笑って泣けて勉強になる歴史映画20選| 映画で勉強シリーズ
「歴史を学ぶこと」って大切なこととはわかっているけれど、今更教科書を開いて勉強するのはちょっと…って躊躇してしまいますよね。わかります。勉強するのなら、楽しく勉強する方が良いですよね。もともと歴史に興味がある方も、今ひとつな方も、映画という最高のエンタメで世界の歴史を学んでみましょう!
教科書に載っている歴史だけが、全てではない事。そして教科書では一文でしか語られないような歴史がいかに面白いか、映画を通してわかるはずです。
「日本史」を学ぶ、4作品
まずは、我らの先祖が歩んできた「日本史」を学べる映画をご紹介いたします!
『男たちの大和/YAMATO』
「祖国のために、愛する者のために我々は逝く」
出典:Amazon.com
あらすじ
かつて戦艦大和の乗組員だった神尾(仲代達矢)の元に、一人の女性が現れる。彼女の名前は内田真貴子(鈴木京香)。かつて神尾の大和での上官で、戦友でもあった内田守の養女だった。父親から遺骨は大和が沈没した場所に散骨して欲しいと言う遺言を受け、一人鹿児島にやってきたのだった。
未だに過去と向き合えない神尾であったが、彼女のために船を出した。神尾は戦艦大和の真実を真貴子に語り始めた。神尾達は特別少年兵として、昭和19年に戦艦大和に乗り込んだ。希望に胸を膨らませての乗船だったが、実際には厳しい訓練が待っていた。彼らの上官の森脇(反町隆史)、内田(中村獅童)は厳しい指導員でありながらも、情熱を持って熱心な指導をしていた。
しかし彼らの努力もむなしく、日本は次第に敗戦の色を濃くしていった。大和が参戦したフィリピンのマリアナ沖海戦では、同型艦の武蔵を始め多くの艦隊が撃沈され、多くの仲間が命を落とした。
1945年4月、ついに米軍が沖縄へ上陸。大和も「天一号作戦」のために沖縄へ出撃することが決まった。しかし、海軍司令部からは大和に、護衛機無しで特攻を行えという無謀な命令が出たのだった…
歴史を映画で学べるポイント
1945年、東シナ海沖で沈没した伝説の戦艦、大和。大和には多くの学生達も戦力として乗船していました。しかし大和が戦いに臨んだのは終戦間近。もう大和には護衛する戦闘機もその他の戦艦もついていなかませんでした。身一つで広い海に出ざるを得ず絶望的な状況であることを、日米の戦況に詳しい人は如実に想像ができます。
それでも祖国を、大切な人を守るために、命を懸けて戦いに行く姿を決して忘れてはいけないと、語り継いでいかなければならないと改めて思います。
こんな人におすすめ
- 日本の戦艦の歴史に興味がある人
- 戦争について考えたい人
こんな人には向かないかも…
- 多くの若者が一気に亡くなるのを見たくない人
- 血が流れるシーンが苦手な人
『海賊とよばれた男』
「日本人よ、いっちょうやってやろうやないかい」
出典:Amazon.com
あらすじ
終戦後、焼け野原となった東京に「国岡商店」は奇跡的に残った。大切な従業員達も続々と復員してくる。国岡鐡造(岡田准一)は「日本人として誇りを失わず、全員一致して社業を再興させよう」と誓う。国岡商店の本来の社業は石油。しかし当時石油は石統(石油統制配給会社)が管理しており、国岡商店に石油を回してもらえるよう頭を下げるが過去の因縁から断られてしまう。
困難には会社を始めた若い頃から、何度も立ち向かってきた。石炭全盛の時代に、国岡はいち早く石油に目をつけた。しかし販売するにも、縄張りがあるため参入に賄賂が必要。「海の上なら縄張りはない」と、灯油で動くポンポン船に直接軽油を売りに行った。いつしか彼らは「海賊」と呼ばれるようになった。
南満州鉄道では、欧米の石油メジャー相手に戦った。太平洋戦争中は南方の石油取り扱いを一任された。戦後は、とにかく仕事を作るためにラジオの修理を引き受け、国内の石油タンクの汚泥を取り除く等何でもやった。
ようやく石油販売の権利を得ると、再び米国の石油メジャーと戦う時がやってきた。メジャーの妨害が続く中、国岡がとった秘策とは…
歴史を映画で学べるポイント
「日本人よ胸を張れ。この男と同じ血が流れていることに。」映画の公開を記念して開催されたキャッチコピーコンテストで、この言葉が大賞をとりました。受賞したのは10代の女性です。10代の子が、この言葉を生み出せるほど、この映画と、国岡の人生に心を震わされたのです。
モデルは出光興産創業者の出光佐三。世界を敵に回しても、日本人として彼は想像もつかない大きな仕事を成し遂げ世界中に衝撃を与えました。「いっちょうやってやろうやないか」と言う、国岡の言葉にどんな人も背中を押されると思います。
こんな人におすすめ
- 日本人が強国相手に闘う話が好きな人
- 胸が熱くなる話が好きな人
こんな人には向かないかも…
- 家庭を顧みず働くこと、働かれることが嫌な人
- 恋愛の要素がたくさん欲しい人
『天地明察』
「解いてみせる、天と地の理を」
出典:Amazon.com
あらすじ
江戸時代、碁打ちの安井算哲(岡田准一)は算術に長け、星を眺めることが好きな男性だった。ある日算哲は、算術と天文学が得意ということで、会津藩の保科正之(松本幸四郎)より全国の北極星の緯度を計測する北極出地を命じられる。算哲は御用頭取の建部(笹野高史)と、副頭取の伊藤(岸辺一徳)と共に北極出地の旅に出た。
北極星の緯度を測ることは非常に難しいものであったが、算哲は次々と「明察」していく。しかし建部から、現在使用している800年前の宣明暦がずれているということを聞かされ、このままでは日食月食の予測が難しくなるということを知った。このことを受け算哲は改暦を考えるようになる。
帰還後、水戸光圀(中井貴一)と保科正之の後押しを受け、現在の宣明暦からの改暦、そして算哲はその総大将に命じられた。改暦は国の一大事。算哲は思想家の山崎闇斎(白井晃)と現在使用している宣明暦、授時暦、大統暦を比較する。授時暦が良いと結論を出すも、帝より元国の暦は不吉であると幕府からの上申が却下される。
認めてもらいたい算哲は、三暦三本勝負と称し、予想される日食と月食の位置を確かめる勝負を実施するのだった…
歴史を映画で学べるポイント
江戸時代の改暦を巡る、実話を元にした話。暦を作るということにどれだけ先人達が苦難の道を歩み続けたのか、そして「天地明察」という夢を追い続けたのか。今当たり前のように日にちも時間もわかることがどれほど凄いことなのか、先人達を心から尊敬するでしょう。
