【ネタバレ解説】『リトル・マーメイド』アニメ版の良さを上手に継承した実写映画!
『美女と野獣』や『アラジン』など、往年のディズニーアニメーション映画の実写化が進められてきましたが、ついにディズニールネッサンスの節目とも言える『リトル・マーメイド』の実写映画版が登場!
一体どんな内容になっていたのかを今一度振り返っていきましょう。
目次
映画『リトル・マーメイド』とは
『リトル・マーメイド』は2023年6月9日に日本公開された映画です。
もともとはアンデルセン童話の「人魚姫」の童話がベースになっており、このお話をアレンジして長編アニメーションにした『リトル・マーメイド』が1989年に公開。今回はそのアニメーション映画版の内容の実写化に挑んだ映画でした。
監督を務めたのは『シカゴ』(2003)を監督し、『パイレーツ・オブ・カリビアン生命の泉』(2011)や『メリー・ポピンズ リターンズ』(2019)でディズニーともタッグを組んだロブ・マーシャルさん。
ミュージカル映画でもある本作の肝である音楽には、アニメーション映画版にも参加していた巨匠アラン・メンケンさんに加え、『モアナと伝説の海』(2017)や『ミラベルと魔法だらけの家』(2021)のリン=マニュエル・ミランダさんが参加し、以前の作品にはなかった新曲を書き下ろしてくれています。
10秒で分かる!映画『リトル・マーメイド』の簡単なあらすじ
深海の世界の王女・アリエルは、地上の世界に暮らす人間たちに興味津々でした。しかし、父親であり人間たちに強い敵対心を持っているトリトン王からは人間界との接触を強く禁じられていました。
しかし、言いつけを破ってエリック王子の航海の様子を覗いていたアリエルは、彼らの船が嵐によって海難事故に遭う現場に遭遇してしまい、禁じられていたにも関わらずエリック王子を救出してしまいます。
この事件をきっかけにアリエルはエリック王子に対して強い恋心を抱くのですが、トリトン王はアリエルの行動に激怒。父親との仲は決裂してしまいます。
そこへ現れたのが、宮殿を追放された魔女・アースラ。アリエルが望んでいる通り、人魚から人間にしてくれると言うのですが、それには声をアースラに受け渡し、三日語の日没までにエリックとキスを交わすという条件を持ちかけられるのでした……。
映画『リトル・マーメイド』のネタバレあらすじ
映画『リトル・マーメイド』のあらすじを結末に至るまで詳細に紹介します。以下、映画のネタバレが書かれているのでご注意ください。
【あらすじ①】アリエルとエリック王子の遭遇
人間の世界に憧れを持っていた人魚の王女アリエルは、トリトン王のもとへの集まりも忘れて、沈没船の探索をして過ごすなど、その思いを募らせていた。
そんなある日、アリエルは海上の一隻の船を発見する。そこではエリック王子たちが航海を楽しんでいる姿があった。
しかし、その矢先に船は嵐に見舞われてしまい、船内は火の海と化してしまう。果敢に救命を進めるエリック王子だったが、救命艇に乗ることなく、海へと落下してしまう。
その様子を見ていたアリエルは、エリック王子を救出。無事、王子を岸まで届けるのだった。まだ意識が完全には戻っていない中、エリック王子は自身を助けた女性の歌声を聞いていた。
【あらすじ②】アースラの策略
アリエル自身もすっかりエリック王子を意識するようになっていた。
その様子からトリトン王はアリエルが恋をしたのではないかとセバスチャンを問いただしたところ、セバスチャンはうっかり人間を救出した事件をトリトン王に教えてしまうのだった。
激怒したトリトン王はアリエルが大切に集めていた人間の世界のものを次々と破壊してしまい、二度と海を離れることがないよう厳しく叱るのだった。
落ち込むアリエル。独りになった彼女のもとに優しく語りかける声があった。正体は深海の魔女アースラだった。
アリエルを見かねて語りかけてきたというアースラに導かれ、アリエルの歌声を受け渡し、三日後の日没までにエリック王子とキスを交わすという条件で、人間になる魔法をかけてもらうのだった。
【あらすじ③】親交が深まる二人
アリエルの下半身には人間と同じ様な足が生えていた。しかし、アリエルは声を出せなくなっていた。その上、アースラの策略により、キスの条件を忘れてしまっていた。
そんな中、一部始終を見ていたセバスチャンやフランダー、そしてそこに駆けつけたスカットルは、アリエルのサポートにまわるのだった。
