映画『藁の楯』のあらすじネタバレ解説｜真の正義とは何か？原作小説について
映画『藁の楯』は、同名の原作小説を大沢たかおさん主演で映画化されました。
殺された少女の祖父によって、殺人犯の清丸国秀に懸賞金10億がかけられました。大沢たかおさん、松嶋菜々子さんら演じる刑事は福岡から東京に移送する際のSPを任されます。お金目当てで命を狙いに来る一般人。しかし、一番恐れるべきは警察官だったのです。彼らは無事に移送することができるのか。
本作はアクションや銃撃戦が多く、とても見ごたえがあります。大沢たかおさんももちろんかっこいいのですが、SP役の松嶋菜々子さんにもぜひ注目していただきたいです。
本記事では、映画『藁の楯』のネタバレあらすじ、キャスト、見どころまで詳しく解説していきます！ぜひ最後までご覧ください。
目次
映画『藁の楯』について
映画『藁の楯』の原作は、2004年に刊行された木内一裕さんによる小説作品『藁の楯』を映像化したもの。漫画家・きうちかずひろとしても活躍している木内さんは、本作の原作小説『藁の楯』を発表し、小説家デビューを果たしました。
そんな木内一裕さんの初となる小説作品の実写映画化に伴い、メガホンを取ったのは三池崇史監督です。三池監督は『着信アリ』や『クローズZERO』シリーズなど幅広い分野の映画作品を手掛けています。主題歌に選ばれたのは氷室京介さんの『NORTH OF EDEN』。今回本作のメガホンを取った三池崇史監督が氷室さんへ手紙で依頼したことによって実現しました。
映画『藁の楯』は、第66回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に正式出品され、国外からも注目を集めました。上映後にはスタンディングオベーションが巻き起こったんだとか。そのように国外からも注目を集めた映画『藁の楯』は、ハリウッドでのリメイクも決定しました。
タイトル『藁の楯』は、意味をなさないもの、役に立たないものという意味だそうです。
10秒で分かる！映画『藁の楯』の簡単なあらすじ
1人の少女の遺体が発見されました。孫娘を殺害された政財界の大物、蜷川隆興（山崎努）は、新聞に行方不明の犯人である清丸国秀（藤原竜也）の殺害を依頼する全面広告を掲載します。そこには、お礼として10億円お支払いしますと書かれていました。
友人からも命を狙われ、身の危険を感じた清丸国秀は福岡県警に自首します。福岡で自首したため、清丸を48時間以内に東京に移送しなければなりません。福岡警察は警視庁から銘苅一基（大沢たかお）らSPを5人派遣して移送することになりました。
しかし賞金10億円への欲望、清丸への憎悪などから清丸の命を狙う者が次々現れます。一般市民だけでなく警察官までもが行く手を阻みます。
果たして彼らは清丸を無事移送することができるのか……。
映画『藁の楯』のネタバレあらすじ
【あらすじ①】少女を殺した殺人犯
出典：IMDb
幼い少女が殺害され、用水路に遺体が捨てられる事件が発生した。
犯人は清丸国秀（藤原竜也）だとDNA鑑定の結果判明する。清丸がなかなか捕まらない中、新聞各紙に全面広告が出た。そこには清丸の顔写真と共に、清丸国秀を殺せば10億円を支払うという文字が載っていたのだ。
死んだ少女の祖父は、総資産は1000億円を超えるとも言われている大物・蜷川隆興（山崎努）。さらに蜷川は専用ホームページを作り、自らが動画に出て10億円を横に視聴者に語り掛ける。
それらの影響はすぐに出た。清丸が身を寄せていた友人は賞金に目がくらみ、バールを持って清丸を殺そうとする。逃げ切った清丸は福岡南署に出頭した。
ところがここからが問題で、福岡にいる清丸を48時間以内に東京まで移送しなければならなかった。清丸を無事に移送するために、SPを5人をつけるという決断が下りた。警視庁から銘苅一基（大沢たかお）、白岩篤子（松嶋菜々子）、奥村武（岸谷五朗）、神箸正貴（永山絢斗）、関谷賢示（伊武雅刀）が派遣される。
銘苅たちが対面すると、清丸はこの短期間に2回も殺されそうになったと言った。そして、女性看護師が打とうとした注射器には、鎮静剤ではなくカリウム製剤が入っていた。銘苅が気づいて制止したことで助かる。
