2人は未来で会えるの?映画『時をかける少女』のあらすじネタバレ&6つの謎を徹底考察
”夏が来ると観たくなるアニメ”でお馴染み、細田守監督の映画『時をかける少女』。2006年に公開されたこの作品ですが、今もなお、ファンの間ではストーリーについて様々な議論が交わされています!
「未来で待ってる」の意味とは?二人は未来で会えたの?そんな誰もが気になってしまう『時をかける少女』の”その先”について、物語のあらすじと共に徹底考察していきます!
目次
映画『時をかける少女』についておさらい!
細田守監督作品の特徴
『時をかける少女』の解説に入る前に、まずは我らが細田守監督の作風・手腕を押さえておきましょう!
今や日本を代表するアニメーション監督となった細田守監督。彼の作品の特徴とは何なのでしょうか。
細田守監督の作品の特徴の1つに、カメラの視点設定ひとつで観客を惹き込むレイアウト能力の高さがあります。
引いたカメラワークや同じカメラポジションをテンポ良く切り替えていく手法は、細田守監督ならではのもの。『時をかける少女』においてもその技法は取り入れられており、Y字路で真琴達が会話するシーンは、その独特なカメラワークが印象に残っている方も多いのではないでしょうか。
また、生き生きと描かれるキャラクター達も細田守監督の作品の魅力と言えます。
細田守監督と言えば、作品に自己投影をする監督として知られています。監督が結婚をした時期には”家族愛”をテーマにした『サマーウォーズ』をつくり、子供が駄々をこねるようになってからは、その姿から『未来のミライ』の着想を得ました。
監督自身が感じたことをストレートに作品に取り入れることで、まるで命を持っているかのような魅力的なキャラクター達が生まれるのです。
映画『時をかける少女』の魅力
『時をかける少女』は、細田守監督の名を世界に知らしめた”出世作”と言える作品です。公開当初は一部のシアターのみでの上映でしたが、口コミで話題となり、その盛り上がりは日本、そして世界へと広がっていきました。
若者たちの心情を繊細に描いたストーリーは、まさに”青春映画”の傑作。声優に現役高校生を起用するなど、リアルな高校生の姿を描きたいという監督の強いこだわりが感じられます。
また、この作品の人気の理由と言えば、「タイムリープ」というSF要素を組み合わせたドラマチックなストーリーです。もちろんそのベースには、様々な派生作品を生み出した偉大な原作の力がありますが、喜怒哀楽が豊かな主人公・真琴の姿や、コメディタッチなタイムリープの演出は、細田守監督が手がけた”アニメ版”ならではの魅力と言えるでしょう。
登場キャラクター
紺野 真琴(こんの まこと)/声:仲里依紗
東京の下町にある高校に通う2年生。ボーイッシュな性格で、男友達の千昭や功介とは毎日放課後にキャッチボールをする間柄です。
これといった特技も無く、学力も中の下。ある出来事をきっかけに時間を遡る「タイムリープ」の能力を身に宿し、平凡だった彼女の生活は一変します。
間宮 千昭(まみや ちあき)/声:石田卓也
高校2年生の時に転校してきた、真琴のクラスメイト。大雑把な性格で、考えるよりも先に手を出してしまうタイプです。転校当初はクラスでもケンカばかりの毎日でしたが、真琴達と一緒に過ごしていくうちに徐々に丸くなっていきました。
ひそかに真琴に恋心を抱いていますが、男勝りな性格の真琴を前に、なかなかその想いは伝わらないようです。
津田 功介(つだ こうすけ)/声:板倉光隆
真琴と中学時代から親交があるクラスメイト。医学部志望の秀才でスポーツも万能、真琴や千昭の兄貴分的存在です。
クラスメイトからは真琴と付き合っているのでは、と噂されていますが、本人は全くそんな素振りを見せず、その関係が謎を呼んでいます。
映画『時をかける少女』のネタバレあらすじ
最初のタイムリープ
