映画『セブン』の見所をネタバレ解説|サマセットの最後のセリフに込められた意味とは?
90年代に高い人気を博したサイコ・サスペンスである『セブン』。七つの大罪をテーマに繰り広げられる連続猟奇殺人を追う2人の刑事をスリルたっぷりで描いています。
オープニングシーンからダークな世界観が展開され、緊張が張り詰める空気感がたまりません。目的の分からぬ殺人、猟奇的な殺害方法、難航する捜査には視聴者もついハラハラしてしまいます。
きめ細やかな脚本、そして衝撃ラストは誰しもが予想のつかぬ結末になるでしょう。サイコ・サスペンスの金字塔とも呼べる作品です。
果たして犯人の本当の目的とは何なのでしょうか?本記事はネタバレを含みながら解説していきますので、未鑑賞の方はご注意ください。きっと一度観れば、あなたも『セブン』の世界にハマってしまうはずです!
目次
映画『セブン』とは?デヴィッド・フィンチャーについて
1995年9月にアメリカにて公開された映画、『セブン』。2,411箇所の映画館で上映され、初公開週から売り上げは好調。最終的に世界規模で3億2730万ドルの興行収入を記録しました。
公開後は4週間連続で興行成績1位を叩き出し、有名映画『シャイニング』よりも更に上をいく人気っぷりだったそうです。
特徴的でコントラストの強い映像が評価され、第68回アカデミー賞では編集賞を受賞。第22回サターン賞ではメイクアップ賞と脚本賞を受賞しています。批評家からも称賛の声が上がり、キャスト陣らの演技も大好評だったとか!
監督はアメリカで活躍するデヴィッド・フィンチャー。元々はアニメーターとして働いていた経歴があり、後にビデオ会社を設立。映画だけではなくアーティストのMVやCMといった映像制作を担当します。
本作のヒットから世間より注目を受け、『パニック・ルーム』、『ベンジャミン・バトン』、『ゴーン・ガール』などの有名作品を次々と輩出。
現在はNetflixと4年間の契約を結び、Netflix独占配信の映画『Mank/マンク』という作品を発表しています。
10秒で分かる!映画『セブン』の簡単なあらすじ
出典: Warner Bros.公式YouTubeチャンネル
定年退職まであと1週間を切ったベテラン刑事・サマセット(モーガン・フリーマン)はある殺害現場に立ち会っていた。そこには新米刑事のミルズ(ブラッド・ピット)もおり、巨漢の男がスパゲッティに顔をうずめて死亡している猟奇的な事件が発生していたのである。
死体を解剖すると、限界まで食べ物を口にさせられた結果、内臓破裂を起こしていたらしい。更に胃の中からは妙なプラスチックの破片が発見され、現場には意味深なメッセージが残されている……。
事件の始まりを匂わせるような証拠の数々に、警察は連続殺人事件の可能性を見て捜査を開始。案の定二件目の事件も発生し、犯人が「七つの大罪」に添って犯行を進めていることが明らかになる。
退職寸前のサマセット、移動したてのミルズは2人で事件解決のために動き出した。しかし犯人の尻尾は一向に掴めず、被害者が次々と現れるばかり。捜査は難航し、次第に手掛かりを掴むことさえままならなくなり……。
映画『セブン』のネタバレあらすじ
【あらすじ①】猟奇殺人の始まり
都会で夫婦喧嘩の末、死亡した事件現場に居合わせるサマセット刑事(モーガン・フリーマン)。彼はあと約1週間ほどで定年退職を迎えることになっていた。そこへ着任したてのミルズ刑事(ブラッド・ピット)が挨拶へとやってくる。
かつて殺人課に8年いたミルズはやる気満々。「熱血刑事」の名が相応しい男だが、サマセットはただ「1週間は黙ってみて見ておけ」と言うだけ。すぐに仕事を任せてもらえないミルズは早々に不満げな表情を浮かべる。
そんな2人はある日別の殺害現場へと向かう。巨漢の男がスパゲティに顔を伏せて死んでいるという、非常に妙な現場だ。検視の結果は内臓破裂で、頭に銃口を突き付けられながら大量の食物を強制的に食べさせられていたらしい。
更に胃の中からはプラスチックの破片が見つかり、「GLUTTONY(暴食)」の文字が……。これは事件現場の冷蔵庫の裏に書かれた文字と一致していて、事件の始まりを示唆しているようだった。
「事件は連続して続く」、そう踏んだサマセットは定年退職までに解決が間に合わないと判断し、今回の担当を下りると言い出す。しかし事件は待ってくれず、立て続けに被害者が出てしまう。
