実話を基にした映画『チェンジリング』のネタバレあらすじ|ウォルターは見つかったのか…?
世にもおぞましく、怒りの込みあげるような実話を元に制作された映画『チェンジリング』。
息子の誘拐をきっかけに事件の隠蔽工作、人格否定などを平気で行う汚職警官と最後まで戦い抜いた、ひとりのシングルマザーの物語です。
実際の事件は1928年に発生しており、あまりの凄惨さにロサンゼルス中を震撼させました。登場人物も全員実名で登場という、なかなか刺激の強い作品となっています!
本記事では、そんな『チェンジリング』の元ネタとなった事件について解説しつつ、作品のあらすじやキャスト、不可解な点、その後などを紹介します。
※映画『チェンジリング』のネタバレあらすじ以降は核心的なネタバレを含みます。まっさらな状態で楽しみたい方は注意してください。
映画『チェンジリング』とは
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元ネタになったゴートン・ノースコット事件は実話
『チェンジリング』は2008年に公開されたアメリカ映画。警察の天下だった当時のロサンゼルスで、どれだけ非道な仕打ちを受けても絶対に諦めず、国家権力と戦い続けたひとりの女性を描いた物語です。
本作品はノンフィクションで、1928年のロサンゼルスで発生したゴードン・ノースコット事件の被害者家族の話を元に制作されました。
作品内では連続少年誘拐・殺人事件として扱われたこの事件。実際には誘拐・殺人だけではなく、少年たちで性的欲求を満たしたり同じ嗜好の持ち主に貸し出し、飽きたら殺したとの供述もあったそうですが、あまりの胸糞悪さのためかカットされています。
また実の母親も殺人に協力していたらしく、計5人の殺人罪で死刑判決がくだるも、12年後に釈放。
このように、やや変更された部分はありますが95%は事実に沿った内容となっており、見終わった後は怒り・悲しみ・希望など色々な感情が押し寄せてくる映画です。
タイトル『チェンジリング』の意味
チェンジリング(Changeling)とはヨーロッパに言い伝えられている取り替え子を指す言葉。
自分の子が醜い子どもに入れ替えられてしまうというもので、まさに本作を言い表したタイトルになっています。
10秒でわかる!『チェンジリング』のあらすじ
1928年3月。ロサンゼルス郊外に住むシングルマザーのクリスティン(アンジェリーナ・ジョリー)は、息子ウォルター(ガリトン・グリフィス)がいなくなっていることに気付き警察に捜索願いを出す。
手がかりが掴めないまま5ヶ月が経過し、日々憔悴していくクリスティン。そこへジョーンズ警部(ジェフリー・ドノヴァン)からウォルターが見つかったと連絡が入り、クリスティンは喜んで会いに行くが連れてこられたのはウォルターによく似た別人だった。
ひと目見て気づいたクリスティンはジョーンズ警部に人違いだと伝えるが「ストレスで印象が変わってるだけ」「混乱しているんだ」などと言いくるめられ、一度は家に連れて帰ることに。
しかし身長が7センチも低いこと、割礼されていることなどに気づいたクリスティンは再び警部に捜索を依頼するが人違いをしたと知られたくない警察側は、頑なにそれを拒んで……。
映画『チェンジリング』のネタバレあらすじ
【ネタバレあらすじ①】消えた息子
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1928年。ロサンゼルス郊外に住むクリスティン・コリンズは電話会社に勤務するシングルマザー。ある日、急な仕事が入り休日出勤せざるを得なくなったクリスティンは9歳の息子ウォルターを留守番させて仕事に向かい、帰宅後ウォルターがいなくなっていることに気づく。
焦ったクリスティンは近所を探し回るが見つからず、警察に捜索を要請するも家出か遊び呆けているのだろうと取り合って貰えず、24時間経過しないと動けないと突き放されてしまった。
翌日、ウォルターの捜索願いを受理した警察は捜索をはじめるが一向に手がかりは掴めず、クリスティンは日に日に心労から衰弱していくばかり。
5か月後。
警察からイリノイ州で浮浪者と居るところを発見したと連絡を受けたクリスティンは大喜びで迎えにいくが、その男の子(デヴォン・コンティ)は全くの別人だったのだ。
ひと目見て我が子じゃないと気づいたクリスティンは即座にそのことを警部に伝えるが、男の子はクリスティンを「ママ」と呼ぶ。
記者が押しかけている手前、メンツを潰されたくない警部もまた「ストレスで変わったのだ」「混乱しているんだ」などと言いくるめ、男の子を連れ帰らせることに。
【ネタバレあらすじ②】疑惑と証明
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絶対に我が子じゃないと確信しつつも、確たる証拠がない上に散々周りから言いくるめられて自分がおかしいのかと苛まされ始めていたクリスティン。
だが風呂場で転けた男の子の様子を見に行った際、割礼を受けていることに気づき自分は間違っていなかったと確信し再度訴えるも専属医師を呼ばれ、まるで自分がおかしいかのような診断を下されてしまう。