漁師に保護されたアリエルは偶然にもエリック王子の宮殿で世話をしてもらうことになる。エリック王子は自分を助けてくれた女性を捜索していたのですが、声が出せなくなったアリエルがその女性であることは気づいていなかった。
しかし、言葉が話せないながら純粋なアリエルの様子にエリック王子は惹かれていき、島の周辺を案内していくうちにアリエルとエリック王子はあっという間に良い雰囲気になり、キスを交わすのも間近という状態となっていた。
【あらすじ④】アースラの妨害
あと一歩でアリエルとエリック王子がキスを交わそうとしたところ、それを覗いていたアースラによって妨害されてしまう。
危機を感じたアースラは次なる妨害に踏み出すのだった。アースラは若い女性に変身し、アリエルから奪い取った歌声を使って、自分こそがエリック王子を救った女性だと騙しに現れたのだった。
アースラの能力により正気ではないエリック王子は、アースラの言われるがまま婚約の話まで受け入れてしまうようになっていた。
ショックを受けるアリエルだったが、偶然アースラの策略を知ったスカットルによって、アリエルたちもアースラの思惑に気づくのだった。
すでにパーティーが開かれる宮殿にて、アリエルやスカットルがアースラを襲撃。ついにアリエルに声が戻り、エリック王子はアリエルこそが探していた女性だと気づいたのだった。
【あらすじ⑤】最終決戦へ
アリエルたちの行動に怒り心頭のアースラはついに正体を現す。アリエルを誘拐したアースラは、アリエルを人質にトリトン王に取引を要求。なす術のないトリトン王は、矛を受け渡して、アースラによって殺されてしまった。
窮地を迎えたアリエルだったが、そこへエリック王子も応戦に現れる。激怒するアースラはトリトン王の力を使い巨大化し、アリエルやエリック王子を渦潮に飲み込もうとする。
今にもエリック王子が渦に飲み込まれそうになったところで、アリエルの機転により難破船をアースラにぶつけることに成功。見事アースラを倒し、トリトン王を復活させることに成功した。
無事、平穏が戻った海。今なお人間に焦がれるアリエルの様子を見たトリトン王は、自らアリエルを人間に変えてあげることを決意した。
人間の姿となったアリエルはついにエリック王子と結ばれ、人間や人魚たちが見守る中、二人は新たな航海へと旅立って行くのだった。
映画『リトル・マーメイド』の登場人物・キャスト
アリエル / ハリー・ベイリー
『リトル・マーメイド』の主人公が人魚のアリエルです。
海の王であるトリトンの末娘である人魚“姫”。性格は明るく活発で好奇心旺盛で、地上に住む人間に興味津々。あまりにもマイペースすぎて、家族の集まりも忘れて沈没船探索に夢中になってしまうなんてことも。
世界の誰よりも美しい声と夢を追い求める強い意志を持っていることから、アースラに目をつけられることになってしまいました。
アリエル役を務めたのはハリー・ベイリーさん。10代で早くも自身のYouTubeチャンネルで歌唱力を発揮しており、ドラマなどへの出演はあったにしろ、本作で突如映画の主演に大抜擢されました。
日本語吹替版では、ミュージカルなど舞台俳優としても活躍していた豊原江理佳さんが声・歌唱を担当しています。
エリック王子 / ジョナ・ハウアー=キング
アリエルが思いを寄せる男性がエリック王子です。
勇敢で優しく家臣からも慕われている王子で、その好奇心旺盛さから王子でありながらも自ら船に乗り込み、貿易に臨む姿が描かれます。
そんな船旅の途中で嵐に遭遇し、船が難破してしまうのですが、溺れかけたところをアリエルに助けられました。その際に聞いた歌声を頼りに自分を助けてくれた女性を懸命に探すことになります。
愛犬はオールド・イングリッシュ・シープドックのマックスです。
エリック王子を演じたのは俳優のジョナ・ハウアー=キングさん。映画作品への出演はあまり多くはないものの、映画『ベラのワンダフル・ホーム』(2019)では主演を務めています。
日本語吹替版では、ミュージカルなど舞台俳優で活躍する他、声優やドラマ出演など多岐に渡って活躍する海宝直人さんが声・歌唱を担当しています。
アースラ / メリッサ・マッカーシー
『リトル・マーメイド』におけるヴィランがアースラです。
かつては王宮で暮らしていたようですが、トリトン王に追放されてしまい、トリトン王への復讐の機会と王座を狙っています。
