映画『パラサイト 半地下の家族』ネタバレ考察&伏線回収を徹底解説!
2019年5月に韓国で公開された映画『パラサイト 半地下の家族』。映画界の著名人たちが口を揃えて絶賛している本作品は、観客からの評価も非常に高く、韓国では動員数を1,000万人突破しました!!
それもそのはず、第92回アカデミー賞では、作品賞・国際長編映画賞・脚本賞の4冠を達成しました!英語以外での作品賞受賞はアカデミー賞史上初の快挙で、ほんっっっっとに凄いことなんです!
伏線や皮肉が豊富で、現代社会への問題提起となっている本作品ですが、クスッと笑えるシーンなども多く登場するブラックコメディとなっています。
パラサイト(英語”Parasite”)とは、「寄生虫」という意味。映画を見た方はお気づきかもしれませんが、「本当に寄生しているのは誰なのか?」という裏の(?)テーマも隠されていますよね。
この記事では、そんな注目作『パラサイト 半地下の家族』をネタバレありで徹底解説していきます!各項目をクリックすると、詳細部分に飛べます。
目次 韓国だけでなく日本や台湾、フランス、香港など、世界中で歴代の記録を塗り替える大ヒットを記録した映画『パラサイト』は、2020年1月10日に日本で公開されました。 ”parasite”は日本語で「寄生虫」という意味。その文字通り、薄暗い半地下にある自宅に住む”全員失業中”の家族が、IT企業を経営している上流家族に「寄生」していく物語です。 監督と脚本を手がけたポン・ジュノは、韓国出身の映画監督・脚本家。代表作には『殺人の追憶』(03)や『グエルム-漢江の怪物-』(06)、『母なる証明』などで、ジャンル映画が得意です。カンヌ国際映画祭に出品された作品もあり、『パラサイト』以前から世界で評価されている監督なんです! 格差が激しい現代社会を皮肉り、痛烈に批判している本作ですが、クスッと笑えるブラックコメディも混じり複数ジャンルが融合したエンターテイメントであるともいえるでしょう。 『パラサイト』を今すぐ 無料視聴したい方はこちら! ポン・ジュノ監督が2013年から脚本を描き始めました。2019年のカンヌ国際映画祭で最高賞”パルムドール”を獲得したステージで、監督自ら「ネタバレ禁止」と注意喚起したほど、本作は「展開」が非常に重要です。 特に、後半部分からジェットコースターのように目まぐるしく展開されていく面白さを味わうためにも、未鑑賞の方は以下の簡単あらすじだけで留めておくことをオススメします! 『パラサイト 半地下の家族』のあらすじ 韓国の首都・ソウルに住むキム一家は、日光も電波も届かないような半地下に住む下級家族。全員失業中で、ピザ屋の宅配ボックスを組み立てる内職をしてなんとか生活している。 ある日、息子のギウ(チェ・ウシク)は友人で大学生のミニョク(パク・ソジュン)が留学する間、代理で家庭教師をやらないかと勧められる。身分を偽り、ギウが家庭教師を務めることになったパク家の娘ダヘ(チョン・ジソ)は、IT企業の社長一家で高台にある大豪邸に住んでいた。 そしてダヘの弟が美術の家庭教師を探していることを知ったギウは、妹のギジョン(チャン・へジン)を知り合いとして推薦し、その後父は専属ドライバー、母は家政婦として次々とパク家に「寄生」していくのだが、そこには新たな「寄生者」がいてーー。 ここからは、『ネタバレ有り』でより詳しく、あらすじを説明していきます。 半地下にある薄汚いアパートに住むキム一家は、父・ギテク(ソン・ガンホ)母・チュンスク(チャン・へジン)息子・ギウ(チェ・ウシク)娘・ギジョン(パク・ソダム)の4人家族。近所のパスワードがないWi-Fiを必死につなげたり、宅配ピザの箱を折ったりして日々を過ごしていた。 そんなある日、ギウの友人で名門大学に通うミニョク(パク・ソジュン)がやってきて、彼はキム家に富を生むと言われている「山水景石」をプレゼントする。その帰り道にミニョクは、自分が留学している間、女子高生パク・ダヘ(チョン・ジソ)の家庭教師のアルバイトをしてくれるようギウに頼む。