息をすれば死に至る…!?映画『ドント・ブリーズ』の怖さをネタバレ解説
若者の泥棒たちが侵入した家の主は、盲目の老人だった――。この部分だけに注目すれば、まるで弱いものいじめをする映画に思えてしまうかもしれません。しかし『ドント・ブリーズ』のキーマンとなるのは、元軍人の超人的な能力を持つ老人だったのです!
密室に閉じ込められる王道的展開を基盤にし、異色の要素を交えながらおくる最強スリラー。息が詰まるほどの閉鎖感、そして緊張の張り詰めた空気には身が凍ること間違いなし。思わず我々も、息を潜めながら鑑賞してしまうことでしょう。
物語のあちこちに隠された伏線にも要注目です。若者たちの運命は一体どうなってしまうのでしょうか?本記事の解説ではネタバレを含みますので、未鑑賞の方はご注意くださいね!
目次
映画『ドント・ブリーズ』について
「息をすれば死」という衝撃的すぎるキャッチフレーズで話題となった『ドント・ブリーズ』。超難関な設定が瞬く間に話題を呼び“◯◯をしたら死亡”系ホラー映画の火付け役となりました。
ホラーではありながら心霊は一切出てこず、登場するのは人間だけ。それが逆に恐怖をそそるのです。モンスターでもなく、悪霊でもなく、全てのコトの元凶が人間なのですから、生々しさが視聴者の心をガッチリと掴みました。
興行収入は日本で4億8000万。公開から1か月で3億円を突破する勢いを見せ、瞬く間に人気に。まだ日本では未定ですが、アメリカでは2021年8月に『ドント・ブリーズ2』の公開を控えています。
監督は『死霊のはらわた』のリメイク版を手掛けたフェデ・アルバレス。主にスリラーやホラー、ミステリーを得意としており、続編も制作を担当していますよ。
10秒で分かる!映画『ドント・ブリーズ』の簡単なあらすじ
経済が破綻したアメリカのデトロイトにて、若者3人組が盗みをはたらいている。彼らはスケールの小さな空き巣ばかりをしていて、家を狙っては小銭を盗み、室内を荒らして帰っていく。彼らの中には事情を抱える者もいて、このデトロイトから抜け出すべく悪事に手を染めていたのだった。
そんなある日のこと、彼らに大きな仕事が舞い込んでくる。人口の過疎化が進む地域で、金持ちで視覚障害を持つ老人が1人で住んでいるらしい。そこへ忍び込んで一獲千金を狙うことを決めた3人は、それを最後の仕事と称して取り掛かることに。
下調べをした上でいざ侵入開始。視覚障害を持っていることにより、どこか甘い考えを持つマネー(ダニエル・ゾヴァット)がいた。だが思うように進まず、遂に老人に侵入したことがバレてしまう。そして若者たちはこの家で最大の恐怖と直面するのだった……。
映画『ドント・ブリーズ』のネタバレあらすじ
【あらすじ①】どうしようもない空き巣たち
舞台は経済が破綻したアメリカのデトロイト。住民のロッキー(ジェーン・レヴィ)、アレックス(ディラン・ミネット)、マネー(ダニエル・ゾヴァット)の3人組は空き巣をすることで生活費を稼いでいた。
とはいえ1回の仕事で盗むのはマックス10万ドルと決めており、大きな罪に問われることを非常に恐れていた。少額だけを盗み、家を荒らして去っていく――。それが彼らのやり方なのである。
アレックスの父はセキュリティ会社を経営しており、そこから鍵を盗んで侵入をしていた。一度も捕まったことがないのだが、盗品も良い値で売りさばくことが難しい。リスクの割に大金が手に入らない3人は、イライラが募っていった。