国家権力に対抗できる力もなく困り果てていたところに、警察の悪事を暴く活動をしているグスタヴ牧師(ジョン・マルコヴィッチ)から声がかかったクリスティンは藁にもすがる思いで歯科医や学校の先生など、ウォルターを知る人たちの証言を取り戦う準備を進めていた。
だがあと一歩のところで勘づいた警部に捕らえられ、精神科へと閉じ込められてしまう。
【ネタバレあらすじ③】コード12
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「コード12」として精神科に閉じ込められたクリスティンは、似たような境遇の女性が複数入院させられていることに気付く。
彼女たちはみな、女なのに警察に逆らったという理由で閉じ込められていた。
院長はクリスティンに
- 自分の精神疾患を認めること
- 連れ帰った子は確かにウォルターだと認めること
- この強制入院に警察が負うべき責任は一切ないこと
などを認める念書にサインすれば明日にでも出してやると迫るが、クリスティンは絶対に認めないと拒絶していた。
一方、ラジオ出演の日になってもクリスティンが来なかったことから異変に気づいたグスタヴ牧師は、近所に聞き込みを実行。
警察が連れ去ったとの証言を得てジョーンズ警部を問い詰め、クリスティンが閉じ込められた精神科へ救出に向かう。
その頃、警察には違法滞在者の少年サンフォード・クラーク(エディー・エルダーソン)という少年を捕らえて強制送還するよう指令が出ていた。
担当になったレスター刑事(マイケル・ケリー)はサンフォードが隠れている養鶏場へ赴き、彼を捕らえる。
だがいざ取り調べをはじめると、サンフォードは怯えながら話したいことがあると言い、養鶏所の持ち主である従兄弟のゴードン(ジェイソン・バトラー・ハーナー)から逃げれば殺すと脅されたこと、強要されて子どもをたくさん殺したと証言しはじめた。
レスターは行方不明になっていた子どもたちの写真を見せ、心当たりのある子の写真を机に置くよう指示を出す。
次々と重ねられていく写真の中に、ウォルターの写真も混じっていた。
【ネタバレあらすじ④】汚職と連続殺人事件
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事件の重大性に気づいたレスターは、すぐジョーンズ警部に連絡するが対面を保ちたい彼は聞き入れようとしないばかりか、もみ消そうと圧力をかける。
だがそれに屈さなかったレスターはサンフォードを養鶏場へ連れて行って子どもを埋めた場所を掘らせ、骨を確認。
すぐさまゴードン・ノースコットを指名手配し、事件とともに警察の大失態が表面化する。
無事に精神科病棟を出られたクリスティンは無料で弁護すると名乗り出てくれた弁護士の力添えで警察の暴挙を訴え、コード12で閉じ込められていた女性たちを全員解放。
クリスティンの息子を騙っていた少年の本名はアーサー・ハッチンズだと判明し、本当の母親の元へ帰された。
ゴードンは自身が指名手配されていると知らずに姉のところへ身を寄せたところを通報、裁判ののち死刑が宣告される。
だがその際に「ウォルターは殺していない。あの子は天使だ」という言葉を言い残し、そのセリフがクリスティンの心の拠り所になっていた。
【ネタバレあらすじ⑤】結末
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ゴードンの死刑前日。ゴードン本人からウォーターに関して話すことがあるとの電報を受けたクリスティンは面会に行くが、「懺悔を終えたからもう嘘はつけない」「地獄には行きたくない」とゴードンは語ることを拒絶する。
結局ウォルターを殺したのか、殺していないのかはハッキリしないままゴードンは絞首刑が執行された。
それから7年後。クリスティンのもとに被害者家族の一人から連絡が入り、彼らの息子が見つかったと知らされる。
駆けつけたクリスティンはその男の子が養鶏場から逃げ出したこと、そのときウォルターも一緒で逃げるのを手伝ってくれたことを聞き、涙を流すのだった。
男の子曰く逃げたのは全部で3人。全員バラバラの方向に走ったため、その後どうなったかは分からないという。男の子は名乗り出れば襲われる気がして黙っていたこと、黙っていたせいで他の子が死んだかもしれないことなど複雑な思いを抱えて生きてきたことを語る。
最後に名乗り出ることを決めたきっかけは、両親に会いたいという思いからだった。帰り際、レスターに先へ進んではどうかと声をかけられたクリスティンは緩やかに笑い「希望をもらった」と去っていく。
この事件で警察は腐敗しきった体制が明るみになり、ジョーンズ警部は永久的な停職処分に。本部長は解任され、再選を目指していた市長は再出馬を断念する。
そして警察の一存で女性を施設送りにしていたことも問題視され、法改正に一役を買うことになった。
そしてクリスティンは、どこかで怯えて暮らしているかもしれない息子を生涯探し続けたという。
映画『チェンジリング』のキャスト
クリスティン・コリンズ/アンジェリーナ・ジョリー
