映画『祈りの幕が下りる時』のあらすじネタバレ結末|タイトルの意味は?
ドラマ『新参者』で人気を博した「加賀恭一郎シリーズ」。人気のため連続ドラマ放送後に2作のSPドラマが放送されることとなり、その後、映画『麒麟の翼』『祈りの幕が下りる時』が公開され、両作品とも興行収入約16億円の人気シリーズに。
この記事で紹介する『祈りの幕が下りる時』はこのシリーズ完結編となり、加賀の最大の謎、母の失踪について明らかになります。また、本作は完結編にして最高傑作といわれており、事件の裏にある隠されたストーリーに誰もが涙してしまいます。豪華俳優陣で固められた出演者の演技にも注目です!
物語はどんな結末を迎えるのか、ネタバレ有りのあらすじや登場人物のおさらい、本作の見どころについてもお伝えしていきます!
目次
映画『祈りの幕が下りる時』について
出典:IMDb
映画の原作となった同名小説『祈りの幕が下りる時』は、東野圭吾の人気ミステリー「加賀恭一郎シリーズ」10作目を映画化したもの。人気ドラマ『新参者』、その後に放送されたスペシャルドラマ『赤い指』『眠りの森』、そして、映画『麒麟の翼~劇場版・新参者~』に続き阿部寛が主人公の加賀恭一郎を演じています。
この映画では、事件の裏に隠された哀しい事実が感動を誘う一方で、これまで最大の謎のまま解き明かされていなかった加賀の母の失踪の真相がついに明らかに。また、加賀がなぜ捜査一課から日本橋署の新参者になったのか、そしてなぜ日本橋署に勤務し続けているのか、その理由が明かされます。
レギュラーキャストの溝端淳平、田中麗奈、山﨑努らの続投に加え、この映画で阿部寛と初共演になる松嶋菜々子が物語の鍵を握る美しき舞台演出家の浅居博美を演じています。
また、キムラ緑子、小日向文世らベテラン勢や、個性的な演技で引っ張りだこの春風亭昇太、及川光博など、豪華キャストで脇を固めている大作でもあります。
監督は『3年B組金八先生』『半沢直樹』『ノーサイド・ゲーム』など人気作を多数手掛けている福澤克雄。シリーズ最高に泣ける感動作をぜひお楽しみください!
10秒で分かる!映画『祈りの幕が下りる時』の簡単なあらすじ
東京都葛飾区、荒川沿いのアパートで腐乱死体が発見されました。死後20日ほど経過しており顔や年齢は認識できず、判明したのは女性であることだけです。
警視庁捜査一課の松宮脩平(溝端淳平)は、部屋のカレンダーに橋の名前が毎月書かれていることと、部屋に生活感がないことが気になっていました。
やがて、死体の身元は押谷道子(中島ひろ子)と判明します。押谷は滋賀県に住んでいたため遺体が発見された部屋には住んでおらず、その部屋は越川睦夫という男の部屋だということがわかったのです。
捜査班は越川を加害者と睨んで捜査を開始します。しかし、松宮は人が生活している様子のない越川の部屋から、同時期に新小岩の河川敷で焼死したホームレスと越川が同一人物なのではないかと考えます。
そして、松宮は滋賀に出向いて聞き込みをすると、押谷が東京に向かった理由がわかりました。 同級生である浅居博美(松嶋菜々子)に会いに行ったのでした。
こうして捜査線上に浮かび上がった浅居博美ですが、彼女にはアリバイがあり犯行は不可能なのです。
彼女を殺したのは浅居博美なのか?それとも別の真相があるのか……。
映画『祈りの幕が下りる時』のネタバレあらすじ
【あらすじ①】2つの事件
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日本橋署の管轄で、2つの事件が起こった。
1つは、女性がアパートの一室で殺害された事件。この事件はかなり時間が経過していたため、死体は腐乱していた。死体の身元は滋賀から上京してきた押谷道子(中島ひろ子)だということがわかった。
しかし、死体発見現場の部屋は押谷のものではなく、越川睦夫という男が借りていた。現在この男は行方不明になっており、押谷との関係性も不明である。
もう1つは、ホームレスの焼死体が見つかった事件。新小岩の河川敷で発見され、死体は焼けていたが首を絞めて殺害されたことと燃やされたことがわかった。この2つの事件には、事件現場が近いということと死因が絞殺だという共通点があった。また、押谷が殺された部屋は人が生活している様子がなく、ホームレスの居住環境と似ている。
捜査一課の松宮(溝端淳平)は、この2つの事件にはなにか関連性があると考えた。松宮はDNA鑑定を行い、2つの事件から浮かび上がる人物を調べるが、何も手がかりはなかった。
捜査に行き詰まりを感じた松宮は、先輩である加賀(阿部寛)に相談する。加賀は、DNA鑑定を行ったものが調査に用いるありきたりなアイテムばかりだったことを指摘し、もっと他のものも徹底的に調べるように伝える。その結果、ホームレスの男性と部屋の持ち主の越川が一致した。