性格はずる賢く執念深い性格をしており、アリエルとの取引の際には、こっそりと契約の条件を忘れてしまうように仕組んでいたり、アリエルとエリック王子が良い雰囲気になりかけた際にはアリエルの歌声を利用して、自ら妨害に出てきました。
魔女でもあり、アリエルを人間にするきっかけを最初に与えたのもアースラでした。
また双子のウツボを従えており、うっかり攻撃して殺してしまった際には大きなショックの声をあげるなど、大事にしていたようです。
アースラ役を務めたのは、俳優のメリッサ・マッカーシーさん。『チャーリーズ・エンジェル』や『ゴーストバスターズ』(2016)など多くの作品に出演しています。
日本語吹替版では、舞台女優であり歌手活動も行なっている浦嶋りんこさんが声・歌唱を担当しています。
トリトン王 / ハビエル・バルデム
アリエルの父として登場したのがトリトン王です。
海の王であり、手に持っている矛は強大なパワーを携えており、その力をもって海底王国を統治しています。
人間を敵対視していることから王国の民が海から出ることを禁止しており、人間の世界に興味を持つアリエルに対しても強い怒りを表します。
一方で娘としてアリエルのことは大切に思っており、アースラによってアリエルが人質となった際には自らの王座と命を犠牲にするほどでした。
トリトン王役を務めたのは俳優のハビエル・バルデムさん。これまでにも『007/スカイフォール』(2012)、『パイレーツ・オブ・カリビアン最後の海賊』(2017)、『DUNEデューン砂の惑星』(2021)など大作映画にも多数出演しています。
日本語吹替版では声優の大塚明夫さんが声を担当しています。『メタルギアソリッド』のソリッド・スネーク役や『ブラック・ジャック』のブラックジャック役など数多くのアニメーション作品に参加しています。
セバスチャン / ダヴィード・ディグス
トリトン王に仕える執事長がカニのセバスチャンです。
真面目で責任感が強い性格で、その性格からかトリトン王からはアリエルのお目付役を任されます。しかしアリエルの自由奔放ぶりには振り回されっぱなしで本人はアリエルのお世話には懲りているよう。
ただアリエルが声を失って人間世界に訪れた際には、率先してアリエルのフォローに回るなど面倒見は良いです。
セバスチャンの声を担当したのは、俳優のダビード・ディグスさん。『ブラインドスポッティング』(2019)や『ハミルトン』(2020)などに出演しており、『ソウルフル・ワールド』では先行して吹替も担当していました。
日本語吹替版では声優の木村昴さんが声を担当しています。『ドラえもん』のジャイアン役などで知られるほか子供向け番組の『おはスタ』のMCを務めるなど多岐にわたる分野で活躍しています。
フランダー / ジェイコブ・トレンブレイ
アリエルの幼馴染であり親友の魚がフランダーです。
アリエルが、禁止されている人間界への憧れを話したり、悩みを打ち明けたりすることが唯一できるほどの存在で、アリエルに振り回されながらもいつも行動を共にしています。臆病で怖がりな性格で、その様子はサメと遭遇した場面でよくわかります。
フランダーの声を担当したのは、俳優のジェイコブ・トレンブレイさん。『ルーム』(2015)や『ワンダー 君は太陽』(2017)などまだ幼いながらも多数の映画に出演しています。
日本語吹替版では俳優や声優などで活躍する野地祐翔さんが声を担当しています。まだ幼いながらも『シャン・チー/テン・リングスの伝説』では幼い頃のシャン・チーの吹替などを務めていました。
スカットル / オークワフィナ
アリエルとも仲の良いカツオドリがスカットルです。
海と陸を往き来出来ることから情報通を気取っており、アリエルが見つけた人間界のアイテムについて、間違った情報を教えてしまうことも。陽気で騒がしく目立ちたがり屋な一方、アリエルが人間になろうとする際には率先して協力してくれました。
スカットルの声を担当したのは俳優のオークワフィナさん。『フェアウェル』(2020)など多くの映画に出演する他、『ラーヤと龍の王国』(2021)や『バッドガイズ』(2022)などアニメーション作品の吹替も多数担当してきました。
日本語吹替版では声優の高乃麗さんが声を担当しています。『グランダー武蔵』シリーズの風間武蔵役や『サクラ大戦』シリーズのマリア・タチバナ役などで知られています。
アニメーション版とはこんなところが違った!