改暦を担った渋川春海(安井算哲)と同時代には、囲碁界史上最強の打ち手と称された本因坊道策、徳川幕府250年の太平に大きく貢献した保科正之、水戸黄門で有名な水戸光圀、そして「和算」という日本独自の数学を生み出した関孝和が生きていました。日本史、そして日本文化史に綺羅星のごとく輝く人物達がこの時代勢ぞろいしていたのです。
「天地明察にございます」、この言葉を算哲が発するのを、時代は違えど我々もしかと見届けようではありませんか。
こんな人におすすめ
- 江戸時代の文化史に興味がある人
- 夫婦の絆を見たい人
こんな人には向かないかも
- 派手なアクション映画が好きな人
- 原作と同じ展開を期待している人
『ラスト サムライ』
「日本人が、日本人の心を忘れてはならない」
出典:Amazon.com
あらすじ
幕末の動乱が終わり、明治の世が始まった。これまで武士が中心だった国家体制も、天皇を中心の体制へと変わり、近代化への転換を始めていた。ちょんまげを廃止、身分制度の廃止など、次々と武士の特権をなくす制度を遂行するが、旧武士達にとっては納得がいくものではなく反発が強まっていた。
そんな中、近代式の軍備を整えるために、一人のアメリカ人が招かれた。彼の名前はネイサン・オールグレン大尉(トム・クルーズ)。彼は南北戦争に従事し、インディアンの一掃部隊を率いて戦ったが、何の罪もない先住民を撃ち殺す政府の方針に疑問を持っていた。納得のいかない業務に従わなければいけない苛立ちを、酒で解消する日々を送っていた。
来日するとすぐに近代国家軍隊の指導にあたるが、元農民からの希望者を募ったものばかりで、とても「軍隊」として成長できるものではなかった。ある日、侍の残党達が政府が計画していた鉄道建設を妨害襲撃。ネイサンと訓練中の軍隊に一掃令が出るが、ネイサンは実戦は任務外である事とまだ戦いができるような状態ではないと拒否するが強行する事に。
案の定軍は惨敗。生き残ったネイサンも、侍達に囲まれ万事休すとなるが、侍軍の総大将・勝元(渡辺謙)に救われ、彼の村に「捕虜」として連れられる。最初は村で「蛮人」扱いを受けるネイサンだが、勝元と会話を続け、村の人と生活を共にするうちに、武士の心に惹かれ始め、武士道を極めようとする…
歴史を映画で学べるポイント
侍姿のトム・クルーズに若干の違和感も感じるも、周りを固める渡辺謙と真田広之がとにかくかっこいいの一言。明治維新後、諸外国も驚くべきスピードで日本は近代国家へと成長していきました。西洋式の軍隊や教育を取り入れ始め、留学生もアメリカやイギリスへ送られました。
真面目で勤勉な日本人は外交上でも少しずつ頭角を表していきますが、その分「日本人として」失われていったものもありました。「花は桜木、人は武士」負けると分かっているのに自分の信念の為に戦う、日本人がすっかり忘れてしまった武士道の心を描いた数少ないアメリカ映画の一つです。
こんな人におすすめ
- 武士道精神を感じ取りたい人
- ハリウッドスターと日本の名優達の共演を楽しみたい人
こんな人には向かないかも
- 史実と時代考証が一致していないことに違和感を感じる人
- 外国人の着物姿に違和感を感じ続ける人
「アジア史」を学べる歴史映画
お次は、日本を飛び出して「アジア史」を学べる映画をご紹介いたします!
『ラストエンペラー』
「帝国の最期に、私は確かに存在していたのだ」
出典:Amazon.com
あらすじ
1908年。幼い3歳の愛新覚羅溥儀(リチャード・ヴゥ)は、乳母に連れられて北京の紫禁城にやってくる。そこで出会った西太后(リサ・ルー)から、皇帝がなくなったことを伝えられる。そして新たな王朝の君主となることを命じられると、突然父や大勢の人々が彼の前に跪くようになった。
清国第12代、そして最後の皇帝が誕生した。家に帰ることはできなかったが、紫禁城に実の母と弟の溥傑がやってきた。ある日弟と喧嘩した溥儀は、溥傑(ヘンリー・キィ)から共和国の大統領の存在を知る。それは即ち、自分の地位は宮殿だけのもので、外の世界に出たら全く通用しないと悟った瞬間だった。
成長した溥儀(ウー・タオ)はイギリス人家庭教師のレジナルド(ピーター・オトゥール)と心を通わせるようになる。ある日彼から、外の世界では弾圧により多くの人々が殺されていると知り、外の世界では何が起きているのか全く分からない自分に憤りを感じ始める。
1924年、北京政変が起こると溥儀(ジョン・ローン)は国事犯として、軍の監視下に置かれることに。日本の大使館に身を寄せるも、彼自身これからアジアで繰り広げられる戦争の傀儡となってしまうことに、この時はまだ気が付いていなかった…
歴史を映画で学べるポイント
中国清朝の最後の皇帝・愛新覚羅溥儀の人生の物語。世界で初めて実際の北京の紫禁城で撮影されたこの作品は、公開前から大きな話題となりました。わずか3歳で即位した彼の即位式の荘厳、華麗なシーンは映画史にも残る有名な一場面となりました。
広大な宮殿と、自分に何が起きているのかさっぱりわかっていない3歳児の対比が非常に印象的です。次第に戦争という時代の波に翻弄されていく溥儀に、普通の人生を送らせてあげたかったと誰もが思うのではないでしょうか。坂本龍一が作曲した切ない旋律の劇中歌が、溥儀の激動の人生を物語ります。
こんな人におすすめ
- 3カ国合作による壮大な演出を楽しみたい人
- 坂本龍一の物悲しい音楽と、物語を楽しみたい人
こんな人には向かないかも
- 近代の複雑な中国史が全くわからないと少ししんどい
- オリエンタリズムに染められた表現に不快感を感じる人
『1987、ある闘いの真実』
「知られざる韓国の『タブー』」
あらすじ
1987年1月14日。一人のソウル大学の学生が南営洞警察の一室で死亡した。彼の名前はパク・ジョンチョル(ヨ・ジング)。亡くなった後司法解剖もされず、すぐに火葬の命が下った。しかしこの火葬同意書に疑問を持ったソウル地検公安部長のチェ・ファン(ハ・ジョンウ)は、警察の圧力がかかる中司法解剖を強行する。解剖の結果は「拷問による窒息死」だった。
この事実は大々的に報道された。世間の批判をそらすために、当局は拷問にほとんど関与していない二人の刑事を逮捕する。刑務所内の収監者の中には、民主化運動化も多数いた。民主化運動家の内通者である看守のハン・ビョンヨン(ユ・へジン)を通じ、民主化運動家のキム・ジョンナム(ソル・ギョング)に拷問に関する情報が渡された。
