映画『竜とそばかすの姫」の魅力を解説|この夏大ヒットの細田守監督最新作!
2021年の夏、スタジオ地図の細田守監督による長編アニメーション映画『竜とそばかすの姫』が大ヒットを果たし、この夏を代表する映画となっています。
これまでの映画でも見応えのあるオリジナル作品を世に送り出してきた細田監督。またしても新鮮で、驚きの詰まった映画を完成させることに成功しています!
目次
2021年待望の公開!『竜とそばかすの姫』について
『竜とそばかすの姫』は2021年7月16日に劇場上映を果たした長編アニメーション映画。
監督を務めたのは、『時をかける少女』をはじめ多くの映画を制作してきた細田守監督。
『おおかみこどもの雨と雪』や『バケモノの子』、『未来のミライ』と近年は家族を前面に押し出したようなテーマの作品が続いていましたが、今作では『サマーウォーズ』を思い起こさせるネットの世界が舞台の映画となっています。
物語の主人公は幼い頃に母を事故で亡くすという過去を持った高校生の内藤鈴(すず)(中村佳穂)。
母の死をきっかけに現実世界で歌うことができなくなっていたすずが、インターネットの仮想世界<U>で、自身のアバター・ベルとしては不思議と歌え、人気の歌姫となっていきます。そんなベルのライブに竜(佐藤健)と呼ばれる謎の存在が現れ、ベルは竜が抱える大きな傷の秘密が知りたいと近づいていくというストーリーです。
こうして出会った竜によってすずに生まれる心境の変化や、竜を巡るある事件をきっかけにすずにも、そしてすずの周囲にも影響が広がっていきます。
映画『竜とそばかすの姫』に込められたメッセージとは?
『竜とそばかすの姫』ではすず/ベルと竜の物語を通して、現代のネット社会に対するメッセージに加え、より普遍的な人間の営みに対するメッセージも込められた映画となっています。
本作をもっと楽しめるよう、ネタバレなしで見所を紹介していきます。
映画『サマーウォーズ』からも変化が?ネット社会の新たな描き方
前述の通り、細田守監督によるインターネットの世界を描いた映画といえば『サマーウォーズ』を思い出すところですが、『竜とそばかすの姫』にはある点で大きな違いがあるのです。
それは登場人物たちが扱っているアバターにあります。
ネットの世界では、利用者が独自で選んだり組み合わせたアバターに扮することがおなじみで、『サマーウォーズ』でもその要素が取り入れられていました。
しかし『竜とそばかすの姫』ではそこに生体情報と連動して、自動的にアバター(今作では<As(アズ)>と呼ばれます)が充てがわれるという独自の仕組みとなっています。
この<As>が見た目の豊かさを増しているのはもちろんのこと、匿名性の強いオンライン社会を風刺していながらも逃れることのできない自分という“アイデンティティ”を象徴していたり、さらには<As>の中の人を特定を試みる者がいたりと、『サマーウォーズ』では描かれてこなかったネット社会の在り方を描きます。
今や、YoutuberやTikTokなど顔出しも当たり前になってきている中、私たちはどうネットと向き合っていくべきか。そんなことを考えさせてくれる内容になっています。
夏が来る度見たくなる!細田守監督のおすすめ映画特集トラウマをいかにしてすずが克服していくのか
インターネットの世界が舞台にはなるといっても、現実世界のドラマも映画では重要になっていきます。主人公のすずが<U>の世界でしか歌うことができないという状況から、いかにして変化していくのかも物語の主軸となっています。
幼い頃に母を事故で亡くしてしまったことから塞ぎがちで、父親との交流も疎遠になっているすずが、この映画で描かれている事件をきっかけに、どのように現実世界と向き合っていくのか。取り巻く人間との関係や、すずが克服すべき点が丁寧に描かれています。
細田守監督といえば、台詞だけでなく細かい演出でキャラクターたちの心情を表現する巧みさもまた見所。すずの学生生活の姿などにも、ときめかされるシーンも多く、青春映画としての一面もしっかり担保されています!
『竜とそばかすの姫』はここがすごい!驚きのポイント!
