【厳選】高畑勲監督のおすすめ映画7選!!
高畑勲(たかはたいさお)は、1935年10月29日三重県伊勢市で生まれO型です。父の転勤で引っ越した岡山県で、高畑が9歳の時に空襲に遭い、姉と共に逃げ惑いました。これが人生で一番強烈な体験となりました。
1956年に東京大学仏文科に進学、そこで出会ったジャック・プレヴェールに多大な影響を受けました。後にプレヴェール脚本の「王と鳥」の字幕翻訳を手がけることになりました。卒業後は東映動画に入社し、仕事ぶりを認められ「太陽の王子ホルスの大冒険」の監督に抜擢され、アニメ映画初監督作品となりました!
東映時代からよく菓子パンをパクパク食べていることから「パクさん」と呼ばれていました。
緻密な生活描写や舞台設定などの裏には、リアリズムの追求と表現という作風を貫き通したのです。頭の中は常にいい作品を作ることのみ、そんないい作品を紹介します。
1.太陽の王子ホルスの大冒険
あらすじ
人里離れた海辺で父(横森久)と二人きりで育ったホルス(大方斐紗子)。ある日岩男のモーグ(横内正)の肩に刺さっていた二本の剣を抜き取った。 その剣は太陽の剣と呼ばれ、その名剣を使いこなせる時「太陽の王子」と呼ばれるであろうとモーグは告げた。
父が死んだ後、ホルスは父の最後の言葉どおり、人間の住む北の地へ小熊のコロ(浅井ゆかり)と向かうのであった。それを待ち構えていたのは悪魔グルンワルド(平幹二朗)であった。
ここがすごい!「太陽の王子ホルスの大冒険」高畑勲監督の撮影裏話
・作品に登場するキャラクター1人1人には、担当アニメーターが決まっており、宮崎駿、小田部羊一を始め錚々たる顔ぶれでした。
・「東映まんがパレード」(のちの『東映まんがまつり』)の一本として上映こそされていましたが、見に来る子供たちのお目当てはこの作品ではなく、同時上映のサリーちゃんやウルトラセブンでした。
・3年をかけての総作画枚数は15万枚、 制作費は1億3000万円に及ぶ。これは東映アニメーションのTVシリーズの1話あたりの作画枚数は平均約3000~3500枚と比べるとかなり多いです。
・主人公ホルスが村人達と、悪魔グルンワルドに立ち向かっていく姿に、子供向けの楽しくてわかりやすいアニメ映画からの脱却という監督の思いが映しだされています。
こんなにすごい!編集部イチオシの技ありポイント!
高畑勲長編アニメの初監督作品。これが、中・長編アニメに進出するきっかけとなりました。作り手達の持てる技術と労力を尽くした結果アニメーション映画史に燦然と輝く傑作です。「ホルス」を始め登場人物たちの心理を表情などで細かく表現されており、今なお色あせない作品はファンの間で語り継がれる名作となっています。
また、声優を務めた平幹二朗さん、市原悦子、東野英治郎などレジェンド級の名優の方々の演技は必見ものです!
2.じゃりん子チエ 劇場版
出典:Amazon.com
あらすじ
小学五年生の女の子、竹本チエ(中山千夏)は通天閣の見える街で父テツ(西川のりお)と小鉄(西川きよし)と住んでいる。仕事もせずにバクチと喧嘩三昧のテツに代わり、家業のホルモン焼き屋を一人で切り盛りしている。近所にはテツより強いおバア(京唄子)と気の弱いおジイ(鳳啓助)住んでいる。チエの1番の楽しみは、家出中の母ヨシ江(三林京子)と秘密で会うことだが、チエを溺愛してるテツにとっては全然面白くない。
ある日、テツのバクチの取り立てにき来た遊興倶楽部の社長(芦屋雁之助)は、愛猫アントニオ(横山やすし)に小鉄との勝負をけしかけさせたのだが、あっさりと小鉄が勝つ。その後アントニオは死んでしまう。愛猫の死に落ちこみ、カタギになった社長はお好み焼き屋を開業した。そして、テツはそこで用心棒として雇われることになった。そんなある日、テツはチエとヨシ江が会っているのを目撃して・・・。
大阪の下町がアツい!「じゃりン子チエ劇場版」高畑勲監督の撮影裏話
・高畑勲でなく、竹本テツからとった別名「武元哲」で演出するなど、高畑自身この作品を大変に気に入っていたことがわかります。
・作品監督を受けるにあたって、大阪弁を自然にしゃべられる声優をという条件に出し、西川のりおを始め関西出身の俳優や吉本興業所属のお笑いタレントのメンバーが誕生しました。
・劇中チエとヨシ江が映画を観に行くシーンでは、同じ東宝作品の「怪獣島の決戦 ゴジラの息子」の映像が、チエの同級生には不二家のペコちゃんが紛れ込んでます。
チエちゃんがかっこいい!編集部イチオシの技ありポイント!