ジョンナムは今回の拷問事件の真相を明かし、軍事政権を倒そうと決意する。学生デモと機動隊のせめぎ合いが激化する中、大学生のヨニ(キム・テリ)は大学生活動家のイ・ハニョル(カン・ドンウォン)と出会う。学生が活動しても何も変わらないとヨニは、ハニョル達の活動を批判する。
しかしある日、叔父であるハン・ビョンヨンが逮捕されて、ヨニは民主化運動における最重要任務を遂行することとなる…
歴史を映画で学べるポイント
1987。この数字は「1987年」を示しています。1987年、韓国で実際に起きた「6月民主抗争」を基に制作された実話です。警察による大学生の朴鐘哲拷問殺害事件の隠蔽が発端となりました。
終盤に向かい激化していく民主化運動には、息をするのも忘れるほど見入ってしまいます。「机をゴツっと叩いたら、『アッ』っといって死んだ」というセリフが出てきますが、これは実際の警察の発言で教科書にも載りました。
朴槿恵にによる保守政権下で極秘裏に制作されていた、この政権が続いていたら今よりはるかに規模が小さいか、完成度は低かったとチャン・ジュナン監督は語ります。韓国の「タブー」に切り込む傑作です。
こんな人におすすめ
- 軍事政権→民主化運動の構図に関心がある人
- 「タブー史」に興味がある人
こんな人には向かないかも
- 拷問のシーンが苦手な人
- 登場人物の名前を覚えるのが苦手な人
『The Lady アウンサンスーチー 引き裂かれた愛』
「どんなに遠く離れていても、いつも貴方を思ってる」
出典:Amazon.com
あらすじ
ビルマ建国の父として、亡き後も国民から敬愛されているアウンサン将軍(ポー・ザウ)を父に持つ、アウンサンスーチー(ミシェル・ヨー)。彼女はイギリス人の夫マイケル(デヴィット・シューリス)と、二人の息子と幸せに暮らしていた。
1988年3月末、母(マリアン・ユー)が危篤との知らせを受け、ビルマに帰国する。そこで彼女が目にしたのは、学生を中心とした反政府運動に対し、軍が発砲し虐殺されるという変わり果てた祖国だった。「独立の父」の娘アウンサンスーチーの帰国は、すぐに民主化運動家達に伝わった。
彼らはスーチーの自宅に向かい、民主化運動を率いて欲しいと懇願する。迷うスーチーの背中を押したのは、夫のマイケルだった。同年8月26日、アウンサンスーチーはシュエダゴン・パゴダにて集会を開き、50万人が集まった。彼女の影響力を懸念し始めたネ・ウィン将軍は、スーチーの監視を強める。翌年行われる選挙に向けて、スーチーの全国行脚が始まった。
彼女の活動をマイケルは全力で後方支援した。しかしスーチーには自宅軟禁の命が下される。マイケルと息子達にも帰国令が出され、彼女は独りに…離れてもマイケルは遠くイギリスから、妻のためにできることを何でもやった。いつかまた家族みんなで暮らせる日を願いながら…
歴史を学べる映画のポイント
ミャンマーの軍事政権により、長きに渡り自宅軟禁下に置かれた民主化運動指導者のアウン・サン・スーチー。彼女にはイギリスに、イギリス人の愛する夫と息子達がいたのです。
独立の父・アウン・サン将軍の娘ということで、民主化運動を指導することになりますが、決断する時にはいつも夫・マイケルが彼女を支えていました…離れ離れになっても、お互いを想い、愛する気持ちは変わらなかったのです。「鋼鉄の蘭」と呼ばれたアウン・サン・スーチーの魂が、ミシェル・ヨーに乗り移った!
こんな人におすすめ
- 権力に負けない、闘う女性が好きな人
- アウンサンスーチーが、何故自宅軟禁となっていたのか知らなかった人
こんな人には向かないかも
- 軍事政権の残虐な振舞(銃撃など)が苦手な人
- 現在のミャンマーの政策について疑問を持つ人
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『アンナと王様』
「多くのことを、貴女から学んだ」
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あらすじ
1862年、戦争で夫を亡くしたイギリス人のアンナ(ジョディ・フォスター)は、10歳になる息子のルイ(トム・フェルトン)を連れ、シャム(当時のタイ)へやってきた。シャムの国王モンクット(チョウ・ユンファ)より命を受け、宮廷の家庭教師として働くためであった。当時のイギリスでは多くの女性が、アジアに家庭教師として渡航していた。
アンナは家庭教師として働き始めると、何でも自分の国とシャムを比較し、国王にも大きな態度で接してしまう。それでも国王は特にアンナを怒る事なく、彼女の働きぶりを見守るのだった。国王には58人子供がおり、その中にアンナの息子のルイも混ざり、アンナの授業を受けていた。彼女の授業は英語、科学はもちろん、国際的な教養に至るまで幅広いものだった。
アンナは次第に宮廷に受け入れ始められて行った。アンナも次第に自分の物差しだけでシャムを見る事をやめて、文化にも理解を示し、国王と心を通わせるようになる。次第にお互い恋愛感情を持ち始めるが、一国の王がイギリス人女性に恋をする事などあってはならず、それは彼らだけの秘密となった…
歴史を学べる映画のポイント
19世紀のシャム(タイ)の、高貴な宮廷文化、豊かな自然が冒頭から感じ取ることができます。ジョディ・フォスター演じるアンナが、当初「郷に入れば郷に従え」の精神が皆無で、傲慢で嫌なイギリス女性に感じ取れますが、愛情を持って王の子供達に接する姿や教養の深さに観ている側も国王と一緒に惹かれていきます…
急遽開かれた晩餐会で、チョウ・ユンファ演じるモンクット国王がアンナをワルツに誘うシーンにハートを撃ち抜かれない女性はいないのではないでしょうか。欧米では何度もリメイクされる人気の作品にもかかわらず、タイでは上映禁止の不思議な作品です。
こんな人におすすめ
- 東南アジアの宮廷文化に興味がある人
- 恋のドキドキも、切なさも感じたい人
こんな人には向かないかも
- 「出すぎる女性」が苦手な人
- イギリスの植民地政策で、どこに領土があったのか全然わからない人
「ヨーロッパ史」を学べる歴史映画
続いて、ヨーロッパの歴史を学べる映画をご紹介いたします!