そんな中、アレックス父の顧客に金持ちの退役軍人がいるとの情報を入手する。その人物は老人(スティーヴン・ラング)で、数年前に娘が事故死して1人暮らしだった。そして娘の示談金を隠し持っているようで、マネーはそこへ狙いを定めたのである。
【あらすじ②】いざ老人の家へ
とは言え示談金の額は最低でも30万ドルはあり、“いつもの設定金額”をゆうに超えていた。逮捕されれば罪が重いどころでは許されない。
リスクを抱えた仕事を放棄しようとするアレックスだが、お金を貯めて妹と家を出たいロッキーにやらない選択肢はなかった。彼女の家庭は崩壊していて、もうこのデトロイトにはうんざりしているのである。
ロッキーに想いを寄せるアレックスは致し方なく仕事に参加。そしてマネーはこれを「(空き巣として)最後の仕事」と称して取り掛かることに。早速下見に行くと、過疎化している地域のせいか、老人宅の周りは何もなかった。
そしてマネーは老人が盲目であることを2人に伝える。ロッキーとアレックスは罪悪感を覚えながらも、拒否する理由が見つからないのだ。
夜、いざ計画開始。まずは凶暴な老人の飼い犬を睡眠薬で眠らせ侵入する。かなり厳重な警戒をしてある家で、それぞれのロックを解除するのには一苦労。そして家の主に見つかってはまずいので、マネーはガスで老人の部屋に睡眠薬を撒いた。
睡眠薬を使用したことにより安心しきったマネーは、ひときわ派手な行動を取り始める。そう、セキュリティにがっちり守られた扉を銃で撃ってしまおうと言うのだ!
逮捕の恐怖を恐れるアレックスは、この状況で計画を降り外へ出る。だがこの時、眠っていたはずの老人がマネーとロッキーの前に現れ……。
【あらすじ③】暗闇の鬼ごっこ
あまりの衝撃に息を飲む2人。追い詰められたマネーは半ばやけになって、「金をもらう」と老人の前で発言してしまう。盲目の老人はマネーのいる位置を見事に当て、想像以上の怪力で首を締め上げた。
そのまま射殺されるマネー。ロッキーはただただ声を押し殺していることしかできない。銃声が気になって結局戻ってきたアレックスは、心配になって戻ってくることに。
マネーはちょうどアレックスへ、スマホでマネーが殺されたことを知らせていた。メールにより危険を察知した彼は、彼女の隠れているクローゼットへと向かう。
老人がクローゼットの周りをうろつく中、息を潜めて隠れる2人。この部屋には金庫があり、老人は大金が盗まれていないことを確認してこの場を去った。
その後ロッキーが金庫を解除すると、序盤で言われていた通り100万ドル以上のお金が入っている。大金を手にした2人は逃亡を考え、地下室を目指した。
途中老人にスマホのバイブ音を聞かれ、危機一髪の状況に陥るもなんとか地下室へと辿り着く。
家の中に置かれた3人の靴を把握し、強盗が複数名いることを察した老人。再度金庫の中身を確認するともぬけの殻だったため、彼は憤慨する……。
【あらすじ④】地下室の女性
老人は聴力に優れており、身体能力が格段に高い。どうにか地下室へ到着したロッキーとアレックスは、幽閉されている女性を発見してしまった。更に地下室には想定していた脱出するための窓が見つからず、2人は激しく困惑する。
女性が動くとベルが鳴る仕組みとなっており、ロッキーらはビクビク。その女性はシンディ(フランシスカ・トローチック)と言い、老人の娘を轢き殺した張本人だと言うのだ!
