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知る人ぞ知る恋愛哲学映画『ビフォア・サンライズ』のウィットに富んだハッとする名言集

ひとっとび編集長

1995年のアメリカ映画『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)』は恋愛映画の金字塔とも言われ、公開当時からファンの間で話題となった作品です。
また本作以降同じキャストで『ビフォア・サンセット』、『ビフォア・ミッドナイト』と続編が製作され、これらをまとめてビフォア3部作と呼ばれるようになりました。劇中では列車の中で知り合った男女のたった14時間の恋物語が、リアルに描かれています。

この映画の大きな特徴は、ドキュメンタリー映画のようなカメラワークと、登場人物らのリアリティのある会話です。この記事ではそんな『ビフォアサンライズ』の、素晴らしい名言をご紹介します!

目次

あらすじ

出典:映画『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)』予告編

舞台はハンガリーのブダペストからパリへ向かう列車の中。同じ車両に乗り合わせたジェシー(イーサン・ホーク)とセリーヌ(ジュリー・デルピー)は、車両内で聞こえる激しい夫婦喧嘩をきっかけに会話を始める。二人が語らい合う横で、夫婦は列車内に響き渡るような大声でとげとげしく相手を責め続ける。

その後ジェシーはセリーヌを、食堂車へ誘う。セリーヌはフランスの大学に通っており、休暇中ブダペストの祖母に会いに行った帰りであった。ジェシーはアメリカ人であり、ウィーンの空港から帰国する予定である。2人はまだ若く、とりとめのない会話が続く。そして列車は、ジェシーが降りる予定の駅、ウィーンに到着した。そんな時ジェシーは、セリーヌにある提案を持ちかけるが――。

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映画を通じて恋愛哲学を学ぼう!『ビフォアサンライズ』の名言・名台詞

Before Sunrise
出典:映画『Before Sunrise』公式Facebook

本作品は列車内で出会った若者2人が恋に落ち、ただどこかのホテルに宿泊する話ではありません。ストーリーはほとんどジェシーとセリーヌの会話のみで進行し、2人は一晩中ウィーンの街中をぶらぶらするという、少々変わったスタイルの作品です。知り合ったばかりの2人はレコード屋やクラブ、教会などを散策し、互いの意見を交わし合います。

一見、劇中での2人は妙に浮かれていて、モラトリアム期の若者にありがちな薄っぺらな会話をしているようにも見えます。しかしその中には時間に余裕がある若者にしか持つ事のできない、人生に対しての素朴な疑問や、哲学的な意味合いを持つ会話も含まれているのです。そのような意味で考えると本作品での名言は、まるで恋愛の哲学書のような、鋭い洞察がなされていると言えるでしょう。

また物語に、ジェシーが翌日ウィーンの街を飛び立つまでの14時間というタイムリミットが設けられているのも大きな特徴です。ここではそんな2人の粋な会話から生まれた、名言や名台詞をご紹介します。

【名言①】「夫婦は年を取るとお互いの声が聞き取れなくなるのよ。男性は高い音を聞き取りにくくなり、 女性は低い音を。」

Before Sunrise
出典:映画『Before Sunrise』公式Facebook

冒頭で夫婦の喧嘩の内容を聞いてきたジェシーに対して、セリーヌが返した気の利いたセリフです。これに対してジェシーは、「だから殺し合わずにすむわけか!」と意外なジョークで返します。好奇心を刺激するセリフなので、これらの会話劇から作品の中に一気に引き込まれた、という人も少なくはないでしょう。筆者もその一人です。

また後々の続編に繋がっていく1作目の冒頭に、このような場面が挿し込まれるのも興味深いことです。この後2人は意気投合し、フェミニズムや親に対しての不満など、さまざまな内容について語り合うようになります。

【名言②】「これは未来から現在へのタイムトラベル、若い頃失ったかも知れない何かを探す旅。君は”何も失っていない自分”を発見、僕はやっぱり退屈な男だった。君は結局その夫に満足する」

列車はジェシーが降りる予定の、ウィーンに到着します。食堂車で予想以上に会話が弾んだ2人は、何となく別れづらい雰囲気になりました。これはその時にジェシーが、ここで一緒に降りてウィーンで一晩過ごさないかと誘ったセリフです。

ここでジェシーは「自分がつまらない男」であったことを、セリーヌが大人になった時思い出せるように、今確認しておくべきだという誘い方をしています。
この「よく知りもせず切り捨てた出会いに未練を感じて、未来のあなたがその時のパートナーに不満を感じる事の無いように」という発想がロマンチックかつユニークであったこともあり、セリーヌは結果ジェシーと共に列車を降りてしまいました。男性の口説き言葉としても優れていますが、恋愛がはじまるシーンのセリフとしてもインパクトのある言葉です。