本作の企画・制作は、スタジオ地図。音楽・美術・さらには技術に至るまでも、注目のポイントが用意されています。
映画を観る際に以下のポイントに着目すると、『竜とそばかすの姫』の魅力がよりお分かりいただけると思います。
観ごたえ・聞きごたえは随一!歌姫ベルのライブ体験
『竜とそばかすの姫』を観た多くの人が口を揃えて絶賛する要素が「音楽」でしょう。
映画の引きとなる冒頭から、すずの<As>である歌姫・ベルによるライブが繰り広げられます。もはやこのスタートからグッと引きつけられるのは必至。多くのオーディエンスを魅了するベルという存在をしっかり、歌で説得力を持たせてくれるのです。
そんなすず/ベル役を務めるのは、実は実際に音楽活動をしているミュージシャンの中村佳穂さん。以前より細田守監督と交流があった中村さんですが、オーディションですず役を見事に勝ち取りました。
今回の大抜擢前から音楽界ではその名前を広く知られている方で、実はキャスト発表の時点で、歌の間違いなさは保証されていたような状態だったのだとか。
そんな中村さんの歌を、綺麗な美術と演出の中で楽しむことができるのですから、ある意味最高のライブ体験となるはずです。
世界で活躍するクリエイターが集結!多様性のある製作陣
アニメーションの要となる映像にも、もちろん注目していただきたい点が多々あります。
これまでの細田守監督作品の制作でもキーマンとなってきた青山浩行さんや山下高明さんといった実力者が名を連ねており、それだけでも映像には期待ができるのですが、今作ではさらに多くの海外のアニメーターやデザイナーが制作に参加しているのです。
ベルのキャラクターデザインは、『アナと雪の女王』をはじめディズニー作品で多くのキャラクターを生み出してきたジン・キム氏が担当。本家本元のプリンセスづくりのプロによって、ベルは手がけられています。
そして、ネットの世界<U>のデザインには建築家という顔も持つデザイナーのエリック・ウォン氏が参加。『サマーウォーズ』の<OZ>とはまた違った、緻密でありながら壮大な見たこともない電脳世界を体験させてくれます。
そのほかにも『ウルフウォーカー』などを手掛けた北欧のアニメーションスタジオ・カートゥーンサルーンのトム・ムーア、ロス・スチュアート監督を始めとするスタッフたちが、とあるパートの美術設定を担当していたりと、作品の随所に、現在進行形で活躍する海外のトップクリエイターの仕事が垣間見られるのです。
スタジオ地図の挑戦する手描きアニメと3DCGアニメの融和!
そして忘れてはいけないのが、手描きアニメーションとCGアニメーションの組み合わせ方。スタジオ地図は以前から、手描きアニメのなかにどうやって違和感なくCGアニメを共存させるのかを追求してきたアニメーション制作会社でした。
『サマーウォーズ』では電脳世界と現実世界の差別化を見せる演出として<OZ>の背景や美術に、『おおかみこどもの雨と雪』では自然の草花にCGを取り入れ緻密な背景を雄大に動かして魅せたりと、技術や工夫で2つの手法を組み合わせてきました。
そして来たる『竜とそばかすの姫』では、現実世界のキャラクターは柔らかく細やかな描写とタッチの手書き。<U>の世界はフルCGという手法で対比させながら、さらにクライマックスの見せ場でこの二つの手法が、物語としても映像としても組み合わされるエモーショナルなシーンが用意されています。
スタジオ地図が描く2つの世界の融合。その見せ方にぜひ注目してください。
まとめ
気持ちの準備ができていても、映画の情報量の多さに圧倒されて、映画の1回目は放心状態になってしまう人も多いのではないでしょうか。
歌に、映像に、演出とそのいくつも組み合わされた映画の魅力を、2周3周と何度も体験しに行って欲しい映画となっています。
『竜とそばかすの姫』はスタジオ地図の新たな代表作となるであろう、節目の作品と言えるでしょう!
出演・キャスト:中村佳穂 成田 凌 染谷将太 玉城ティナ 幾田りら / 役所広司 / 佐藤 健 公開日:2021年7月16日より大ヒット公開中公式サイト:https://ryu-to-sobakasu-no-hime.jp/ |