ミニョクはその生徒と恋愛関係にあり、大学入学後に交際を申し込む予定だという。依頼主の家庭が大富豪で給料も良いと知ったギウはそれを承諾する。 大学受験に失敗し続けていたギウは、美大を目指している妹ギジョンの力を借りて大学証明書を作ってもらい身分を偽造して、面接へ向かう。高台の高級住宅街にあり、著名な建築家が建てたというパク家は、ギウには想像もつかないほど壮大で美しい自宅だった。それでも堂々と家庭教師を務めたギウはダヘの母・ヨンギョ(チョ・ヨギョン)の信頼を手にし、家庭教師として採用される。 ヨンギョが息子・ダソン(チョン・ヒョンジュン)のために美術専門の家庭教師も探していると知ったギウは、ギジョンを「有名な芸術療法師、ジェシカ」として紹介する。インターネットで得た情報で物怖じせずにダソンを懐けることに成功したギジョンは騙されやすいヨンギョの信頼を勝ち取り、美術の家庭教師として採用されることに。 しばらくすると、一家の主人でありIT企業の社長のドンイク(イ・ソンギュン)が帰宅し、夜道を1人で歩かせるわけにはいかないと彼の専属ドライバーにギジョンを送るよう指示する。自宅まで送るとしつこく言う運転手に、自宅がバレるわけにはいかないと断ったギジョンはある施策を思いつき、自分のパンツを座席の下に押し込んだ。 ドンイクはその施策にまんまと騙され、運転手が自分の車をカーセックスに使ったと思い込み解雇する。そこで新たな運転手として父のギテクを親戚として紹介。人が良くて経験豊富だと採用され、見事父親もパク家に「寄生」することに成功する。 家政婦のムングァン(イ・ジョンウン)は、パク家が前の持ち主の頃からこの家に仕えていた。彼女が重度の桃アレルギーだと知ったキム一家は彼女に桃の皮に付着している粉末を撒いて発作を起こさせ、ギテクは韓国で結核が流行しているという嘘をドンイクに流し、終いには血がついたように見せかけたムングァンが使用済みのティッシュを見せ、解雇させることに成功する。 そしてギテクは架空のセレブ限定人材派遣サービスをドンイクに勧め、母チュンスクが家政婦として雇われることになった。こうして家族4人全員が身分を偽り、パク家に寄生することに成功する。 家族全員が就職することに成功したキム家の生活は、少しばかり向上していた。 ダソンの誕生日にパク一家はキャンプへ出かけ、チュンスクは留守番を任される。家族4人で我が家かのように酒を飲み、団欒していたところインターホンが鳴り、前の家政婦ムングァンが「地下に忘れ物をした」とやって来る。暴風雨だったこともあり、チュンスクがしぶしぶ中に入れると地下の隠し扉を開け、そこにはなんとムングァンの夫・グンセ(パク・ミョンフン)が隠れ住んでいた。 ムングァンは地下室の存在を自分しか知らないことをいいことにそこに住ませ、夫を借金取りから匿っていたのだ。チュンスクにこの秘密を守ってくれるよう頼みこんでいたところ、階段に隠れて話を聞いていたチュンスク以外のキム家3人が足を滑らせて落ちてしまう。ここでムングァンはキム家が家族だと知って形勢逆転し、動画をパク家に送信すると脅すのだった。 そんな時電話のベルが鳴り、大雨のためパク家が急遽帰宅することに。ムングァンとグンセをやっとの思いで地下に押し込めた一家は大急ぎで家を片付け、ギウ、ギテク、ギジョンはダイニングテーブルの下に隠れる。「計画がある」と言ったギテクに続き、3人は隙をついて家から逃げ出すことに成功する。 一家は半地下の自宅に戻るも洪水被害にあっており、その日は体育館で一夜を過ごすことになった。計画の内容を聞かれたギテクは、「計画とは無計画のことだ。計画があると予定外のこともあるのだから、最初から計画をしなければいい。」のような旨を語った。 洪水の被害など全く受けなかった上流階級のパク家はヨンギョの提案で、庭のテントで寝ているダソンにサプライズでインディアンパーティーをすることに。富豪仲間も招待され、キム一家は手伝いに呼ばれる。 地下に潜んでいる夫婦をなんとかするために、ギウは山水景石を持って地下へ降りるも、グンセに縛られる。