映画『オデッセイ』のネタバレ解説 | サバイバルを生き抜く秘訣は知識と陽気さ
SF大作映画『オデッセイ』は、なぜ感動作と言われるのでしょうか?本作品では、壮大な火星を背景に、宇宙の残酷さに立ち向かう人々の勇敢な姿がありありと表現されています。第73回ゴールデングローブ賞では、ミュージカル/コメディ部門にて作品賞を受賞しました。また『オデッセイ』はサバイバルという間口の広いテーマでありながら、コアなSFファンからも大絶賛されている作品です。
この記事では、本作品のあらすじや劇中で描かれているサバイバルのポイントなどをネタバレでご紹介します。「主人公がジャガイモを育てたこと以外の話の筋がイマイチ掴めなかった方」や「オデッセイについてより深く楽しみたい方」に特におすすめです!
目次
現実感のあるサバイバル映画『オデッセイ』について
映画『オデッセイ』は、火星に置き去りにされた探査員のサバイバルがリアルに描かれたSF超大作です。「リアルに…」と言っても、人類はまだ1度も火星に足を踏み入れたことがありませんから、この物語は当然実話ではありません。この映画は、2011年にkindleで出版されたアンディ・ウィアーのノベル『火星の人』を原作に、ドリュー・ゴダードが脚本を書き製作されました。
この小説は一般的に、火星で生き残る方法がしっかり調べられており、科学的にも辻褄の合った話であると言われています。幼いころからSFファンで宇宙オタクだったアンディは、ネットで調べた情報を元にこの小説を書き、インターネットで無料公開しました。
しかしこれが面白いと口コミでまたたく間に広がり、kindle版が発売されることに……。結果3ヶ月間で35,000ものダウンロードを記録、その後遂には書籍化されました。以後SFファンから絶賛される小説になるのです。
監督は、これまで『ブレードランナー』や『プロメテウス』などのSF超大作を生み出してきたリドリー・スコット。監督は本作品のことを「サバイバル映画の決定版であり、SF版ロビンソン・クルーソーだ」と話しています。また主演のワトニー役を演じたマット・デイモンは、本作品でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされました。
10秒で分かる『オデッセイ』の簡単なあらすじ
出典:映画『オデッセイ』予告編
火星に滞在する6人の探査隊を、大嵐が襲います。逃げている際に仲間とはぐれてしまったワトニー(マット・デイモン)は、死亡したのだと勘違いされ火星に1人取り残されてしまいました。その日から、火星でのストイックな生活が始まるのです。
ワトニーは、地球の人々に自分が生きていることを伝えるための、通信手段を得ます。また彼は植物学者であったため、火星に菜園を作りジャガイモを育てました。地球上のNASAではワトニーが生きていると知ってからも、人々の意見がくい違い、なかなかヘルメス号で帰還中のクルー達にワトニーが生きていることを知らせません。
そんな時リッチ(ドナルド・グローヴァー)という若い科学者が、ヘルメス号をもう一度ワトニーの元に向かわせ、救け出すための飛行ルートを提案します。このことはこっそりとヘルメス号に伝えられ、クルーらは仲間のワトニーを救助しに火星へ戻りますが――。
火星で孤軍奮闘!『オデッセイ』のネタバレあらすじ
『オデッセイ』では、知力や経験の荘厳さが描かれています。ここではそんな本作品のあらすじを、がっつりネタバレで詳しくご紹介してみましょう。未見の方は、くれぐれもご注意ください。
【あらすじ①】取り残された宇宙飛行士
そう遠くない未来の火星。6人の探査隊員は、陽気にジョークを言い合いながらアレス3ミッションの任務に就いていた。しかし突然、大きな砂嵐に見舞われてしまう。全員撤退の判断をしたルイス船長(ジェシカ・チャステイン)をはじめ、皆は慌てて住居空間のハブからMAVへと駆け込む。しかしその時メンバーの1人であるワトニーが、何らかの衝撃で吹き飛ばされてしまった。
他のメンバーは火星から脱出するための乗り物MAVに入り込んだが、ワトニーが見当たらないためルイスは彼を捜しに行く。だがタイムリミットは刻々と迫り、ルイスは遂にMAVに戻ることを余儀なくされた。クルーらはワトニーが死んだと認識し、緊急脱出してしまう。その後地球では、ワトニーが亡くなったと報じられた。しかし、実は彼は生きていたのだ。砂の中ひっそりと倒れていたワトニーは、意識を取り戻しハブに戻る。
