映画『マシニスト』のあらすじネタバレ|伏線を徹底解説
痛ましいほど痩せ細ったクリスチャン・ベールのビジュアルが衝撃の映画『マシニスト』。原因不明の不眠症に悩まされる主人公に降りかかる、奇妙な出来事を描いたスリラー映画です。
まるでホラー映画のような雰囲気に、恐怖心を煽る演出が何よりの魅力。気づけば『マシニスト』の世界へと誘われ、アッと言う間にエンディングを迎えていることでしょう。あちこちに張られた伏線に注目しながら鑑賞するのも楽しいですね!
激しく複雑難解なストーリーではありませんので、気軽に作品を楽しみたい時にもぴったり。スリラー初心者にもおすすめできる作品ですよ。
本記事はネタバレを含みますので未鑑賞の方はご注意ください。主人公に隠された謎、真実へ共に迫っていきましょう!
目次
映画『マシニスト』について
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2004年に公開されたスリラー映画『マシニスト』。1年間の不眠症から体が痩せ細り、痛々しい見た目をしている主人公のトレバー。
役作りのためにトレバー役のクリスチャン・ベールは30キロの減量を成功させました。思わず観ていて心配になるほどガリガリなボディーをしたベールのプロ根性には脱帽されられるばかりです。体重を減らすためにツナ缶とリンゴのみで生活し、183センチ55キロ(!)まで絞ったのだとか……。
本作は原作小説はなく、脚本家・スコット・コーサーによるオリジナルストーリー。監督を務めるのはブラッド・アンダーソン。『ザ・コール 緊急通報指令室』や『フラクチャード』など、主にホラーやスリラーを得意とする人物です。
本作もホラー作品のような演出で観客を魅了。緊張感溢れる画には誰もが釘付けになってしまうことでしょう。
10秒で分かる!映画『マシニスト』の簡単なあらすじ
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1年間もの間不眠症に悩まされているトレバー。(クリスチャン・ベール)体はガリガリに痩せ細り、誰が見ても危険なレベルの体型です。
眠れず、仕事を終えたあとは娼婦のスティーヴィー(ジェニファー・ジェイソン・リー)や空港のカフェで働くマリア(アイタナ・サンチェス=ギヨン)へ会いに行く日々。彼女達にも体型のことを言われてしまうほど、トレバーはやつれる一方でした。
ある日職場の近くでサングラスをかけた謎の男・アイバンと出会います。彼は逮捕された溶接工の代わりに入ったメンバーだそう。
トレバーも最初は気に留めていなかったものの、仕事中アイバンの不審なしぐさに気を取られてしまいました。そして彼の身には次から次へと、奇妙なことが起こり始めるのです……。
映画『マシニスト』のネタバレあらすじ
【あらすじ①】眠れない男
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工場で働くトレバー(クリスチャン・ベール)は1年もの間不眠症に悩まされていた。体はやせ細り、床に伏そうとしても眠れぬ日々が続く。
仕事が終わると娼婦のスティーヴィー(ジェニファー・ジェイソン・リー)に会い、車を飛ばして遠方にある空港のカフェへと向かう。店員のマリアと他愛もない会話をし、帰宅して朝を迎える生活を送っていた。
眠気には襲われるものの、眠ろうとすると些細なことが気になって目が覚めてしまう。周囲からは痩せ細った体を指摘され、心配され、挙句の果てには薬物乱用を疑われる始末。
するとある日、車の中でウトウトしていると赤い車の乗った見知らぬ男が声をかけてきた。
彼の名はアイバン(ジョン・シャリアン)。溶接工として働いていたレイノルズが逮捕されたらしく、代わりにメンバー入りをしたそうだ。お互いに自己紹介を終え、アイバンはそのまま職場へと戻る。
【あらすじ②】無残な事故、その原因は……
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仕事に着手していると、出会ったばかりのアイバンが働いていた。2人は偶然にも目が合い、彼は親指でクビを切る意味深なジェスチャーを送る。
そのことにすっかり気を取られたトレバーは、平常心を失って機械のボタンを肘で押してしまう。すると仲間の左腕が引き込まれ、切断事故が発生。職場は騒然となってしまった。そして肝心のアイバンの姿はなく、動揺を隠しきれないトレバー。
この日はそのまま家へと帰宅。トレバーは何とも言えぬ気持ちのままでいると、冷蔵庫に見覚えのないメモ書きを見つけてしまう。何のことかさっぱり分からず、家に空き巣が入った形跡もない。
そして翌日は切断事故の件で詰められてしまった。意図的に行ったのではなく、あれはあくまで事故。「アイバンに気を取られて」と説明すると、どうやら“アイバン”なんて男は職場にいないと言われてしまう。
