美しすぎる愛!王家衛監督のおすすめ映画7選!『マイ・ブルーベリー・ナイツ』他
どんな愛をも美しく描く、香港が生んだアジア映画の巨匠・王家衛監督。近年は映画界にとどまらず、アメリカ・ニューヨークのメトロポリタン美術館に付属する服飾研究所が、年に一度開催する資金調達のためのパーティーを含む一大イベント“METガラ”にて、2015年“鏡の中の中国”展の芸術監督として尽力し、成功を収めたことでも話題となりました!
今回は、そんな王家衛監督のおすすめ映画をご紹介していきます!
王家衛監督について
王家衛監督は1958年7月17日に生まれ、中国の上海で生まれました。しかし五歳の時に香港に移住したようで、現在は香港の映画監督・脚本家として名を馳せています。
彼は香港理工大学を卒業後、テレビ業界からキャリアをスタートし、その後数多くのテレビや映画作品に脚本家として参加。そして、1988年『いますぐ抱きしめたい』で遂に映画監督デビューしました。
王家衛監督は恋愛と記憶、そして忘却をテーマに、様々な人間関係を美しく描くことを得意としています。一見ありふれた恋愛を描いているように感じる作品も、実はとても普遍的な感情や思想を描いていて、何度見ても発見がある映画ばかりです。また、もともと脚本家として多数の作品に参加していたにも関わらず、自身の監督作品では撮影直前に役者にメモ書き程度で指示を与え、即興による演技をさせた作品もあり、役者との化学反応をそのまま作品に反映するという一面もあります。そしてなんといってもスターを好んでキャスティングし、大胆な濡れ場も果敢に挑戦させる凄腕の監督でもあります。
王家衛監督の見逃せないおすすめ映画
それでは早速、王家衛監督の選りすぐり7作品を公開年順にご紹介します!
1.欲望の翼
出典:Amazon.com
あらすじ
ヨディ(レスリー・チャン)は養母のすねをかじり何もせず暮らす遊び人。彼はある日サッカースタジアムの売店で働くスー・リーチェン(マギー・チャン)に目をつけ、声をかける。初めはヨディを警戒していたスーだったが、次第に彼に惹かれていく。ほどなく二人は恋仲になるのだが――。
ヨディを取り巻く女たちの戦いと思い、また、その女たちに密かに思いを寄せる男たち。それぞれの一方通行の思いは、どこに向かうのか――。
ココがすごい!王家衛監督『欲望の翼』のトリビア!
- 劇中で登場人物たちが訪れるカフェは、北角の皇后飯店 (クイーンズ カフェ)。実際の撮影に使われた店舗はなくなってしまったが、現在はその近くに再び皇后飯店ができ、劇中でスーと警官(アンディ・ラウ)が待ち合わせた電話ボックスが今も設置されている。
- 今作のキャスティングは、“香港映画史上最初で最後”と言われるほど豪華なものだった。
王家衛監督の『欲望の翼』みどころ!
本作では、舞台となる香港の街並みとは全く関係のない密林が、何度かスクリーンに映し出されます。初めは“このシーンはなんなのかしら…?”と気になって仕方がないのですが、次第にその謎が解けてゆき、このシーンの本当の意味を知ったとき急速に胸が締め付けられます。登場人物たちは時に国境を越えて、それぞれの思いを抱えながら生きてゆきます。馳せる想い、叶わない想い、秘める想いが、全編にわたり狂おしいほど美しく描かれている本作から、目が離せません!!
基本情報
上映時間:97分 監督:王家衛 出演者:レスリー・チャン、マギー・チャン、カリーナ・ラウ、他 受賞歴: ・第10回香港電影金像奨 最優秀作品賞・最優秀監督賞・最優秀主演男優賞(レスリー・チャン) ・第28回金馬奨 最優秀監督賞 公開日:1990年12月15日(香港) 1992年3月28日(日本) |
2.恋する惑星
出典:Amazon.co.jp
あらすじ
五年付き合った恋人からエイプリル・フールに別れを告げられた刑事223号(金城武)は、彼女のことが忘れられず浮かない日々を過ごしていた。
一方、金髪にサングラスの謎の女(ブリジット・リン)は重慶マンションを拠点に活動する麻薬密売人で、雇ったインド人らに裏切られ復讐をする。そんな二人はある晩、バーで偶然出会う――。
刑事663号(トニー・レオン)は小食店“ミッドナイト・エクスプレス”の常連だった。そこには新入りの娘(フェイ・ウォン)が働いていたのだが、彼女はあっという間に刑事663号を好きになってしまう。しかし彼にはスチュワーデスの恋人(チャウ・カーリン)がいて――。
二組の男女のすれ違う恋愛模様を美しく描き切った、王家衛監督の不朽の名作。
ココがすごい!王家衛監督『恋する惑星』のトリビア!
