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大ヒット映画『ゆれる』の西川美和監督を撮影裏話とセットで徹底解説!

ひとっとび編集長

一人でこもり、脚本を制作する西川美和監督は1974年7月8日の広島県広島市出身。浄土真宗が根付いている地域で育ってきました。東京に居ると、誘惑が多く集中出来ないと言う西川美和監督は脚本制作のときには広島の実家に戻り数ヶ月間こもりっぱなしになるそうです!

しかし、浄土真宗が根付いている地域に居ながらも中学、高校はカトリック色が濃い学校に通い、美術史に目覚めた西川監督は2002年に「蛇イチゴ」で監督としてのキャリアをスタートしました。

この「蛇イチゴ」も単独で脚本を作り、その時に見た夢からインスパイアされました。「脚本を書く時に一番いいのは24時間脚本を考えられる状況にいること」と言う西川美和監督は「人の心という迷路に分け入っていくのが、好きなんだろうね」と片渕須直監督に評さるように、人の心をシニカルに描いた映画が多いのが特徴です。

そんな西川美和は小説家としての顔も持ち、自ら執筆した小説「きのうの神さま」でも直木賞候補に選ばれるなど多彩な才能があります。自身の夢を題材にすることの多い、西川美和監督の作品からはオリジナル脚本特有のこだわりが感じられ、西川美和ワールドの虜になっている人も少ないはずです。

今回はそんな西川美和監督の作品を6つ紹介しますので、西川美和監督のことを気になっていた人も詳しく知らない人もぜひ見ていってください‼

1.蛇イチゴ

映画○○
出典:Amazon.com

あらすじ

ある家族の長女・明智倫子(つみきみほ)は結婚を控え、倫子の父・芳郎(平泉成)は普通の会社員で、母・章子(大谷直子)は祖父・京蔵(笑福亭松之助)の介護をしている。そんな一般的な家族は、それぞれ実は隠し事を抱えていた。それぞれの秘密が明るみになり、彼らの暮らしが崩壊の道を歩み始めた矢先、突然明智家の長男である放蕩息子・周治(宮迫博之)が不意に帰宅するのだが…。

ココがスゴい‼「蛇イチゴ」・西川美和監督の撮影裏話

・「30歳までに監督をしないとだめだ」と言われたことを背景に、本作品は作り上げられました

・自分のみの脚本制作にこだわりを持ち、現場では脚本変更を繰り返しながら進行していました

「蛇イチゴ」のみどころポイント!

明智一家がまるで実際に全員生きているような感覚に襲われるこの映画「蛇イチゴ」の心理描写は緻密で、監督の手腕に驚かされる作品です。とりわけ西川監督の手腕を感じられるのは食事のシーン。長女の結婚相手である鎌田賢作(手塚とおる)が明智家で食事をするシーンがあるのですが、場違いな発言によってその場を凍りつきかせてしまう賢作を明智家が気まずいながらも笑顔で取り繕う描写が何とも生々しくリアルで、実際にその現場に居合わせたかのような緊張感が伝わってきます。こういった、細部にまで決して手を抜かないで人間の心理を表現するシーンは西川美和映画のみどころと言えます。さらにその中で全員嘘をついていて、その一人ひとりのストーリーを織り交ぜ、上手くまとめている所も必見です。嘘が暴かれる瞬間はおもわず目を塞いでしまいます。

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2.ゆれる

ゆれる
出典:映画『ゆれる』公式サイト

あらすじ

故郷を離れて上京し、カメラマンとして成功した弟の猛(オダギリジョー)は母親の一周忌で帰宅した。そこで久々に実家のガソリンスタンドで働く兄の稔(香川照之)と会い、さらにそのガソリンスタンドでは、元恋人、智恵子(真木よう子)とも再会するのだった。そして、昔のように三人で遊ぶのだが…。

西川美和監督が魅せる‼「ゆれる」の撮影裏話

・兄の稔役は監督が自ら、「香川照之以外に思いつかない」といいキャスティングしていました

・そして、その香川照之も「この役は僕そのものだ」ということを熱烈にアピールしていました

ココが見逃せない‼「ゆれる」のみどころ

この映画のみどころは兄弟の関係そのものにあります。自分とは限りなく近い存在であるがゆえに、今までその本心がわからないでいた猛、いつも弟に優しく接していたが実は弟の活躍から劣等感を胸に秘めていた稔。そんな二人が恋人だった智恵子に起きた事件をきっかけにどう関係を変化していくか、というところに注目してしまう作品です。

