挑戦を続ける男アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督のおすすめ映画7選!
シリアスながら、深いテーマ性を持つ作品が魅力的なアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督。
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督は1963年の8月15日にメキシコシティで生まれました。イベロアメリカーナ大学へ進学したイニャリトゥ監督は、大学在学中にラジオの音楽番組のDJでショービズ界に足を踏み入れます。その後、映画音楽の作曲など、様々な分野で才能を発揮し、2000年に『アモーレス・ペロス』で長編映画監督デビューを飾ります。この作品で、批評家から一気に注目を集め、メキシコを代表する監督と呼ばれるようになっていきました!
イニャリトゥ監督の作り出す映画は、生と死について描くシリアスな作風の物を基本としながら、ダークファンタジーやサバイバルロードムービーなど、近年では全く新しい作風に挑戦し続けています。
今回はそんなアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の映画作品を7作品選出致しました!公開年順にご紹介しますので、イニャリトゥ監督のルーツから新しく挑んだ作風までの変化を追うことができます!気になる作品があれば是非見てみてくださいね!
目次
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督のおすすめ映画
それでは、そんなアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督のおすすめの7作品を公開年順にご紹介します!
どの作品もハードでシリアスなものが多いながら、哲学的でテーマ性のある見ごたえ抜群の作品ばかりです!
1.アモーレス・ペロス
出典:Amazon.com
あらすじ
メキシコシティで起こる3つの物語。
兄の婚約相手に恋をしてしまい、駆け落ちを決意する青年・オクタビオ(ガエル・ガルシア・ベルナル)。
不倫相手の広告デザイナーとマンションで新たな生活を始めようとするスーパーモデル・バレリア(ゴヤ・トレド)。
殺し屋稼業の傍らに娘を探し続ける初老の元大学教授・エル・チーボ(エミリオ・エチェバリア)。
これら3つの物語が「あるきっかけ」で交差していく――。
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督映画『アモーレス・ペロス』のトリビア
■表題はスペイン語直訳で「犬のような愛」の意味。スペイン語では犬には負のイメージがあり、転じて「みじめったらしい愛」の意味となる。
■主演のガエル・ガルシア・ベルナルは本作が長編映画デビューとなり、端正な顔立ちと演技で注目を集めた。
『アモーレス・ペロス』の注目ポイント!
イニャリトゥ監督のデビュー作である本作は、3つの物語があるきっかけで交差するという、後の『21グラム』、『バベル』の原点とも言うべき作品です!
3つの物語は「あるきっかけ」以外に、共に「犬」という共通点も持っており、表題の『アモーレス・ペロス』が示すように、作品自体も「犬のような愛」がテーマとなっております。
イニャリトゥ監督の後の作品でも共通のテーマとして描かれる「失うことによって得られる何か」を描いているこの作品は、まさにイニャリトゥ監督のルーツとも言える作品です!
基本情報
上映時間:153分
監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ 出演者:ガエル・ガルシア・ベルナル、ゴヤ・トレド、エミリオ・エチェバリア 受賞歴:第56回英国アカデミー賞 外国語作品賞 第73回ナショナル・ボード・オブ・レビュー 外国語映画賞 第13回東京国際映画祭 東京グランプリ、優秀監督賞 公開日:メキシコ 2000年6月16日 日本 2002年2月22日 |
2.11’09”01/セプテンバー11
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あらすじ
2001年9月11日にニューヨークで起きたアメリカ同時多発テロ事件。
この事件を風化させないために、世界11ヵ国の監督たちが9月11日を描き出す短編オムニバス作品。
それぞれの視点で映し出すテロへの想いと平和の願い――。
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督映画『11’09”01/セプテンバー11』のトリビア
■2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロを主題とした11人の監督によるオムニバス作品。
■タイトルの11’09”01は、それぞれの作品上映時間の事。全ての作品がテロ発生日時の数字である11分9秒01フレームで作られている。
『11’09”01/セプテンバー11』の注目ポイント!