なんとか紐を振りほどいて地下室から脱出するも、待ち構えていたグンセに石で殴られ、大量出血で倒れてしまう。 グンセは包丁を持って庭のパーティーに乱入し、ギジョンを刺し殺すと、そのショックでダソンが失神。ドンイクは病院に連れて行こうとギテクから車のキーをもらおうとするも、グンセと、彼を殺すことに成功したチュンスクの間に落下してしまう。グンセの臭いに後退したドンイクを見たギテクは、衝動的にドンイクを刺し殺してしまう。そのままギテクは行方不明になる。 数週間が経過し、なんとか一命を取り留めたギウとチュンスクは、文書偽造罪と住宅侵入罪で有罪、執行猶予の判決を受けた。ギジョンは亡くなり、ロッカー式のお墓に入れられた。 ある日、ギウが山の上から旧パク家を見ていると、家の電気が点滅していることに気づく。モールス信号だと知ったギウは咄嗟にメモを取り、その後すぐに解読すると、それは蒸発したと思われていた父が地下に住んでいるというメッセージだった。 パク家が去った家は今では外国人が住んでおり、ギテクは夜間に食べ物を取りに行く生活をしているのだと言う。ギウはいつかお金持ちになってこの家を買い取り、父を助けることを誓ったのだった。 『パラサイト』を今すぐ 無料視聴したい方はこちら! 本作で監督・脚本を務めたのは、世界で活躍しているポン・ジュノ。延世大学校の社会学部を卒業し、韓国映画アカデミーに進んだ後の大学在学中に作った短編映画、『支離滅裂』と『フレームの中の記憶』が香港国際映画祭とバンクーバー国際映画祭に出品されるなど、若い頃から映画界に形跡を残しています。 長編映画の第2作目『殺人の記憶』(02)が韓国で大ヒットし、『グエムル-漢江の怪物-』(06)では韓国の観客動員数の最高記録を更新したほど、ヒット作を次々と生み出しています! 本作で”貧富の差”に焦点を当てているポン・ジュノ監督ですが、当の本人は中流階級出身で、何不自由なく育ってきたんだとか。「お金を持っている人と持っていない人の見分けは、身なりや車を見れば一目瞭然。だからこそ、貧富の差に注目することは、現代に生きるわたしたちにとって自然なことだ」と述べています。 本作品で、映画監督にとっては最高の名誉とも言える、アカデミー賞の監督賞を受賞しオスカー像を手に入れたポン・ジュノ監督の次回作にも目が離せません! 半地下に住むキム一家の主人・ギテクは過去に何度も事業に失敗。物語序盤は失業中ですが、楽観的で人当たりのいい性格で一家の大黒柱として生活しています。 ギテクを演じたソン・ガンホはポン・ジュノ監督作の常連俳優で、過去3作品に出演しており、”ポンソンコンビ”と呼ばれているほど。それ以外も数多くの映画に出演し、青龍映画賞で主演男優賞を3度、大鐘賞を3度受賞していることからもわかる通り、国内外から高い評価を得ている実力派俳優です。 演劇からキャリアをスタートさせ、映画デビュー作は『豚が井戸に落ちた日』(96)。代表作には『反則王』や『殺人の追憶』、『グエムル-漢江の怪物-』が挙げられます。 キム家の長男・ギウは、今まで何度も大学受験に落ち続けている受験のプロ。友人のミニョクから家庭教師の依頼を受けて採用され、キム家で1番最初に就職した。身分を偽って行ったパク家でも物怖じせず堂々と授業を行ったり、ギジョンを美術の先生として紹介するなど、咄嗟の機転が利いて頭が冴えている。 ギウを演じたチェ・ウシクは、Netflixのオリジナル映画『オクジャ』でポン・ジュノ監督作に初出演しました。映画初主演を務めた『巨人』(14)での演技がポン・ジュノ監督の目に留まり、『オクジャ』のオファーがきたんだとか。同作の打ち上げの際に『パラサイト』の出演のオファーも受けたらしいですよ。 共演者の中で「1番役と実際の性格が近い」と言われていて、緊張するとあまり喋れなくなってしまうんだとか。それでも幼い頃からカナダで暮らしており、英語が堪能で、サイモンフレーザー大学在学中には、第二言語として日本語を専攻していたらしいですよ♪ 長女のギジョンは、美大を目指しているが予備校に行く資金がないものの、抜群のセンスとスキルを持っている。