- 王家衛監督が本作のプロデューサーでもある盟友ジェフ・ラウと1992年に設立した製作会社であるジェット・トーン・プロの記念すべき第1作目。
- 本作は描かれている2編のエピソードと、さらにもう1編のエピソードが描かれる予定だった。しかしその一編は本作では割愛し、後に再構成して製作されたのが『天使の涙』。
王家衛監督の『恋する惑星』みどころ!
特徴的なカメラ・ワークや遠近感、キュートな色使いや印象的な音楽など、視覚も聴覚も存分に満たされる文句なしの名作『恋する惑星』。この映画の世界そのものに恋しちゃうこと間違いなしなのですが、特に注目していただきたいのは、本作でスクリーンデビューした金城武!“かっこいい!”と“可愛い!”が交互に押し寄せる彼の演技と役柄に、目が離せません…!日本語・北京語・広東語・台湾語・英語と五国語を自由自在に操る彼ならではのシーンに、「かっこよすぎるでしょう!!」と思わず唸ること間違いなしです!!
基本情報
上映時間:100分 監督:王家衛 出演者:トニー・レオン、フェイ・ウォン、ブリジット・リン、金城武、他 受賞歴:第14回香港電影金像奨 最優秀作品賞・最優秀監督賞・最優秀主演男優賞(トニー・レオン)、他 公開日:1994年7月14日(香港) 1995年7月15日(日本) |
3.天使の涙
出典:Amazon.com
あらすじ
殺し屋の男(レオン・ライ)とエージェントの女(ミシェール・リー)は、仕事上のパートナーという割り切った関係だった。
エージェントは殺し屋の留守中に彼の部屋を清掃することが日課となっていて、持ち帰ったゴミから彼の行動を探っていた。彼女は密かに殺し屋に恋をしていたのだ。しかし殺し屋はこの仕事から足を洗おうと決意し、突然エージェントの前から姿を消す。
一方、エージェントが寝泊りする重慶マンションの管理人の息子モウ(金城武)は口がきけない青年。彼は夜中に勝手に人の店を開けて営業し、通りすがりの人たちにものを押し売りして生活していた。そんなある日、モウは失恋した娘(チャーリー・ヤン)と出会って――。
当初『恋する惑星』の3つ目のエピソードとして描かれていたストーリーを、さらにアイデアを膨らませて新たな作品として製作された王家衛監督渾身の一作。
ココがすごい!王家衛監督『天使の涙』のトリビア!
- 本作で登場するモウの父親役である陳萬雷は、ロケ地・重慶マンションの管理人であり、全くの素人俳優だった!当初、ロケ地として場所を借りる交渉を進めていた王家衛監督だったが、次第に陳萬雷に魅力を感じ本作への出演が決定。役も予想外に大きくなった!
- 本作中盤でモウが働く焼き鳥屋の日本人店主役の斉藤さんも実際にロケ地となった焼き鳥屋の日本人店主であり、陳萬雷と同じく全くの素人俳優だったそう。素人俳優たちの素晴らしい演技に、俳優の金城武の方が王家衛監督に叱咤激励されたこともあったのだとか。
- 本作は当初、麻薬中毒者のミシェール・リーが金城武演じる喧嘩早い男とラーメン屋で出会うという、出来上がった作品とはまるで違うストーリー設定だった!
- 本作はシナリオがなく、金城武は一日一枚王家衛監督から渡されるメモに書いてある指示を手掛かりに即興で演技した。
王家衛監督の『天使の涙』みどころ!
エージェントの女を見事に演じ切ったミシェール・リーは、本作で新境地を開いたと言われています。彼女のスクリーンでのスゴみ、気迫、美しさ、気だるさ、なんとも言えない色気に魅了されること間違いなしです…!!
ここまで見せていいの…?というような、秘めておきたい“人間の欲望”もしっかりと描かれた本作。美しいラストシーンを超えて、観終わった後は温かい気持ちになりますよ。
基本情報
上映時間:96分 監督:王家衛 出演者:レオン・ライ、ミシェール・リー、金城武、チャーリー・ヤン、他 受賞歴:香港電影金像奨 最優秀オリジナル音楽賞、他 公開日:1995年9月6日(香港) 1996年6月29日(日本) |
4.花様年華
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あらすじ
あるアパートに二組の夫婦が引っ越してきた。“隣人”として関わっていくチャウ(トニー・レオン)とチャン(マギー・チャン)だったが、穏やかな生活がある日を境に一変する。どうやらお互いの妻と夫が不倫関係にあるらしい。チャウとチャンは伴侶の裏切りを慰め合いながら、どのように伴侶たちの不倫関係が始まったのかを想像し、二人でその“再現劇”を演じ始める。あくまでも“一線を越えない”二人だったが、次第に惹かれ合っていき――。
『欲望の翼』の続編とされ、『2046』の前編ともいわれる美しき王家衛的世界。
ココがすごい!王家衛監督『花様年華』のトリビア!