見ると腹部には、アンテナの破片が刺さっていた。ワトニーは悲鳴を上げながらも、自分でそのアンテナの破片を抜き、医療処置をする。そこでワトニーは、改めてことの深刻さを理解した。他のクルーらは自分が死んだのだと思い込み、火星から脱出してしまった。地球から次の火星探査機が送り込まれるまでにおよそ4年かかる。そう考えると最悪の場合、彼は4年の間1人きりで火星生活を送り、生き延びなければならないのだ。
火星での1日の単位は、1ソルとして数えられた。つまり地球では1日が24時間であるが、火星では1ソルが24時間39分35秒となる。ワトニーはまず、地球へのメッセージをレコーダーに記録する。船内には仲間のクルーらの私物が、ケースに入ったまま置き去りにされていた。ワトニーは「ここで死ねるか……」とつぶやく。
【あらすじ②】残された食糧をチェックする
ワトニーは、すぐに残された食糧の計算を始めた。住居空間であるハブには、68ソル×6人分の食糧が残っていた。すなわち、他のクルーの分を合わせると408ソル分の食糧が残されている状態であり、これは約1年分に相当する。しかし4年間滞在することを考えれば、あと3年分足りない。
更に、食糧以外に空気や水も確保しなければならない。ワトニーは、感謝祭を祝うために準備されているジャガイモを眺めていた。そこで植物学者である彼は、火星でジャガイモを育て食糧に充てることを思い付く。その後ワトニーはハブ内に、128平方メートルもの菜園を作った。
肥料には他のクルーらの排泄物を使用、土の中に感謝祭用のジャガイモを切り分け植えていった。しかし火星で植物を育てるためには、水が必要である。ワトニーは過去の経験や専門知識を生かし、水を作ることに成功する。54ソル経過したある時、ワトニーは自身で作った畑から小さな緑色の芽が出ているのを見つけた。彼はその芽に「こんにちは!」と挨拶をする。
その頃、地球のヒューストンのジョンソン宇宙センターでは火星ミッションの責任者であるビンセント(キウェテル・イジョフォー)が、NASAの長官であるテディ(ジェフ・ダニエルズ)に、衛星の使用許可を求めていた。しかしNASAは公共の機関であるため、全ての画像を公にしなければならない。テディは、衛星でワトニーの遺体が全世界に映し出されることを恐れているのだ。
また衛星交信担当のミンディ(マッケンジー・デイヴィス)は、火星の地表に変化があるのを発見する。何者からか、「この座標を調べて」というメールを受信したのだ。報告を受けたビンセントが火星のその座標を見ると、ソーラーパネルは以前より綺麗になり探査車が移動していた。ワトニーが生きている可能性がある……。NASAでは、宇宙船のワトニーの仲間に、このことを伝えるかどうかの議論がはじまった。
ワトニーがもしも生きているのなら、アレス3のクルーらには知らせたくない。生きたまま置き去りにしてしまったのだと知ったクルーらは酷くショックを受け、任務に集中できないのではないかと心配された。一方アメリカでは、もしかしたらワトニーが生きているかも知れないと発表され、マスコミは大騒ぎとなる。
【あらすじ③】地球との交信に成功!
そんな中火星ではジャガイモを植えてから48ソルが経過し、ハブ内の畑には400株のジャガイモが育った。ワトニーは、大きいジャガイモは食料用に収穫し、小さなジャガイモは次の種イモにした。また彼は、NASAと交信する方法を考える。その後まず探査車を走らせ、1996年に打ち上げられた火星探査機であるマーズ・パスファインダーを回収し、それをハブに持ち帰った。
ワトニーはエンジニアでもあるので、このパスファインダーを修理し通信できる状態にした。地球のビンセントは、ワトニーの動きを追っている内に彼の考えをくみ取り、ジェット推進研究所へ向かう。そこには1996年に火星で使用されたパスファインダーのレプリカがあり、これを使えばワトニーと連絡が取れると考えたからだ。
ビンセントの思わくは当たった。地球上のパスファインダーのレプリカと火星のパスファインダーは無事通信が繋がり、ワトニーとビンセントはごく簡単なやりとりで、コミュニケーションを取ることに成功した。その後ワトニーは、PCオタクであるヨハンセン(ケイト・マーラ)のパソコンでアスキー文字コードを探し、このコードを通信手段に使うことを思い付く。
創意工夫から、コミュニケーションは以前より円滑に進むようになった。しかしワトニーは自分が生きていることを、NASAがヘルメス号の探査員らに伝えていないことを知り、心理的なダメージを受けた。これにより彼は、発言が世界中に中継されているにもかかわらず、下品な言葉を吐き散らす。地球からは、ひとまず食料を乗せた補給機ロケットを火星に送る計画が立てられた。
【あらすじ④】思わぬ協力者の出現!