大阪下町を舞台にした人情喜劇アニメと言えば「じゃりン子チエ」!そしてテツといえば西川のりお!この見事なキャスティング、高畑監督の才能ですね。「うちは日本一不幸な少女や」が口ぐせのチエの、常に逆境に負けず、間違っている者に立ち向かっていく姿には実に爽快です。笑いあり、涙ありの、令和の時代に是非見てほしい作品です。
3.火垂るの墓
出典:スタジオジブリ公式サイト
あらすじ
昭和20年6月、神戸に空襲警報が鳴り響いた。14歳の清太(辰巳努)は、心臓の悪い母(志乃原良子)を避難させたあと、妹の節子(白石綾乃)をおんぶして、火の海の中を何とか逃げ延びて避難所の学校へ。清太はそこで変わり果てた母と対面する。節子には母が死んだこと言い出せないまま、二人は西宮の遠い親戚宅に引き取られることになった。
清太が自宅の焼け跡から掘り出してきた食料などをリヤカーで運ぶと、叔母(山口朱美)はおお喜びで清太と節子を歓迎するが、次第に2人への風当たりが強くなる。我慢の限界を超えた清太たちは、叔母の家を出て防空壕に節子と2人で暮らす決意をするのだが。
こんな事があった!「火垂るの墓」高畑勲監督の撮影裏話
・原画スタッフに、エヴァンゲリオンの生みの親である庵野秀明が参加していました。依頼を受けた時のやり取りが、「トトロ」と「火垂るの墓」どっちをやりたい?と聞かれ選んだのが「火垂るの墓」だったそうです。
・作品を作る前、高畑自身の空襲の経験が蘇った、いわさきちひろの絵本「戦火のなかの子どもたち」を戦争経験のないスタッフに見せて想像力を高めさせた。
・幽霊の清太と節子が出るシーンでは画面が赤くなり、これは記憶を何度も繰り返し見つめていることを意味し、阿修羅の赤を演出しています。
・制作が間に合わず、作品未完成という前代未聞の公開となりました。未完成部分は清太が畑泥棒するシーンでして、色のついてない線画だけの状態でした。公開後すぐに差し替えられ問題になることはなかったのですが、高畑はこの後アニメ演出家廃業を決意しました。
表現がすごい!編集部イチオシのウルウルポイント!
この作品では、今までのアニメにはない感情を体験することになります。戦争が人々に与えた影響を細やかな描写でよりリアルに表現しました。さらに、清太と節子の声を担当した辰巳努、白石綾乃が見事に演じています。兄弟が気遣う「蛍」のような可憐で切ない姿を演じきり見ている人を引き込み、映画を見終わった後もなお二人の声が聴こえてくるようです。
4.おもひでぽろぽろ
出典:スタジオジブリ公式サイト
あらすじ
1982年の夏。東京でOLをしている岡島タエ子(今井美樹)27歳は、勤務先で10日間の休暇をとり、長姉ナナ子(山下容莉枝)の嫁ぎ先の山形県高瀬へ泊りにいくことになった。
山形へ向かう夜行列車の中で、小学5年生の自分を思い出していると、突然タエ子の前に小学5年生のタエ子(本名陽子)が現れ、幼い頃の自分を連れて、山形に降り立った。2歳年下の元サラリーマンで今は有機農業を営んでる青年トシオ(柳葉敏郎)と出会う。一緒に農作業を手伝ううちに、二人の距離は少しずつ近づき始めた。そして、タエ子は次第に農家の暮らしに強く魅力を感じるようになった。
ここがすごい!「おもひでぽろぽろ」高畑勲監督の撮影裏話
・主題歌は「The Rose」作詞:作曲アマンダ・マクブルーム(歌ベット・ミドラー)を高畑勲が訳詞した曲です。
・国内での公開から25年の時を経て、2016年2月アメリカ(北米)で公開されました。この時タエ子の声を「スターウォーズ フォースの覚醒」でヒロインを演じたデイジー・リドリーが務めたことが話題になりました。
・宮崎駿がこの作品は高畑さんでやると言ったほど、アニメ化には難解な原作だったそうです。演出家廃業決意後、3年ぶりに監督として起用された作品です。
タイムスリップ体験!編集部イチオシの懐かしポイント!