今回の実写化に関しては、その多くがアニメーション映画版に登場した演出などを引用しています。人気の楽曲はもちろんのこと、アースラの巨大化まで再現されていたのにはびっくりでした。
しかしその一方で、実写版独自のアレンジも加わっていました。
キャラクターにアレンジが!
キャラクター設定にはいくつか違いがあります。
中でも顕著なのは、公開前から話題になっていた主人公のアリエルを黒人俳優が演じている点です。アニメーション映画版の肌の色のイメージからはギャップを感じる大胆なキャスティングに賛否の声が上がったことも報じられています。
歌唱力や演技力の評価、さらには作品の再解釈のタイミングであることを踏まえると、人魚というそもそもの“人種”という設定が曖昧なキャラクターのアリエルだからこそ、時勢なども踏まえて挑戦しがいのあるキャスティングだったのではないでしょうか。
また、そのほかにもおじさんの様なキャラクターだったスカットルも、女性キャラクターになっていたりと意外なアレンジが加わっています。実は種族自体も変わっており、アニメーション版ではカモメという設定だったのですが、今作ではシロカツオドリへと変更されています。
シロカツオドリになったことで、水中にまで飛び込んで魚を捕食するという特徴を活かして、水中でアリエルたちと会話を交わすシーンなどが追加されました。
作中に登場する楽曲にも新曲が登場!
主題歌である『アンダー・ザ・シー』は、かつてアカデミー賞歌曲賞を受賞していたりと、ミュージカル映画としてのブランドも築いていた『リトル・マーメイド』。そんな『リトル・マーメイド』の実写化ということで今回は新曲も追加されています。
例えばアニメーション映画版では歌唱シーンがなかったエリックにも、歌唱シーンが登場。新曲「まだ見ぬ世界へ」では、彼の海やアリエルに魅了されている気持ちが赤裸々に描かれます。
また、アリエルが陸地に上陸した際に登場する新曲「何もかも初めて」では見たことのない地上の人々の営みに驚く様子と、声を失っているアリエルが大胆にも心の中で歌っている切ない様子が描かれる意外な演出の曲となっています。
さらにはスカットルの曲として新曲「スカットル・スクープ!!」も登場。早口の“ラップソング”のようにもなっており、今作り直したからこそ登場した新曲とも言えるでしょう。
意外な変更シーンも!アニメーション映画から削除・変更された場面たち
多くのシーンがアニメーション版から実写化を果たしましたが、中には割愛されてしまったシーンもありました。
例えば、アニメーション映画版では印象的だったセバスチャンを調理しようとするシェフの対決はバッサリとカットされていました。コミカルで人気の高いやり取りではあったものの、アリエルの物語とは関係のないことからか今回の実写映画では、このシェフにあたる役回りは未登場となりました。
割愛ではなく変更が加わったシーンでは、エリック王子がアリエルの名前を知るくだりが、今回の実写版では変更されています。アニメーション映画版では、セバスチャンがエリック王子に耳打ちするというシンプルな方法でアリエルの名前を知ったのですが、今回の実写版では星座の牡羊座を意味する“アリエス”という言葉を頼りに、アリエル自身が教えるという印象的なシーンに変更されていました。
いずれも実写化してしまうとあまりにも現実的ではなさそうな演出が変更となっている印象がありますが、アリエルの名前を知るシーンはよりエリック王子との仲が深まるように感じられるロマンチックなアレンジとなっていました。
ロマンチックな『リトル・マーメイド』。ハートフルで教訓に富んだ名言も特徴的です! アニメ版の名言集を併せて読めば、実写版も一味違った楽しみ方ができること間違いなしです!
【ディズニー映画】純真なプリンセス「アリエル」の心に響く名言特集!まとめ
アニメーション映画の演出を多数実写で再現しつつも、再度描き直すからこそできる様々なアレンジが加わった、満足度の高い新作映画となりました。
今一度、アニメーション映画を見直しておさらいしてみると、こんなところも再現していたのか!と発見があるのではないでしょうか。