【あらすじ②】七つの大罪
出典:映画『セブン』公式サイト
次の被害者は弁護士のグールドで、現場には「GREED(強欲)」の文字が残されていた。実際に彼はとても強欲であったため、犯人はグールドの素性を知っていることが推測される。
これによりサマセットは「七つの大罪」をモチーフに犯行に及んでいると睨んだ。すでに「事件は2件発生しているため、あと5人の被害者が出る」と予想。最初は信じていなかったミルズも、立て続けに起きる殺人には納得せざるを得なかった。
別の現場で犯人と思わしき指紋が発見されるも、それは被害者のものだったことが明らかになる。3人目は1年と長い間監禁され続け、次なるメッセージは「惰性」。犯行に時間をかけていることから、犯人は幾分と前から殺人の計画を立てている事実が発覚する。
一向に犯人の尻尾が掴めずが、裏ルートによってFBIへ操作の依頼を出す2人。すると今回の事件のルーツとなっている書籍を図書館にて度々借りている、ジョン・ドゥ(ケヴィン・スペイシー)という男に辿り着いた。
最初は聞き込みがてら彼のアパートへ乗り込むが、案の定留守。気がゆるんだ瞬間、何者かに銃を発砲されミルズはケガを負ってしまう。そして犯人の手掛かりは未だ掴めないままなのだった。
【あらすじ③】犯人の自首
出典:映画『セブン』公式サイト
FBIを裏ルートで使った以上、無断でアパートの部屋へ立ち入ることはできない。そこでサマセットは嘘の証人を仕立て上げ、半ば強引に家宅捜索を行った。
すると室内には被害者の写真の数々……。ジョン・ドゥの部屋からは立派な証拠品が複数見つかった。中にはミルズの写真も含まれており、犯人の正体が報道記者のパパラッチだったことが明らかになる。
ミルズとジョンは一度顔を合わせているため、ピンとくる2人。だがここでも操作は難航し、男の指紋が一つも見つからない異常な事態を迎えることとなる。
更に悪夢は立て続けに起き、ついに「PRIDE(高慢)」・「LUST(肉欲)」の2つが達成されてしまった。七つの大罪は残り2つ、それまでにジョンの犯行を食い止めねばならない。
そうこうしているうちに、なんと犯人の方からわざわざ出向いてくる予想外のハプニングが発生。なぜこのタイミングで自首してきたのか……。全てが謎に包まれたままジョンの取り調べが行われる。。
取り調べで発覚した事実は
- 彼の指の皮は剥がれており、指紋が検出されないようになっていた
- 教養も財産もあり、家賃滞納などが全くなかった(近所から疑われるような行為が見つからなかった)
……と、更に刑事らを悩ませるような内容だった。
【あらすじ④】全てはジョンの計画通り
出典:映画『セブン』公式サイト
「自分の犯行について教えたい」と語るジョンは、サマセットとミルズにと共にある場所へと向かう。
何もない平野で宅配便が届き、荷物を開封するように指示するジョン。余裕の表情を浮かべるジョンに、サマセットはただならぬ気配を感じていた。
航空からヘリコプターを飛ばし、厳重な警戒体制の元で荷物は開封された。中身は何とミルズの妻・トレイシー(グウィネス・パルトロー)の首……。
美しい妻のいるミルズに対し、ジョンは「ENVY(嫉妬)」の感情があったと言う。サマセットに止められながらも、ミルズは彼に銃を発砲して殺害してしまった。
残された七つの大罪「WRATH(憤慨)」。それミルズが達成してしまったこととなる。つまり全ては犯人の思惑通り、警察らを含めた全員は、ジョンの書いたシナリオにまんまとハマってしまったのだ。
ミルズは無抵抗の人間へと発砲したことから殺人罪に該当してしまったため、連行されていく……。
それでも彼を責める人間はいない。サマセットはヘミングウェイの言葉「この世はすばらしい。戦う価値がある」を思い出しながら、定年退職を迎えるのだった。
映画『セブン』のキャスト
サマセット/モーガン・フリーマン
出典:映画『セブン』公式サイト
定年を控えたサマセットは至って冷静。時折行き過ぎた行動をするミルズを抑止するなど、ベテランならではの対応力を見せます。心優しき一面もあり、序盤の事件では「夫婦の殺し合いを子供が見なかったか?」といった心配もしていました。
最後まで冷静さを欠かなかったものの、ジョンの犯行には戸惑いを隠せなかった様子。定年間際の出来事を考えると、サマセットも不憫でなりません……。