ギウの大学証明書を完璧に偽造した際は家族から絶賛された。また、嘘をついたり咄嗟のアイディアを生むのも得意で、非常に器用な性格。 ギジョンを演じたのは、今作でポン・ジュノ監督作に初出演となったパク・ソダム。実は映画『オクジャ』で起用される予定だったが、年齢がオーバーしていたため断念し、『パラサイト』で再び声がかかったんだとか。 『京城学校 消えた少女たち』(15)で初主演を果たし、その後の『黒い司祭』で丸刈り姿で挑んだ演技が話題になりました。『パラサイト』ではキム家の中で最も頭の回転が早く、世間慣れしている役を見事に演じきり、世界から注目を浴びることになりました。 ギテクの妻チュンスクは、元ハンマー投げの銀メダリストで、不甲斐ない夫にいつも喝を入れている。ふくよかな体型で力持ちなので、何かと家族から頼りにされている。 チュンスクを演じたチャン・へジンは、『クリスマスで雪が降れば』(98)で映画デビューを果たしました。その後『わたしたち』(16)での演技がポン・ジュノ監督の目に留まり、「もう少し太ればソン・ガンホの妻役になれる」と言われたことで15kg増量し、本作の演技に挑んだらしいですよ。 しかし彼女は、実は9年もの間演技から離れて生活していました。一般的な生活や結婚を経て、他の役者にはない感性を持つようになったのでしょう。 パク・ドンイクはグローバルIT企業の社長で、高台にある大豪邸に住んでいる。社長だからといって偉そうに振る舞う仕草などは特に見せず、彼の専属ドライバーになったギテクに対しても対等な関係かのように付き合いをしている。 ドンイクを演じたのは、”甘い魅力を持つ俳優”として韓国で人気のイ・ソンギュン。『白い巨塔』や『コーヒープリンス一号店でブレイクし、その後は韓国を代表する俳優の1人となりました。 ポン・ジュノ監督と共演したのは本作が初めてで、非常に嬉しかったとインタビューで答えています。 ドンイクの妻・ヨンギョは若く容姿端麗だが、能天気で騙されやすい性格。家事が苦手で、家事一般や犬の世話など全て家政婦に任せている。家族思いで子供の教育にも力を入れており、そこに投資するのを惜しまない。 ヨンギョを演じたチョ・ヨジョンは、97年に雑誌でモデルデビューし、その後は演技の道にも力を入れるようになりました。主演を務めた『後宮の秘密』(12)での演技が絶賛され、その後の『情愛中毒』(14)での演技でポン・ジュノの目に留まったことが、『パラサイト』でのオファーに繋がったんだとか。 パク家の長女・ダヘは現在高校二年生で受験勉強に励んでいる。気を引きたいお年頃で、ミニョクの後任家庭教師になったギウと恋仲に発展する。口数は多い方ではなく、少々反抗期。 ダヘを演じたチョン・ジソは中1までフィギアスケーターとして活躍していたが、その後女優に転向。テレビドラマ『メイクイーン』(12)がデビュー作です。 ドンイクの息子・ダソンはインディアンにハマっていて、落ち着きがない性格だが、家庭教師のギジョンには懐いているよう。絵を描くことが好きで芸術肌。彼の絵は家の廊下の家族写真の隣に張ってあり、かなり個性的な絵を書いている。 ダソンを演じたチョン・ヒョンジュンはTVドラマ「あなたはひどいです」、「七日の王妃」、「波よ波よ~愛を奏でるハーモニー~」に出演している子役。感度が高く、どこか周りの子供とは違うダソンを絶妙に演じきっています。 中年の家政婦ムングァンは、パク家が前の持ち主のものだった時から仕えている。ドンイクから食事を2人前食べること以外に落ち度がないと言われているほど、仕事の腕前は確かである。桃の粉末でさえも炎上を起こしてしまうくらい重度な桃アレルギー。 ムングァンを演じたのは、本作でポン・ジュノ監督3度目の出演になったイ・ジョンウン。舞台『真夏の夜の夢』で演技界にデビューし、その後はドラマや映画、演劇など幅広いジャンルで活躍している知名度の高い女優さんです。 ミニョクはギウの長年の友人で、名門大学に通っている。物語序盤で祖父からもらったという山水景石をキム家に持ってきて、その帰りにギウに家庭教師の仕事をオファーする張本人。 