『トロイ』
「この身が燃え尽きるまで、私は戦う」
あらすじ
紀元前12世紀。都市国家トロイとギリシャの強国スパルタは、長年にわたる戦いを終え、戦いの終結を祝う宴を開いていた。しかし宴の最中、トロイの第二王子パリス(オーランド・ブルーム)は、スパルタ王メネラオス(ブレンダン・グリーソン)の妻・ヘレネ(ダイアン・クルーガー)と恋に落ちてしまい、トロイにヘレネを連れて帰ってしまう。
大激怒したメネラオスの兄・アガメムノン(ブライアン・コックス)は、ヘレン奪還とトロイ征服の為、ギリシア軍をトロイへ進軍させる。息子の不祥事に苦悩したトロイ王プリアモス(ピーター・オトゥール)も、ギリシアとの全面戦争を決意する。そのギリシア軍には、最強の戦士アキレス(ブラッド・ピット)も従軍していた。
トロイ対ギリシアの戦いは混迷を極める中、アキレスの従兄弟、パトロクロス(ギャレッド・ヘドランド)がアキレスの甲冑を纏い戦いに臨み、トロイの第一王子ヘクトル(エリック・バナ)との一騎打ちにより命を落とす。パトロクロスの敵を討つために、アキレスは一人トロイの陣地に乗り込み、ヘクトルとの対決を望む。
互角の戦いを繰り広げたものの、最後はアキレスが勝利をし、ヘクトルの遺体は馬車に括り付けられて引きずりまわされるという侮辱的な措置が取られた。息子の遺体を取り返すために、プリアモス王は危険を承知でアキレスのもとを訪れ、遺体は返され、二人の間でヘクトルの弔いの期間休戦することを約束する。しかしギリシア軍は、トロイに密かに巨大な「木馬」を送っていた…
歴史を映画で学べるポイント
「トロイの木馬」。コンピューターウイルスとして、一時期この名前は世界中で恐れられましたが、元々の語源はギリシア神話のトロイア戦争で使われた罠装置のことです。
伝説のトロイア王国はなぜ滅んでしまったのか、不死身のはずの勇者・アキレウスは何故「アキレス腱」の語源になったのか。神話がいかに今を生きる我々の生活にも息づいているのかがわかる作品で、それに気が着くことが出来ると面白いです。少しでもギリシア史に明るい人は、ラストシーンにハッとする展開もありますので、ぜひご注目ください。
そして絶世の美女・ヘレネにダイアン・クルーガーをキャスティングしたのは拍手喝采ものです。
こんな人におすすめ
- ギリシア神話に興味がある人
- 古代の戦争、戦術に興味がある人
こんな人には向かないかも
- 全編かっこいいオーランド・ブルームを期待している人
- 恋人同士のハッピーエンドを望む人
『グラディエーター』
「真のヒーローが、今ローマに帰ってきた」
あらすじ
西暦180年。ローマ帝政時代中期。ゲルマニア遠征で武勲を上げた平民出身の将軍・マキシマス(ラッセル・クロウ)は、皇帝マルクス・アウレリウス(リチャード・ハリス)に自分の跡を継いで次期皇帝に、と頼まれていた。
しかし、皇太子コモドゥス(ホアキン・フェニックス)がこの事を知ってしまい、自分は父親から愛されていないと嘆き、皇帝を暗殺し自ら即位してしまう。そして皇帝の死の真相を追及していたマキシマスとその妻子にも処刑を命じてしまう。
マキシマスは生き残るも絶望のあまり倒れこみ、気が付くと剣闘士候補の奴隷として奴隷商人に売られていた。しかし元将軍の経験から頭角を現し始め、マキシマスは剣闘士として再びローマに戻ってくる。戦績を積み、名を上げれば奴隷の身分から解放されコモドゥスに謁見できると知ったマキシマスには、コモドゥスへの復讐心が芽生えていた。
マキシマスはローマで名を上げ始め民衆からも認められる存在となっていった。そして遂にコモドゥスへ謁見。コモドゥスはマキシマスの生存に驚き、民衆の前で殺そうとするも民衆のブーイングにより断念…日に日にコモドゥスの人気は落ち始める。コモドゥスは民衆が納得する形で、マキシマスを葬り去ろうとコロシアムでの一騎打ちに臨む…
歴史を映画で学べるポイント
世界遺産王国・イタリアの中でも随一の名所・ローマのコロッセオ。ここはかつて剣闘士が対剣闘士、時には対獅子と戦った場所でした。その剣闘士にスポットを当てたのがこのリドリー・スコット監督の名作『グラディエーター』です。
名高い将軍マキシマスが、陰謀に巻き込まれ剣闘士に身分を落とすも、正義のために戦い続ける姿に胸を締め付けられます。音楽はハンス・ズィマーが担当しました。一度聴いたらなかなか忘れられない印象深い音楽が、映画全体を彩っています。
こんな人におすすめ
- ローマのコロッセオを訪れたことがある人、またこれから訪れる予定の人
- 正真正銘のヒーローの戦いを観たい人
こんな人には向かないかも
- スカッとする結末を望む人
- ヒール役に感情移入しがちな人
『キングダム・オブ・ヘブン』
「彼らの願いは、1000年経った今も実現していない」
出典:Amazon.com
あらすじ
十字軍がキリスト教と、イスラム教の両方の聖地エルサレムを奪還してから、約100年後の1184年。フランスの小さな村に、イベリンの領主である騎士ゴッドフリー(リーアム・ニーソン)が現れ新たな十字軍への志願者を募った。
妻と子供を相次いで亡くした鍛冶屋のバリアン(オーランド・ブルーム)も声をかけられますが、断ってしまう。しかしゴッドフリーから自分が実の父親であることを明かされ、父と共にエルサレムへ向かうことを決意する。
旅の途中、バリアンは父から、「キリスト教徒とイスラム教徒が争うことなく共存する世界を構築する」という夢を聞かされていた。しかし旅の途中で、ゴッドフリー一団は襲撃され、ゴッドフリー自身は命を落とし、また船は嵐に遭い、結局バリアン一人が生き残った。
命からがら聖地エルサレムに到着し、エルサレム王ボードアン4世(エドワード・ノートン)と、姉の王女シビラ(エヴァ・グリーン)と出会う。ボードアン4世の夢も、父と同じであった。
しかしイスラム王サラディン(ハッサン・マスード)との和平を望む穏健派と、イスラムとの徹底抗戦を望む過激派の対立が次第に深くなってくる。ボードアン4世も亡くなり、ついに過激派が一方的にサラディンに戦争を仕掛け、遂にキリスト対イスラムの全面戦争が始まってしまい、バリアンも戦いに臨むのだった…