また、部屋で殺された押谷の動きも明らかになってくる。押谷は滋賀から東京に来ており、その理由は「浅居博美(松嶋菜々子)に会うため」だった。博美と押谷は同級生であり、博美は現在舞台女優をしている。そして、博美は加賀が知っている人物だった。
【あらすじ②】橋の意味とは
松宮は、越川の部屋にあったカレンダーに毎月変わった書き込みがあったことを加賀に話した。すると、加賀は書き込みの内容を言い当てたのだ。カレンダーには日本橋周辺にある橋の名前が書きこまれていた。
これまでに得た情報を整理すると、今回の事件の鍵は加賀の母、そして加賀自身が握っているように思えた。
実は、加賀はその書き込みに見覚えがあった。数年前に亡くなった母の部屋にあったカレンダーにも、同じ内容が書き込まれていたからだ。そして、母が綿部俊一という男と付き合っていたことも聞いていた。このカレンダーのメモから、加賀の母と越川は何かしら関係があることが読み取れた。
捜査を続けていく上で、加賀はある仮説を立てる。加賀は母と越川、そして浅居博美の存在も気がかりだった。もしかすると、越川と博美は親密な関係にあったのかもしれないと考えた。
この推理をきっかけに、事件の謎はだんだんと解明されていく。
【あらすじ③】事件の鍵を握る人物
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捜査を進めていくうちに、博美には認知症の母親の浅居厚子(キムラ緑子)がいることを知る。厚子は認知症になる前に夫に借金を負わせて逃げ、夫は借金取りに追われて自殺したというのだ。博美はその後施設で育ち、父親のことはショックで覚えていないという。
そんな中、加賀の父である隆正が亡くなった。最後は息子である加賀のことを思い、天国から見守りたいと言っていたことを看護師(田中麗奈)から聞いて知る。
そして加賀は、親は子どものことを考えてくれていると博美に話す。何か嘘をついていないか、父親のことを覚えていないというのはおかしいのではないかと尋ねると、博美は自身の過去について話し始めた。
【あらすじ④】事件の真相
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浅居博美の父親の忠雄は普通に仕事をしていたが、妻が多額の借金をつくって逃げてしまったことにより、借金取りから追われることになる。そんな生活に耐えかねた忠雄と博美は、行くあてもなく北陸の方へ夜逃げする。
ある日、忠雄が突然旅館に泊まろうと言い出した。博美は嫌な予感がした。忠雄が自殺しようとしているのではないかと思った。
博美はなんとかしてお金を手に入れようと考える。近所の食堂で出会った男にバイトを持ち掛けられていた博美は、その男がいる所に行ってしまった。
しかし、その男に襲われて怖くなった博美はその男の首を箸で刺して殺してしまうのだった。
博美がいないことに気づいた忠雄は、追いかけていきその事実を知る。そして、忠雄がその男の名前を使って生きていくことを思いつく。つまり、忠雄自身は自殺したことにして、これから忠雄は人の目を忍んで生きていくという決断だった。
2人は嘘をつき続け、その後も忠雄は名前を変えたまま暮らした。偽名で手紙でのやりとりを続け、博美が夢を叶えて上京してからは、2人は毎月日本橋で会う約束をした。
忠雄は加賀の母と親しくしており、綿部俊一という人物を名乗っていた。加賀の母のカレンダーに同じ橋が書かれていたのはこのためである。
しかし、嘘がばれそうになるたびに忠雄は人を殺し、押谷もその被害者の一人だった。押谷は、博美が初めて演出をした舞台の会場に忠雄がいるところを見てしまうのだ。自分が実は生きているという真実を押谷に知られることを恐れた忠雄は、押谷をアパートに連れ込み殺害してしまう。これが今回のアパートで見つかった腐乱死体である。
忠雄は、ついにはそんな人生に疲れて焼身自殺を試みる。胸騒ぎがして忠雄の元に駆け付けた博美は必死で止めようとした。
しかし、忠雄は「もう楽になりたい」と自殺を懇願する。以前、焼け死ぬのは嫌だと忠雄が話していたのを覚えていた博美は自分の手で殺そうと考えた。それは、父親に対してのせめてもの贖罪の気持ちだった。忠雄はホームレスの焼死体として発見された。
こうして、2人の人生をかけた芝居は幕を下ろしたのだったーー。
演技派俳優が集結|映画『祈りの幕が下りる時』の登場人物
加賀恭一郎/阿部寛
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主人公。日本橋署の警察官。
今回死体が発見された部屋にあったカレンダーと自身の母の部屋にあったカレンダーに書かれた橋の名前が一致していることから、今回の事件が母親と関係があるのではと気づきます。
一見クールに見える加賀ですが、実は容疑者の感情を汲みとりながら捜査を進める優しい心を持っているんです!