逮捕されたはずのレイノルズは普通に働いており、全員がトレバーの正気を疑い始めていた。
【あらすじ③】居場所を失くしつつあるトレバー
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切断事故からトレバーの居場所がなくなり、同僚から「みんなお前と働きたくないんだ」と言われてしまう。
アイバンの登場から何かがおかしい、そう思った矢先に彼の姿が見える。2人でバーへ行くことになったが、結局正体は分からずじまい。だがレイノルズとアイバンの2ショット写真を発見してしまい、トレバーはここがグルだと思い込む。
けれどもレイノルズへ電話をかけてもまともに取り合ってもらえない。徐々に疑心が大きくなっていると、またも冷蔵庫には謎のメモが。「____ER」とあるが、前部分に入る文字は一切浮かんでこなかった。
行き場をなくし始めた頃、唯一の理解者・マリアとその息子のニコラス(マシュー・ロメロ)3人で遊園地に行くことに。ニコラスとお化け屋敷に入ると、急遽彼がてんかんを起こしてしまう。楽しい1日になるはずが、この日はこれでおしまい。マリアと共に帰宅した。
だが一つ分かったことがある。「____ER」の前に入るのは“Moth(er)”。ニコラスが「ママ、ありがとう」と書いた手紙がヒントとなったのだ。
けれどもなぜメモが家にあるのか?その疑問が解消されることはなく……。
【あらすじ④】膨らんだ疑心暗鬼
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左腕を失くした同僚・ミラー(マイケル・アイアンサイド)が出勤、詫びを入れるが「恨んでなんかいない」と返される。
しかしその直後、同僚と全く同じ目に遭いそうになるトレバー。疑心暗鬼は加速し職場で大暴走、とうとうクビを通達されてしまった。
仕事を失くした彼は公共料金も払えなくなり、電気が止まる。そして例のメモは「IL・ER」に変わり、ミラーの存在が頭をちらつき会いに行くことに。
ミラーに食ってかかっても相手にされず、トレバーは彼の家を追い出された。すると偶然にもまたアイバンを見つけ、正体を突き止めるべく車の番号を控える。
警察でナンバーを照合すると、なんとあの赤い車はトレバーが廃車にしたもの(=彼のもの)だと告げられた。意味が分からないままスティーヴィーの元へ向かうと、彼女の家にはアイバンの写真が飾られており……。
【あらすじ⑤】トレバーの罪
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「お前までアイバンとグルなのか!」と大激怒するトレバー。娼婦と寝たから自身が不幸な目に遭っていると考え、マリアの元へ。しかし空港のカフェにはマリアなんて存在はいないことを告げられる。
そこで再びアイバンを見つけ、彼はトレバーの家にニコラスを連れて入って行った。揉み合いになる2人だが「お前はオレだ」とポツリ。そしてトレバーは全てを思い出す――。
そう、過去のトレバーはニコラスに似た幼い少年をひき逃げしていた。その時駆け寄ってきた母親は、マリアそっくりの女性であった。
アイバンも、ニコラスもマリアなんて存在もいない。自分の犯した罪から逃れ続け、不眠と幻覚に悩まされてトいた結果様々な不幸を引き起こしていたということ。
罪を認めたトレバーはみずから出所。そしてようやく1年ぶりの眠りにつくことができたのだ……。
映画『マシニスト』のキャスト
トレバー/クリスチャン・ベール
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骸骨のような見た目に真っ黒なクマ、生気を感じられないオーラを纏うトレバー。1年間も眠っていないのですから、当然体はボロボロ。誰もが心配するのは当たり前のことでしょう。
不眠症の原因は自身がひき逃げをしたことにあり、罪の意識から心が苦しくなっていたのです。忘れるために、自己防衛のために様々な幻想を創り上げてしまった悲しきキャラクターですね。
主人公のトレバーを演じるのはクリスチャン・ベール。役作りのために体重や見た目をコントロールする姿勢はとても有名で、激太りと激ヤセ時はまるで別人!プロ根性がキラリと光るスーパースターです。
アイバン/ジョン・シャリアン
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時折トレバーの前に現れる男、アイバン。作中では謎のベールに包まれた恐ろしきキャラクターといった雰囲気でしたが……実はアイバンなんて人物はどこにもいなかったのです。
罪を犯したトレバーが現実逃避をしたために、どこかで創り上げられてしまった存在なのでしょう。それにしてもニヤリと笑った怪しい笑みが忘れられません。
アイバンを演じるのはジョン・シャリアン。1992年から活躍する俳優であり、映画をメインに出演しています。
『マシニスト』の伏線を徹底解説!
