新ジャンルで注目が高まるパラドックス・スリラー映画『アンテベラム』の魅力を語る

たかなし亜妖

 

年間を通して多くのスリラー/ホラー映画が公開される中、今秋大注目の映画が『アンテベラム』。

一般的なスリラー作品とは違い、“パラドックス・スリラー”という唯一無二の新しいジャンル。意外などんでん返しと繰り広げられる独特の世界観には、不思議と吸い込まれるものがあるでしょう。

有名作品を次々と取り扱ったプロデューサー、そして長編映画の製作が初である監督コンビ。『アンテベラム』は本編だけでなく、スタッフ陣にも注目が集まっているのも特徴。

11月に公開を控えていますが、今から気になっている人もきっと多いはず。予習がてら本記事で鑑賞前の下準備をしておきませんか?

2つの世界が交差する、仕掛けたっぷりのストーリー

出典:キノフィルムズ公式YouTube

物語が始まると、奴隷として扱われる黒人の人々はが白人種より酷い差別を受けていた時代に遡ります。

思わず目を覆いたくなるような手厳しいシーンの数々がのっけから炸裂。残虐表現はないものの、彼らの苦しみが映像を超えて伝わります。

奴隷たちの救いようがない悲惨な日々は続く――、と思いきや!突然シーンは転換し、画面に映し出されるのはスマホ。視聴者が「おや?」と思い始める頃には、すでに現代の物語が描かれるのです。

そう、本作は奴隷である女性エデンと、現代で人種差別問題に立ち向かう女性ヴェロニカ、2つの物語が同時進行しているのです。

いきなり舞台が現代に移りますが、2つの物語は全く別物ではなく、どこかで関係があることが後に判明していきます。

そして散々スリラー映画を観てきました筆者でも、意表を突かれるどんでん返しには仰天。最後まで観進めると「そういうことだったのね!」と非常にスッキリするのが本作の一番の魅力でしょう。

ギリギリまでオチが隠されているのも良い部分で、この展開はなかなか予想がつかないと思います。まるで迷宮に入ってしまったような感覚がとても斬新。

様々な映画を観て飽きている人も楽しめる、そんな作品となっています。

黒人差別を題材に扱ったメッセージ性の強さが魅力

アンテベラム
©2020 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

今まで人種差別を題材に取り扱ってきた映画は多く存在しています。『ゲット・アウト』や『Us』もそうですが、『アンテベラム』は特にその要素が強く、メッセージ性の強さが特徴的。

冒頭から差別を受ける人々の酷い仕打ちを映し出す強気な姿勢。ただ“黒人差別”という題材を掲げるだけでなく、容赦のない部分をあえて描写することで世の中に強く訴えているのでしょう。

これはヴェロニカが生きる現代でも同じで、白人女性が彼女を小馬鹿にするシーンがあります。これも「未だに差別をする人間は存在している」事実を我々に突き付け、考えさせる要素と言えますね。

とは言っても『アンテベラム』は重々しすぎる作品ではなく、多くの人が触れられやすいよう工夫して作られています。そこはコメディを掛け合わせた『ゲット・アウト』と似ている部分でもありますね。

スリラーやミステリーの要素を盛り込み、エンターテイメント性を高めているのも魅力の一つ。全編通して重苦しい空気が流れているわけではないのがやはり多くの人を惹きつける魅力なのでしょう。

島国・日本に住んでいると、ついつい人種差別問題には疎くなりがち。自国に差別がほとんどないからこそ、興味・関心が薄い人も多いですが、本作を観終わったあとは身の引き締まったような思いになります。差別がもたらす悲劇について考えるいい機会にもなるでしょう。

長編映画制作は初挑戦!興味深い監督コンビ

アンテベラム
©2020 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

監督を務めるのはジェラルド・ブッシュとクリストファー・レンツの“ブッシュ&レンツ”と呼ばれる名コンビ。今後の成長に期待を寄せられる2人組で、今回が長編映画初挑戦!今後の映画界を支える人物になるのでは?と巷で囁かれているんです。

普段より人種差別などの政治的なメッセージを含んだ作品作りをしており、短編映画を世に輩出してきました。

世の中で問題となっている件について、容赦なくメスを入れるこの2人。この前向きなスタイルと勢いの良さには定評があるため、彼らを支持する声が多いのも非常に納得がいくことでしょう。

今までずっと差別問題を扱ってきたからこそ、より作品の説得力が増しますよね。

ブッシュ&レンツはジョーダン・ピールを継ぐ名監督になるのでしょうか?今後の成長が非常に楽しみですね。そんな彼らの長編デビュー作、ぜひこの目で焼き付けていただきたく思います。

ジャネール・モネイをはじめとした俳優陣にも要注目

主演を務めるジャネール・モネイはエデンとヴェロニカの2役を担当しています。各キャラクターで雰囲気が異なるので、初めて観た時は少々驚いてしまいました。どちらも体当たりの演技を見せ、作品をより盛り上げている存在となっています。

ジャネールの本業は歌手であり、2014年から映画出演を開始。今ではテレビドラマなどにも出演し、マルチに活動を続けているんですよ。

そして現代シーンのキーポイントとなる人物・エリザベスを演じるのはジェナ・マローン。2006年にブロードウェイデビューを果たした女優さんで、美しきルックスに目を奪われてしまうでしょう。『ハンガー・ゲーム』シリーズなど様々な作品に注目しています。

その他にも奴隷施設を取り仕切るジャスパー司令官にはジャック・ヒューストン、ヴェロニカの良き友人役・ドーンにはガボレイ・シディベとレベルの高い豪華キャストが集結。

迫真の演技でストーリーの緊張感が跳ね上がる部分も見どころです。

新感覚のパラドックス・スリラー『アンテベラム』は2021年11月5日公開

アンテベラム
©2020 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

多方面から注目を浴びえている『アンテベラム』。スリラー/ホラー界で大きな話題を呼んだ『ゲット・アウト』や『Us』のプロデューサーが手掛ける新作映画となっています。心霊が出てこない“今ドキのホラー映画”を象徴すべき作品。

入念に作りこまれたストーリーや人種差別の要素をも盛り込み、高い完成度には定評があります。だからこそ本作にも期待が寄せられているということ!

前2作と同様、メインキャストには黒人俳優を起用する姿勢はぶれませんね。

2020年4月に全米で公開予定だったのですが、あいにくコロナウイルスの影響で延期に。配信のみでの公開が続き、満を持してようやく日本上陸が決定!配信開始より約1年の時を経てスクリーンへ登場することができました。

アメリカではオンライン限定公開だったため、興行収入は約7億円。日本ではこれを上回ることができるのか、期待が高まります。

公開日:2021年11月5日(金)
公式サイト:https://antebellum-movie.jp/
公式Twitter:https://twitter.com/antebellum_jp
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たかなし亜妖
たかなし亜妖

フリーライター&シナリオライターの映画好きサブカル女子。ライター歴は一年半くらいでまだまだひよっこ。 「感動よりも恐怖を、お涙よりもスリルを!」を基準に映画を選ぶ人。ホラー、スリラーサスペンス、鬱になりそうな作品が特に好き。でもハッピーな気分になれる海外ドラマも好き。キャラクターものもアニメも好き。要するにかなりの雑食です。