「当たり前」は見当違い!? じわじわと心に響く『セトウツミ』名言集
映画に登場する名セリフは日常に置き換えても有効的なものが多いですよね。
今回は男子高校生の日常を切り取った会話劇『セトウツミ』から、単純なようで実は深い
人生の道しるべとなるような、グッとくる素敵な言葉を集めました!!
あらすじ
クールな秀才、内海想(池松壮亮)と天然な元サッカー部、瀬戸小吉(菅田将暉)。クラスも性格も違う二人だが、放課後塾に行くまでの1時間を持て余す内海と、部活を辞めて時間を持て余す瀬戸の利害関係は合致していた。
特に約束をしているわけではないが、いつも同じ川辺で、同じ座り位置に落ち着き、ダラダラと話しながら暇つぶしをしている。瀬戸発信で唐突に始まる言葉遊びや、瀬戸が想いを寄せる樫村一期(中条あやみ)と内海の三角関係について、時にはシリアスな家族事情まで語り合う。
二人の日常に立ちはだかる小さな波風があるうちは話が尽きない。ゆったりと過ぎる時間と移り変わる季節の中で、ただ「喋る」だけの青春を描く。
心に響く『セトウツミ』名言集
たとえ舞台となる川辺は代り映えしなくとも、観る人のツボをくすぐる絶妙なユーモアセンスが光る会話の面白さは原作漫画ファンも納得の仕上がりです!
二人の会話で生まれる言葉にはシンプルながら、毎日の中で見落としがちな大切なものに気付かせてくれるヒントが多くあります。しんみり胸を打つ全力の“無駄話“。
今回はそんな『セトウツミ』に登場するキャラクターのセリフの中から、選りすぐりの名言や名台詞を、解説を踏まえてご紹介していきます!
【名言①】「大人になったら大人の楽しさってあるんちゃう?」
子供の頃は楽しかったはずのイベントが、年々面白くなくなっているという瀬戸(菅田将暉)に対して内海(池松壮亮)が返した一言です。
話の発端はずっと川を見てたたずむ、ひとりのおじさんでした。内海曰く“30代から50代くらい”の白骨死体ばりの推定年齢不明のおじさんを見守る瀬戸は、自分たちもいつか同じように年を取っていくことに不安にかられるのです。そんな瀬戸に対して、内海は「嫌なことを忘れているだけで、子供の時は子供らしい悩みがあったはず」と“今”だけを捉える瀬戸を諭します。
斜に構えた様なイメージのある内海ですが、時にはポジティブな一面を見せたり、多角的に考えられる高校生であることが分かるセリフです。
【名言②】「めっちゃ神妙な面持ちやな」
学校中が恐れる先輩の鳴山(成田瑛基)に「顔がムカつく」と怒られた内海。瀬戸から「ちょっと神妙な面持ちやってみ」というリクエストに応えやってみますが、「笑ろてるやん!」と言われてしまう始末。深刻な話をするからちゃんと神妙な面持ちをしてくれという瀬戸の口から出たのは、「最近、猫の体調がすぐれず、心配した母親が高級な餌を与えすぎる」という何気ない相談…かと思いきや、「ウチの親今度離婚すんねん」という突然の告白。
猫の話かと思っていた内海は、予想を裏切られ更に笑ったような“神妙な面持ち”を繰り広げる。
という着地点のない会話をする二人の前に、いつもとは表情がまるっと異なる鳴山が現れ、川をずっと眺め立ちすくむおじさんの元へ歩み寄りました。なんと、このおじさんは鳴山の実の父親だったのです!!
18歳の誕生日を迎えた鳴山が最後の養育費を受け取る姿から、番長・鳴山の知られざる一面に直面した二人は、不本意にも「神妙な面持ち」になっていました。
ググッとこの作品の世界観に惹き込まれるシーンでの瀬戸のセリフです。
【名言③】「一周半回ってちょうど怖い」
想いを寄せる樫村(中条あやみ)のメールアドレスを入手した瀬戸は、最初のメールの内容をどうするか乙女のように悩み、内海に相談します。未送信の下書きを内海が確認すると、「映画のチケット手に入れた、行く行けへん、よう考えて」というほぼ犯行声明文のような内容でした。男らしさなどを考慮した結果、“一周回って”この文にたどり着いたという瀬戸に、内海が返した一言です。
天然すぎる瀬戸のボケに上書きしたような表現が、内海の人となりを表していて面白いですね。結局、瀬戸が初めて樫村に送ったのは晩御飯の話に着地しました。
【名言④】「肯定と否定、共感と反感をバランス良く放り込む」
樫村をメロメロにする方法を教えてほしい瀬戸に対して、内海がアドバイスしたセリフです。
内海は「樫村の自己肯定感を高めろ」という難しい節から入り、「お前はすでに完璧な状態であるし、ありのままで素晴らしい」って伝え続けろと更に難しい節を重ねます。結論、伝えたかったのは“アメとムチ”についてでした。
今作にたくさん散りばめられている、シュールで独特なツッコミは淡々とした会話劇を飽きさせないポイントですね!
天然でおバカな瀬戸と対照的に、回りくどいほどの表現や、マイナーすぎる知識を使った内海のツッコミの中毒になる方も多いでしょう…!