カメオ出演としてミニョク役を務めたのは、日本でも人気のイケメン俳優パク・ソジュン。ドラマ『ドリーム・ハイ2』(12)で俳優のキャリアをスタートさせ、その後は『キルミー・ヒールミー』(15)や『彼女はキレイだった』(15)、『ビューティー・インサイド』(15)が代表作と言われています。 ポン・ジュノ監督作への出演は本作が初めてで、短い出番ながらもかなり強いインパクトを残しています。ファンからは、「留学に行かなければ主人公だったのに…」などと、現実と映画の世界を混ぜ合わせたジョークも流行っているんだとか。 カンヌ国際映画祭やゴールデングローブ賞、アカデミー賞などで名だたる賞を獲得し、世界中で評価されている『パラサイト 半地下の家族』。アメリカ最大級の映画批評サイトRotten Tometoesでは、映画批評家/専門家からの評価が99%という驚異的な数字を叩き出しています! 「なんでパラサイトってこんなに人気されているの?」と疑問に思っている方々のために、パラサイトが評価される理由を5つに分けて解説していきます。ネタバレも含まれているので、まだ鑑賞していない方はご注意ください! 本作は「貧困」という広くて深いテーマを、一切の妥協なく、巧みに表す演出力が卓越しています。このことは映画序盤から何気なく伝わってくるはずです。 半地下にある家は地上にある家に比べて安価ですが、日光が差すことはなく、常に薄暗い状況です。映画は外からキム家の中を伺う形で、その後はゴキブリなどの害虫がうじゃうじゃ出現したり、家の前で撒かれている消毒剤がモロに入ってきてしまったり、水流の関係でトイレの位置が高くなっていたりと彼らの生活を網羅するかのようにテンポよく進んでいきます。 ギウとギジョンがWi-Fiを探すシーンも、「ケータイを持つお金はあるけどWi-Fiを契約するまでの余裕はない」という絶妙な経済状況を表すのにぴったりですよね。 そして、貧富の差を表現する技法も優れており、特に本作では、上下に動くカメラワークが強調されています。 ギウが面接のために高台にあるパク家を訪れるシーンは、下からのアングルを「これでもか」というほど強調しています。また、階段の”下”にあるキム家の4人は階段を上がるシーンは少ないですが、大洪水の日に半地下の家まで帰る場面からわかるように、階段を”降りる”シーンは印象的に表されているんです。 一方ヨンギョが自宅の階段を上がり、それを上から撮るカメラワークはポスターデザインに採用されたくらいに印象的。また、半地下の家があるスラム街を映す時も、上からだんだん下がっていくカメラワークです。カメラワークで「貧富の差」をあらさしていることがわかりますね。 ポン・ジュノ監督は「太陽光」にもこだわったようで、パク家に注ぐ太陽は全て自然光なんだとか!光が注ぐ時間を待って撮影したらしいですよ。その光が注ぐ「窓」の概念も、パク家とキム家で異なります。パク家は大きな窓があっても大きな木でプライバシーが保たれ、庭も丁寧に管理されているのがまさに芸術のようですが、半地下にあるキム家の窓にはプライバシーなどまるで存在せず、好奇心で覗く人もいれば放尿されることもしばしば。そこから見えるのは人の足やタイヤばかりで、最終的には洪水の被害に遭う原因にもなってしまいます。窓が格差を表す一つの方法となっていますね。 以下の動画でわかる通り、ポン・ジュノ監督はカンヌ国際映画祭で観客に「ネタバレ禁止」とお願いしています。このように動画を出してまでお願いするというのも珍しいですよね。 本作品は各メディアで「ブラックコメディー」と紹介されている通り、前半はクスッと笑えるコメディ要素が多いのですが…後半からはミステリー、スリラー、スパイ、コメディなど様々なジャンルを完璧に融合させています! 例えば『ダイ・ハード』はアクション映画、『リング』はホラー、『タイタニック』は恋愛映画のように、ハリウッドの名作映画は一つのジャンルで語れるのが当たり前でした。しかし韓国映画である本作は、一つのジャンルに囚われずに想像を超える展開が待ちわびています。 