- 王家衛監督は1996年に『天使の涙』のプロモーションでパリを訪れた際に偶然マギー・チャンと会い、“しばらく仕事をしていないから、そろそろ何かやりましょう。”と話したのがきっかけで今作の製作が決定した。
- 王監督とマギー・チャンが話し合っている際に“相手役にトニー・レオンはどうでしょう。”とマギー・チャンが言ったのがきっかけでトニー・レオンがキャスティングされた。
王家衛監督の『花様年華』みどころ!
1960年代の香港を舞台にした王家衛監督の60年代三部作のうちの一本にあたる本作。1960年代は監督自身の幼少期だったこともあり、王家衛少年が見た記憶の中の香港をたどる旅のようでもあります。スクリーンに映し出されるとても美しい素朴な香港の街に、“今の時代で再び見ることの出来ない何か。失われたひとつの時代をフィルムに収めてみたかった。”という王家衛監督の意思が痛いほど伝わってきて、胸が締め付けられます。
基本情報
上映時間:98分 監督:王家衛 出演者:トニー・レオン、マギー・チャン、他 受賞歴:カンヌ国際映画祭 男優賞(トニー・レオン)、他 公開日:2000年5月20日(フランス) 2000年9月29日(香港) 2001年3月31日(日本) |
5. 2046
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あらすじ
1960年代香港。チャウ・モウワン(トニー・レオン)は、金のためならなんでも書く作家だった。
香港のホテルに滞在するチャウは、部屋番号“2046”にこだわり続け、そこに滞在させてくれとホテルのオーナーに交渉する。ホテルにはオーナーの娘ワン・ジンウェン(フェイ・ウォン)がいて、隣の空き部屋で時折日本語の練習をしているようだった。
彼女は日本から来たビジネスマンのタク(木村拓哉)と恋に落ちるが、父親であるオーナーに大反対され上手くいかない。そんな二人の関係を見ていたチャウは、小説“2046”を書き始めて――。現実と虚構の未来が交差する“2046”で、彼らは失われた愛を取り戻せるのか――?
ココがすごい!王家衛監督『2046』のトリビア!
- 本作は前作『花様年華』の続編であり、『欲望の翼』の一部続編でもある。
- 1999年4月にクランクインした本作は、幾度のトラブルのため2000年4月に撮影が中断。製作中止の噂も流れた3年半の沈黙を破り、2003年10月に撮影を再開した。
- 本作はカンヌ国際映画祭で世界初上映されたが、その際木村拓哉の出演時間は約7分だった。しかし正式公開前には再編集し、完成披露試写会で上映された際は、カンヌ国際映画祭時の3倍となる約20分に出演時間が増えていた。
王家衛監督の『2046』みどころ!
アジア映画スターを大集結させた本作。シーンごとに映るのは超豪華俳優陣ばかりで、それだけでも目がくらむような贅沢さです。チャウを主軸として恋愛を様々な角度から美しく切り取っており、王家衛監督流の音楽と美術の美しさもたっぷりと堪能できます。
そしてなんといっても、チャウに思いを寄せる気の荒い娼婦バイ・リン役のチャン・ツィイーの熱演には度肝を抜かれます。最盛期の華やかさから、時が経ち疲弊していく女の哀しさと切なさに、枯れていく人間の美しく不思議な魅力に引き込まれます。
基本情報
上映時間:129分 監督:王家衛 出演者:トニー・レオン、木村拓哉、チャン・ツィイー、フェイ・ウォン、他 受賞歴:第24回香港電影金像奨最優秀主演男優賞(トニー・レオン)・最優秀主演女優賞(チャン・ツィイー)、他 公開日:2004年9月29日(香港) 2004年10月23日(日本) |
6. マイ・ブルーベリー・ナイツ
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あらすじ
カフェ・クルーチの店主ジェレミー(ジュード・ロウ)のもとに、ある日恋人に振られ失恋したエリザベス(ノラ・ジョーンズ)が現れる。
彼女はその恋人がカフェ・クルーチの近くに住んでいるという理由で、自分が持っていた彼の家の合鍵をジェレミーに預けることにした。
それから鍵の様子を見にカフェ・クルーチに立ち寄ることが習慣になっていったエリザベス。立ち寄る際にはいつも、ジェレミーが焼いた売れ残りのブルーベリーパイを注文する。そんなエリザべスに次第に惹かれてゆくジェレミーだったが、ある夜エリザベスは旅に出ることにして――。
第60回カンヌ国際映画祭にてオープニング作品として上映された、“旅と距離”を様々な角度から描く甘酸っぱいラブストーリー。
ココがすごい!王家衛監督『マイ・ブルーベリー・ナイツ』のトリビア!