高校2年生の真琴は、親友の千昭や功介とキャッチボールをして遊ぶ毎日を過ごしていた。ある日、日直だった真琴はノートを運ぶため理科実験室に訪れる。
「Time waits for no one」
黒板に書かれた意味不明な英文に頭を傾げる真琴。その時、奥の準備室で怪しい物音を耳にする。室内へと足を進めた真琴だったが、急に現れた人影に驚き、バランスを崩してしまう。その瞬間、異空間へと飛び込んだような不思議な体験をするのだった。
真琴はこの出来事を千昭や功介にも話したが、二人には信じてもらえず馬鹿にされてしまう。モヤモヤした気持ちのまま下校していた真琴だったが、坂道を下っていたところで突如、乗っていた自転車のブレーキが故障。そのまま警笛が鳴り響く踏切内に突っ込んでしまう。
接近してくる電車を目前に、死を覚悟した真琴。その時、理科実験室で感じたあの不思議な感覚に再び陥る。真琴がふと目を覚ますと、自分がまだ坂道の途中にいることに気づいた。電車は踏切を通過していない。少し前の時間に巻き戻っていたのだ。
時をかける”学生生活”
自分が生きていることが信じられない真琴は、美術館で働く”魔女おばさん”こと芳山和子(原沙知絵)の元に向かい、坂で起こった出来事を話した。
「それはタイムリープよ。」
「時は戻らない。ということは、戻ったのは真琴自身よ。」
タイムリープ、時間跳躍の力が自分の身に宿っているのだという。そんなことは全く信じられない真琴だったが、もしかしたらと思い、もう一度タイムリープできるか試してみることに。帰宅途中、全速力でダッシュして川に向かってジャンプした真琴。そしてまた、”あの感覚”がやってくる。
”前日”の自宅に戻ってきた真琴は、冷蔵庫を開けてみる。そこには、妹に食べられたはずのプリンがあった。プリンの味を噛みしめながら、真琴は実感する。
「私、飛べんじゃん…飛べんじゃん!」
真琴にとって、その日はもう既に体験した1日。学校に遅刻はしないし、小テストもばっちり。”自転車”にももちろん乗らない。上機嫌な真琴は、放課後には千昭と功介を誘ってカラオケに行くことに。何度も時間を飛び越え、喉が枯れるまで歌い続けるのだった。
腕に書かれた謎の数字
タイムリープを使って学生生活を謳歌していた真琴。ある放課後、いつもの3人で下校しようとしていたところ、功介が後輩の藤谷果穂(谷村美月)に呼び止められる。彼女は功介と同じボランティア部で、功介に告白をしようとしていたのだった。
二人で帰ることになった真琴と千昭。自転車が使えない真琴は、千昭の自転車で送ってもらうことに。功介のことを思い浮かべながら、真琴はふと呟いた。
「何だかなあ…ずっと3人でいられる気がしてたんだよね、遅刻して功介に怒られて、球取れなくて千昭になめられて。」
ずっと続くと思っていた3人の関係に、変化が現れ始めたのだ。この言葉を聞いて、千昭は真琴に話しかける。
「真琴、俺と…付き合えば?」
突然の告白に真琴の表情が固まる。親友としか見ていなかった千昭の言葉の意味が、理解できなかった。動転した真琴はすぐにタイムリープし、この告白をなかったことにしてしまうのだった。
数日後、学校内で生徒がいじめを受けるトラブルが発生する。その生徒とは、真琴がタイムリープを使ったことが原因で、不良達から目を付けられた男子生徒だった。男子生徒は逆上し、場を鎮めようとした千昭や他のクラスメイトにまで被害が及んでしまう。
自分のタイムリープのせいで、何かが狂い始めている。落ち込んだ様子の真琴は自宅に帰り、そこで”あること”に気づく。
「なんだろこれ……きゅう…じゅう…?」
自分の腕に、「90」という謎の数字が書かれていたのだ。
千昭の正体
功介は後輩の藤谷果穂からの告白を断っていた。「最近、真琴の成績が上がってきたからうかうかしていられない」というのが理由だというのだ。このことを聞いた真琴は、最初にタイムリープした日に戻り、功介と果穂をくっつける作戦を思いつく。
