映画『ファイト・クラブ』のあらすじをネタバレ解説|序盤から伏線が溢れかえっていた…!
批評家より高い評価を得た映画『ファイト・クラブ』。平凡だが満たされぬ思いを抱える主人公「僕」が、摩訶不思議な男・タイラーと出会うことで生活が一変!彼の存在により運命の歯車が大きく回り始めるのです。
迫力のあるファイト・シーンに加え、刺激的な描写や発言が目立つの本作ならでは。“超えてはならない線”をどんどん飛び越えていく「僕」には、きっと目が離せなくなってしまうでしょう。
ヒューマンドラマやアクション、ミステリー、サスペンスと1つのジャンルには絞り込めない作品です。そして衝撃のラストは必見ですよ!
本作はネタバレを含んでいるため、未鑑賞の方はご注意ください。『ファイト・クラブ』が織りなすユーモアたっぷりの世界を一緒に見ていきませんか?
目次
映画『ファイト・クラブ』について
出典:Amazon
1999年アメリカで公開された『ファイト・クラブ』。チャック・パラニュークによる小説を元に制作されましたが、実は発刊されてからあまり注目を受けていなかったそう。映画化により原作、そして作家の知名度が大きく上がったのです。
公開当初も決して大きな話題にはならず、製作費の回収が難しくなったことから、配給会社・20世紀フォックスの上層部が解雇される事態に見舞われたとか……。
けれども1999年のアカデミー賞など、数々の賞レースではノーミネートを果たしています。時代の変化と共に人気も上昇し、2006年にはオンライン映画批評家協会の「DVD賞」など合わせて3部門を受賞しました。
監督は『セブン』や『パニック・ルーム』などで知られるデヴィッド・フィンチャー。映画界では有名な人物で、様々な作品の製作総指揮をも務めます。
デヴィッド・フィンチャー監督のおすすめ映画7選!『ファイト・クラブ』他【厳選】10秒で分かる!映画『ファイト・クラブ』の簡単なあらすじ
大手自動車メーカーに勤務する主人公の「僕」(エドワード・ノートン)。高層マンションに住んで家具や持ち物にこだわりを持つ日々だが、原因不明の不眠症を半年間もの間悩んでいた。
医者に話しても薬を処方してもらえず苦しむ日々。今が最も辛いことを医者に伝えると「もっと辛い人はたくさんいる」と睾丸がん患者の集まるカウンセリンググループへの参加を勧められた。
そこで偽の患者となり集いに参加すると、居心地の良さがクセとなってしまう。その後も病状を偽り続け、あちこちの会へと参加した。
だがやっと見つけた居場所に水を差す女・マーラ(ヘレナ・ボナム=カーター)が現れる。相手も明らかな偽の病気で、かき乱された「僕」は彼女へ近づいてしまう。
そして出張中、ユニークな個性を持ったタイラー(ブラッド・ピット)と運命的な出会いを果たす。不眠症が治っていく中、「僕」自身には様々な変化が起きていて……。
映画『ファイト・クラブ』のネタバレあらすじ
【あらすじ①】不自由のない生活と不眠症
主人公の「僕」(エドワード・ノートン)は謎の男・タイラー(ブラッド・ピット)に銃口を突き付けられていた。テロを計画する一派は彼らがいるビルに爆弾を仕掛けているらしく、“計画通り”にコトは進んでいるのだとか……。
「僕」はタイラーと出会う前、大手自動車メーカーに勤務する一般的なサラリーマンだった。
物質、そして経済的にも困ることのない毎日を送っていたものの、彼の人生には何かが欠落している。精神不安もあり不眠症に悩まされ、医者に助けを求めても薬さえ処方してもらえない。
挙句の果てには「お前より辛い人たちはたくさんいる。一度睾丸がん患者の集いに顔を出してみろ」と言われる始末。それを鵜呑みにした「僕」は偽りの患者として、会へ出席する運びとなった。
集いではみんなが心から涙を流し、誰かを否定する人間もいない。この心地よさに味を占め、「僕」は至って健康なまま色々な集いへ顔を出すようになる。出席後はぐっすりと眠れるようになり、いつしか不眠症に悩まされることはなくなっていた。
だが後に明らかな偽の患者であろう女性・マーラ(ヘレナ・ボナム=カーター)が、ことあるごとに集いへ現れるようになる。自分と全く同じであることに気づいた「僕」は心をかき乱され、再び不眠症へ陥るのだった。
【あらすじ②】タイラーとの出会い
耐え切れなくなった「僕」はマーラに噛みつくも、彼女は言うことさえきかない。参加をやめる意思がないため、お互いに行く集いを分担することで話は収束した。そして急な予定の変更があった時のために、お互いの電話番号を交換し別れを告げる。