全編これでもかというくらいのリアリズム‼︎映画の舞台となった1982年の山形県山形市高瀬地区の様子、仙山線高瀬駅、1966年の当時の様子を徹底リサーチをされて描かれています。特に「ひょっこりひょうたん島」に関しては、偶然にも録音されていたカセットの持ち主を探し出して、再現したというほどの執念です。
タエ子とトシオのキャラクターイメージは声優の今井美樹と柳葉敏郎を意図しての設定ですので、よりイメージしやすく感情移入しやすいのでしょう。
5.平成狸合戦ぽんぽこ
出典:スタジオジブリ公式サイト
あらすじ
昭和40年代、多摩丘陵でタヌキたちは楽しく平和に暮らしていたが、多摩ニュータウン建設により山や森を切り崩しはじめた。多摩のタヌキたちは、会議を開き開発を阻止するために決議した。それは、伝統的変化術である化け学の復興と、四国と佐渡の長老タヌキに助力を乞うこと、5か年計画での人間の研究である。
四国や佐渡への使者に玉三郎(神谷明)と文太が使者に選ばれた。 正吉(野々村真)やおキヨ(石田ゆり子)ら若いタヌキたちは、化け学の特訓を受け、卒業試験の人間界で1000円かせぐという卒業試験に合格したものは、建設工事でお化けの変化で驚かすという抵抗を始めた。
しかし止められたのは一部だけで工事を中止させるまではできなかった。業を煮やした強硬派の権太(泉谷しげる)と慎重派の正吉が対立しているところに、四国から玉三郎が長老ダヌキたちを連れて到着したのだが。
ここがすごい!「平成狸合戦ぽんぽこ」高畑勲監督の撮影裏話
・1994年の邦画・配給収入トップ26億円を記録しました
・当作品はスタジオジブリで、宮崎駿以外の監督による作品の中では唯一の監督原作作品です。
・歴代ジブリ作品の中で、ナレーションの採用や、劇中での実写映像の採用は当作品が初です。
たぬきの世界がすごい!編集部イチオシのぽんぽこポイント!
自分たちの住む場所を、破壊しようとする人間から守るために奮闘するタヌキたちの姿をコミカルに描いたファンタジー・アニメ。ユーモラスな中に人間の傲慢さへの警鐘をも感じさせる作品です。
ナレーションを担当した落語家の三代目古今亭志ん朝、長老狸の鶴亀和尚を担当した人間国宝の五代目柳家小さん、喋りのプロたちが集結しました。また、「妖怪大作戦」のシーンでは多くの隠れジブリキャラである「キキ、トトロ、タエ子、ポルコ・ロッソ」が隠れていますので、ぜひ目を凝らして見てください!
