映画『オブリビオン』結末ネタバレ考察 | ハッピーエンドと言える根拠とは
2013年のSF映画『オブリビオン』は、優れたビジュアル効果がなされているにも関わらず、結末に賛否がある作品としても有名です。またこの映画は鑑賞後「これってハッピーエンドでいいの?」と、解釈に戸惑う作品でもあります。本作が「惜しい作品」、「あと1歩だった」などと評される理由はどこにあるのでしょうか?
この記事では、『オブリビオン』ラストの考察を中心に、あらすじやみどころなどネタバレ有でご紹介します。「オブリビオンの結末に納得がいかなかった方」や「ハッピーエンドと捉えることのできる具体的な根拠をお探しの方」に特におすすめです。
目次
映画『オブリビオン』について!
予想不可能な映画『オブリビオン』は考案から公開までに、およそ8年の年月が費やされた作品です。監督を務めたのは『トロン: レガシー』で知られる、ジョセフ・コシンスキー。元々映像クリエイターであった監督は、過去にナイキやアップルなどのCM制作も手掛けています。
またこの映画の視覚表現が美しく洗練されているのは、監督が大学で機械工学や建築のデザインを学んだことが、1つの理由として挙げられるかも知れません。監督はこの映画について、「SFを見ない人のためのSF」かも知れないと語っています。
また主演ジャックを務めたトム・クルーズは、コシンスキー監督のデザイン力やアイデアなど独特の世界をクリエイトする能力を高く買っており、『オブリビオン』は彼がこれまでに出演したSF作品と違った味わいのある作品と評しています。2020年には、コシンスキー監督とトム・クルーズが再びタッグを組んだトップガンの続編、『トップガン マーヴェリック』が公開予定です。
英語『オブリビオン』のネタバレあらすじ
時は2077年。地球はガランとした廃墟と化していました。そんな中相棒ヴィクトリア(アンドレア・ライズボロー)と地球での任務を任されたジャック(トム・クルーズ)は、過去の記憶を抹消されています。空にぽっかりと浮かぶテットには多くの人類が移住しており、ジャックはその施設の核エネルギーとなる海水をくみ上げるポンプを、エイリアンから守っていると聞かされているのです。
しかしある日上空から2017年に打ち上げられたNASAの宇宙船が墜落し、クルーの1人であるジュリア(オルガ・キュリレンコ)を助けました。このジュリアの発言を機に、真実が分からなくなっていくジャックは、本当に起こったことを知ろうとします。そして最後には地球のために犠牲を払い、実は敵であったテットに立ち向かうのです。
「オブリビオン」は忘れられていること、すなわち忘却という意味を持っています。よって本作品は、記憶を消されてしまっている主人公ジャックが、周囲の人物の発言と微かな記憶をヒントに真実を知る、謎解きミステリーという側面も持っているのです。ここでは、そんなオブリビオンの細かいあらすじを、完全ネタバレでご紹介しましょう。本作品を未見の方は、ご注意ください。
【オブリビオンのあらすじ①】何もないガランとした地球
2077年3月14日、主人公ジャックは記憶を抹消されてから、5年という月日が過ぎていた。ミッション終了まで、あと2週間……。ジャックの任務は、誰もいない廃墟化した地球で、海水を核エネルギーに変える採水ポンプの監視や護衛をすることだ。相棒であるヴィクトリア(以下ヴィカ)は、主に通信を担当。管制塔のサリー(メリッサ・レオ)と連絡を取り、ジャックを監視して敵から守る。
50年前スカヴというエイリアンの侵略がはじまり、月が破壊された。月が無くなったことで地球は大混乱となり、追い打ちをかけるように地震や津波が発生し都市が崩壊したのだ。スカヴからの侵略が始まり、人類は核兵器を用い戦った。結果勝利したものの、放射能に汚染され、地球はもはや人が住める状態ではなくなっていた。
人類の生き残りは宇宙管制センターである“テット”を設立し、そこへ移住した。その後人々は、テットから土星の月である“タイタン”に移り住む予定である。人類の去った地球ではエイリアン「スカヴ」の中の生き残りと思われる者が、採水ポンプの監視ドローンやジャックの命を狙い攻撃を仕掛けてくるのだ。ジャックの任されたこのミッションは、人類の存続がかかった重要な任務だと聞かされている。
【オブリビオンのあらすじ②】最高のチーム
テットのサリーからは「最高のチーム」と評されているが、ジャックとヴィカの考え方は、180度違う。ヴィカはこのミッションを一刻も早く終え地球を離れたがっているが、ジャックは今でも地球に親しみを感じ、名残り惜しさすらあるのだ。更にジャックは日々、不思議な夢に悩まされる。それは会ったこともないが愛おしい女性と、地球で過ごしている夢であった。