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ロサンゼルス郊外に住むシングルマザー。電話会社に勤務している。息子ウォルターが失踪し警察に届け出を出すが、全くの別人を息子として引き渡された。
警部に何度も別人だと訴えるも取り合ってもらえず、証拠を集めて訴えようとしていた最中に精神科に閉じこめられてしまう。
ウォルターの母・クリスティン役を演じたのは『Mr.&Mrs.スミス』『マレフィセント』などで知られるアンジェリーナ・ジョリー。
警察から理不尽な仕打ちをうけながらも、最愛の息子のために戦い続けた強い女性を熱演しました。
J.J.ジョーンズ警部/ジェフリー・ドノヴァン
ウォルター失踪事件を担当した警部。ひと目見て「別人だ」と訴えるクリスティンの声を無視して保身に走り、しつこく捜査再開を迫る彼女を異常者と非難して精神科に閉じこめた。
J.J.ジョーンズ警部役を演じたのは、『FARGO/ファーゴ』で知られるジェフリー・ドノヴァン。
体面を重要視するあまり捜査を再開しようとしないばかりか、主人公を精神病棟に閉じ込めたりアーサーの演技に付き合ったりと何とも胸糞悪い役回りでした。
グスタヴ・ブリーグレブ牧師/ジョン・マルコヴィッチ
やりたい放題の警察の悪事を暴くため戦い続ける牧師。
警察がクリスティンの人格を疑うようなコメントを出しても彼女を信じ、手を差し伸べた。
グスタヴ牧師を演じたのは、ジョン・マルコヴィッチ。
彼がいなければ成す術もなく、クリスティンは病棟に閉じ込められたままだったかも……と思うとゾッとしますね。
アーサー・ハッチンズ/デボン・コンティ
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ウォルターによく似ていたためイリノイ州で保護されれ、クリスティンに引き渡された。拒絶するクリスティンに対し「ママ」と呼びかけたり、あたかもウォルター本人かのような振る舞いをし続けるが……。
偽ウォルターを演じたのはデボン・コンティ。
なぜ息子だと言い張るのか目的がはっきりしない不気味な子ども、という役回りを演じ切りました。
レスター・ヤバラ刑事/マイケル・ケリー
ロサンゼルス警察の刑事。
違法滞在者アーサーを捕らえたさいに連続誘拐殺人事件に気づいた。隠蔽しようとするジョーンズ警部に逆らって解決に励む。
レスター役を演じたのは『特捜チーム レベル9』『ハウス・オブ・カード 野望の階段』などで知られるマイケル・ケリー。
スポットが当てられたのは後半でしたが、汚職警官ばかりの絶望的な状況で、正義を選んだレスターは最高に眩しい存在となりました。
ゴードン・ノースコット/ジェイソン・バトラー・ハーナー
事件の首謀者。
養鶏場を営んでいてカナダから来た甥のサンフォードを引き取っていた。直接的な危害は加えなかったものの恐怖で支配し、少年たちの誘拐・殺害を手伝わせる。
連続殺人鬼役を演じたのは、ジェイソン・バトラー・ハーナー。
見た目は好青年だけれど、どこか怪しい雰囲気のある青年役はかなり真に迫っていて、不安をかき立てられました。
映画『チェンジリング』の疑問を解説
出典:IMDb
偽ウォルターは何故、親子のふりを続けたのか
おそらく本作品を見た人の多くが気になったのは、この謎だと思います。作品内では「ロサンゼルスに行けばスターに会えると思った」と動機を語っていますが、果たして本当に10歳前後の子どもがそんな薄っぺらな理由だけで本物の親と離れ、罪悪感に押し潰されず演技し続けられるものでしょうか。
実際の事件を調べてみると、どうも継母との折り合いが悪く「遠くへ行きたかった」とも語っていたのだとか。
もしかすると、自分とよく似た男の子が必死に探されていると知った彼は母親の愛を求めて成りすましを思い立ったのかもしれません。
なんだかそう考えると可哀想な気もしますが、彼の行動は捜査を妨げた一番の原因であり、下手すると間接的に子どもを殺したかもしれないという事実は重いですね。
彼がその後どうなったのかは分かりませんが、しっかりと罪を自覚してクリスティンに自分の言葉で謝罪してくれていたらいいな…と思います。
違法滞在した少年・サンフォードのその後
ゴートンの手伝いをした少年、サンフォード。
有力情報を渡したサンフォードは司法取引が成立し、刑事裁判での起訴を免れました。その後氏名改正を行い、少年院で罪を償ったあとカナダへ強制送還されています。
亡くなったのは事件から約63年後の1991年。家庭を持ち、関係者の中で最も長生きしたそうです。
ウォルターは生きていたのか?
映画では結局明言されなかったウォルターの行方。彼は生きているのか、それとも殺されてしまったのか、真相は明かされていません。
もし彼が生きていたら今年で100歳を超えていますので、真相は闇に祀られることになりそうです。
まとめ
恐ろしい事実を元に描かれた映画『チェンジリング』。事実と多少変更を加えられた箇所もありますが、大部分は現実に起きた出来事です。
胸が苦しくなるような実話でしたが、粘り強さと希望を忘れない心を教えてくれる作品です。子どもがいる方は、再度防犯意識について話し合いたいですね。