6.「ホーホケキョとなりの山田くん」
出典:スタジオジブリ公式サイト
あらすじ
5人と1匹の山田さん一家のささやかで楽しく繰り広げられる。まつ子の母(荒木雅子)、まつ子(朝丘雪路)、たかし(益岡徹)、長男中学生のぼる(五十畑迅人)、長女小学生のの子(宇野なおみ)、愛犬ポチ。
5人と1匹の山田さん一家はどこにでもいそうでいないおかしな家族。両親はもともと他人同士だったことに驚いてみたり、買物に夢中になって家族全員がのの子を置き忘れたことに気づき大騒ぎしたり。そんな彼らのモットーは、「家族揃って手を携えて生きていけば、”ケ・セラ・セラ” 人生、なるようになる…」
ジブリ初がいっぱい!「ホーホケキョ となりの山田くん」高畑勲監督の撮影裏話
・デジタル彩色で手作業がなくなったが、水彩画で手描き調に仕上げるために、通常の3倍の作画が必要になり、ジブリ作品の中で「かぐや姫の物語」が出来るまでは一番作画枚数が多い作品となりました。
・主題歌「ひとりぼっちはやめた」を始め、「カッコウ」「生き生きBGM」などの挿入曲を矢野顕子が歌っています。彼女の優しいほのぼのとした歌声が映画の内容と合っていて、作品の魅力をさらに引き立てています。
・音響面においては、DTSデジタルサウンドを、ジブリ作品としては初めて採用しました。
・ジブリ初!現実にある商標類(ダイドー、マイルドセブン、クロネコヤマト、月光仮面、ホンダ・ジョルノなど)が劇中に登場します。
ここが楽しい!編集部イチオシのほのぼのポイント!
5年ぶりの新作であるこの作品は、いしいひさいちの新聞マンガが原作で、4コマ漫画を繋ぎ合わせたオリジナルストーリーです。山田一家の悲喜こもごもの日常を楽しく描き、松尾芭蕉や与謝蕪村の俳句を折々に挟んで歳時記としつつ、どこにでもある話しが面白おかしく、そして見た後に心穏やかになるようです。
7.「かぐや姫の物語」
出典:スタジオジブリ公式サイト
あらすじ
あるところに、竹取をしながら暮らしているおじいさん(地井武男)とおばあさん(宮本信子)がいた。おじいさんがいつも通り山へ行くと光り輝くタケノコを見つけた。そのタケノコの中には掌に乗る小さな姫(朝倉あき)が。子供のいない自分たちに天からの贈り物だと思い姫を大事に連れて帰った。
子育てをしたことのないおばあさんは姫へ母乳をあげてもらおうと知り合いに頼もうとするが、なんと自分の母乳が出た。そして二人はこの姫を大事に育てようと決心したのだった。
ここがすごい!「かぐや姫の物語」高畑勲監督の撮影裏話
・キャッチコピーの「姫の犯した罪と罰。」
実は高畑監督はかぐや姫の罪と罰についての考えがあったのですが、あえてそこに触れることなく暗示にしておこうと思っていたのです。しかし、企画側が監督の反対を押し切ってこのキャッチコピーを通してしまった為、チラシの説明文や本編を少し直すことになりました。
・メインの作画は5人いましたが、実際4人しか名前が載ってません。大変クオリティの高いアニメーターでしたが、監督やスタッフが説得するもジブリ作品は目立つという理由で断ったとのことです。
・ラストの姫のお迎えシーンは、「阿弥陀如来の来迎図」がモデルとなっています。その中に音楽隊もちゃんといるのです。音楽を作る時、高畑監督は悩みのないイメージで作りました。
・とにかく、大労力の作画のため、スタッフ陣はもちろんそれをチェックする監督もボロボロになり、一時は完成予想が2020年になると言われたほどです。
作画がすごい!編集部イチオシのポイント!
14年ぶりの監督作品。製作者たちの大労力と苦労を乗り越えて作り上げられた作品。特に日本画のような「かすれ」や「筆のタッチの荒さ」で書いた絵を、動かす事を実現している作画です。かぐや姫が野山を駆け回ったり、翁が烏帽子を入り口にぶつけたりといった、日常的な動作にも繊細なこだわりを感じられます。
また、かぐや姫が走るシーンは迫力があり、可愛い姫がものすごい形相になり、里山まで一瞬でついてしまうという、速さと凄まじさには人間ではない部分を感じ取れます。
まとめ
高畑監督作品のおすすめ映画7作品をご紹介しました。
キャラクターの演技や感情表現を追求し、繊細な日常描写で生活感を表現したことにより、背景とキャラクターの一体化といった革新的な挑戦を貫きとおしました。そして、アニメーションに対する功績は世界からも評価されました。デビューから常にぶれないアニメーションに対する思いは、まさに初志貫徹です。そして高畑監督の全ての作品には発見があります。それを探すのもまた違う映画の楽しみ方ですね。
見るたびにきっと新しい発見が見つかりますよ!