加賀恭一郎役はもちろん阿部寛さんです。約8年間演じた続けた加賀恭一郎は阿部寛さんの代表作とも言えるでしょう!
浅居博美/松嶋菜々子
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舞台演出家。脚本家。女優。小さい頃に両親と離れてしまい、施設で育った後に女優や舞台演出家として活躍します。殺害された押谷道子とは中学時代の同級生であり、今回の事件の鍵となる人物です。
浅居博美役は人気女優の松嶋菜々子さんが演じます。
『やまとなでしこ』『家政婦のミタ』『GTO』など話題作にたくさん出ている女優さんですね。意外にも主演の阿部寛さんとは本作で初共演だったそうです!
松宮脩平/溝端淳平
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警視庁捜査一課の刑事。加賀とはいとこであり、今回の事件の謎を解くために加賀に協力を求めます。
今回、2つの事件が結び付いているのではと疑い始めたのは松宮です!この仮説から事件の解決へと動き出しているんですね!
松宮を演じるのは『赤い糸』『スカーレット』『ブザービート』などに出演している溝端淳平さんです。
溝端淳平さんは、阿部寛さんとともに加賀恭一郎シリーズのレギュラーキャストとして約8年間走り抜けてきました!
金森登紀子/田中麗奈
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加賀の父である隆正を看取った看護師。父の言葉を加賀に伝えたことが、浅居が自供することにも繋がりました。
加賀とは父が亡くなってからも付き合いがあります。
看護師の金森登紀子役は『猟奇的な彼女』『花燃ゆ』などに出演している田中麗奈さんです。
田中さんもシリーズで本作まで続けて出演しています。
安心感のある看護師役で、癒しのような存在でもあったかと思います!
浅居忠雄/小日向文世
浅居博美の父親。妻が借金をして失踪してしまいヤクザに追いつめられます。そして自分自身を自殺したことにして名前を変えて隠れて生活することに…。
本作における重要人物である浅居忠雄は名脇役の小日向文世さんが演じます。
『コンフィデンスマン』『サバイバルファミリー』など脇役から主役まで幅広くいろんな役をされている俳優さんです。
本作では、小日向文世さんの演技に誰もが涙するでしょう!
ここに注目!映画『祈りの幕が下りる時』の見どころ
複雑なトリック
今回の事件が先が読めない展開になっているのは、この事件が親子の絆によって生まれたもので、しかも娘が父親を殺していたという衝撃の結末だったためです。
父親は浅居博美が中学生の頃に自殺したことになっていました。
「浅居忠雄=綿部俊一=越川睦夫」という、ホームレスの焼死体、母親の恋人、死体が発見された部屋の持ち主がすべて同一人物であった真相は誰も予想できません。すべての謎が繋がったときにはスッキリするはずです。
今まで探し続けていた加賀の母と浅居が実は繋がっていたというのもシリーズの完結編として良くできているなと思いました!
登場人物それぞれの「祈り」
映画のタイトルにある「祈り」というのは登場人物それぞれが大切な人の幸せを祈ったものであるといえます。
加賀は母の部屋にあったカレンダーに書かれた橋の名を手掛かりにして、勤務地も日本橋署に変え、ずっと綿部という男を探し続けていました。家から出て行った母がその後の人生を幸せに過ごせたのかどうか知りたかったのです。加賀は、母が幸せな人生を過ごしていて欲しいという「祈り」がありました。
また、浅居は実の父である忠雄と離れて暮らしながら、夢を叶えて女優や演出家として活躍します。悲惨な人生を歩んできた彼女にとって、舞台は別の人物になることのできる場だったのでは、と加賀は推察しました。忠雄は娘のために自分の人生を犠牲にしたのです。彼女の「祈り」は、逃亡生活に疲れた父が天国に行った後安らかに眠ることだったのではないでしょうか。
そして、忠雄の「祈り」はもちろん、博美が幸せでいること。そして加賀の父・隆正と同じように、自身が死んだ後も彼女のことを見守っていたい、と考えていたのかもしれません。
加賀の母もまた、息子の幸せを「祈り」ながら亡くなっていきました。彼を置いて出ていった後悔を抱えながらも、息子が幸せであることを誰よりも望んでいたのです。
こうしたそれぞれの祈りが叶った(幕が下りた)という意味で『祈りの幕が下りる時』というタイトルなのではないでしょうか。
まとめ
この映画はただの刑事ものではなく、親子の絆、大切な人の存在などに気づかされる作品です。後半には涙が止まらなくなってしまうのでハンカチ必須です!
シリーズ完結編ですが、今まで見ていない方でも楽しめるのでぜひご覧ください。