ジャックはある日、図書館の跡地でドローンの回収作業を行った際、“古代ローマの叙事詩”を拾う。その書物には、「理想の死とは苦境との対峙」と書いてあった。
そんな時、採水プラントでメルトダウンが起こり、燃え始めた。ジャックは急いで現場に向かうが、そこでスカヴが発信していると思われる信号を受信する。その発信元へ行くと、そこは廃墟化した、かつてのエンパイア・ステート・ビルだった。
その後ジャックは日頃のストレスから交信を切り、誰にも教えていない秘密の隠れ家に向かった。ジャックはヴィカをいつかここへ連れて来たいと考えているが、彼女は規則違反だからといって、タワーの外に出ようとしない。
湖畔のほとりにあるその古い家には、サングラスやアナログレコード、本など廃墟から集めたコレクションが並べられている。ジャックはラフな格好に着替え、かつての人類の生活を堪能する。
【オブリビオンのあらすじ③】夢の中の女性が現れる
ジャックがくつろいでいると、何か大きな物体が空から落ちてくるのを目撃した。彼が慌ててその場へ向かうと、昔人類が作ったと思われるNASAのオデッセイ号が墜落している。人間が生存しているのを確認したジャックは、その内の1人であるジュリアという女性を救出した。他4人の生存者がいたが、ドローンからの攻撃で殺されてしまう。
タワーに連れ帰ったジュリアは意識を取り戻すなり、「ジャック…」と彼の名を呼ぶ。彼女は、デルタ睡眠により少なくとも60年以上眠っていた。しかも年を取らないで眠るコールドスリープ状態であったため、全く老けていない。ジュリアは宇宙船に戻って、記録テープであるフライトレコーダーを回収しなければと言う。
一方ジャックは味方であるはずのドローンが人類を殺したことに疑問を持ち、自分にはなぜ5年分の記憶しかないのかと考える。その後2人は、先日墜落したスペースシャトルの墜落跡へ向かった。ジュリアはレコーダーを無事見つけるが、引き上げようとしたところ、何者かに襲われる。目を覚ますと、ジャックは暗闇の中両腕に手錠を掛けられ椅子に座らされていた。
そのマルコム(モーガン・フリーマン)という名の男は、「理想の死とは苦境との対峙」と先日ジャックが拾った本と同じ内容のフレーズを吐いた。ライトを付けろとマルコムが指示すると、明るくなりそこには大勢の人が立っている。それは人類の生き残りであった。
我々は、エイリアンでなく人間であるとマルコムは言う。マルコムは、テットの破壊を試みていたのだ。そんな話をしていると、ドローンがジャックの居場所を探知し攻撃を仕掛けてきた。ジャックは「ドローンが自分を狙って、また来るぞ!」とマルコムと脅し、自由の身を得た。マルコムは真実を知りたければ、汚染地区へ行ってみろとアドバイスする。
【オブリビオンのあらすじ④】危険区域の本当の理由
汚染地区は、放射能汚染がひどいため立ち入り禁止だと聞かされていた。ジャックはその後エンパイア・ステート・ビルの跡地へと向かい、ジュリアに君は何者なのかと問いつめる。そこでジュリアは、自分がジャックの妻であることを告白した。これによりジャックは、昔この展望台で彼女に指輪を渡した事などを、次々と思い出していく。
その後2人はタワーへ戻るが、偵察機のカメラからジャックとジュリアの雰囲気をうかがったヴィカは、タワーのドアを開けない。彼女は嫉妬の念もあり、サリーにジャックと今後上手くやっていけそうにないことや、これまで隠していたジュリアの存在を知らせた。ところがその瞬間、格納されていたドローンが起動し、ヴィカはあっさりと殺された。
その上サリーは、今度はジュリアを欲しがった。新しい任務のため2人でテットへ戻ってくるように指示を出すが、ジャックはそれを無視し偵察機であるバブルシップで逃亡する。しかし敵からの攻撃をまいているうちに、汚染区域に入り墜落してしまう。ジャックは、そこで信じられない光景を目の当たりにした。自分が乗っているのと同じ偵察機、そしてそこから降りてきた自分とそっくりの人物がいるのだ。
あまりのことに驚いた2人のジャックは、向かい合い互いに銃を構える。それを見て唖然とするジュリアに、流れ玉があたり負傷した。そこでジャックはもう1人のジャックを気絶させ、52号のバブルシップに乗り込む。医療薬を取りに行くためだ。ジャックは岩場の上に、自分達が住んでいるタワーとそっくりのデザインのタワー52を見つけ驚いた。建物の中には案の定、ヴィカがいる。やはり彼女もクローンであったのだ。
その後ジュリアの元へ戻ったジャックは急いで彼女の手当てをし、例の隠れ家に連れて行く。一晩が明けて、ジャックはマルコムが率いる人類を助ける決意をした。テットが汚染区域だとジャックらを脅していたのは、クローンのジャック同士が顔を合わせないようにするためであった。マルコムの警告は正しかった。ジャックとジュリアは、いつかこの場所に戻って暮らすことを約束する。
【オブリビオンのあらすじ⑤】テットへの反撃を開始!