11人の監督が同時多発テロをテーマにそれぞれの作品を描き出したオムニバス作品である本作品。
イニャリトゥ監督は、本作品であえて映像を作り出さず、ほとんどが実際のテロの時のニュース映像と人々のざわめく声を使って構成された作品を作っています。
死の恐怖と狂乱を描き出した、テロの恐ろしさを最もシャープに表現した一作と言えます。
基本情報
上映時間:134分
監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ 出演者:マリヤム・カリミ 、 エマニュエル・ラボリ、アーネスト・ボーグナイン、田口トモロヲ 受賞歴:第59回ヴェネツィア国際映画祭 最優秀短編賞、ユネスコ賞 公開日:フランス 2002年9月11日 日本 2003年4月5日 |
3.21グラム
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あらすじ
ある日、クリスティーナ(ナオミ・ワッツ)は夫と娘がトラックにひき逃げされたとの連絡を受ける。
トラックの運転手のジャック(ベニシオ・デル・トロ)は刑務所から出所してから真面目に働きだし、二人の子と妻を養う信仰深い男だった。
一方、大学で数学を教えているポール(ショーン・ペン)は、余命1ヵ月を宣告され、心臓のドナーを待ちわびていた……。
出会うはずのなかった3人の運命が、一つの心臓を巡り、交差する――。
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督映画『21グラム』のトリビア
■表題の21グラムとは、アメリカの医師・ダンカン・マクドゥーガルが行った、人間が死ぬ際の体重の変化の記録実験の結果に基づくもの。
■映像は臨場感のためほとんどが手持ちカメラで撮影されている。
『21グラム』の注目ポイント!
「人の魂の重さは21グラム」という説が由来の表題ですが、一つの心臓を巡る物語である本作は、とてもハードで重い作品です。
時系列がバラバラで構成されており、序盤は分かりづらい作りになっておりますが、登場人物達の取り巻く状況が明らかになった途端、起きている事実を畳みかけてくる構成となっています。
命の重さについて非常に考えさせられる、テーマ性の強い作品です。
基本情報
上映時間:124分
監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ 出演者:ショーン・ペン、ナオミ・ワッツ、ベニチオ・デル・トロ 受賞歴:第60回ヴェネツィア国際映画祭 最優秀男優賞 第75回ナショナル・ボード・オブ・レビュー 男優賞 第8回ゴールデン・サテライト賞 最優秀俳優賞 第19回インディペンデント・スピリット賞 特別賞 公開日:アメリカ 2003年11月21日 日本 2004年6月5日 |
4.バベル
出典:Amazon.com
あらすじ
モロッコに住む2人の遊牧民の兄弟は、ジャッカル退治のため父親からライフルを渡される。射撃の腕を競った2人は、通りかかったバスを狙い、弾を放つ。その弾はアメリカ人夫妻の妻に命中してしまう。この銃撃はテロ行為と断定され、大きな事件として取り上げられる。やがて、使われたライフルの法的な所有権は日本の男にあることが判明する……。
一方、息子の結婚式のためメキシコに出てきたアメリア(アドリアナ・バラッザ)は、トラブルの末、荒原のど真ん中に2人の子供と共に置き去りにされてしまう――。
モロッコ、メキシコ、日本。無関係に思える3つの国で起こる悲劇はある事実で一つに繋がり、結ばれる――。
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督映画『バベル』のトリビア
■表題のバベルは、旧約聖書に出てくる町の名前。天まで届くバベルの塔の建造に怒った神が、人々に別の言葉を話させ、意志の疎通を図れなくした。本作品はこの物語を基に、言葉と心が通じない悲劇が描かれた。
『バベル』の注目ポイント!
言葉が通じないことによる苦しみやジレンマを主題とし、3つの国で起きる出来事が一つの事実で繋がるという、壮大なスケールで描かれる本作品。
人種の壁、言語の壁、価値観の壁、性別の壁といった様々な困難が、3つの国という舞台によって描き出されており、とてもメッセージ性の強い作品になっています!