- 本作は王家衛監督初の全編英語作品!
- 撮影期間は8週間のみで、とてもタイトなスケジュールの中行われた。
- 王家衛監督はもともと、ノラ・ジョーンズに自分の作品の音楽を担当してほしいと思い交渉を進めていたそう。しかし彼女と話すうちに、彼女自身に出演をしてもらったほうが面白いと感じ、彼女を主役に大抜擢した。
- ノラ・ジョーンズがツアーなどで多忙なため、彼女のスケジュールに合わせやすいように“ロードムービー”を製作することにした。
王家衛監督の『マイ・ブルーベリー・ナイツ』みどころ!
本作は、歌姫ノラ・ジョーンズのデビュー作としても話題になりましたが、なんといってもカフェ・クルーチ店主ジェレミー役のジュード・ロウがめちゃくちゃかっこいいんです!!振られた恋人を忘れられないがゆえにカフェ・クルーチに通いつめるエリザベスの話し相手であり、時には何も言わずただそこに居てくれるキーパーソンとなる役どころ。彼は次第にエリザベスに惹かれていきますが、“これからこの二人…どうなるのよ…!?”とドキドキせずにはいられない場面で、エリザベスが突然旅に出てしまうという何とももどかしい展開に。距離はどんどんと離れいく二人ですが、心は次第に近づいていく様が美しく描かれます。エリザベスが旅に出ている間のジェレミーの行動一つ一つにも愛があり、切なさもあり、とにかく釘付けになること間違いなしです!!
基本情報
上映時間:95分 監督:王家衛 出演者:ノラ・ジョーンズ、ジュード・ロウ、他 受賞歴:なし 公開日:2007年5月16日(フランス) 2008年1月3日(香港) 2008年3月22日(日本) |
7.グランドマスター
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あらすじ
中国武術で流派を極めた長は、グランド・マスター(宗師)と呼ばれる。1930年代中国、
北の八卦掌のグランド・マスターであるゴン・パオセン(ワン・チンシアン)は引退を決意し、自分が生涯をかけやり遂げようとした南北統一の使命を果たすことができる最強の者に、宗師の地位を譲ろうとしていた。形意拳の使い手であるパオセンの一番弟子マーサン(マックス・チャン)、南の詠春拳のグランド・マスターであるイップ・マン(トニー・レオン)が候補者として上がるが、パオセンの娘で、奥義六十四手を唯一受け継ぐゴン・ルオメイ(チャン・ツィイー)も父の反対を押し切って名乗りを上げる。しかし欲に目が眩んだマーサンが師であるパオセンを殺害したことで、状況は一変して――。
時代に翻弄され、それでも受け継がれるべき“心”がここにある――。詠春拳の達人で、ブルース・リーの師匠として知られる武術家イップ・マンを描いた伝記的カンフー映画。
ココがすごい!王家衛監督『グランドマスター』のトリビア!
- 本作は王家衛監督が17年構想し、7年の準備期間を経て、さらに3年かけて撮影した超大作である。
- これまで武術経験がなかったトニー・レオンは、本作出演が決定してから訓練をし素晴らしい腕前を身につけた。
- トニー・レオンは武術訓練の際にトレーナーからキックを受け骨折。その後約半年間、体を動かせなかった。そしてクランクイン初日にまた骨折し、また半年休むという大変な現場だった。そのためクランクアップの時にはすごく嬉しく、達成感があった。
王家衛監督の『グランドマスター』みどころ!
なんといっても美しすぎる武術シーンに目が離せません!王家衛監督は今作で、特撮やスタントをできるだけ使用しないで俳優たち自らが訓練で身に着けた本物の武術を披露したいとの方針でした。結果的にそれが見事にスクリーンに反映され、圧巻の武術シーンを堪能できますよ!!
基本情報
上映時間:123分 監督:王家衛 出演者:トニー・レオン、チャン・ツィイー、他 受賞歴:第50回金馬奨最優秀主演女優賞(チャン・ツィイー)、他 公開日:2013年1月8日(中国) 2013年5月31日(日本) |
まとめ
王家衛監督作品を公開年順にご紹介しました!
濃密な人間模様を美しく描き、視覚・聴覚のみならず五感をフルに刺激される作品を作り続ける王家衛監督。登場人物たちの過去・現在・未来を追体験することで、私たちが人生で立ち止まってしまいそうなとき、そっと背中を押してくれるかもしれません。
これからの王家衛監督の作品にも大注目です!