【あらすじ②】襲ってくる一般人たち
出典：IMDb
移送には飛行機を使う予定だったが、整備士が飛行機に細工をしていたことが発覚する。
そのため護送車を使うことになり、合計5台の護送車が用意された。4台はダミーである。しかし、最も怖いのは一般市民ではなく武術を学び武装した人間、つまり警察官だった。
高速道路を大量のパトカーに囲まれ移動していたが、トレーラーが暴走してくる。なんとか無事だった一同だが、この護送車に野次馬の注目が集まっていると気づいた銘苅は、情報が洩れていることに気づく。清丸の位置情報が筒抜けになっていたのだ。
機動隊員に扮装した2人組がやってきて護送車を襲う。銘苅はとっさに銃弾を受けたが、防弾チョッキを着用していたため難を逃れた。
銘苅たちは、少人数で清丸を東京まで移送することになる。銘苅は新幹線に乗り込むと車掌を呼び止め、7号車の乗客をグリーン車に移動させた。
しかし、しばらくすると新幹線の乗客たちが7号車に注目し始め、銘苅は情報が漏れていることに気づく。清丸とSPだけという最小限の人数になっても情報が洩れていることで、銘苅たちは疑心暗鬼に陥る。居場所の情報提供だけでお金をもらえるという契約が結ばれている可能性もあった。
そこに隣の車両からヤクザがやってきて発砲した。この銃撃戦で神箸が撃たれ亡くなった。乗客を新神戸駅で下ろしたあと、新幹線は現場検証に入る予定だった。しかし、駅に120人の機動隊員が配置されたと聞いた銘苅は危険を察知する。
【あらすじ③】裏切り
出典：IMDb
新神戸駅で、刃物を持った男が近くにいた少女を人質に取り、清丸を出せと主張した。向かってきた男を関谷が射殺し、関谷は事情聴取のため新神戸駅で連行された。
銘苅は車掌に指示をしてそのまま新幹線での移動を続けた。しかし、新幹線が突然停車する。7km先の線路に障害物が置かれているというのだ。銘苅たちは新幹線を下り、一般道を徒歩で移動した。偶然通りかかった車を借りた銘苅だったが、なんとドライバーは8年前に清丸が起こした事件の被害者遺族だった。隠していたナイフを持って襲おうとする男を銘苅たちは制止する。
銘苅たちは奪った車で移動を続けたが、清丸の位置情報がまだ洩れていることが分かった。奥村は、白岩が不審なメールを送っていたと証言した。しかし、白岩が送っていたメールは、小学3年の息子に宛てたものだった。銘苅は、奥村が手首を気にしているのを見て、からくりに気づいた。手首にマイクロチップを埋め込んでいたのだった。そのチップから、情報が洩れていたのだ。奥村は、やはり蜷川に金で契約を持ち掛けられていた。
銘苅、白岩、清丸の3人は奥村を置いて移動を続けるが、同じ部署の係長の大木から、清丸に射殺命令が出たことを聞く。清丸が銘苅と白岩を人質に取って逃亡を続けている、と奥村が証言したためだった。銘苅が係長と話している間に清丸が逃げ、少女を襲おうとするが銘苅が止めた。清丸は銘苅に、もし自分を殺した場合、賞金の一部を母親に分けてくれと言い出した。
【あらすじ④】結末
出典：IMDb
タクシーが近づいてきて、女性運転手の由里千賀子（余貴美子）が乗って行けと言う。道中由里は、今まで清丸を襲った人たちにはみんな事情があったことを話した。
検問があちこちにできており、由里はそのままタクシーを銘苅たちに渡した。
タクシー運転手の振りをして運転を続ける。
すると、ラジオで清丸の母が自殺したという一報が流れた。 それを聞いた清丸はとても動揺し、一旦車を止めた。銘苅の携帯電話に蜷川から着信があった。清丸を殺してくれたら20億でも30億でも支払うという交渉だった。銘苅の妻は、飲酒運転していたドライバーに轢き殺されていた。
その運転手は、過去にも同じ罪で服役していたのだ。つまり同じ罪を繰り返している清丸と同じだった。
蜷川は、もし清丸を殺したあかつきには銘苅の妻を殺した運転手を殺してやると言ったが、銘苅は応じなかった。
通話が終わり、ふと見ると清丸が白岩を殴り、銃を奪って白岩を殺害していた。ここまで何度も清丸を守った白岩を、清丸はいとも簡単に殺してしまったのだ。清丸を殴りつけた銘苅は、それでも警視庁まで清丸を連れていく。