歴史を映画で学べるポイント
聖杯伝説、テンプル騎士団と「13日の金曜日」など、数々の伝説とミステリーを残した、十字軍の遠征を基にした物語です。歴史ファンにとってはたまらない題材です。監督はリドリー・スコット、主演はオーランド・ブルーム、それだけで映画ファンもワクワクしてしまいます。
1000年以上続くキリスト教とイスラム教との、聖地エルサレムを巡る戦いが、いかに根深い問題であるのかを改めて学ぶことが出来る作品です。多少脚色があるものの史実を忠実に描いた歴史大作といえるでしょう。
こんな人におすすめ
- キリスト教とイスラム教の対立に興味がある人
- 女性のアラビア風の衣装が好きな人
こんな人には向かないかも
- エルサレムを巡る対立構造がわかっていない人
- 予習なしで気楽に映画を観たい人
『ブーリン家の姉妹』
「全てを敵に回しても、手に入れたかったものがあった」
出典:Amazon.com
あらすじ
イングランドの田舎で美しく育ったアン(ナタリー・ポートマン)とメアリー(スカーレット・ヨハンソン)。頭が良く社交上手アンと、おとなしいけど優しい心を持ったメアリーは、末の弟のジョージ(ジム・スタージェス)と仲良く育っていた。やがてメアリーが姉より先に商家へ嫁ぐことに。
そんな折ブーリン家と姻戚関係のあるハワード家から、イングランド王ヘンリ8世(エリック・バナ)と、王妃キャサリン(アナ・トレント)が男児を授かることが出来ず関係が冷え切っているという話を聞く。父親(マーク・ライランス)は、アンを王の愛人にするべく画策し、ヘンリ8世が村を訪れた際に王に気に入られるようアンに命じる。
ひと際美しいアンに、王は一目ぼれ。いい雰囲気となるも、狩りに出かけた際に、アンを王が追う最中に落馬しケガをしてしまう。その看病に当たったのが、すでに人妻だったメアリーだった。王はメアリーのことも気に入り、ブーリン家に爵位を与え、家族を宮廷に招いた。
メアリーは王の寵愛を受け、やがて妊娠。一方アンは婚約者がいる男性と、王の許可もなく勝手に結婚するが、結婚は取り消されフランスへ追放された。メアリーは妊娠中に体調を崩し隔離、ヘンリ8世はまた別の女性に興味が移っていた。事態を危うんだ父親は、アンをフランスから呼び戻した。
フランスですっかり洗練されたアンに、王は再び惹かれていく。アンの野望の実現への扉が、今開かれていった…
歴史を映画で学べるポイント
イギリスを変えてしまったと言っても過言ではない、二人の姉妹と一人の王の物語。イギリス史に詳しい人ならすぐにピンとくる、ヘンリ8世とアン・ブーリンを題材にした映画です。
美しいブーリン家の姉妹のうち、先に王に見初められたのは妹のメアリーでした。しかし、こんなところで姉のアンの野心は止まりません。法も、神も、民衆もすべてを敵に回してまで、彼女が手に入れたかったものは何なのでしょうか。やがて黄金時代を迎えるイギリスの、序章となる一時代…
こんな人におすすめ
- イギリス王室のドロドロした歴史が好きな人
- 中世イギリスの王室の衣装が好きな人
こんな人には向かないかも
- 姉妹間の争いを見るのが耐えられない人
- 野心家すぎる女性が苦手な人
『ミス・ポター』
「自由に生きたい。自由に人を愛したい。それの何が問題なのかしら」
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あらすじ
1902年。ロンドンの名家の子女ビアトリクス・ポター(レニー・ゼルヴィガー)は、子供の時から絵を描くことや物語を創ることが大好き。ある日彼女は、出版社に自分が描いた絵と物語を持ち込んでいた。いくつもの出版社に「青い洋服をきたウサギなんて」と、何度も断られてきたが、ようやくウォーン兄弟が経営する出版社で採用してくれることが決まった。
しかし採用された理由は、作品の素晴らしさではなく、自分達の会社で働き始めた三男に儲けのなさそうな仕事を押し付けてしまおうという算段だった。そんなことは露も知らないビアトリクスは大喜びで帰宅。子供の時からずっと自分を支えてくれた「友達」がようやく認められたのだから。
打ち合わせとして彼女の家を訪れてきたのは、ウォーン兄弟の三男のノーマン(ユアン・マグレガー)。彼はビアトリクスの描いた「青い服を着たウサギ」と物語にすっかりほれ込んでしまった。何とか彼女の希望通りに、コストを抑える計画を立て、一緒に印刷会社にも赴き細部まで色彩にこだわって一冊の本を作り上げた。
「ピーターラビットのおはなし」、空前絶後の児童文学の大ベストセラーが誕生した。仕事を通してお互いが人生のパートナーであることに気が付いたノーマンは、ビアトリクスに結婚を申し込む。しかし身分違いの結婚に両親は猛反対。自分が愛した人と結婚することの何が問題なのかと、ビアトリクスも猛反発。
両親は結婚に一つ条件を出す。ひと夏ロンドンを離れている間に、気持ちが変わらなければ結婚を認める、と…
歴史を映画で学べるポイント
世界で最も愛されるうさぎのピーター・ラビットと、その仲間達。彼らを生み出したのが、イギリスの女流絵本作家のビアトリクス・ポターです。児童文学の世界で空前の大ベストセラーが生み出された背景には、彼女の秘められた恋があったのです。
大英帝国時代、良家の女性の幸せは「結婚」という考えが根強く残っていました。しかしビアトリクスは自分の力で本を出版し、当時では珍しい職業婦人として活躍するようになります。
彼女の功績はピーター・ラビットを生み出した事だけではありません。ピーター達の故郷、そしてイギリスが誇る世界遺産「湖水地方」は、ビアトリクスがいなかったら大規模な開発をされ、「イングランドで最も美しい風景」は今見る事ができなかったかもしれないのです。鑑賞後は是非エンドロールまで観てください。ビアトリクスの「友達」が、たくさん会いに来てくれます。
こんな人におすすめ
- ピーターラビットが好きな人
- 湖水地方の風景を楽しみたい人
- 親からの自立を目指している人
こんな人には向かないかも
- 愛する人との別れが辛い人
- もっとピーターラビットシリーズの創作場面を観たい人