だからこそネタバレを知らなければ、先が読めない緊張感と今まで体験したことのない衝撃的な展開を味わうことができるのではないでしょうか。 そしてこの映画のシンプルかつスマートなストーリー展開もスバラシイ。簡潔にまとめるとまず、ミニョクの推薦でギウが家庭教師になり、試行錯誤を経て家族4人がパク家に寄生することに成功するも、家主たちが留守の時にまさかの完地下に住む家族の存在が判明し、カオスに至るという起承転結でうまくまとまっているんです。 ちなみにポン・ジュノ監督自身は本作を「ジャンル映画」だと言っています。「貧困」という社会問題を扱っている本作ですが、あくまで監督の最大の目的は「観客に映画を楽しんでもらうこと」。そのこともあり、エンターテイメントとしても楽しめる一作になったのではなったのですね。 日本人にとって「半地下の家」はあまり馴染みがないと思いますが、韓国ではあまり珍しいものではないんだとか。近年地価が高騰しているソウルでは、大勢の人々が半地下の家に住んでいるそうです。興味のある方は、実際に半地下で暮らしている若者に密着した記事をご覧ください。(BBCニュースのサイトに移動します) 「半地下」を言い換えると「半地上」でもあるんですね。わずかながら1日で日光が入る時間帯もあるわけで、「まだ地上に住んでいるし、社会から孤立しているわけではない」という安心感も若干ながらあるわけです。監督も「半地下というのは、あいまいな境界線にいるようなものです」と言っている通り、「自分たちも一歩間違えると社会から完全に切り離される危険性」という意味も含まれています。 また、半地下の家は中から地上を見ることはできるものの、外からはほとんど見ることができません。貧困層は富裕層のことを常に見上げているけど、富裕層は貧困層のことなど眼中にないということが痛烈に示唆されているんです。富裕層は下を見ることをせず、常に上へ、そして”外”へ…ということなのでしょうか。 そして、物語後半に出てくる「第三の家族」の存在です。パク家の地下に住んでいるグンセは社会から完全に遮断されており、彼らの存在はキム家が貧しい家族だと思っていた観客に大きな衝撃を与えます。「半地下」の下にはさらに貧困である「完地下」に住む人がいたという恐怖と、未来はああなるかもしれないという危機感を表しているのです。 しかもその後は残念ながら、半地下の家族VS完地下の家族の戦いになり、富裕層の家族のことは忘れたかのように争い始めますよね。このことで、キム家とは程遠い状況にいると考えていた観客もその”半地下の家族”に感情移入し始め、心の中に潜んでいる危機感や恐怖感を出し始めるのです。ポン・ジュノ監督が脚本を描き始めた時にはこの構想は頭になかったらしいですよ。 本作では様々なメタファーが含まれています。その中でも「水石」「インディアン」「ダソンが描いた絵」「北朝鮮」のメタファーを解説していきます! 水石はミニョクがギウの家族に譲ったものとして印象的に描かれています。監督はこの水石を「多義的なもの」と言っていますが、それに続いて「ギウが持つミニョクに対しての執着、変な強迫観念の表れ」と表現しています。ミニョクがギウの家に訪れた際、酔っ払って放尿している男に対して「しっかりしろ」と喝を入れ、その姿を見たギウは彼を真似て外に出て、水をかけるというシーンがありますよね。そこからもギウがミニョクに対して憧れている姿が見て取れます。 名門大学に通っているという時点でミニョクに憧れがあることは確かですし、ダヘと恋愛関係になったり、洪水時に階段を下りて言った言葉は「ミニョクならどうするだろう」でしたよね。そのことから、ギウにとってのミニョクの存在が水石という形になったと考えるとわかりやすいです。 また、水石自体は芸術的であり、ギテクたちの身の丈に合わない異質なもの。チュンスクがつい「食べ物が良かった」と言ってしまったように、彼らにとって石はなんの価値もないんです。それでもギウは、家庭教師の面接に行く前にこの石を丁寧に磨いたり、避難所には唯一水石を持って行ったりと、彼はこの石に「希望」を持っています。 