。

【ネタバレ②】それぞれの金曜日

一方、映画部部長の前田(神木隆之介)は顧問と言い合いになっていた。高校生自主映画コンクールで1次予選を突破したが、それは顧問が脚本を書いた作品であり、自分たちの作品ではないと主張する。彼らが撮りたいのは学校を舞台にしたゾンビ映画なのだ。テーマは自分の半径1mで起こったことを書こうとする顧問と、ゾンビ映画でこそリアリティを描けるという部員たちの間で意見の相違があった。

映画部は日陰者の集まりで、部室も剣道部を間借りしているほどだ。しかし、彼らはどうせ落ちるなら撮りたいものを撮って落ちたいという考えから、ゾンビ映画を撮ることにする。さっそく学校の屋上でロケを始める映画部だが、屋上には亜矢がいた。どうしても屋上で吹きたい亜矢と、どうしても屋上で撮影がしたい映画部との場所取りで言い争いになる。

その日、結局桐島は学校に来ず、宏樹は一人で塾に行く。帰りのバスで反対方向のはずの梨紗が乗り込んできた。泣きそうになりながら桐島と連絡が取れないと詰め寄る彼女に、かける言葉がない宏樹。こうして、彼らの長い金曜日が終わる。

【ネタバレ③】壊れゆく関係

映画『桐島、部活やめるってよ』ネタバレ
出典:映画『桐島、部活やめるってよ』公式Facebook

日曜日、前田は映画館で『鉄男』を観ていた。上映終了後、立ち上がって振り向くと、そこにはかすみ(橋本愛)がいた。かすみは実果(清水くるみ)と同じバドミントン部であり、梨紗や沙奈とも仲がいい女子だ。前田は彼女と同じ中学出身なのである。映画館を出た後、ベンチに座るかすみ。女子に慣れていない前田は立ったまま話す。休日にマニアックな映画を観たり、自分のことを覚えてくれていたかすみに淡い気持ちを抱いてしまう前田。ぎこちない雰囲気のまま、2人は分かれる。

月曜日、学校が始まるも一向に桐島の姿が見えない。副キャプテンの久保は桐島の件で梨紗たちに言い寄る。しかし自分も桐島と連絡が取れない梨紗は腹いせに風介に辛辣な言葉を投げかける。その影響は女子同士の関係にまで及ぶ。紗と沙奈かすみと実果は価値観の違いから、険悪な雰囲気になってしまったのだ。バドミントンのエースだった姉を超えられない実果は、桐島を超えられない風介にシンパシーを抱いてるのであった。

放課後、撮影の準備をする前田にかすみが声をかける。「映画?楽しそうだね、完成したら見に行くから」と言われ、前田は有頂天になる。宏樹たちは相変わらずバスケをしているが、桐島がいない今、彼を待つためにしていたバスケに疑問を感じる。卒業後の進路や、野球部の先輩にずっと試合に誘われていることなど、宏樹なりにも思うことがあったのだ。帰り道、1人で素振りをする野球部の先輩を見かけ、宏樹は思わず隠れてしまう。

【ネタバレ④】運命の火曜日

火曜日桐島が学校に来るという噂が校内を駆け巡る。その事を聞くも、彼のことで気が立っている梨紗沙奈にまで冷たく当たってしまう。放課後、撮影をする前田は、教室に台本を忘れたことに気づき、急いで取りに行く。教室に入った途端、目に入ったのは竜汰にミサンガを付けるかすみだった。前田は、衝撃を顔に出さないように台本を手に取り教室を出る。2人は付き合っていたのだ。しかしこの事は女子たちにも公言しておらず、日曜日に映画を見たのも、竜汰と喧嘩して手持ち無沙汰なところ、何も考えずに映画館に入っただけだったのだ。

校舎裏でロケをする映画部。しかし、そこにはいつも屋上にいるはずの亜矢がいた。校舎裏で沙奈を待つ宏樹を見ながら練習していたのだ。強気に場所の使用権を主張する映画部に亜矢は食い下がる。必死に説得する亜矢に前田は折れ、先に別のシーンを屋上で撮影をすることに。しかし、そこに沙奈が現れる。沙奈は亜矢の宏樹への思いに勘付いており、亜矢に見せつけるために宏樹にキスをせがむ。気にしない振りをするも、亜矢のサックスの音は次第に大きくなる。亜矢はこのやるせ無い思いを部活にぶつける。