2人はマルコム率いる人類のもとへ向かった。マルコムは、地球で本当に起こったことをジャックに教える。それによると、ジャックらが信じていたテットこそ、月を破壊した犯人であったと分かる。その後地球に大勢のジャックの複製が現れて、人類を死に追いやったのだ。ジャックはプログラムされ、殺人マシーンと化していた。
しかしマルコムは書物を読んだり、ジュリアを救ったりする49号のジャックを見た時、彼にはオリジナルジャックの人間性が残っていると希望を持ち、接触を図ったのだ。ジャックはドローン172号がテットを破壊するよう、プログラムし直した。周囲では、生き残りの人々がこれを見守る。
しかしこのドローンが宇宙に向けて発射させるという時になって、テットが派遣したドローン3機が姿を現わし、172号のドローンを台無しにした。そこでジュリアの提案により、ジャック夫妻がテットに行く特攻作戦の計画を立てる。ジュリアはコールドスリープ装置に横たわり、ジャックに見守られながら眠りに就いた。
ジャックは装置を積んだ偵察機バブルシップに乗り込み、テットの方角を目指す。その際に、この間回収したフライトレコーダーを観た。60年前の映像が流れ、ジャックは全てを知ることとなる。ジャックはテットの中に、上手く侵入した。
そして遂にサリーの正体である、赤い目をした逆三角形の四面体(知的生命体)が姿を現わした。サリーは60年前のNASAの指令官であったため、そのルックスを利用されていたのだ。ジャックが、装置を開けると、そこからはジュリアではなくマルコムが飛び出す。約束が違うと混乱するサリーであるが、彼らは死を覚悟の上、その場でテットを爆破させる。
思い出の隠れ家で目を覚ましたジュリアは、話が違うため驚く。それと同時に、テットが爆発し消滅するのを地球から目撃してしまう。他の人類も、それを悲しそうに見つめていたジャックとマルコムが犠牲を払ったのだ。そして3年が経ち、ジュリアには女の子が生まれた。そこへ、かつてジャックと戦った52号のジャックが現れる――。
映画『オブリビオン』の魅力的なキャスト
ジャック・ハーパー(クローン49号)/トム・クルーズ
この物語の主人公です。正式にはクローン49号のジャック。スカイタワー49を拠点とし、日々ドローンのメンテナンスに励みます。テットにより、過去5年以内以前の記憶は一切消されており、そのうえ偽の情報をインプットされていました。彼は自身がクローンであることを知らず生きてきたが、ある時自分とそっくりの人物に出会うことで、事実を悟ることとなるのです。
書物を読んだり、テットからの指令を無視しジュリアを助けたり、人間味のあるクローンであることから、マルコムからも信頼される存在になりました。ジャックを演じるのは『宇宙戦争』などのSF作品でも活躍しているトム・クルーズ。彼はこの作品について「今までになかったようなSF映画。何度も観てもらうたびに、新しい発見があると思う」と語っているようです。
ジュリア・ルサコーヴァ/オルガ・キュリレンコ
墜落した宇宙船から救出された生存者で、後に60年前のオリジナルジャックの妻であったと分かります。コールドスリープ状態から目覚めた時、夫であるはずのジャックの横にヴィカがいることに困惑しました。ジャックに本当のことを教えるきっかけとなる、重要な人物です。
ジュリア演じているのは『007 慰めの報酬』で、華やかなボンドガールを演じたオルガ・キュリレンコです。また彼女は007をパロディ化したスパイ・コメディ・アクション映画『ジョニー・イングリッシュ アナログの逆襲』にも出演しています。
ヴィクトリア“ヴィカ”・オルセン/アンドレア・ライズボロー
通称ヴィカ。主人公ジャックの業務上のパートナーであり、まるで恋人同士のように彼と共同生活をしています。生真面目で規則を守る性格。テットからの指令にも従順ですが、地球での生活にはうんざり気味です。騙されていた彼女は任務を終わらせ、他の人類の元に戻ることを心待ちにしていました。