出張続きの「僕」はある日、飛行機の中でタイラー(ブラッド・ピット)と出会う。偶然隣の席になっただけだが、彼の職業は石鹸の製造。おまけに発言もなかなか個性的。少し「僕」はタイラーに興味を持っていた。
良い出会いがあった日の夜のこと。なんと自宅が何者かに爆破され居場所を失ってしまう事態に見舞われる。途方に暮れた「僕」はもらった名刺を思い出しタイラーへ電話。2人で酒を飲み交わした。
行き場がなくなったため、タイラーの家へ行く流れと。だがバーを出ると彼は「オレを思いきり殴ってくれないか?」と妙な要求をする。結局殴り合いとなるのだが、この晩の「僕」はとても心地よく眠ることができた――。
【あらすじ③】狂っていく日常
タイラーの家はボロボロで汚く、電気さえも通っていない。けれども家を失った「僕」は彼の家に一泊するつもりが、その後も暮らし続けることになってしまう。
バーの裏で始めた殴り合いは日常となっていき、段々と参加者が増えていいく。タイラーと週末開催の「ファイト・クラブ」といった集いを結成し、新たな楽しみを見つけた「僕」は仕事中もファイトのことばかりを考えている……。
いつしか傷だらけの顔面で出社することも気にならなくなっていた。そしてタイラーと共に脂肪から石鹸を作るバイトをするなど、彼の毎日は徐々に荒れ始めていく。
そんな楽しい日々が続くころ、水を差すようにマーラがの電話があった。
電話の内容は至って“かまってちゃん”なものだったが、タイラーは面白がって彼女を相手する。無視し続ける「僕」をよそに、2人は気づけばセックスフレンドの関係となっていた。
徐々にタイラーの立ち振る舞いも過激化していき、ある日の石鹸づくりで「僕」は彼に手を焼かれてしまう。
「痛みを受け入れろ!」と持論を展開するタイラー。痛みなしでは何も得られないからこそ、いま苦しんでいることが最高の時間だと言う。
気づけばタイラーの手にもやけどの跡が一つ。こうして「僕」はまた一歩、常道を外れていくのだった。
【あらすじ④】タイラーの失踪
ファイト・クラブは増員をし続け、当初では考えられぬ大きな集いとなっていた。この会ドンであるタイラーは会員へ宿題を出すようになり、徐々にその内容は過激化していく。
1つ目の内容が“他人へ喧嘩をしかけて負けること”だったが、実行した「僕」は案の定クビ。退職金などを巻き上げて無職になった。
タイラーはのちスペース・モンキーズといったテロ集団を結成し、「プロジェクト・メイヘム」を実行するために動き出す。勝手に計画が進められ、爪弾きになった気分の「僕」。
あちこちは迷惑行為が行われ、警察も黙ってはいられない状況へと陥る。テロ集団との全面対決を試みるが、先手を取ったタイラーらはトップである警察の人間を脅迫。これにより全面対決は中止、スペース・モンキーズは優勢となった。
タイラーのやり方に納得がいかない「僕」は、彼へ正面から噛みついた。だがまともに取り合おうとせず、気持ちは伝わらない。そして突然タイラーは姿を消してしまい、家にはスペース・モンキーズの軍団だけが残されていた。
【あらすじ⑤】君が僕で、僕が君
誰もタイラーの行く先を知らないが、プロジェクト・メイヘムは着々と進められる日々。埒が明かない「僕」は彼の残した飛行機の半券だけを頼りに、あちこちを飛び回った。
各地ではファイト・クラブが設立されていて、ルール第1条「会の存在を口外しない」をみんな口々に言う。そして探し回っていたある日、メンバーの1人が「僕」へ向かって「タイラー」と呼んだのだ。
気が動転してマーラへ電話をかけると、彼女でさえ自分を「タイラー」と呼ぶ。
そう、今までタイラーという存在などおらず、彼は「僕」が創り上げた第二の人格だったのだ。物足りない生活に辟易していた彼が追い求めていた理想像、それが“タイラー”。
「僕」が眠っている間には彼が、彼が眠っている間に「僕」が活動をし続けていたことが発覚する。
気を失った「僕」はテロ集団の動きを止めようと焦るが、残念ながら応対するのは全てファイト・クラブの人間ばかり。爆弾を自ら止めようとするとタイラーが抑止し、序盤のような銃口を突き付けられる事態に。
けれども「僕」がタイラーで、タイラーが「僕」なのだ。引き金を引くとタイラーは消え、顔に傷がついた「僕」だけが残る。
そこへテロ集団がマーラを連れてきて再会。「僕」は彼女へ逃げるように言うが、向かいのビルは崩壊し始めていた。
2人は手を繋ぎ、その崩壊をただひたすらに見つめている……。
映画『ファイト・クラブ』のキャスト
「僕」/エドワード・ノートン
一見平凡で何自由なく過ごしているように思える「僕」。しかし日常だけでは物足りず、本当は大きな刺激を求めていたのでしょう。タイラーという真逆の別人格を作り出してしまうくらいの凶暴性が隠されていたのでした。