『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』
「勝利、それ以外考えられない」
あらすじ
1940年5月、ヒトラー率いるナチスドイツは東ヨーロッパの大半を占領し、突如オランダ、ベルギー、フランスの制圧に動き始めた。、フランスの同盟国イギリスでは、政権交代が進み、保守党と労働党の連立政権及び新首相が要求されていた。
新たに首相に任命されたのはウィンストン・チャーチル(ゲイリー・オールドマン)。政権内からは和平交渉などの意見が上がるが、チャーチルは徹底抗戦、勝利(Vicory)が最も大事な言葉としこの意見を拒否し続ける。戦況はナチスドイツ軍の勢いのある侵攻が続く。遂に5月17日以降、北フランスが制圧され、イギリスのフランスへの派遣部隊はダンケルクの海岸線へ追い詰められる。
チャーチルは4万5000人の兵士達を引き揚げさせるために、軍艦のみならず、漁船、小型船、遊覧船とあらゆる民間の船を緊急招集し、ドーバー海峡を渡らせ、沖で待つ駆逐艦へ兵士を救出する作戦を決行した。
この作戦の成功で国民の士気は高揚したが、イギリスの孤立、そして自分自身も政界で孤立が進んでいた。和平交渉に持ち込むべきなのか、戦い続けるべきなのか…決断を迫られる中国会に向かう途中、チャーチルは突然車を降り地下鉄に飛び乗った…
歴史を映画で学べるポイント
あらゆる映画賞を総ナメにした作品です。名優ゲイリー・オールドマンがチャーチルを演じましたが、再現率の高さにまず眼を見張ります(アカデミー賞のメイクアップ&ヘアスタイリング賞を、日本人の辻弘一氏がこの作品から受賞しました)。
第二次世界大戦史上、最強の作戦と称されるダンケルクからの救出、「ダイナモ作戦」の指揮を執り、イギリスの未来を決定する選択に苦悩する姿には手に汗を握り見入ってしまいます。一方で一癖も二癖もある指導者が、時に見せるチャーミングな一面も見どころの一つです。この作品を観る際には是非クリストファー・ノーラン監督の『ダンケルク(2017)』をセットで鑑賞して欲しいです。
こんな人におすすめ
- クリストファー・ノーランの「ダンケルク」を鑑賞した人
- アカデミー賞を受賞した特殊メイクに興味がある人
こんな人には向かないかも
- しっかりとした結末を観たい人
- チャーチルが首相に就任した時の、ヨーロッパの戦況をわかっていない人
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『ライフ・イズ・ビューティフル』
「君たちの幸せが、僕の幸せ」
出典:映画『Life is Beautiful』公式Facebook
あらすじ
北イタリアの田舎町に、ユダヤ系イタリア人のグイド(ロベルト・ベニーニ)がやってくる。叔父を頼りに給仕の仕事をしていたが、毎日誰かにいたずらをしていたり、ユーモアたっぷりの謎かけをしたりと明るく暮らしていた。ある日小学校の教師をしていたドーラ(ニコレッタ・ブラスキ)に一目ぼれ。
あの手この手でドーラに熱烈アプローチをし、遂に二人は駆け落ち同然で結婚。そして一人息子のジョズエ(ジョルジョ・カンタリーニ)を授かった。一家の幸せは長く続かず、ナチスドイツによるホロコーストの波がイタリアにも押し寄せる。グイドとジョズエは強制収容所に連行されていくが、ドーラも自ら志願して強制収容所行きの列車に飛び乗る。
母親と離れ離れになったジョズエはママに会いたいとぐずり始める。グイドはジョズエに、「これは生き残るためのゲーム。1,000点貯まったら本物の戦車に乗って家に帰れる。でも泣いたり、ママに会いたいと言ったら減点だよ」と嘘をつき、ジョズエに希望を持たせるのだ。
強制収容所で子供が見つかったら真っ先に殺される、グイドもジョズエの存在を隠すために必死だった。しかしグイドの弁術にかかれば、何故か楽しいゲームに早変わり。また周りの大人達の助けもあってジョズエは希望を失うことなく生き延びていった。
やがて戦争は終わり、ナチスの撤退と共にグイドとジョズエも収容所から逃げることを試みる。しかしドーラも一緒でなければ意味がない。グイドはジョズエをゴミ箱の中に隠し、ドーラを探しに飛び出していった…
歴史を映画で学べるポイント
ヨーロッパ史を学ぶ上で避けては通れないナチスのホロコースト。ヨーロッパ全体がナチス・ドイツの「ユダヤ人狩り」により、恐怖に支配されていました。その恐怖はイタリアにも広がりを見せていました。
映画の序盤はユダヤ系イタリア人のグイドが、恋をしたドーラに何とか想いを伝え、愛する息子のジョズエを授かるまでのお話。しかし、後半は打って変わってユダヤ人強制収容所での話に変わります。
家に帰りたがる息子の命を守るために、グイドはジョズエにこれは生き残るためのゲームであると優しい嘘をつきます。ナチスを題材にした映画はその悲惨さを描かれるものが多いですが、この話は極限の環境の中での家族の愛の話です。
自分がグイドだったら、ドーラだったら、同じことができるのかをひたすら考えさせられてしまいます。涙なしでは観られない、心の底から平和を願いたくなる作品です。
こんな人におすすめ
- 極限状態の映画でも、家族、大切な人への愛を観たい人
- 戦争の映画でも、笑えるシーンがある方が良い人
こんな人には向かないかも
- 独特なユーモアセンスについていかれない人
- 前半と後半のスタンスが異なるのがついていかれない人
『ヒトラーと戦った22日間』
「必ず、この地獄から生き延びてみせる」
あらすじ
第二次世界大戦真っ只中の1943年9月27日。ナチスドイツ占領下のポーランドのソビボル収容所に、この日も沢山の捕らえられたユダヤ人が連行されてきた。
彼らはナチスにすぐさま選別され、有益と判断したごく一部の職人以外をすぐにガス室送りにし殺していった。しかし生き残った人達もナチスの為に死ぬまで強制労働を強いられ、親衛隊の将校達の気分次第で簡単に殺された。