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ラストシーンを迎えると全ての謎が明かされる『マシニスト』。途中の伏線やメモ書きの意味には気付けましたか?
ストーリーに散りばめられた不可思議なヒントたちを振り返ってみましょう。
マリアとニコラス
何気なく登場していたカフェの店員・マリアと息子のニコラス。2人は立派な伏線となっているキャラクターで、決してトレバーの知人ではなかったんですね!
というのもラストで解明される通り、トレバーは幼い少年をひき逃げしています。その時に跳ねた少年はニコラス、駆けつけた母親は見事にマリアそっくり。
つまり事故を起こしてしまった後悔から、“2人と距離を縮めることで償いをしている気分”になっていたのでしょう。
マリア、ニコラスという名前もトレバーが勝手につけたもの。現実では跳ねた/逃げられたの関係ですから、親子の名前を知るすべもありません。
洗面所での手洗いシーン
トレバーは毎回トイレに行くたび、潔癖症にしてはやりすぎなほど手を洗っています。しかもハンドソープではなく、ハイターを使用し始めるなどの驚きっぷり。
「不眠症でちょっとヘンになっているのかな」と思いがちですが、この行動は“過去を真っ白にしたい/水に流したい”ことの現れ。
トレバーは罪人ですから、犯した罪を綺麗にするという意味が詰まっているのでしょう。毎回手を洗う際の表情も強張っていて、何か秘密が隠されているニオイがプンプンしますよね……。
アイバンの存在と指
アイバンは無意識のうちにトレバーが創り上げた架空の存在です。実在などはしておらず、アイバン=トレバーであることが終盤で明かされました。
なぜこのような存在が出来上がってしまったのか?トレバーは罪から逃避したい想いが強く、記憶がすっかり飛んでいます。
「ひき逃げの現実を誰かになすりつけたい」、「もう考えたくない」と向き合う気持ちから背を向けた結果、アイバンが登場してしまったのでしょう。
けれどももう1人の存在を創り上げても、彼の罪の意識が消えることはありません。
アイバンの指がおかしくなっていたのも、ミラーの切断事故への罪悪感がしっかりと反映されていたから。「お前はオレだ」の台詞はまさにその通り!ということですね。
血が溢れ出る冷蔵庫
血がたっぷりと溢れている、衝撃のインパクト大な冷蔵庫。まるで遺体が閉じ込められているかのような描写でしたが、実際には魚しか入っていませんでした。
あくまで推測ですが冷蔵庫はトレバーの“記憶の箱”を現わしており、ひき逃げの記憶を消したい=凍らせて閉じ込めたい意味が含まれているのでしょう。
けれども現実からは逃れられません。罪悪感に苛まれると記憶の箱から生を表現する血が流れ出てしまうのです。
トレバーの消したい過去、そこからは逃亡しきれないことを指す冷蔵庫。『マシニスト』ではとても重要なアイテムと言えますね。
深夜に読んでいた『白痴』
ドストエフスキーが執筆した有名な長編小説である『白痴』。トレバーが眠れない夜に読んでいた本も立派な伏線です。
ストーリーはとても長いので割愛しますが、『白痴』の主人公であるイシュキンは精神疾患を抱えています。そして最後は疾患が悪化、記憶も何もかもを失ってしまう……という結末。
まるでトレバーの人物像と重なりますよね。この本をあえて登場させることにより、本作での主人公の姿を現すヒントとなっているのです。
禍々しいお化け屋敷『ルート666』
子供向けとは思えないお化け屋敷、「ルート666」。まさかアトラクション名そのものが伏線になっていたとは驚きましたね!