タイムリープを重ね、その日起こった出来事を変えていく真琴。その間に、腕に書かれた数字は「01」になっていた。この数字は、タイムリープができる残り回数を表していたのだ。
タイムリープの回数は減ってしまったが、作戦が上手くいき満足気の真琴。その時、功介から真琴に1通のメールが入る。
「なんか俺告られたみたい。」
「自転車借りるよ。」
真琴が乗り、ブレーキが壊れ、電車に轢かれるはずだった”自転車”。嫌な予感がした真琴は、慌てて下校路の坂道へと向かう。しかしそこに功介と果穂の姿はなく、真琴はほっと胸をなでおろす。
そこへ、携帯に電話がかかってくる。相手は千昭だった。
「真琴に聞きたいことがあるんだけど。」
「お前…タイムリープしてね?」
思いも寄らない千昭の言葉に、咄嗟に最後のタイムリープをする真琴。つまらないことに使ってしまった、とがっかりする真琴だったが、そこへ、自転車に乗った功介と果穂がすれ違う。
ブレーキが効かず、功介と果穂が乗った自転車は踏切へと突き進んでいく。タイムリープが使えない真琴にはどうすることもできず、「止まれ。止まれ。止まれ。」とただ願うしかなかった。その時、突如として”静寂”が訪れる。
「やっぱり真琴か…。」
状況が理解できない真琴。彼女の前に現れたのは千昭だった。
未来で待ってる
一度は事故によって功介と果穂は死んでしまった。しかし、千昭が時間を戻して、事故をなかったことにしたのだった。
「俺… 未来から来たって言ったら… 笑う?」
自分が”未来人”であることを告げる千昭。どうしても見たい”絵”がある、それが千昭が未来からやってきた理由だった。しかし、今回の時間跳躍によって、千昭のタイムリープの残り回数は無くなっていた。
もう未来には戻れない。タイムリープの存在を知られた以上、ここに残ることもできない。そう言って、千昭は真琴達の前から姿を消した。
翌日、突然姿を消した千昭にクラスは騒然としていた。千昭にはもう会えない、そう考えると、真琴はこれまで千昭の想いに応えなかった自分が許せなかった。
その夜、腕に書かれた数字が真琴の視界に入る。全て使い切ってしまったはずのタイムリープ。しかし、そこに書かれていた数字は「01」だった。千昭が時間を戻したことで、使っていた1回が戻ってきたのだ。
”あの日”に再びタイムリープした真琴。そこにはいつもと変わらない千昭の姿があった。千昭のタイムリープの残り回数は「01」。やはり真琴と同じように、時間を戻すことで回数が戻っていた。
これで千昭は未来に帰ることができる。
真琴は千昭が見たがっていた”絵”を未来に残すことを約束し、彼を見送った。背を向けた真琴が振り向くと、そこにはもう千昭の姿はなかった。
足を止めて泣き出す真琴。そこへ戻ってきた千昭が、顔を寄せて真琴に呟く。
「未来で待ってる。」
その言葉を聞いた真琴は、微笑みながら返事をした。
「うん。」
「すぐ行く。走っていく。」
翌日、グラウンドには功介や果穂とキャッチボールをする真琴の姿があった。やりたいことが決まった、そう言って、真琴は青空を見上げるのだった。
映画『時をかける少女』ストーリー考察
【考察①】「Time waits for no one」を書いたのは誰?
真琴が理科実験室にやってきた時に書かれていた、「Time waits for no one」の英文。直訳すると、「時は待ってくれない」という意味になります。
作中では明らかにされていませんが、この文章を書いたのは”千昭”ではないかと言われています。勉強は苦手なものの、実は英語の成績だけは優秀だった千昭。そんな彼が、いつかやってくる”真琴達との別れ”への想いを綴ったものなのでしょうか。
ちなみに、「(゜Д゜)ハァ?」はこの英文を見た、他の生徒が書いたものだと思われます。何言ってんの?という感じでしょうか。
【考察②】自転車の暗証番号「724」の意味とは?