そんな中この地獄のような収容所から脱走する計画を立てるものもいた。反乱メンバーの中心人物のレオ(ダイニュス・カズラウスカス)は、ユダヤ系ロシア人で、ソ連軍中佐のサーシャ(コンスタンチン・ハベンスキー)に目をつける。しかし他の脱走グループの失敗により、さらにナチスの支配体制は厳しくなり、ゲームを楽しむかのように次々とユダヤ人を殺していった。
この光景に我慢ならなくなったサーシャも遂に反乱を決意する。目標は収容所全員での脱走。そして反乱メンバーは報復として、ナチス将校や看守達を一人ずつ連れ出し全員抹殺する計画を立てた。その最中、ナチス将校達から収容所内のユダヤ人に集合がかかる…
歴史を映画で学べるポイント
ポーランドのソビボル収容所で起きた、捕虜の大脱走を基に制作されたロシア映画です。ガス室送りを免れた後にも続く強制労働、ドイツ人将校達のあまりの残虐非道な行いに、正直目を背けたくなるシーンもちらほら…地獄のような緊張感が約2時間続きます。正直辛いです。しかし人類の歴史の一部として、絶対に見届けなければいけないという気持ちに駆られる作品でもあります。
こんな人におすすめ
- アウシュビッツ以外の強制収容所の話に興味がある人
- 緻密に練られた脱出劇に興味がある人
こんな人には向かないかも
- 過激、残酷な描写が苦手な人
- 後味の良い映画が観たい人
「アメリカ史」を学べる映画
『風と共に去りぬ』
「前を向かなきゃ。故郷の乾いた風が私を待っているわ」
出典:映画『Gone with the wind』公式Facebook
あらすじ
南部ジョージア州タラの大金持ちの娘、スカーレット・オハラ(ヴィヴィアン・リー)は、幼馴染のアシュレー(レスリー・ハワード)にずっと思いを寄せていた。しかしアシュレーは彼の従姉妹のメラニー(オリヴィア・デ・ハビランド)と婚約してしまう。慌ててスカーレットはアシュレーに告白するも、アシュレーは最初からメラニーの事が好きだったのだ。
フラれた直後にとある男性と出会う。彼の名前はレッド・バトラー(クラーク・ゲーブル)。最初からなれなれしく接してくるバトラーに、スカーレットは反発するも、何故か次第に惹かれていくのだった。南北戦争が始まると、自棄になったスカーレットはメラニーの兄のチャールズ(ランド・ブルックス)と結婚するが、すぐに徴兵され帰らぬ人となった。
未亡人となったスカーレットはメラニーがいるアトランタへ出かけた際に、バトラーと再会する。しかし戦況はスカーレット達がいる南軍に不利な形勢が続き、北軍がアトランタへ接近する。スカーレットとバトラーは、赤ん坊を抱えたメラニーと共にタラへ戻るが、タラもすっかり廃墟となっていた。
戦争が終わり、捕虜となっていたアシュレーも帰還。アシュレーへの長い思いを断ち切れない。タラの土地を守らなければならない。しかしバトラーの存在も気になる。スカーレットが最後に選択するもの、そして本当に愛する人はいったい誰なのか…
歴史を映画で学べるポイント
映画史に残る超大作のこの作品は、アメリカの南北戦争の時代が舞台です。スカーレット・オハラのトンデモ言動が、突っ込みどころ満載ではありますが、何か憎めないし可愛い、いざって時にはタフすぎてため息が出てしまいます。そしてレッド・バトラーの何とも言えない色気と、やはりスカーレットと同じ匂いのするトンデモ言動にもまた目が離せなくなるのです。
本当に大事な人が誰なのか失ってから気がついてしまう、一言愛していることを伝えればいいのに、と男女間のトラブルは今も昔も変わらないな…と、1939年に制作された映画であるにもかかわらず、しみじみと思ってしまいます。スケールの大きさ、個性的で魅力的な人物とストーリー、壮大な音楽。どれをとってもやはりこの作品は「大作」であると再認識させられます。
こんな人におすすめ
- 映画史に残る名作を観たい人
- わがままなのに魅力的なヒロインに興味がある人
こんな人には向かないかも
- 長すぎる映画が苦手な人
- 身勝手な主人公に共感できない人
『パール・ハーバー』
「もう一度、あの頃に戻りたい」
出典:Amazon.com
あらすじ
アメリカ陸軍航空隊に所属する若きパイロットのレイフ(ベン・アフレック)とダニー(ジョシュ・ハートネット)。二人は小さい時から空を飛ぶことを夢見る大親友だった。軍の健康診断が実施された日、レイフは看護婦のイヴリン(ケイト・ベッキンセイル)と出会い恋に落ちる。だが、レイフは自らイーグル隊へ志願し、イギリスの上空でドイツ軍と戦うことを選んだ。
ダニーとイヴリンは共にハワイ・オアフ島に転属となるが、そこにレイフが戦死したという手紙が届く。悲しみにくれるイヴリンをダニーが懸命に慰める。しかし次第にお互い惹かれ合うようになり、深い関係へとなっていった。しかし突如、戦死したはずのレイフが二人のもとに帰ってきた。
レイフとダニーはイヴリンをめぐり、殴り合いの喧嘩をする。翌日、1941年12月7日早朝、突然日本海軍の真珠湾の奇襲作戦が始まった!あっという間に多くの艦船、航空機が破壊されてく中、レイフとダニーも飛行場に駆けつけ何とか航空機を発射され、敵機を撃墜していった。
そして二人は真珠湾攻撃の報復として、作戦要員に選ばれて新たな戦場に向かうことに。イヴリンはダニーの子供を身ごもっていたが、もう後には引けない戦いと運命が3人を待っていた…
歴史を映画で学べるポイント
日本人も、アメリカ人も忘れてはいけない、1941年12月8日。日米開戦の幕開けとなる「真珠湾攻撃」を、アメリカ側の視点で描いた作品です。その為か、やや反日感情をたきつける表現があったり、ラストはそこで終わる?と日本人は少し感じるかもしれません。ただ戦争が多くの人の運命を変えてしまったという事実は、敵も味方も同じであることを忘れてはいけません。
戦争に翻弄された親友同士と、その恋人の運命を見届けてほしいと思います。
こんな人におすすめ
- 米国側の視点から、真珠湾攻撃を知りたい人
- 三角関係にドキドキする人
こんな人には向かないかも
- 日本軍の描かれ方に敏感な人
- 米国の主観での描き方が受け付けない人
『ドリーム』
「性別?肌の色?そんなものに、私たちは負けない」
出典:映画『Hidden Figures』公式Facebook