元々はトレバーが車内にぶら下げていたストラップのネームタグ。車で事故を起こした彼なのだから、この後の惨劇を示唆する十分な要素となっているのです。
アトラクション内は不気味ですが、よ~く見るとトレバーの過去や罪を彷彿させるものばかり。腕がなくなってしまった人形、「速度を落とせ」の標識、そして子供の事故現場。
そしてルート666で向かった出口は「地獄」。つまりどこまでいってもトレバーは罪から逃げられず、「地獄」の道を進んでいるということです。
本作を最後まで鑑賞した後、このシーンを観返すと全てが理解できることでしょう。
映画『マシニスト』の魅力ポイント
出典:IMDb
本作は観れば観るほどクセになる、中毒性ある魅力がいっぱい!二度、三度繰り返して楽しめるサスペンス映画ですよ。
他作品とは差をつける部分は何なのか?それぞれ詳しく紹介していきますね。
ストーリーそのものはシンプル!?飽きさせない演出と展開が◎
『マシニスト』のストーリーを思い返してみてください。よ~く考えると意外にシンプルなもので、そこまで難しい物語ではないんですよね。
「罪を犯した男が過去から逃れるために、幻覚や不眠症に苛まれる話」、と一言でまとめられます(笑)
大筋はちょっぴり単純ですが、あいだあいだの肉付けがとても細やかなもの。
これは現実なのか?夢なのか?はたまたトレバーの虚言なのか?をうまいこと織り交ぜ、観客を惹きつける力が素晴らしいのです!
私たちを良い意味で混乱させるべく、血まみれの冷蔵庫や謎のメモ、恐ろしきアトラクションなどを登場させ、飽きさせない工夫もバッチリ。
気付けばあっという間にラストへ向かっている、テンポのいい展開も流石ですよね。シンプルなストーリーをここまで膨らませ、とても骨のある映画に仕上がっています。
純粋なスティーヴィーに思わずキュン
周囲が様子のおかしなトレバーから離れていく中、唯一彼を信じたのが娼婦のスティーヴィーです。
最初はマリアも良き理解者ポジションでしたが、結局彼女はトレバーの創り出した人物像。心の底から寄り添ってくれていた存在は、間違いなくスティーヴィーでした。
赤い車を追うために自ら跳ねられたり、摩訶不思議な行動を繰り返すトレバーを優しく受け止めたのも彼女。『マシニスト』には様々なキャラクターが登場しますが、スティーヴィーの心だけは本物だったのでしょう。
お金だけではなく、そっと傍にいてくれる姿にはキュン。しかしトレバーの一言で何もかもが台無しになってしまうんですけどね……。
Notホラー映画!ゾクッとする描写に要注目
血だらけの冷蔵庫に、何かが映りそうなバス・ルームの鏡。そしてルート666のアトラクション……。まるでホラー映画のごとく、視聴者の心をゾクリとさせる描写が盛りだくさん。心霊が出てこないと分かっていても、ついつい身構えてしまうほどの怖さがあるんですよね。
これは監督・ブラッド・アンダーソンのテクニックもありますし、クリスチャン・ベールの演技力も関係しているハズ。この2つの要素が組み合わさることでより一層おぞましさを増長させているのです。
まとめ
伏線が多数仕掛けられている『マシニスト』。謎解きをしながら観進めるのも楽しいですし、繰り返し鑑賞するのもオススメです。あえてオチを知ってからストーリーを再確認することで、より作品の味わい深さが増すでしょう。
ストーリーはシンプルながら骨太。内容重視の方でもしっかり満足のいく完成度です。ぜひ『マシニスト』独特の世界観にぜひ触れてみませんか。