サマセットを演じるのはモーガン・フリーマン。誰もが知る超有名ハリウッド俳優で、84歳ながら現役!まだまだ沢山の作品へ出演してほしいですね。
ミルズ/ブラッド・ピット
出典:映画『セブン』公式サイト
熱血刑事でやる気満々のミルズ。若さゆえに暴走し、感情を抑えられないことも多々発生。その度にミルズへなだめられていました。けれども心意気は本物で、心から妻を愛しているなど、人間としての真っすぐさも伺えます。
この事件最大の被害者であり、彼はジョンに全てを奪われてしまいました。まだまだ未来のあった刑事、あのラストシーンには誰もが落胆したことでしょう。
悩ましい役どころ、ミルズを演じるのはブラッド・ピット。1987年に俳優デビューし、90~2000年代前半に大ブレイク。世界中をとどろかすスターとなり、現在もトップを走り続けています。
生粋のシネフィル!ブラッド・ピットの役者魂に浸るおすすめ映画10選!ジョン・ドゥ/ケヴィン・スペイシー
表情一つ変えず、淡々と言葉を紡ぐ謎の存在、ジョン。結局なぜ犯行に及んだのか、何もかもが不明のまま事件は終結してしまいました。
分かっていたのは犯行に対する異様な執念と、想像を超えてくるレベルの異常さを持ち合わせているということ……。彼はなぜこのようなシナリオを描いたのでしょうか?その理由は永遠の謎に包まれています。
ジョンを演じるのはケヴィン・スペイシー。俳優だけでなく脚本家、プロデューサーとしての顔を持ち『ユージュアル・サスペクツ』や『ビヨンド the シー 夢見るように歌えば』などで知られています。
映画『セブン』にまつわる5つの謎について徹底解説!
多くの謎が残されたままエンディングを迎える衝撃の作品、『セブン』。観賞を終えたあと、誰しもが数々の疑問を抱いてしまうはずです。
皆さんが気になる本作の謎について解説していきますね。
『セブン』の謎①犯人のジョン・ドゥとは何者だったのか
本作の謎を深めている大きな存在がジョン・ドゥという男です。犯行の理由も明かされず、素性も不明。ノコノコと自首してくるシーンには、思わず呆然としてしまいました。
そもそも「ジョン・ドゥ」とは英語で「名無しの権兵衛」を意味し、サマセットらは彼を最後までこの名前で呼んでいました。つまり警察がどんなに調べ上げても、本名などの情報が出てこなかったのでしょう。そう考えると、ジョンが何者かがますます分からなくなってきますよね。
とは言え彼は人間です。ロボットでも、異世界から来ているわけでもありません。しかし「選ばれた人間」と自称していました。罪を犯している人々に制裁を与え、自身を神のような存在と思っていたのかもしれません。
ただ誰かを殺したいだけの快楽殺人鬼ではなく、「相手に罪を償わせる」ことを目的とした犯行だったのでしょう。そう考えても異常なことに代わりはないのですが……(苦笑)
『セブン』の謎②タイトルに込められた意味
タイトルの『セブン』には
- 七つの大罪をモチーフにしていること
- 事件解決までの1週間
- サマセット退職までの1週間
……と、3つの意味が込められています。
時系列は月曜日から始まり、日曜日には全てが収束していますからね。事件が解決しなかったら勤務延長を考えていたサマセットも、延びることなく定年を迎えるのでした。
『セブン』の謎③なぜミルズの妻が狙われたのか?
出典:映画『セブン』公式サイト
度々登場するミルズの妻・トレイシーですが、なぜジョンに狙われてしまったのか、疑問を抱いた人も多いはず。決して彼との関わりもなく、彼女自身は何の罪も犯していなかったからです。
ただの嫉妬で殺されるにはあまりに不憫ですが、ジョンが殺している相手は全て彼と直接関わりのない人ばかり。ですから運悪く狙われてしまった可能性が高いのです。
ノート何十冊も書き溜め、入念に情報を調べ上げるほどの人間ですからね。トレーシーやミルズのことを知るなんて容易いことです。
ただしパパラッチのふりをしてミルズの前に現れた時、もしかすると彼を“試していた”のかもしれません。異常な精神を持っていますから、その対応次第でエンディングを変えようとしていた……なんて考えも、一つあるかもしれません。
『セブン』の謎④なぜミルズの妻の妊娠を知っていたのか?
とは言え、トレーシーに関する謎はまだまだ残ります。妊娠を夫に言うことなく、相談していたのはサマセットだけでした。なぜその情報が漏れ、ジョンへと伝わってしまったのでしょうか?