オリジナルのヴィカがジャックに恋心を抱いていたため、クローンである彼女もその性格を受け継いでいます。ジュリアが現れたシーンでの、何とも言えない表情は特に印象的。テットから不要とみなされた途端に射殺された、気の毒な人物とも言えるでしょう。
マルコム・ビーチ/モーガン・フリーマン
人類の生き残りの代表。若い頃に月が破壊されて以来、地球にずっと住んでいる初老の男性です。ラスト付近ではジュリアの身代わりとなり、49号のジャックと共に人類の大敵であったテットを破壊しました。「理想の死とは苦境との対峙」、その言葉通り自らが犠牲になり人類を守った勇敢な人物であり、この映画のキーパーソンとも言えるでしょう。
この貫禄のある人物を、人情味ある演技で知られる実力派俳優、モーガン・フリーマンが演じています。彼は『ショーシャンクの空に』や『ダークナイト三部作』、『LUCY/ルーシー』など幅広いジャンルの映画作品の出演で有名です。
映画『オブリビオン』のどんでん返しをネタバレ整理
『オブリビオン』ではストーリー中盤以降に、大きなどんでん返しがあります。本作品がややこしく感じられるのは、おそらくこのせいではないでしょうか。このどんでん返しにより、観ている人はこれまで信じていた事実が一気に覆され、ジャックと共に困惑させられることとなるのです。
どんでん返し前に明かされた偽の記憶
2077年ジャックとヴィカは、テットに住む人類のエネルギー資源となる巨大なポンプをスカヴから守る任務が与えられています。理由は半世紀前にスカヴというエイリアンが月を破壊し、地球に侵略してきたことがはじまりでした。
人類はスガウと戦い勝利するも、放射能汚染が酷く、地球には住めなくなってしまいます。そこで人類は宇宙管制センターのテットを建設、ここが人類の仮住まいとなりました。多くの人々がそこで生きていると信じているジャック。また地球上は放射能汚染されているため危険区域とされ、立ち入り禁止です。
どんでん返し後に明かされた真実
実は、人類が作ったと言われていたテットが敵の施設であり黒幕でした。モニターに映るサリーは60年前から老けていないところをみると、テットが用意した人工知能だと考えられます。テットが欲しかったのは地球の海水です。そこで月を破壊し、たくさんの隕石を地球に降らせました。
それに対してNASAは2017年に宇宙船オデッセイ号を派遣し、テットの調査を試みたのです。この時の宇宙飛行士7人の内、ジャックとジュリアは夫婦で搭乗していました。7人のクルーはコールドスリープ状態でしたが、その後ジャックとヴィカのみ操縦室に移ります。しかし緊急事態を察知したジャックは、他の5人のクルーを守るため、宇宙船を切り離したのでした。
その5人のクルーの中には妻のジュリアも入っており、それが60年経って地球に墜落したのです。テットに吸収されたジャックとヴィカは、たくさんのクローンを複製されました。そして殺人マシーンのプログラムをされたジャックが、ごまんと地球に現れ人類を殺害したのです。そもそもスカヴというエイリアンは存在しておらず、味方であるはずの人類の生存者を悪者だと信じ込まされていたに過ぎません。
よって人類の生存者は、地球に身を潜めていたマルコムが率いる人達のみとなります。ショックなことに人類を滅亡の危機に追いやったのは、プログラムし直された大量のジャックだったのです。
映画『オブリビオン』3つのネタバレ考察
【考察①】ご都合主義なエンディング
『オブリビオン』は、エンディングに賛否のある作品です。ひょっこりと52号のジャックが現れる場面は、釈然としないエンディングとしても有名かも知れません。49号のジャックが死亡したため、52号のジャックで間に合わせる、というようなご都合主義的な結末と解釈する方もおられることでしょう。
またこの結末に関しては、クローン1人1人に人格があるか?などの問題にもつながります。哲学的な問いでもあるため、人によって答えがさまざまであっても不思議ではありません。しかしこれ以外の部分に焦点を当てた場合、『オブリビオン』のエンディングは、明るい希望が持てる作品だとも言えるでしょう。
【考察②】ジュリアが連れている娘は、どのジャックの子供?