あらすじ
1960年代のアメリカ。ソ連との冷戦の最中、この2つの大国は宇宙でもどちらが先に月に人を送るか、国を挙げてスペースレースを繰り広げていた。
アメリカバージニア州。天才的な数学の能力を持つ、黒人女性のキャサリン(タラジ・P・ジョンソン)は、同僚のドロシー(オクダヴィア・スペンサー)、メアリー(ジャネール・モネイ)と共に人類を月に送る政府計画の為、NASAのラングレー研究所で働いていた。
数学の能力が認められたキャサリンは、初めて黒人女性計算手チームから有人宇宙飛行を遂行するマーキュリー計画のスペースタスクチームの一員に選ばれる。大きなチャンスを与えられたキャサリンだが、黒人差別はNASAでも色濃く残っており、オフィスの同僚は皆冷たく、トイレさえも白人と黒人で分かれていた。
ドロシーは昇進を希望するも明確な理由なく却下され、メアリーはNASAの正式なエンジニアになるには白人専用の学校で学位を取らなければならないと言われ、3人それぞれ壁にぶち当たっていた。ある日キャサリンの上司ハリソン(ケビン・コスナー)は、キャサリンに離席する時間が長すぎることを咎める。
初めてキャサリンは、自分は黒人専用のトイレに800m走っていかなければいけないことを訴えた。ハリソンは黒人専用のトイレがあったことすら知らなかった。キャサリンの能力の高さに気付き始めていた彼は行動に出る。
メアリーも学位を取得するチャンスを得るために行動を起こし始める。ドロシーも新たに導入されたコンピューターに、黒人計算手の未来が危ういと気づき、白人男性の誰もが匙を投げたプログラミングに独学独力で挑む。3人の快進撃が始まった…!!
歴史を映画で学べるポイント
黒人差別が当たり前だった、1960年代のアメリカ。そんな時代でも、世界最高峰の頭脳が集まるNASAで、黒人でありながら米国初の有人宇宙飛行を成功に導いた女性達がいたのです。
彼女達への差別や試練は、「本当に、NASAでもこんなことがおきていたのか」と疑ってしまうほどのものですが、この作品はただ「人種差別」「男女差別」に立ち向かうものではありません。差別を受け入れて、困難な環境でも、誠実に働き、溢れ出る能力を示すことにより周囲の評価を変えていく…彼女達にしかできない戦い方なのです。
声高に意見を言い、平等を訴えることだけが戦う術ではないという事を教えてくれます。今まで表舞台に出てくることがなかった、最強のハンサムウーマン達の活躍に、どんな人も胸が熱くなること必至です。
こんな人におすすめ
- 才能ある女性の、サクセスストーリーが好きな人
- 勇気付けられる話が好きな人
こんな人には向かないかも
- ブラックジョークが苦手な人
- オーバーな脚色よりも、史実をしっかり観たい人
『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』
「報道の自由は、誰にも渡さない」
あらすじ
1966年、ベトナム戦争前線ではアメリカ人兵士が苦しい戦いを強いられていた。戦況の視察に来ていた国防総省職員のダニエル(マシュー・リース)は、国防総省長官のマクナマラ(ブルース・グリーンウッド)にありのままに戦況を報告した。
しかしその報告はアメリカにとっては不都合な報告であるとし、事実発表を取りやめることに。マクナマラは報道陣に対し、「戦況は極めて順調である」と応えた。しかしダニエルはこの真実を記録し、機密文書として秘密裏に保管していた。
1971年、ワシントン・ポストの代表キャサリン(メリル・ストリープ)は、亡き夫に代わって新聞社の経営に奔走していた。編集長のベン(トム・ハンクス)に業務について指導をするも、経験が浅いからと取り合ってもらえず、なかなか代表として認められてもらえないでいた。
ある日、ライバル紙のニューヨーク・タイムズ紙がベトナム戦争の調査記録である機密文書『ペンタゴン・ペーパーズ』の一部を報道することが明らかになった。どうしても全文を報道したいベンは、機密文書全てを手に入れることに奔走し始める。
しかしその最中、アメリカ政府がニューヨーク・タイムズ紙に対し、この記事が機密保護法に違反していると記事の掲載の差し止めを要求していた。にもかかわらずベンは調査を続け、遂に機密文書を記録したダニエルと出会うことができ、4,000ページにも及ぶ「ペンタゴン・ペーパーズ」を入手する。記事を掲載するために残された時間は10時間しかない。
ベンは差し止めになっている記事を報道することに対し、弁護士に相談を持ち掛けるも「違法の為、会社の存続を揺るがす」と意見される。しかし世紀のスクープがこの手の中にある。あきらめきれないベンはその旨をキャサリンに伝え、最後の判断をゆだねるのだった…
歴史を映画で学べるポイント
「ペンは剣よりも強し」まさにこの言葉を表す作品です。40年前のアメリカを描いているにも関わらず、この映画はまさに現代のアメリカ社会を象徴しているのです。ベトナム戦争が泥沼化している事をひた隠しにしていた政府の最高機密文書を、報道すれば社員全員投獄されるかもしれない…
極限の選択を迫られる新聞社の女社長と、まさにペンを武器に戦う新聞記者の熱い議論は、報道の自由とは何なのかを改めて考えさせられます。監督はスティーブン・スピルバーグ、主演はメリル・ストリープとトム・ハンクス!映画界の巨匠と二人のオスカー俳優の最強のタッグ、必見の一本です!!
こんな人におすすめ
- アメリカでのベトナム戦争に対するアクションが知りたい人
- ジャーナリズムに関心がある人
こんな人には向かないかも
- ベトナム戦争の顛末がわかっていない人
- 女性経営者の立場の低さに納得がいかない人
まとめ
正直、20本に絞る事は非常に難しかったです。まだまだ、教科書には載らない歴史を描いた映画はたくさんあるのですから。
日本の思想家・岡倉天心はこんな言葉を残しています。「われわれは、われわれの歴史のなかにわれわれの未来の秘密が横たはってゐるといふことを本能的に知る(「東洋の思想」より」)
今一度、我々が今生きる世界は、どのような道を辿ってきたのか学ぶことは必要なのだと思います!