逮捕された兄・稔が面会で「初めから人を疑って、一度も信じたりしない。」と本心を言ってしまう場面は演技とは思えない凄みがあり、緻密な人間の心理を描き出した脚本を完璧に再現した役者にも驚いてしまいます。

しかし、驚きポイントはそれだけではありません。事件の加害者であるという事実をひた隠しにしてきたにもかかわらず、弟が兄の真実に気付いてしまうシーンは圧巻です。一見すると救いようのない物語ですが、ストーリーは終盤に向けてきれいに収束していきます。そして最後のシーンは様々な解釈ができ、自然と考えてしまう作品になっています。

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3.ユメ十夜 第九夜

映画○○
出典:Amazon.com

あらすじ

母(緒川たまき)と子(渡邉奏人)はお百度参りをして、戦争に行った夫(ピエール瀧)の帰りを待っていた。子は神社の柱に繋がれ、母は神社の境内もソワソワと何往復もする。そうしていくうちに、子はいつしか社の中に戦地にいる父の姿を見つけるのだが…。

西川美和監督・「ユメ十夜 第九夜」の撮影裏話!

・原作の夢十夜を読んだ西川美和監督は最初から「母役は緒川たまきさん以外考えられない」と言っていました

・オムニバス形式の映画で、西川美和監督は当初、第五夜を担当したがっていましたが急遽変更しました

「ユメ十夜 第九夜」の必見!みどころ集

夫の帰りを待つ、ミステリアスな妻役の緒川たまきさんの醸し出す雰囲気に思わず圧倒されます。何度も手を合わせる、その健気な姿とは裏腹に、子どもは社の中に戦地の父があったのを見てしまいます。そこから、父は本当に戦地に赴いているのか、すでに死んでいるのか疑います。そのシーンでは見る人も子どもと一緒にどうしてなのか考えてしまいます。

そんな「ユメ十夜 第九夜」は夫婦の深層心理を描き出していて、とても短編とは思えない濃密な作品と言えます。

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4.ディア・ドクター

映画○○
出典:Amazon.com

あらすじ

人口が1千人近くしかいない小さな村で働いていた伊野治(笑福亭鶴瓶)はその村で唯一の医者だった。その診療所では伊野以外にベテラン看護師の大竹朱美(余貴美子)や研修医の相馬啓介(瑛太)の二人がおり、いつも3人で対応してきた。しかし、唯一の医者である伊野は実のところ医師免許を持っておらず、その事実がいつ周囲に知られるのかと内心怯えていたのだった。

「ディア・ドクター」の監督、西川美和の撮影裏話!

・監督は「生命を左右する技術や権利を持つ、ある意味人間ではないように思える」と医者に対して興味を持っていたので医療をテーマにしていました

・初主演の鶴瓶さんの演技を監督は「ライブ」と表現し、称賛していました

西川美和監督・「ディア・ドクター」のみどころ!

本作品のみどころは医者のふりを続けていた伊野の心の葛藤にあります。優しい性格で、親身になって患者を診る伊野は当然、村人から慕われています。その医者の姿は、まさに自分がかつて目指していた理想の姿です。しかし現実は厳しく、医者になることを挫折した伊野の抱える不安感は見る人にも伝わってくるほどのリアリティがあります。

そんな伊野は研修医の啓介につい「俺は偽物だ」と本心を愚痴ってしまいます。理想の姿を実現しながらも、その優しさは医者に対するコンプレックスから逃げるための偽善にすぎないと認めたこのシーンは、心に重くのしかかり、共感さえも覚えてしまう場面です。そして、伊野の正体を知った途端に手のひらを反す村人のあからさまな態度を通して、西川美和監督は見る人間に、「医者とは何か」、「本当の意味の倫理とは何か」という重いテーマを正面から問い掛けます。

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5.夢売るふたり

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出典:Amazon.com

あらすじ

常連に愛されている小料理屋を営んでいる貫也(阿部サダヲ)と妻・里子(松たか子)は大繁盛というわけでもないが、毎日充実していた。しかし、突然不注意から出火してしまいお店が全焼してしまう。すべてを奪われた貫也と里子は、またお店を立て直そうと結婚詐欺を始めるのだが…。