基本情報
上映時間:142分
監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ 出演者:ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、役所広司、菊池凛子 受賞歴:第59回カンヌ国際映画祭 監督賞 第16回ゴッサム賞 アンサンブル演技賞 第11回サテライト賞 作曲賞 第64回ゴールデングローブ賞 作品賞 公開日:アメリカ 2006年10月27日 日本 2007年4月28日 |
5.BIUTIFUL ビューティフル
出典:Amazon.com
あらすじ
メキシコからスペインに移住した移民であるウスバル(ハビエル・バルデム)は、2人の子供と離婚した妻を養うため、麻薬取引、移民の不法労働の斡旋等で生計を立てていた。
ある時、ウスバルは余命2ヵ月の末期ガンを宣告される。
ウスバルは死への恐怖と闘いながら、家族の愛を取り戻すために残された時間を使うことを決意するが……。
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督映画『BIUTIFUL ビューティフル』のトリビア
■カンヌ映画祭で本作が上映されたとき、その内容の衝撃に映画監督・俳優のショーン・ペンは上映後15分間席を立つ事ができなかった。
■表題のBIUTIFULは、BEAUTIFUL(ビューティフル)の誤字。劇中で主人公であるウスバルが綴った文字から取られている。
『BIUTIFUL ビューティフル』の注目ポイント!
「死期が迫った人間が最後に生きた証を残そうと行動を起こす」という映画は数多くありますが、本作品はそう考えた主人公であるウスバルの取り巻く状況があまりにも重く苦しいものになっております。
移民問題や貧困問題など、やりきれない思いの中で、それでも父親として何かを残そうとするウスバルの姿に心を打たれます!
主演のハビエル・バルデムの演技が素晴らしく、ウスバルの心中や苦い思いがダイレクトに伝わってきます!
基本情報
上映時間:148分
監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ 出演者:ハビエル・バルデム、マリセル・アルバレス、アナー・ボウチャイブ、ギレルモ・エストレヤ 受賞歴:第25回ゴヤ賞 主演男優賞 第63回カンヌ国際映画祭 男優賞 公開日:メキシコ 2010年10月22日 日本 2011年6月25日 |
6.バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)
出典:映画『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』公式Facebook
あらすじ
かつて、スーパーヒーロー映画「バードマン」で一世を風靡したリーガン・トムソン(マイケル・キートン)は、それ以降のヒット作がないまま20年以上くすぶり続ける落ち目の俳優。
再起を賭け、ブロードウェイの舞台に挑むリーガンだったが、降板した俳優の代役を務める実力派俳優・マイク・シャイナー(エドワード・ノートン)の才能に苦しむ。
次第に、舞台での役柄とリーガン自身の境遇が重なっていく……。
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督映画『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』のトリビア
■本作品の撮影は全編が長回しで取られたように見せるため、視覚効果などを用いた非常に高度な技術が使われている。
■主演のマイケル・キートンの演技は批評家達から大絶賛され、数多くの批評家協会から主演男優賞を受賞した。
『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』の注目ポイント!
これまでのイニャリトゥ監督のハードで死生観を問う作風を踏襲しつつ、スーパーヒーロー「バードマン」と主人公・リーガンのファンタジックなやり取りが魅力的な作品です!
映像は全てが長回しの一発撮りに見えるようになっており、その巧みな手法に驚かされます!
また、その映像手法ゆえに真実味が増しているシーンが多くあり、リーガンが娘や舞台批評家に罵倒されるシーンは、なんだか見ているこっちが怒られているような辛さがあります(笑)
今までの作品スタイルを破り、全く新しい作風に挑んだイニャリトゥ監督の姿勢は様々な批評家から絶賛され、本作品で自身初となるアカデミー賞を受賞しています!
一見、どういう事なのかわかりにくいラストとなっていますが、考察していくととても納得のいく内容ですので、是非挑んでみてください!