【ネタバレ⑤】屋上にて

映画『桐島、部活やめるってよ』ネタバレ
出典:映画『桐島、部活やめるってよ』公式Facebook

友宏たちはいつもの場所でバスケをしていた。ふと屋上を見ると、そこには桐島らしき人の姿が。急いで屋上に向かう友宏たち。その情報は梨紗らや宏樹、かすみやバレー部にまで伝わり、全員が屋上に走る。映画部は撮影のために屋上への階段を登るが、その時に桐島らしき人とすれ違う。

映画の撮影中、バレー部や女子たち、宏樹たちが屋上に現れる。桐島がいないと知った久保は、腹いせに映画部の小道具隕石)を蹴飛ばす。それを見た前田は怒り、バレー部に「謝れ!」と主張する。桐島の件で苛立つ久保は彼の胸ぐらを掴む。暴行で出場停止になる事を恐れた風介は久保を止めるが、その一部始終を面白そうに見ていた沙奈が彼らを囃し立てる。それをみた実果は沙奈を叩こうとするが、その前にかすみが反射的に沙奈の頬を叩いてしまう。自分でも何が起こったかわからないかすみは「ごめん」と謝る。それを見ていた前田は、この場面をドキュメント風に撮影することを思い付き、映画部に「こいつら全部食い殺せ!」と指示を出す。乱闘になる映画部とバレー部たち。その衝撃で前田のカメラが吹っ飛んでしまう。

乱闘の後、屋上に残り片付けをする映画部。帰ろうとする宏樹は、カメラのフードを拾い上げ、前田に渡す。彼に映画を撮る理由を聞く宏樹。その理由を嬉しそうに話す前田を見て、宏樹はなぜか涙を流す。帰り道、宏樹は桐島に電話をかける。暗くなっても校庭で練習する野球部の声だけが響いていた。

『桐島、部活やめるってよ』のキャスト

前田涼也(神木隆之介)

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映画部の部長。「君よ拭け、僕の熱い涙を」という映画でコンクールの1次予選を突破したが、顧問が書いた脚本であることをよく思っていない。次回のコンクールでは、自分たちが監督脚本をした「生徒会・オブ・ザ・デッド」というゾンビ映画で出品する計画をしている。

東原かすみ(橋本愛)

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バドミントン部。ミステリアスな雰囲気で、他人の悪口や噂話には乗らず、人間関係の衝突をうまく避けている。前田とは同じ中学だったが、高校生になってからは会話もしなくなった。親友の実果にも言っていない秘密がある。

菊池宏樹(東出昌大)

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桐島の親友。野球部だが、幽霊部員であり、先輩から試合に誘われては断るということを繰り返している。スポーツ万能で成績も優秀らしいが、自分が将来何をやりたいかを見つけ出せずにいる。沙奈と付き合っているが、彼女といるときはどこかつまらなさそうにしている。

飯田梨紗(山本美月)

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出典:映画『桐島、部活やめるってよ』公式Facebook

学校のマドンナ的存在。下級生からもモテる。桐島の彼女であり、中学生の頃は大学生と付き合っていたという噂もある。いつも沙奈と行動しており、かすみらとも仲が良い八方美人

沢島亜矢(大後寿々花)

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吹奏部の部長。宏樹の後ろの席で、彼に片思いをしている。放課後に彼がバスケをしているところを眺めるため、屋上で練習するのが日課。大人しい性格だが、部長として部員をまとめるしっかり者。

野崎沙奈(松岡茉優)

梨紗の親友であり、宏樹と付き合っている。そのことが彼女のアドバンテージであるが、彼らの顔色を伺いながら学園生活を送る日々。自分よりも下と判断した人間には態度が大きい。

宮部実果(清水くるみ)

バドミントン部。同じ部のかすみと仲が良い。梨紗らとも仲が良いが、真面目な性格なので、帰宅部でおしゃれや恋愛に気を遣う彼女たちとは価値観の隔たりがある。似たような境遇にある風介(太賀)にシンパシーを感じ、好意に似た思いを寄せる。

『桐島、部活やめるってよ』のみどころ

【みどころ①】結局、桐島って?