ラストシーンでは、ジュリアに女の子が生まれていました。この子供はどのジャックの子供なのでしょうか?これには2つの説が考えられます。
1.クローン49号のジャックと湖畔で一晩過ごした時の子供であるという説
2.60年前に、ジュリアとオリジナルジャックがNASAの宇宙船に乗り込む前にできた子供であるという説
もしもオリジナルのジャックの子供であるのなら、この娘は60年間も母親の胎内で過ごしたことになり、生命の神秘が感じられます。地球からテットに到達するまでの時間は39日間であるため、ジュリアは妊娠に気が付かなかった可能性もあるでしょう。
しかしデルタ睡眠中の母親の胎内で、胎児が生き残れるかどうか?には疑問が残ります。そう考えると、1のクローン49号の娘であるという説の方が、一般的で無難かも知れません。いずれにしても、子供を授かったというエンディングからは生きる希望が感じられ、ハッピーエンドとしても解釈できるのです。
【考察③】ジュリアを訪ねたのが、なぜ52号のジャックであったのか?
劇中では描かれていませんが、地球上には39号や7号や50号など、さまざまなジャックの複製がいると考えられるでしょう。その中でも52号のジャックは、一瞬ですがジュリアと出会っていました。彼が主人公のジャック同様に、心を持ったクローンであることは「3年間、ジュリアを忘れられなかった」というセリフが物語っています。
また52号のジャックは、49号と似た性格であると考えられます。これは共にオリジナルジャックの個性が残っているといえるでしょう。これは49号がタワー52に立ち寄った際「君も一度地上に降りてみないか?」とヴィカに尋ねた時、ヴィカ52号は「ルール違反よ、その話はもうしないで!」と返しているからです。
52号のジャックは自らの足を使い、ジュリアの居場所である湖畔の隠れ家を見つけ出しました。この場所を探し当てたということは、52号の過去の記憶すなわち、オリジナルジャックの記憶が、49号以上に復活したことが示唆されています。また49号はこのことをあらかじめ予測し、人類の住家ではなく秘密の隠れ家にジュリアを運んだのかも知れません。
なぜオリジナルの記憶が戻ったのか?可能性として考えられるのは、テットが破壊されたことにより、ドローンをはじめこれまでのシステムが機能しなくなったからです。
劇中のラストで52号は「僕は彼だ、僕はジャック・ハーパー」と言っています。またジャックは「僕らの魂は愛から生まれ、時を超え死にも打ち勝つ」とも言いました。「時を超え」というからには、60年の年月である可能性が高いのです。そのように考えると、本作品のラストはジュリアにとっての真のハッピーエンドなのかも知れません。
【考察④】アンドリュー・ワイエスの絵画『クリスティーナの世界』
出典:『MoMA The Museum of Modern Art』公式Facebook
『オブリビオン』のラスト付近では、ワイエスの絵画である『クリスティーナの世界』がアップで何度か映し出されます。これはジャックの隠れ家に飾られている絵ですが、この絵が映し出されることにどんな意味があるのでしょうか?監督はこれについて、ジャックとジュリアがもっとシンプルな世界に戻りたがっており、この絵はそれを象徴していると語っているようです。
『クリスティーナの世界』は、草原で這うように横たわっている女性が描かれた作品です。これは小児麻痺で歩けない女性が車いすを拒否し、自力で歩こうとしている姿に感嘆を受けたしたワイエスが、その敬意を表す為に描いた作品と言われています。またジャックらがいるはずのテットが大爆発した瞬間、ジュリアが悲しみで崩れ落ちるようにかがみ込むシーンがありますが、このカットが『クリスティーナの世界』の絵を思い出させる点も興味深いです。
まとめ
『オブリビオン』のラストやみどころについて、ネタバレでご紹介しました。この映画はインパクトの強い微妙なワンシーンのために、それ以外の重要なカットを見落としがちな作品とも言えるでしょう。しかしその1点に捉われるのは、もしかするともったいないことなのかも知れません。本作品は、見方によって何倍も想像力を刺激する作品でもあるのです。もしも機会があれば、再度ご鑑賞ください!
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