知られざる撮影裏話!西川美和監督の「夢見るふたり」

・脚本通りに映画を作る西川美和監督が本作品で阿部サダヲにアドリブのシーンを要求していました

・映画「夢見るふたり」で「女のみっともないところ、大人の女性の生きづらさ」をテーマにしていました

みどころ満載!西川美和監督の「夢見るふたり」

まず、目を惹かれるのは火事で貫也と里子の人生が180度変わるのにも関わらず、愛情が続いていることですね。それどころかお店を立て直そうと手段はどうあれ二人で共謀していく、その姿は夫婦として理想の姿と言えます。しかし、付け焼刃の再建計画は結局上手くいかず、自暴自棄になった貫也は酒と浮気にひたります、そのダメ男っぷりを演じた阿部サダヲの演技力もひとつのみどころと言えます。貫也の浮気は結局バレてしまいますが、持ち前の正直さで妻・里子い許され、逆に結婚詐欺をする理由として利用してしまいます。共感と正直さで女性を魅了するダメ男とそれに引っかかる数々の女性はまるで本当に居たかのように思わせられます。そんな結婚詐欺を繰り返していて、いつバレるかハラハラしていた二人に訪れた、家でのつかの間の睡眠は貫也と里子だけでなく見る人にも安心感を与えてくれます。

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6.永い言い訳

映画○○
出典:映画『永い言い訳』公式Twitter

あらすじ

小説家として有名な衣笠幸夫(本木雅弘)は美容師の妻・夏子(深津絵里)を不慮の事故で唐突に失ってしまう。しかし、不倫に夢中だった幸夫は、妻の死を悲しむことはなかった。その不慮の事故では夏子の親友も亡くなっており、その夫の陽一(竹原ピストル)は幸夫とは対照的に悲しみに明け暮れていた。そのことを気にした幸夫は自ら陽一の子どもたちの面倒を見ると言うのだが…。

映画「永い言い訳」の西川美和監督・撮影裏話!

・幸夫は夫という役柄であるのにも関わらず、西川美和監督は自分自身を投影して書いていました

・原作は小説ですが、その原作を製作したのも西川美和監督自身でした

・原作も映画も同じ作者ですが、映画を作るときには小説にあった世界観は捨てた監督は言っていました

「永い言い訳」・西川美和監督が魅せる、みどころ!

妻・夏子が死んだのにも関わらず涙も出さず、有名であるという理由で悲劇のヒーローを気取り、余裕すら感じ取れる幸夫が、陽一の子どもの世話を通して、変わっていく姿は本作品の一番のみどころと言えます。同じく妻を亡くした陽一は幸夫とは対照的に悲しみに明け暮れ、その妻を愛する心はまっすぐで痛々しいほどです。幸夫がいることで、そのまっすぐさが際立っており、絶妙なコントラストとして機能していることにも感心させられます。

そして、子どもの世話をするうちに誰かのために生きる幸せに気付いた幸夫は、やがて妻を惜しむようになります。だからと言って妻が帰ってくることはなく、陽一と口論になったときに「君とは全然違うんだよ‼」と本心を叫んだシーンは幸夫の持つ罪悪感を痛いほど感じてしまう場面です。

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まとめ

西川美和映画全てに見られる緻密な人間の深層心理を描いたシーンは、部屋にこもり一人で脚本製作をしたとは思えないほどの臨場感があります。さらに主人公は男性であることが多く、その男性に自分自身を投影していると西川美和監督は言っており、人間の本質を暴く手腕は西川美和さんならではのものと言えます。

そんな西川美和監督の映画は全て完成度が高く、2時間であるはずの映画をもっと長い時間であるかのように錯覚してしまうので、この紹介をもとにぜひじっくり見てください!

この記事を書いた人
ひとっとび編集長
ひとっとび編集長

映画の情報サイト『映画ひとっとび』の編集長。 映画を「なんとな〜く」探している方から、「この映画の考察が知りたい!」というマニアな方まで楽しめるサイトを目指しています! 皆さんの映画ライフがもっと充実するお手伝いができますように。