警視庁前に、清丸を連れた銘苅が到着した。そこに蜷川がやってきて、杖に仕込んだ刀で清丸を殺そうとしたが、銘苅はそれを制止した。
その刀を拾った清丸は蜷川を襲おうとする。しかし、銘苅が蜷川をかばい、救急搬送された。
こうして清丸は逮捕された。蜷川はその後、殺害依頼を取り消した。裁判で死刑が言い渡された清丸は、最後にいいたいことはと聞かれる。
どうせ死刑になるならもっとやっとけばよかったなって後悔はしてる、そう答えた。
映画『藁の楯』の登場人物・キャスト紹介
銘苅一基／大沢たかお
警視庁警備部のSPで、清丸護送のメンバーの1人。どんなにクズな人間でも仕事を全うして守ります。
飲酒運転の男性が運転するトラックに轢かれ、妻を亡くしている人物です。
銘苅一基を演じているのは大沢たかおさん。『キングダム』『世界の中心で、愛をさけぶ』『AI崩壊』などに出演しています。
『JIN-仁-』で8年ぶりに連続ドラマに出演し、続編も放送されました。1作目、2作目とも最高視聴率25%を超える高視聴率をマークしています。
白岩篤子／松嶋菜々子
警視庁警備部のSPで、清丸の護送メンバーの1人。仕事ができるため厚い信頼を得ており、将来の幹部候補。シングルマザーで小学3年生の息子がいます。
白岩篤子を演じているのは松嶋菜々子さん。『祈りの幕が下りる時』『家政婦のミタ』『やまとなでしこ』などに出演しています。映画やドラマに多数出演され、知らない人はいないであろう女優さんですね！ドラマ『GTO』で共演した反町隆史さんとご結婚されています！
奥村武／岸谷五朗
警視庁刑事部捜査第一課の刑事で、清丸の護送メンバーの1人。冷静に物事を見ているタイプだが、実は秘密を抱えています。
奥村武を演じているのは岸谷五朗さん。『クローズZERO』『夜明けの街で』『Returner リターナー』などに出演しています。
大学在学中に舞台俳優として活動を始め、93年には「月はどっちに出ている」で高崎映画祭とヨコハマ映画祭の最優秀新人男優賞を受賞しています。
94年に寺脇康文さんとともにSETを退団し、企画ユニット「地球ゴージャス」を結成するなど幅広く活動されている俳優さんです。
関谷賢示／伊武雅刀
福岡県警察刑事部捜査第一課の刑事で、巡査部長。清丸護送メンバーの1人で、気が短い神箸のなだめ役にもなっている。
関谷賢示を演じているのは伊武雅刀さん。『カイジ』『ROOKIES-卒業-』『ボイス 110緊急司令室』などに出演しています。
悪役が多いイメージですが、意外とコミカルな役もされてるんです！
神箸正貴／永山絢斗
警視庁刑事部捜査第一課の刑事。清丸護送メンバーの1人で気が短く、清丸の言動に腹を立てる場面も。
神箸正貴を演じているのは永山絢斗さん。『闇金ウシジマくん ザ・ファイナル』『真田十勇士』『アンフェア the end』などに出演しています。
三人兄弟の末っ子で、兄は俳優の永山瑛太さんです。
清丸国秀／藤原竜也
7年前に少女を殺害し服役したが、出所直後にまた少女を惨殺した。彼女の祖父である蜷川隆興から10億円の懸賞金を懸けられ、命を狙われる。
殺人鬼であり、人間のクズと言われるほどの人物である清丸国秀を演じているのは藤原竜也さん。
『カイジ』シリーズ、『デスノート』『22年目の告白-私が殺人犯です-』などに出演しています。
主演を務めている『カイジ』は、藤原竜也といえばカイジ！というイメージもあるほどの話題作ですね。ハラハラする作品にたくさん出演されています。
『藁の楯』の映画と原作との違い
出典：IMDb
映画『藁の楯』は原作の小説と異なる点はまず、松嶋菜々子さんが演じた白岩。原作では男なんです！ここはかなり大きな違いではないでしょうか。SPが全員男だと見た目的に重すぎるからかもしれませんね。松嶋菜々子さんの華やかさも良いアクセントになっています。
また、銘刈の妻の死因が映画では飲酒運転の車に轢かれたということになっていますが、原作では病死です。ただ、妻を殺した犯人と清丸の犯した罪が似ているという演出になることでストーリーにも上手く馴染んでいました。