【名言⑤】「この川で暇をつぶすだけの青春があってもいいんちゃうか」
瀬戸と出会う前の内海の本心がこぼれた一言です。内海と瀬戸の運命の出会いが見られる重要なシーンでの言葉でした。
自分ならではの青春を掴み取った内海にとって、部活に燃える青春、クリエイティブに創作する青春…と定番の型にハマった青春は物足りないようです。
クールな内海が他にどのような一面を持っている人物なのかが伝わってくる名シーン・名セリフです。
【名言⑥】「お前かて米だけ食べとってたら生きられるけど、デミグラスソースのハンバーグとか食べたいやろ?」
瀬戸と内海の川辺での関係が始まるきっかけとなったエピソードで、瀬戸が放った一言です。
先輩に背いてサッカー部を辞めることになってしまった瀬戸が川辺に訪れ、内海に突然相談をし始めます。その内容は部屋に大量のコバエが発生し、虫嫌いなので困っているというもの。
殺虫剤を提案した内海に、猫がいるので使えないと愛猫への配慮を見せる瀬戸。そこで内海は「食虫植物」を置くことを提案します。「お前天才やな!」と素直に喜ぶ瀬戸の姿に、鬱陶しく思っていたはずの内海は表情を変え、その日は別れます。
意気揚々と実行し見事コバエを駆除した瀬戸は、翌日、地面に這いつくばりながら持参したタッパーに、「食虫植物」の餌となるアリを集めていました。無視することもできるというのに、内海は何をしているのか確認し、「水だけでも生きられる」ことを助言します。
内海のアドバイスに対して、名言で返す瀬戸…アホやと思いつつも、瀬戸の魅力に惹かれた内海の表情はなんだか晴れやかで、印象的なワンシーンです。
【名言⑦】「夏休みが終われへんかったらいいのにな」
夏休みのある日、相変わらず川辺に集まる瀬戸と内海。瀬戸が提案した線香花火対決で、内海が言った願い事です。普段はクールに構える内海の気持ちが言葉となって溢れ出た、キュンとするセリフです。
ちなみに瀬戸の願いは自室に出た「子持ちのクモが出ていくこと」。
内海から瀬戸へ想いを伝える、この二人の関係性を象徴するような名台詞です。
【名言⑧】「コミュニケーションなんて演技力やん」
ムカつく話の流れがあるという瀬戸が始めた話に対して、内海が言った一言です。
それは“知ってる”という「うん」と、“それで?”という相槌を込めた「うん」使い分け。話し相手に勘違いされ、まるで自分が知ったかぶりをしたような扱いを受けるのに納得がいかないという話でした。
一匹オオカミの立ち振る舞いに慣れた内海は、疑問がかった演技をするように助言をしますが、素直な瀬戸は嫌がります。
コミュニケーション能力が高い方が可愛がられると知っている内海は、「大人になること」を示唆します。「…ソレガオトナニナル…?」と内海に習った疑問がかった演技でしらばっくれる瀬戸の愛嬌もまた魅力ですが、無理に自分の価値観を押し付けず、重みのある言葉を相手に伝える内海は、高校2年生とは思えないほど達観した「大人」ですね。
【名言⑨】「命ってのは例外なく終わりを告げるもの」
自分の誕生日に飼っていたみーにゃんが死んでしまった為、落ち込む瀬戸を励ます内海のセリフです。
いつも大道芸をやっているバルーンさん(宇野祥平)に協力してもらって、瀬戸の誕生日サプライズを考えていた内海。バルーンアートで作ってもらった花冠に、派手なバースデーサングラスを瀬戸に付けたものの瀬戸のテンションは低い。バルーンさんと一緒にクラッカーを鳴らして祝福するも、瀬戸のテンションは低い。
プレゼントを渡しても、浮かない表情の瀬戸の口から出た不幸な話に「みーにゃんは間違いなく幸せやで」と励ます内海のセリフは、瀬戸を想う気持ちが伝わるステキな一言でした。
当の瀬戸は、何とか励まそうとする内海に対して、バルーンの花冠とサングラスをつけてもう一度励ましのフレーズを言わせます。
仕方なく対応する内海に「バカにされてる気がする!」と怒る瀬戸。さらにはプレゼントがガチャガチャであることにも怒り、スマホカバーが欲しかったと駄々をこねます…。それでも優しく対応する内海に、ガチャガチャを4回やりたい、「俺の良いところ10個言って」とわがままを立て続けにぶつける瀬戸。呆れながら「ペットが死んだら願いってこんな叶うん?」とこぼす内海でした。
きちんとサプライズを用意する内海の優しい一面と、ここぞとばかりに甘える瀬戸の可愛い一面が垣間見えるワンシーンですね!
【名言⑩】「彼らもまた一期一会を大切にしているのでしょう。なんかムカつくけど。」
エピローグである一期(中条あやみ)のエピソード内でのセリフです。
自分に全く興味を示してくれないだけではなく、他人に興味のない内海が唯一関心を示す瀬戸という存在に嫉妬する愛らしい樫村。放課後、必ず一目散に瀬戸が待つ川辺に向かう内海を見守る樫村ですが、ある日の内海は寒がっているであろう瀬戸のために暖かいミルクティーを用意していました。二人並んで座る様子を見て、切なくも暖かくも感じているワンシーンです。
諦めたように微笑みながら帰っていく樫村の哀愁が心に刺さる名台詞ですね。
ちなみに樫村一期は由緒ある寺の長女で、妹の名前は一会。姉妹合わせると、「一期一会」となります。
まとめ
気付けば一緒に過ごすのが日課になっているような、二人の関係性には人間関係を豊かにするヒントが溢れていますね!
「相手を笑わせよう」という思惑がなく、いたって真面目な川辺ライフは決して華やかな時間ではありませんが、周りの人を巻き込み、ブレない芯とユーモアに溢れていました。
彼らの表情豊かな言葉が、”日常”を過ごす私たちの道しるべになってくれるかもしれません。元気が欲しい時には作中のやり取りを思い出してニヤッとしてみてはいかがでしょうか!