アザラシくん

「こんなユーモアとセンスに溢れたナンパをされたらたまらないですよね!聡明なセリーヌも、この一言が決め手となって「彼となら楽しい時間を過ごせるかもしれない」と期待したのでしょう 

【名言③】「誰も知らない死って素敵だわ。家族も友達も私の死を知らないのは、死んでないのと同じ。私は消えただけ」

この名言は名もなき人の墓地を訪ねた時の、セリーヌのセリフです。2人が訪ねたこの墓地には、船での遭難や自殺などの理由から、身元不明の人々の亡骸が埋葬されているのでした。
彼女は13歳の時にも、この場所に来たのだと言います。冒頭の食堂車での会話でもあるように、セリーヌは死について、周囲の人よりも深く考える傾向がありました。

おそらくセリーヌは他者が自分を認識しなくなると、自分の存在が希薄になると考えているのでしょう。とても興味深い思想です。この論理からすれば、恋愛などで強く自分を知ろうとする人物が現れた場合、その逆の効果も期待できるということになります。そのような意味では、ジェシーはセリーヌにとって、極めて貴重な存在であると言えるかも知れません。

アザラシくん

自分の中にしっかりと確立した死生観があって、美しくもどこか儚い雰囲気あふれるセリーヌのこの一言には、男女問わず引き込まれてしまいますよね。 

【名言④】「自分自身の中に平和を見付ければ、他人との真の関係を見いだせる。」

セリーヌが手相を見てもらった際の、占い師(アーニ・マンゴールド)の名言です。更に言えばまだ若いセリーヌに対しての、人生経験者からのアドバイスだとも言えるでしょう。
これは年齢を重ねていけば、徐々に分かってくることでもありますが、若い内に聞けば貴重な助言にもなり得ます。またこの言葉は「まだ若く自分自身の中に居場所を見つけていない内は、孤独に悩まされるものだ」いう意味を含んでいるのかも知れません。

この占い師が去った後、ジェシーが占い師を茶化すシーンがまた最高にユーモラスです。おそらく彼は占いを信じるタイプではなく、否定するタイプの男性なのでしょう。

【名言⑤】「見て、環境の方が人間より強いの。」

ジョルジュ・スーラの絵画の展覧会のポスターを見て、セリーヌが言ったセリフです。彼女は何年か前にその絵を、見たのだと言いました。
それらの絵は点描という、細かい技法で描かれています。何点かあるその絵を見て、セリーヌは「背景に人物が馴染んでいる感じが好き」などの細かい感想を、ジェシーに伝えるのでした。

セリーヌいわく「人間は移ろいやすく、束の間の存在」なのだと言います。まだ若く人生経験の浅いセリーヌは、漠然とした無力感を感じ取りながら生きているのかも知れません。

この映画のラストには、2人が別れ、去った後の静かな街並みが美しく映し出されています。まるで、2人が過ごしたあの時間が、夢まぼろしであったかのように。人間というのは大きな世界に比べたら束の間のまぼろしのような、儚い存在にすぎないのかもしれないと感じさせてくれるセリフです。

【名言⑥】「恋愛とは孤独でいられない男と女の、逃げ道なんだ。世間で言われていることとは逆だよ。愛は寛大で懇親的だというけど、愛ほど利己的なものはない」

ビフォアサンライズ名言
出典:『ワーナーブラザーズジャパン』公式Twitter

ふらりと入ったクラブで、ピンボールをしながらジェシーが言った名言です。普段は「愛は利己的だ」などと、公の場で言われる事はあまりありません。
しかし劇中のこのような彼の洞察は、やはりそうなのか?という観客の共感を生む結果となりました。「僕はまだ自分が13歳に感じられる」と言っていたジェシーですが、このセリフからステレオタイプな情報に惑わされず、案外物事の本質を見極めようとするタイプの人物であることがうかがえます。

【名言⑦】「もしある島に女が99人と男がたった1人いた場合、翌年生まれる赤ん坊は99人。でも男が99人で女が1人だったら、翌年生まれる赤ん坊は1人だけ」

Before Sunrise
出典:映画『Before Sunrise』公式Facebook

若い2人は男女の違いについてあれこれ話します。
これはフェミニズムについての会話中に出た、ジェシーのセリフです。このセリフは一見ふざけていますが、男性と女性の生き物としての本質的な違いが、上手く表現されています。言われてみれば当たり前のことですが、このような事実は普段は忙しくて、うっかり見落としがちではないでしょうか。時間をたくさん持っている若者であるからこそ、持てる発想であるとも言えるでしょう。