しかしその後ギウは「自分でどうにかする」と言って、水石を手に隠された地下室へ入っていき、それを落として最終的に水石で殴られてしまいます。これも非常に皮肉で、上に上がろうとしても挫折してしまうことを意味しているかのようですね。 ドンイクの息子、ダソンがボーイスカウトに行ってからハマっているというインディアンも、映画の中で印象的に登場します。アメリカで生活していた先住民(インディアン)は、その後白人たちに侵略された後に領土を奪われてしまった歴史があることから、侵略された者としての歴史があります。 ポン・ジュノ監督はインタビュー内で、「お金持ちは助けなしで家事も教育も犬の世話もできない、結局彼らも寄生している」と言っていることから推測すると、お金持ちであるパク家自身も「パラサイト」なのかもしれません。この主人の曖昧さと、アメリカの本当の主が移住者なのか、先住民なのかがわからない曖昧さが非常に似通っていると感じます。 映画序盤で登場するこのダソンが描いた絵、どこか不気味な感じがしませんか?気づいた方もいるかもしれませんが、この絵はパク家の地下に住んでいるグンセと非常に似ています。浅黒い肌の色や印象的な唇、大きな目がそっくりですよね。しかもその右には彼が地上に上がってくる矢印まで描いてあるんです。気が付いた時は血の気が引きました… まるで指名手配犯のポスターのようですよね。 また、ダソンは映画の始めからずっとインディアンの格好をしています。彼は感度の高い男児で、モーリス信号に気が付いたのも彼だけですし、地下に住んでいるグンセの姿を見たことがあるのも、キム一家に共通する匂いに気が付いたのもダソンだけです。彼がボーイスカウトに行ったり、弓矢を飛ばしたり、モーリス信号を覚えていたり、このような絵を描いたということはある意味、家族を守ろうとしていることの比喩なのかもしれません。 韓国映画やドラマには、北朝鮮ネタがいくつか登場します。この映画ではわずかですが、気が付いた方がいたらかなり鋭いのではないでしょうか。 前の家政婦ムングァンがキム家の動画を撮影し、彼らを「それ以上何かしたら動画の送信ボタンを押すぞ」と言っている場面は、北朝鮮がミサイルを発射するぞと言っているメタファーのようで、思わずクスッとしてします。 また、地下に住んでいるグンセは異常なほどにドンイクを崇拝していますよね。しかも彼は地下に住んでいる状況に満足し、「ここで生まれてここで結婚したかのようだ」と言っています。外の世界を知らずに現状に満足している、北朝鮮の社会制度を皮肉っているみたいですよね。 また、ドンイクが階段を上がる時に、死に物狂いで電気をつけている姿は狂気のようです。彼の忠誠心自体は北朝鮮のシステムを皮肉っているメタファーとも捉えられます。このように細部までこだわりが強いメタファーが、映画の”ブラックユーモア”をより魅力的にしているのですね。 本作の撮影は、スタジオ内に映画の世界を作り上げる「セット撮影」という方法が採用されました。この映画のプロダクションデザイナーを務めたのは、ベテランのイ・ハジュンで、アカデミー賞の美術賞にもノミネートされました。ポン・ジュノ監督とは『オクジャ』以来2度目のタッグです。 全てがセット撮影というわけではないので、実在するロケ地も登場します。また、ポン・ジュノ監督作である「グエムル―漢江の怪物―」「殺人の追憶」「オクジャ(okja)」「ほえる犬は噛まない」の撮影スポットを巡るファンツアーが計画されているんだとか。 『パラサイト』のロケ地を巡るファンも増えているそうなので、その中でも人気の3つのスポットをネタバレなしで紹介します! 大洪水の後にギテク・ギウ・ギジョンの3人が下った階段が、ソウルの景福宮駅から徒歩30分ほどの場所にあります。映画内でも上記の画像と同じアングルで登場するので、印象的ですよね! 住所:ソウル特別市 鍾路区 付岩洞 278-1 (서울특별시 종로구 부암동 278-1) ミニョクとギウが一緒に訪れたり、ギジョンが桃を買ったりと、何回か登場するこのスーパー。