果穂に告白された功介は、怪我をした彼女を病院に連れていくため真琴の自転車を借りようとします。その時、功介は「ま・こ・と」と呟きながら、暗証番号を「724」に合わせて自転車の鍵を解きました。
これは、「まこと」の3文字を携帯電話のキー配置を当てはめたもの。それぞれ「ま行・か行・た行」の位置が、ダイアルの7・2・4の位置に対応しているのです。
功介にあっさり解かれてしまうところを見ると、真琴のお馴染みのパスワードなのかもしれませんね。
【考察③】タイムリープの回数が戻る条件とは?
物語終盤でも重要なポイントとなった、「タイムリープの残り回数」。回数が無くなるたびに過去に跳べば”使い放題”なのでは?と思われるかもしれませんが、どうやらタイムリープしたことを自覚している場合は、回数が戻らないようです。
お互いのタイムリープによって、真琴は最後の1回を使った千昭からの電話のことを覚えておらず、千昭も功介を助けるためにタイムリープしたことを覚えていません。よって、それぞれのタイムリープの回数が1つずつ戻ったのです。
【考察④】「魔女おばさん」の正体とは?
「タイムリープ」の存在を知っており、真琴に様々なアドバイスをしてくれた、”魔女おばさん”こと芳山和子。実は彼女は、原作の小説版『時をかける少女』の主人公なのです。
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真琴達の物語から20年前、芳山和子はタイムリープで未来からやってきた男子生徒に恋をしました。しかしタイムリープの存在を知られることはルール違反であり、二人の想いは結ばれぬまま、男子生徒は彼女の前から姿を消してしまうのでした。
「でも真琴。あなたは私みたいなタイプじゃないでしょ?待ち合わせに遅れてきた人がいたら、走って迎えに行くのがあなたでしょ。」
真琴へのこのセリフには、過去の自分と同じ運命を辿ってほしくないという、芳山和子の想いが込められているのかもしれません。
【考察⑤】千昭が絵に執着した理由は?
「川が地面を流れてるのを初めて見た。自転車に初めて乗った。空がこんなに広いことを初めて知った。なにより、こんなに人がたくさんいる所を初めて見た。」
自分が未来からやってきたことを明かした千昭は、真琴にこう語りました。千昭が暮らす未来は、現代とは異なる、ひどく荒廃した世界が広がっているのでしょうか。
「白梅二椿菊図」の絵を見るために現代にタイムリープしてきた千昭。修復作業をしていた和子おばさんによると、その絵は何百年も前の”大戦争”と”飢饉”の時代に描かれたようです。
過酷な世界で生きていた人々が何を感じ、どんな想いでこの絵を残したのか。それを知り、未来で生きるヒントにしたい。それが千昭がこの絵に執着した理由なのかもしれません。
2人は未来で会えるのか
千昭が真琴と別れる際に言った、「未来で待ってる」というセリフ。この言葉にはどのような意味が込められているのでしょうか。
「真琴が未来に会いに来てくれるのを待ってる」
つまり、千昭と真琴の再会を示唆しているという解釈があります。確かに、将来的にタイムリープの技術が完成することは、千昭が現代にやってきたことからも明らかです。真琴がそれを使って千昭に会いに行く、という展開もあり得るのかもしれません。
しかし、この言葉にはもっと別の意味があるように思えます。
千昭が見たがっていた、「白梅二椿菊図」の絵。実はこの”絵”こそが、千昭から真琴への「未来で待ってる」だったのではないでしょうか。
別れの時、千昭と真琴はもう二度と会えないことを覚悟していたのかもしれません。
しかし、真琴はこの絵を未来に残すことを伝え、千昭もその気持ちに応えました。真琴が残した絵を、未来で千昭が見る。それこそが、異なる時代に生きる二人が交わした、”再会の約束”なのです。
「私もさ、実はやること決まったんだ。」
そう言って青空を見上げた真琴が、思い描いたもの。
それは、千昭に絵を届けるため全力で”走っていく”、これからの自分の姿だったのではないでしょうか。
まとめ
以上、『時をかける少女』のあらすじ紹介とストーリー考察でした!
千昭と真琴。果たしてこの二人にはどんな未来が待ってるのでしょうか。あなたなりに、この作品の結末についてあれこれ妄想してみるのも面白いかもしれません。
明確な”答え”が提示されていないこの作品において、その可能性は正に無限大ですね!