【名言⑧】「もし神が存在するのなら、人の心の中じゃない。人と人の間のわずかな空間にいる。この世に魔法があるなら、それは人が理解し合おうとする力のこと。たとえ理解できなくても、かまわないの」

無神論者のセリーヌは信仰がない分、生きていく上での確かなものを自分で見つけ出そうとしています。結果、相手を理解しようとする気持ちを持ち続けることが大切なのだという結論に辿り着いたのでしょう。
また神が人と人の間のわずかな空間に存在すると考えるセリーヌは、他者との関係があってこそ、しっかりと地に足の着いた生き方が出来ると言いたいのかも知れません。

セリーヌのこの言葉は深く「人は1人では生きていけない」という普遍的なテーマとも、密接に絡み合っています。独特な発想でもありますが、なかなか安易な気持ちから出るような言葉ではありません。

【名言⑨】「相手を知れば知るほど、その人が好きになる。どう髪を分けるのか?どのシャツを着るのか?どんな時にどんな話をするのか。全てを知るのが本当の愛よ」

Before Sunrise
出典:映画『Before Sunrise』公式Facebook

この名言は共に一夜を明かした後の、セリーヌから発せられたものです。
これは「いずれ互いに飽きていく」という恋愛にありがちなパターンを、どう回避するか?という問いに対して、セリーヌなりに出した答えであるとも言えるでしょう。彼女のセリフからは努力する事で、それを乗り越える事が出来るのでは?という希望が感じられます。

またセリーヌがこの信念をジェシーに話したという事実は、今目の前で起こっている夢のような恋愛状態が時と共に変化したとしても、彼を愛し続ける覚悟があることの表れでもあります。

【名言⑩】「もう二度と会わない約束なんかしたけど、嫌だ」


出典:映画『Before Sunrise』公式Facebook

別れの朝がやってきて、ジェシーは帰りの列車に乗り込むセリーヌを見送ります。これはその列車があと数分で動き出すという時に、ジェシーの口から出た本音です。
初恋ではありませんから、ジェシーとセリーヌは遠距離恋愛になってしまうと、この恋愛がどういう結末を迎えることになるのかを察知していました。

だから2人は下手に次に会う約束などせずに、一晩だけその場限りの恋を楽しもうとしてきたのです。しかしこのタイミングで初めて、彼らは半年後に同じ場所で会う約束をします。2人が互いの連絡先を教えないのは、その後の付き合いが惰性に流され、この旅先で出会ったスペシャルな思い出の質が落ちるのを、恐れていたからだとも言えるでしょう。

この”別れ”のシーンに胸をぎゅっと抉られた方、多いのではないでしょうか?電話もネットもある時代にも関わらず、連絡先を一切交換せず「半年後、同じ時間、同じ場所で」という約束だけを交わすんです。半年後にも、この特別な気持ちを持ち続けられている事、そして、約束の場所で相手と出会える保証なんてどこにもありません。「永遠の愛など存在しない」事をよく判っている彼らだからこそ、「でも、もしかしたら」という期待を互いに込めたのかもしれません。

アザラシくん

個人的に、この別れのシーンは一人旅をした時に誰かと経験してみたい1シーンの一つです。旅先で運命的な出会いを経験した事のある方でも、ここまでドラマチックな別れは中々できるものではないですよね。淡々としたストーリー展開ながらも、ここまでロマンチックなラストを演出するリチャード・リンクレイター監督の手腕、流石としか言いようがありません 

まとめ

以上、『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離』の名言や、哲学的なセリフをご紹介しました。
絶えずしゃべり続ける男女の会話は、時間とは何か?恋愛で陥りやすいパターンとは?など、さまざまな恋愛の悩みを哲学的に考えた内容のものとなっています。本作品を鑑賞すればその恋愛の根本的疑問に対しての、答えやヒントを見つけることができるかも知れません。そのような意味では、『ビフォアサンライズ』は名言の宝庫とも言えるでしょう。

本作品内の会話は軽くウキウキした内容のものも多いのですが、後に続くビフォアシリーズを鑑賞すれば、実はジェシーやセリーヌが、劇中で核心をついた発言をしていることにも気付かされます。男女間の恋愛やそのもめごと、時間という観念についてじっくりと考えたい方にもおすすめの作品です。

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この記事を書いた人
ひとっとび編集長
ひとっとび編集長

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