基本情報
上映時間:119分
監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ 出演者:マイケル・キートン、エドワード・ノートン、エマ・ストーン 受賞歴:第24回ゴッサム・インディペンデント映画賞 作品賞、俳優賞 第86回ナショナル・ボード・オブ・レビュー 主演男優賞、助演男優賞 第30回インディペンデント・スピリット賞 作品賞、主演男優賞、撮影賞 第72回ゴールデングローブ賞 主演男優賞、脚本賞 第87回アカデミー賞 作品賞、監督賞、脚本賞、撮影賞 第68回英国アカデミー賞 撮影賞 第19回サテライト賞 作品賞、主演男優賞、作曲賞 公開日:アメリカ 2014年10月17日 日本 2015年4月10日 |
7.レヴェナント: 蘇えりし者
出典:映画『レヴェナント: 蘇えりし者』公式Facebook
あらすじ
1823年、アメリカ北西部。とある毛皮ハンターの一団のガイドであるヒュー・グラス(レオナルド・ディカプリオ)は、先住民の襲撃から逃げている途中、熊に襲われ瀕死の重傷を負う。
一団の仲間であるジョン・フィッツジェラルド(トム・ハーディ)は、足手まといとなったグラスを殺そうとする。それを見ていたグラスの息子であるホーク(フォレスト・グッドラック)はフィッツジェラルドを問い詰めるが、逆上したフィッツジェラルドはホークを殺し、グラスを置き去りにする。
一部始終を見ていたグラスは、息子への愛を胸に、フィッツジェラルドに復讐を誓う。過酷な道のりを越える、長い旅が始まった――。
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督映画『レヴェナント: 蘇えりし者』のトリビア
■主人公のヒュー・グラスは西部開拓史上に名の残る実在の人物である。熊に襲われ、瀕死の重傷から生還した逸話があり、本作品はその事実を元にしたフィクション作品となっている。
■マイケル・パンクの小説「蘇った亡霊:ある復讐の物語」が原作。リチャード・C・サラフィアン監督の映画『荒野に生きる』のリメイクでもある。
■主演のレオナルド・ディカプリオは本作で自身初のアカデミー賞主演男優賞を受賞した。
■イニャリトゥ監督は今作で異例となるアカデミー賞2年連続監督賞を受賞した。
『レヴェナント: 蘇えりし者』の注目ポイント!
とにかくリアリティを追求して作られた作品です!
ロケは自然が残る未開の地で行われており、極寒のあまり、辞めるスタッフが続出し、主演のディカプリオは何度も風邪を引いたそうです!
本作品の撮影では、自然光での撮影にこだわっており、多くのシーンは「マジックアワー」と呼ばれる明け方と日没の前後1時間の間を狙い撮影されています!
撮影可能時間が限られていることにより、撮影ミスが許されず、臨場感のある映像になっていますね!
本作品は「息子を殺された父の復讐劇」と、単純にくくることができない深いテーマが隠されており、考察すればするほどイニャリトゥ監督らしさがにじみ出てくる作品です!
基本情報
上映時間:156分
監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ 出演者:レオナルド・ディカプリオ、トム・ハーディ 受賞歴:第73回ゴールデングローブ賞 作品賞、主演男優賞、監督賞 第69回英国アカデミー賞 作品賞、監督賞、主演男優賞、撮影賞、音響賞 第88回アカデミー賞 監督賞、主演男優賞、撮影賞 第20回サテライト賞 主演男優賞 公開日:アメリカ 2016年1月8日 日本 2016年4月22日 |
まとめ
以上、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督おすすめ作品を公開年順にご紹介しました。
イニャリトゥ監督の作品は、重く苦しい作品ながら、私たちに「生と死」について訴えかけるものばかりです。
近年ではテーマを裏側にひっそりと忍ばせるものが多く、それだけに私たちが映像の中で見つけた時の心への刻まれ方が深いものになっています。
また、短編VR作品を製作するなど、新しい映像表現も常に模索し続けており、映像、脚本での両面で映画への挑戦を続けています。
そんなアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の今後の作品にも注目です。