この疑問により「サマセットが裏の犯人説」がネット上では囁かれています。確かに妊娠の相談を受けた唯一の人物ですからね。ジョンと裏では繋がっていたのではないか?と推測する声もあるようです。
しかしストーリーを大まかに見てもその説はあまり現実的ではありません。恐らく入念に調べ上げた結果妊娠を知ったか、トレーシーが殺される寸前に命乞いをし「子供がいるの」などと発言した可能性が考えられるでしょう。
これでサマセットが真犯人だとしたら、相当なサイコパスですよね……。
『セブン』の謎⑤サマセットの最後の台詞について
出典:映画『セブン』公式サイト
サマセットが最後に発した「“世の中は美しい、戦う価値がある”、後半の部分には賛成だ」。このセリフはアーネスト・ヘミングウェイという小説家・詩人家の『誰がために鐘は鳴る』より引用されています。
この事件を目の当たりにすれば、決して「この世は美しい」なんて言えません。むしろ地獄のようなものでしょう。
しかしミルズの行為を止められなかったサマセットは、辛くて悲しい彼の気持ちが分かっていました。だからこそ“戦う価値がある”と思ったのです。
サマセットもまた、これが最後の業務と思うと心にざらつきが残ってしまったはず。ジョンの犯行はミルズだけでなく、周りの人間全てに悪影響を与えたとも言えますね。
映画『セブン』がヒットした理由
オープニングからすでにかっこいい!ダークな世界観が視聴者を惹きつける
序盤から薄暗く、ダークな雰囲気漂う現場。『セブン』は雰囲気たっぷりの世界観で物語が展開していきます。
ただグロい、エグい、では片付けられないほどの衝撃と、忘れられぬ事件現場のビジュアル。ハラハラするだけではなく、どこか個性を感じて惹きつけられてしまうのです。血文字で書かれた七つの大罪たちも、非常にインパクトが大きいですよね。
OPの「これから悪夢が始まる」あの予兆がとにかくカッコいいのです。このダークさはスリラー的要素を引き立てるだけでなく、『セブン』の世界観をうまく確立しています。
サマセットとミルズ、正反対な2人がマッチ
ベテランで落ち着いているサマセットと、ヤル気に満ち溢れている熱血なミルズ。この2人のアンバランスさがマッチしていて、それぞれのキャラクターが引き立っているのです。
早く仕事を任せて欲しくて仕方がないミルズ、序盤はちょっぴり子供っぽさが溢れていましたよね。サマセットはそんな若者を多く見ているせいか、至って冷静。「7日間は黙って見ていろ」と、一切容赦しません(笑)
最初は相いれなかったものの、トレーシーに食事へ呼ばれたことをきっかけによきパートナーとなる2人。事件の結末は最悪なものでしたが、サマセットは最後の業務でミルズに出会えたことは、きっとプラスになったと思います。
ミルズも事件後は、この経験を活かして再び刑事として活躍してほしいものですが……。第二のジョンとなってしまわないことを祈るばかりですね。
スリラー映画に影響を与えた、震撼するシナリオとキャラクター像
この世には多数のスリラー映画が溢れていますが、その中でも「快楽殺人鬼ではなく、目的を持ったうえでの犯行」に及ぶダークヒーローが特に目立っています。
その多くのルーツとなっているのが、やはり『セブン』のジョン・ドゥという存在。“謎の連続殺人鬼”的キャラクターのはしりとも言われているのです。
犯人の素性も何もかも謎で、淡々と人が殺されていく。そして七つの大罪とモチーフがしっかりしている点……。正直なところ、快楽殺人鬼より恐ろしいと思いませんか?
一気に何十人も殺されるのではなく、1週間じっくりかけて計画が実行されていくのも恐怖を覚える部分でしょう。日を追うごとに刑事ら、そして視聴者をジワジワと責めぬいていくのです。
崖から突き落とされたような、絶望に駆られるエンディングもある意味“最高のシナリオ”と呼べるはず。本作はこれらの衝撃から、多方面に影響をたくさん与えているのです。
まとめ
映画界に衝撃を走らせた映画『セブン』。複数の謎が残されているのも一つの魅力であり、様々な説を自分の中で立てるのも楽しいでしょう。
あなたはこの映画を観て、「正義は悪だ」と思いますか?「この世は美しい」と言い切れるでしょうか?メッセージ性も非常に強い作品ですので、ぜひ一度ご鑑賞いただきたく思います!