常に“普通”であったことが、彼にとって一番の退屈であり、悩みだったのですね。ちょっぴり贅沢にも思えますが、「僕」には「僕」にしか分からない感情があったのかもしれません。
主人公を演じるのはエドワード・ノートン。高い演技力で有名な俳優であり、『アメリカン・ヒストリーX』、『レッド・ドラゴン』などに出演。日本語が話せる一面もあり、来日の際にはその実力を披露しました。
タイラー/ブラッド・ピット
凶暴で頭のぶっ飛び具合もスゴけれど、至って冷静なタイラー。まさか「僕」の別人格だなんて想像も尽きませんでしたよね。
何し出すか分からないデンジャラスな一面には、なぜか魅力を感じてしまうほど。持論にも不思議な説得力があり、惹きつけられた人も多いかと思います。
タイラーを演じるのは大スターのブラッド・ピット。賞レースの常連俳優であり、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』など数々のヒット作に出演しています。
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突如日常に入り込む“腫瘍のような女”とまで言われたマーラ。「僕」からすれば鬱陶しく思えるものの、実はタイラーの存在を炙り出す重要なポジションにいた女性なのです!
あまり彼女自身については掘り下げて描かれていませんが、「僕」と同様物足りなさを感じていたマーラ。
グループカウンセリングに参加するのも、何かしらと目の前に現れるのも、きっとどこかで救いを求めていたのかもしれません。
マーラを演じるのは有名女優のヘレナ・ボナム=カーター。1980年代から活躍するベテランでジャンル問わず様々な役柄を演じています。気だるい雰囲気のマーラ役もぴったりハマっていましたね!
【解説】映画『ファイト・クラブ』の伏線はどこにあったのか?
「僕」の別人格がタイラーだった……という衝撃のラストに驚いてしまった視聴者も多いことでしょう。
しかし物語をよく確認すると、細やかな部分にヒントが多数隠されているのです。一度観ただけでは分かりづらいのですが、伏線について詳しく解説していきます。
冒頭シーンですでに伏線だらけだった!?
ついつい忘れがちな序盤ですが、すでに伏線で溢れているのが『ファイト・クラブ』に憎き細やかさ!「僕」がタイラーであることを示唆するようなセリフ、描写がわんさか登場しているんですよ。
例えば「僕」が医者へ「たまに寝て起きると別の場所にいるんだ」という発言。一見不思議なことのように思えますが、タイラーの存在を知ればすぐに納得がいくはず。彼が眠っている間に動いていたのですからね。
そして何よりの伏線はオープニングシーンにありました。
脳内の細胞が画面に映り、それを駆け抜けるような演出になっているのですが、タイラー「僕」の脳内から作り出された人物。もう物語が始まった時から今後の展開を示唆した作りとなっていたのです。
鞄がお揃い、夜働いている時点で……
機内で運命の出会いを果たした2人ですが、偶然にも所持している鞄が一緒でした。けどお互いは同一人物なのですから、同じものを持っていて当たり前なんですよね(笑)
そしてタイラーは夜に働いている生活という説明があったものの、「僕」が寝ている時間に動いているのだからこちらも当然のこと。ましてや映画館の技師だなんて、彼の頭の中=映画、を表現しているように思えてしまいます。
マーラと「僕」、タイラーとマーラ
度々タイラーの家に出入りするようになるマーラですが、彼女の描写にも要注目です。
よく考えればマーラと「僕」、そしてタイラーとマーラは同じ画面にいますが、3人が同時に集まったことって一度もないですよね。だって「僕」はタイラーなのですから。
必ずマーラが姿を消した後にタイラー登場の流れです。ついうっかり見逃してしまう部分ですが、立派な伏線と言えますね。
タイラーの姿は周りに見えていない件について
ファイト・クラブでは超カリスマ的存在、そして「僕」でさえ魅力を覚えた人物のタイラーですが、結局は主人公が作り出した別人格です。タイラーは彼の中にいますから、周りの人間に見えているわけがありません。
それを意味するのがバスの中のシーン。2人の間を通っていく乗客がいましたが、「僕」にだけ通る際に「ちょっと失礼!」と声を掛けているんですよね。
何気なく見過ごしてしまう部分ではあるものの、あれだけ存在感を誇るタイラーを見逃すなんて不思議すぎる話。ちょっとしたシーンにも伏線が張られていて驚いてしまいます。
あちこちにファイト・クラブがある、ということは?