確か彼女は示談金を支払ったはず――。だがあの事故の後、ずっとここで監禁されていたのである。
シンディはドアの場所、そして鍵のありかを教え3人での脱出を図る。しかしベルを聞いてやってきた老人が銃を撃ち、大パニックとなってしまう。彼の撃った弾はシンディへと当たり、即死。老人は彼女を撃ったことを激しく後悔していた。
老人の行動の意味も分からぬまま、家中をわざと停電させ、真っ暗闇へと追い込まれる。2人のスマホはすでに使えなくなっており、灯りを頼ることも出来なくなっていた。
聴覚が優れている老人にとっては圧倒的に有利な状況だ。ロッキーとアレックスは決死の思いで逃げるものの、凶暴な飼い犬、そして厳重なセキュリティによって追い詰められてしまう。
アレックスは重傷を負い、老人より手ひどい攻撃を受けて気絶。そしてロッキーも追いかけ回され、首を絞められながら意識を失った……。
【あらすじ⑤】老人の本性
目を覚ますとロッキーは、シンディが拘束されていた場所と全く同じ形で監禁されていた。
老人は自身の話を訥々と語り出す。シンディに自分の子供を妊娠させ、罪を償わせていたことが明らかになる。2人の間にはそれが“契約”となっており、子供を出産した時点で解放させる条件だったのだ。
シンディが死んだため、同様のことをロッキーへと迫る老人。冷凍庫には精子があり、人工授精によって妊娠をさせようとしていた。だが気絶していたアレックスが後ろから老人を襲い、彼もまた重傷を負う。
この件を大きくしたくない老人は、「金を渡す代わりにこのことを黙っていて欲しい」と交換条件を差し出した。了承したアレックスは犬に邪魔されながらも、2人で逃げていく。
けれども話はそう簡単に行かず、老人は再び追いかけてきた!またも苦しめられるロッキーだが、アレックスが警報を鳴らした瞬間、焦った老人は大混乱。パトカーの音が聞こえる中、アレックスは老人を殴り、地下室へと消えていった。
後日、大金を得たロッキーは妹を連れてデトロイトを離れようとしていた。カフェにて全盲の老人のニュースが耳に入り、愕然とする。
ニュースでは老人が強盗2名をを撃退したことになっていて、負傷したけれど命に別状はないこと。そして被害がないテイになっていることから、最後の“交換条件”にハッとさせられる。
まだどこかで老人が見ているような気がするロッキー。そして肝心のアレックスは世間で悪者扱いされていることに対し、何とも言えぬ気持ちを抱えるのだった。
映画『ドント・ブリーズ』のキャスト
ロッキー/ジェーン・レヴィ
家を出るために、致し方なく窃盗に手を染めるロッキー。非常に妹思いで苦労人であることが冒頭で発覚します。様々な危機に見舞われながらも、最後は生き延びることができました。
しかしあの夜の恐怖と心の傷は癒えぬままです。デトロイトを離れても、彼女の中から老人宅の出来事が消え去ることはありませんでした……。
ロッキーを演じるのはジェーン・レヴィ。フェデ・アルバレス監督のリメイク版『死霊のはらわた』にも出演しており、ホラー・スリラー映画への出演が目立ちます。これから楽しみな期待の若手女優さんですね!
アレックス/ディラン・ミネット
ロッキー想いを寄せていたアレックスは、3人の中で最も常識人。根は真面目で、自身が逮捕されることを危惧していたのです。
彼女を心配して家へ戻る男らしさも見せましたが、アレックスも悲惨な状況に巻き込まれてしまいます。そして最後、世間では悪者扱い。何とも言えぬエンディングを迎えるのでした。
アレックスを演じるのは若手俳優のディラン・ミネット。子役時代から活躍しており、テレビドラマや映画を中心に活動を続けています。『13の理由』の主役キャストとして、日本でも知名度が高いですね。
老人(ノーマン・ノードストローム)/スティーヴン・ラング
一度観たら忘れられない、驚異的な存在の最強おじいさん!(笑)作中では本名が出てこないものの、設定は一応あるみたいですね。
呼吸や物音だけで人の場所を当て、身体能力も人並み外れています。その本性も想像の斜め上をいくもので、ロッキーらを精神的な面でも追い詰めました。
老人を演じるのはスティーヴン・ラング。ベテラン俳優で様々な作品に出演し、次作『ドント・ブリーズ2』の出演も決定していますよ。
映画『ドント・ブリーズ』のここが怖い!注目ポイント
「20年に1本の恐怖の作品!」と言われた『ドント・ブリーズ』。ホラーを観慣れている人、そうでない人でも、このキャッチフレーズには興味を掻き立てられますよね。
では一体何がこの映画を怖くしているのか?その部分を解説していきますね!
その①シチュエーションがコワイ!