そして映画の重要な場面である、白岩が目を離した隙に清丸に撃たれてしまうシーン。まさかの松嶋菜々子さんが撃たれてしまうということで衝撃の展開でした。ただ、原作ではこのシーンはないんです！また、彼らの居場所が筒抜けだった原因も違います。映画では、岸谷五朗さん演じる奥村の手首にマイクロチップが埋め込まれていました。これが原作では、単にケータイのGPSによるものだったんです。
このように映画は原作よりも設定が多く埋め込まれています。原作を知っている方でもさらにストーリーを楽しめるのではないでしょうか。
映画『藁の楯』の見どころを解説
藤原竜也さんの演技力
藤原竜也さんはどんなジャンルのどんな役でも違和感なくこなしてしまうイメージがありますよね。本作では、最後のシーンまで凶悪殺人犯の清丸を演じ切りました。凶悪殺人犯という難しい役ですが、演技だということを忘れてしまうくらいの演技力につい引き込まれてしまいます。
人間のクズである清丸を演じた藤原竜也さん。その動向やセリフが注目され、人を食ったような態度と無神経さの演技にイラつく人が続出しています。子供を見る異常な眼差し、人の気持ちをもて遊ぶ狂った表情。ゲームのように人の痛みを楽しんでは、自分が殺されかけると不安をぶつけ取り乱す。コロコロ変わる表情と、人の気持ちをあざけ笑う姿が清丸なのか、藤原竜也さん自身なのか、混乱してしまいます。
裁判で死刑判決を受けるシーンでも、清丸の無神経さが垣間見えました。清丸は法廷で後悔の弁を述べます。しかし、それは罪を犯したことへの後悔ではありませんでした。どうせ死刑になるならもっとやっとけばよかったというセリフを平気で言ってのけたのです。
また、清丸が倒れているところに山﨑努さん演じる蜷川が襲いかかった最後のシーン。制止した銘苅を清丸が刀で刺してしまうんです。結局、最後はこれで銘苅が殉職してしまったような曖昧な展開で幕が閉じるのですが、エンディングで松嶋菜々子の息子と一緒に歩いてる姿が映っていたので、気になる殉職の件は一命を取り留めたとの見解を示す人が多いようです。
藤原竜也さんはこの役にふさわしい俳優であったことは言うまでもありません。俳優としての彼の力量を見せつけられた作品です。
真の正義とは
SPといえば、普通は政府のお偉いさんなどある程度立場がある人を守るというイメージがありますよね。しかし、本作では少女を殺した犯人を護送するという特殊な設定です。
しかも襲ってくるのはいわゆる殺し屋みたいな人たちではなく、一般人たちです。サラリーマン、看護士、企業の社長、被害者遺族、警察官など様々な人が清丸を殺すために血眼になって襲ってくるのです。
SPの銘苅は、命令であればどんなクズでも守るという使命感の持ち主です。ただ、守る対象の清丸がとにかくクズなんです。少女への暴行と殺害だけでもかなりのクズ人間です。
しかし人間として壊れてしまっている清丸は、殺した少女はプリプリだった、うるさいガキ、どうせ死刑になるならもっと殺しとけばよかった、など嫌な気分になる発言が多く、クズとしての片鱗を遺憾なく発揮しています。
そんな中、銘苅やその他警察官はどのように正義を貫くかが本作の見どころです。こんなクズ殺したほうがいい、なんでこんなやつ守っているんだ、と思ってしまったときあなたはどんな行動をするでしょうか。
銘苅や白岩SPたちも護送中に何度もこの考えを巡らせてしまいます。特に白岩を清丸が撃ち殺したとき、それまで気持ちを押し殺してきた銘苅が爆発してしまいます。しかし、銘苅は清丸を無事移送し終えるのです。どんなにクズでも仕事を全うする姿に胸を打たれます。そして、清丸に罪を償わせることこそが真の正義なんだと感じられます。
まとめ
映画『藁の楯』のネタバレあらすじ、キャスト、原作との違いや見どころについて紹介しました！
SPが凶悪犯を守るという珍しい設定の本作。お金に目がくらんだ人間たちの裏の顔に怖さを覚えます。アクションシーンも満載なので見ごたえ抜群です！
ぜひ、本記事を参考に映画『藁の楯』を存分に楽しんでいただければ幸いです。