なぜ全国各地にファイト・クラブが出来ていたのか、少々疑問に思った人もいるでしょう。しかし「僕」の仕事を思い出してみて欲しいのです。
元々「僕」は大手自動車メーカーに勤務し、出張が多い仕事でした。飛行機に乗る機会も頻繁にあり、あちこちにクラブを作ることはそう難しくなかったのでしょう。
タイラーの顔がやたらと広いということではなく、リコールの調査員という仕事をしながら様々な場所で勢力を拡大させていたのです。
もうここが分かればあとはもう真実に突っ走るのみですね。本作がネタバレ前最後に張った伏線ですが、皆さんは気づいたでしょうか?
映画『ファイト・クラブ』の小説版について
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小説を映画化した『ファイト・クラブ』ですが、設定やラストの展開が少々原作と異なるようです。併せて見ることで楽しさも倍増しますので、ぜひ小説版もチェックしてみるといいでしょう!
主人公の名前は最後まで明かされない
映画版も小説版も共通しているのが、主人公の名前がラストまで明かされないことです。終始「僕」で貫いており、正式な名前は一切登場しないのだとか。あえて分からなくすることで、より一層主人公の存在感が際立つような気がします。
しかし性格に関しては違いが見られ、原作だと映画版ほどの“第三者感”がありません。タイラーが計画して狂った騒ぎへと参加し、一緒になって暴れている「僕」の姿があります(笑)
映画では「超えてはならないボーダーラインを超えないようにしている」キャラになっているため、別の意味で良い味を出していますよ。
タイラーへの尊敬よりも、愛?
「僕」はタイラーを羨望の眼差しで見ていましたが、小説版ではまるで愛を示すような、更なる深い想いが生まれていることが明らかになります。
映画版ではあくまでタイラーに対し「尊敬」「憧れ」の気持ちを抱く主人公。もちろんそこには“愛”も潜んでいるとは思いますが、ハッキリとそう明言しているシーンはありません。
小説では「タイラーの全てを愛している」など恋愛感情を現すナレーションが炸裂。彼への気持ちが分かりやすく描かれているので、とても興味深い内容となっていますよ。
確かにマーラの存在を疎ましく思ったり、タイラーを血眼になって探し回ったりと、ただの友情だけと言い切れない言動は映画でも目立ちましたよね。その心の奥底を掘り下げて書いているのです。
小説のラストシーンは……
映画版のラストは、ビルの崩壊をただただ見つめている2人でエンディングを迎えました。先のことは分からず観客に想像させるスタイルを取ったのです。
けれども小説版では彼らがいたビルは崩壊することなく、命は助かりました。ただ「僕」は精神科へ送られてしまうんですけどね……。
“命を落として終わり”ではなく、全ての苦しみからの解放を示唆しているラストシーンです。ある意味この終わり方はハッピーエンドなのかもしれません。映画を観てしっくりこなかった人は、小説を読むとストンと府に落ちると思いますよ!
まとめ
別人格を作り出したことにより人生が180度変わってしまう『ファイト・クラブ』。ごくごく普通のサラリーマンが秘めている凶暴性、ちょっとした願望に時折恐ろしさを覚える作品です。
ただの“サイコパス”や“イカレ野郎”という言葉だけで済ませられるものではありません。彼らの生み出す乱痴気騒ぎに惹きつけられるカリスマ性、そしてタイラーの存在感には我々も魅力を覚えてしまうことでしょう。
散りばめられた伏線も面白く、一度観ただけでは物足りない作品に思えるはず。鑑賞を繰り返すほど味の出る映画ですので、『ファイト・クラブ』の世界に目一杯染まっちゃいましょう!
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