3人が強盗として押し入った老人宅は、周りに何もなく、ただただ広い一軒家でした。いるのは凶暴な犬だけで、このシチュエーションがより一層恐怖を掻き立てるのです。
人が過疎化している地域ということで、すぐさま隣の家に助けを求めることができません。音を立てられない状況の密室ですし、時間帯は夜。我々が“怖い”と感じる要素が、全て揃っていると言ってもいいくらいです(笑)
そして何より、若者たちは法に触れた行為をしていますからね。世間から見れば圧倒的にロッキーらは不利な状況なのです。冷静に考えても、窃盗だけの面を考慮するなら老人に非はないわけで……。
罪のない人々が巻き込まれる理不尽なホラーではなく、それぞれに理由が裏付けされていることが何より恐ろしいのです。
その②老人が異常すぎてコワイ!
盲目でありながら抜群の身体能力を持ち、戦闘能力などあちこちの面が優れているおじいさん。いくら元軍人と言えど、アニメキャラクター並みの強さを持っていて本当に驚きます。
秒でマネーを殺してしまった時、筆者も開いた口が塞がりませんでしたね。盲目の老人=か弱そう、のイメージを一瞬にしてひっくり返すのです。
聴覚・嗅覚に優れている点もそうですが、女性らに対する執着心もまた異様なもの。きっと鑑賞している多くの人が、生理的嫌悪感を抱いたに違いありません。ロッキーがトラウマを植えつけられるのも致し方がないことですよね……。
その③カメラワークや演出がコワイ!
『ドント・ブリーズ』のカメラワークや演出は素晴らしいもので、私たち視聴者にハラハラ・ドキドキをたっぷりと与えてくれる作りとなっています。よくありがちな「くるぞくるぞ……ドーン!」のような演出ではなく、じっとりと全身に張り付くような恐怖をうまく表現しているのです。
老人に呼吸の音だけでも察されてしまう、という設定が生きており、アレックスの隣をすれ違う瞬間の緊張感がスゴイ。ついついこちらも息を飲んでしまうほどです。
うまく家の中を広く映す、意味深すぎるホームビデオなども、作品を盛り上げるエッセンスとなっていますよね。登場人物を映さずとも、ゾクリとくる演出に要注目ですよ。
映画『ドント・ブリーズ』がヒットした理由とは?
メッセージ性の強いストーリー
ただ驚かすだけの映画ではなく、作中には深いメッセージが込められているのも『ドント・ブリーズ』の特徴です。
まずメインキャラクターのロッキーたちが、犯罪に手を染めているというマイナスの状況からスタートすること。これにより老人に報復されても、当然文句を言えないわけです。「自業自得」「人にしたことは自分に返ってくる」といった、因果応報ということを強く表現しているんですね。例えどんな事情があっても、です。
そしてマネーは特にそうだったのですが「視覚障害があるから」と、少々差別的な視点を持っていたと思います。いざ蓋を開けてみれば最強おじいさんが待っていたのですが……(苦笑)
この部分もメッセージ性が強く、障害者=弱者と決めつける考えへの皮肉でもあるのでしょう。深く読み解くと、キャラクターの設定や展開には制作側の想いが込められていることが推測できますね。
人間VS人間のホラー映画
ジャンルはホラー映画であるものの、心霊が一切出てこないので、人間と人間との密室での戦いが繰り広げられます。登場キャラクターも少なく、物語もシンプルなのですが、そこが逆に恐怖をそそるポイントなんですね。
正直なところ、どんな幽霊よりもゾンビよりも老人が一番怖いと思いませんか?一般の人間では到底太刀打ちできませんし、秘めた要望が何より“人間らしくて”ゾッとします。
身体能力などは超人レベルなのに、若い女性をはらませるなど強いと生々しさを出してくるあのギャップ。この世で最も怖いのは人間だということを、これでもか!というくらい表現しているキャラクターですよね。
人間という存在の恐ろしさにフォーカスした作品でもあると思います。
まとめ
「ただのホラー映画」では片付けられない恐ろしさを持つ『ドント・ブリーズ』。従来のホラーやスリラーに飽きてしまった人、人間の怖さを露呈した作品が気になる人には非常にオススメです。
続編の『ドント・ブリーズ2』の日本上陸が今から楽しみですね。公開を期待しつつ待ちましょう。