阿峴駅と忠正路駅の間にある、個人経営の小さなスーパーです。しかしこのスーパー周辺は再開発指定区域になっているため、数年後には全て取り壊されてしまうことが決まっています。行くなら今ですね! また、スーパー付近の商店街にある階段も、ロケ地に使われています。 キム家が住む半地下の家の先にあるこの階段は、劇中何度か登場します。ファンの間では、スーパーとこの階段をセットで訪れる人が多いんだとか! 住所:ソウル特別市 麻浦区 阿峴洞 707 家族全員が就職に成功した後、キム家4人が訪れるピザ屋です。昔ながらの小さな個人経営のお店で、店内は2席しかないんだとか。でも映画公開後は、ピザをテイクアウトするファンたちが増えたらしいですよ♪ 入り口には『パラサイト』の撮影で使われたという垂れ幕が大きく下がっています。劇中には「ピザ時代」という店名で登場します! 住所:ソウル特別市 銅雀区 鷺梁津洞 297-1 映画『パラサイト』が、外国語の映画で初めてアカデミー賞の作品賞を獲得したのは、記憶に新しいことでしょう。映画界に衝撃を与えた本作は、韓国内外で評価されている証として数々の賞を獲得しています! 今回は、アカデミー賞とその他主な賞で分けて紹介します。 ※2022年10月時点 『パラサイト』が、アカデミー賞以外の主要な映画祭で獲得した賞を一覧で紹介します! 映画界で前代未聞の経歴を残している映画『パラサイト 半地下の家族』。 本作のあらすじとネタバレ、キャスト、そして評価される理由と解説を紹介しました!もう一度見たくなった方はぜひ映画館に向かいましょう♪ 今後もロケ地や最新情報を更新しますので、ぜひチェックしてください!世界中で大ヒット『パラサイト 半地下の家族』について
10秒で分かる『パラサイト 半地下の家族』の簡単あらすじ
『パラサイト 半地下の家族』のネタバレあらすじ
あらすじ①半地下に住む全員失業中のキム一家
あらすじ②身分を隠し、一家で「寄生」計画に成功
出典:IMDbあらすじ③予定外の帰宅と予定外の”パラサイト”
出典:IMDb
出典:IMDbあらすじ④グンセの復讐で、予想外の結末に
出典:IMDbあらすじ⑤モールス信号で知る父の在処
『パラサイト 半地下の家族』のキャスト
ポン・ジュノ/監督・脚本
出典:IMDbキム・ギテク/ソン・ガンホ
キム・ギウ/チェ・ウシク
出典:IMDbキム・ギジョン/パク・ソダム
キム・チュンスク/チャン・へジン
出典:IMDbパク・ドンイク/イ・ソンギュン
出典:IMDbパク・ヨンギョ/チョ・ヨジョン
出典:IMDbパク・ダヘ/チョン・ジソ
出典:IMDbパク・ダソン/チョン・ヒョンジュン
出典:IMDbムングァン/イ・ジョンウン
ミニョク/パク・ソジュン
出典:IMDb『パラサイト 半地下の家族』が評価される4つの理由
1.「格差社会」を描く圧倒的な演出力
出典:IMDb2.ジャンル1つに囚われないストーリー
3.最大のテーマ「半地下の家」
4.メタファーと伏線がすごい
水石
インディアン
出典:IMDbダソンの絵
北朝鮮
『パラサイト』で登場するロケ地
紫霞門トンネル
出典:コネスト公式サイトテジスーパー&階段
出典:コネスト公式サイト
出典:コネスト公式サイトスカイピザ
出典:コネスト公式サイト【2022年最新】『パラサイト』の受賞歴
『パラサイト』2020年アカデミー賞の受賞/ノミネート歴
受賞
作品賞
監督賞
ポン・ジュノ
国際映画賞
脚本賞
ノミネート
編集賞
ヤン・ジンモー
美術賞
リー・ハジュン
『パラサイト』その他主な受賞歴一覧
賞
受賞した部門
受賞者
ロサンゼルス
映画批評家協会賞作品賞
監督賞
ポン・ジュノ
助演男優賞
ソン・ガンホ
シカゴ
映画批評家協会賞作品賞
監督賞
ポン・ジュノ
脚本賞
ポン・ジュノ
シアトル
映画批評家協会賞作品賞
監督賞
ポン・ジュノ
脚本賞
ポン・ジュノ
アンサンブル・キャスト賞
ワシントン
映画批評家協会賞作品賞
監督賞
ポン・ジュノ
ゴールデングローブ賞
外国語映画賞
カンヌ国際映画祭
作品賞(パルム・ドール)
まとめ