最後まで謎のまま終わった桐島という存在。屋上にいたのが本当に桐島だったのかということすらわかりません。監督インタビューでは、「桐島は、天皇のような存在」と言っています。監督の意図をそのまま汲むのであれば、天皇という象徴を失い、混乱する日本社会の縮図ととることもできますが、もちろん、そのまま学校のヒーローがいなくなった学校ととるのもよし、みんなが憧れるスーパースターがいなくなった社会ととることも可能です。
目標とするもの中心となる存在がなくなった生活というテーマは、学生時代だけでなく、大人の社会でも当てはまる題材であり、普遍的な題材誰にでも刺さる内容となっています。

【みどころ②】人気俳優の出世作?キャストがすごい!

本作を見て、豪華な俳優陣だと思った人も多いはず。この映画以前から活躍していた神木隆之介さん大後寿々花さんはもちろんのこと、『万引き家族』や『勝手にふるえてろ』で活躍する大人気女優となった松岡茉優さんはこの作品が出世作であり、今や映画やドラマに引っ張りだこの橋本愛さんは、本作で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞しました。

他にも、当時モデル活動をしていた山本美月さん東出昌大さんなどを重要人物役に起用し、本作で演技が評価された彼らは、今や様々なシーンで活躍しています。当時はまだまだ駆け出しだった彼らを一気に人気俳優まで押し上げた本作は、初々しい彼らの表情や演技を見ることができるとても貴重な作品です!

【みどころ③】リアル過ぎて痛い!学園生活シーン

作中に出てきた高校のリアルさに驚いた人も多いのではないでしょうか?それもそのはず、撮影では、高知県にある実際の高校でロケをしており、期末試験の間に演者が廊下を走り抜けたり、バレー部やバスケ部に一時中断してもらって撮影していたそうです。宏樹たちがバスケをしていた場所や、その光景が見える屋上の位置関係もそのままらしく、撮影にはピッタリの高校だったそうです。前田とかすみが『鉄男』を観た映画館も、TOHOシネマズ高知がロケ地となっており、普段使う映画館だ!という人もいるのではないでしょうか?

学園生活の描写もリアルそのもの。スクールカースト上位の梨紗たちの他愛もない会話や、日陰者のオタクたちのルサンチマン具合、部活に打ち込む人たちのひたむきさ、恋愛片思いなど、学校生活を送った人であれば、かならず自分に当てはまる人物がいるはず。自分に合った登場人物に注目して観るのもオススメです!

【みどころ④】なぜゾンビ映画なの?

映画部の前田はゾンビ映画である「生徒会・オブ・ザ・デッド」を撮るつもりでいました。しかし、顧問の先生からは、半径1m以内の出来事を題材にしろと反対されます。これに対し、前田はゾンビ映画こそが僕たちのリアルだと反論します。なぜ彼らはそこまでゾンビ映画にこだわるのでしょうか?予算が限られる高校映画部にとって、低予算で作れるゾンビ映画はうってつけなのです。作品でも血糊を自作したり、臓物を塩辛やソーセージで再現しようとしていましたね。

また、前田はジョージ・ロメロを引き合いに出し、ゾンビ映画の素晴らしさを説いていました。ジョージ・ロメロとは、映画『ゾンビ』を監督した、ゾンビ映画の巨匠です。惜しくも2017年に亡くなりましたが、彼がホラー映画界に与えた影響は計り知れません。彼は『ゾンビ』で、人間たちに襲いかかるゾンビの恐ろしさだけでなく、極限状態で初めて表面化する人間の醜さを描き、当時の社会を痛烈に批判しました。
そんなロメロに感銘を受けた前田は、ゾンビ映画でこの学校社会を批判しようとしたのかもしれませんね。映画部同士で映画秘宝を読んだり、「ロメロだよ!それくらい見とけ!」というオタク感あふれるセリフは微笑ましいものでした。

まとめ

『桐島、部活やめるってよ』のネタバレ解説とみどころをご紹介しました!観る人によってどのようにも取れる本作は、奥が深く、何度見ても新しい発見がある作品です。原作は、また異なる手法で展開するので、そちらと比較するのもオススメです!