ルイスと探査隊を乗せたヘルメス号が、火星を撤退してから4か月が過ぎていた。そこへNASAの地上飛行指揮官であるミッチ(ショーン・ビーン)から、ビデオによるメッセージが届く。ビデオの内容は、実はワトニーが生きていることを知らせるのものであった。クルーらはNASAがこの件を彼らに2か月も黙っていたことに対して、冷ややかな怒りを見せた。
また船長であるルイスは、ワトニーを置き去りにしたのは自分だと言いひどく落ち込む。火星でのソル136、ハブのある一部分の布の破れから、気圧が不安定となりハブのエアロック事故が発生した。これにより今畑で育てているジャガイモや土などがダメになってしまい、大きなダメージを受ける。
絶望的な状況下、更に不運は続く。地球でこの悪状況を察知したNASAが焦り、食料物資の支援ロケット(補給機アイリス)を予定より早めて打ち上げたのだ。しかし急いでいたこともあり、打ち上げ前の最終点検の時間を減らしたため、打ち上げに失敗した。打ち上げ直後に、ロケットに異変が起こったからだ。
この事件をニュースで見ていた中国国家航天局のチュー(チェン・シュー)とグオ(エディ・コー)は、これまで機密にしていたロケット“太陽神(タイヤン・シェン)”を、NASAのために差し上げる提案をした。更に宇宙力学家のリッチは研究に研究を重ね、ヘルメスをソル561までに火星に戻すという飛行プランを提供する。
方法は地球に向かっているヘルメス号を加速させ、その際ヘルメス号にはタイヤン・シェンで補給機から燃料の供給を受け取り、もう1度火星に舞い戻りワトニーを助けるというものであった。しかしこの作戦だと宇宙飛行士達には、533日のミッションが新たに追加されることになる。NASAの長官はこの飛行プランを否定し、タイヤン・シェンを食料の供給に使うべきだと言った。
これで選択肢は2つになった。高い確率で1人が死ぬリスクを選ぶか?低い確率で6人が死ぬリスクを選ぶか?である。
【あらすじ⑤】ワトニー救助ミッションの幕開け
そんな中ヘルメス号には、画像ファイルに見せかけた謎のメールが届く。これは、飛行ルートを提案した科学者リッチによるものであった。遂に火星にとんぼ返りし、ワトニーを救出するための作戦や飛行ルートの内容が、クルーに知らされたのである。ルイス船長はこの飛行ルートが実現可能であると確認した後、この作戦に乗るかどうかをクルー全員に尋ねた。
クルーらは全員賛成、ワトニーを助けに戻ることを決意する。ヘルメス号はNASAの長官の指示に背き、ばれないように帰還ルートを外れた。中国のロケットも打ち上げられ、今度こそはヘルメス号への燃料の補給も成功する。もちろん、火星に滞在中のワトニーにもこのプランは伝えられた。彼は探査車であるローバーに乗り込み、アレス4計画のためにあらかじめ打ち上げられた火星上昇機MAVがある場所まで移動しはじめる。
なぜなら、アレス4ミッションのために準備されたMAVを使用し、宇宙船からワトニーを拾う企みだからだ。しかし、ここからがまた難題である。今回の救出計画のヘルメス号の飛行ルートでは、MAVを通常通り発射したのでは、ジャンプ力が足りず宇宙船まで届かないのである。よってMAVから不要なものを一切外し、軽量化する必要があった。
ワトニーはMAVの中の使用しない椅子や制御パネル、エアロックなどを次々と外し放り投げた。またMAVの上部も外しキャンバス地に取り換え、まるでオープンカーのような仕様になってしまう。このようなロケットに人が乗り飛ぶのは、前代未聞であり危険な賭けでもあった。
そしていよいよ打ち上げのカウントダウンが始まり、ワトニーの救出状況は中継され地球上でも放送された。皆が見守る中、宇宙へ打ち上げられるワトニー。しかし発射直後、彼はショックのあまり気を失ってしまう。しかも予定していたよりも、ヘルメス号とワトニーの位置が離れすぎていた。何とか気を取り戻したワトニーは、ヘルメス号のルイスと会話をする。
ルイスは船外に出てワトニーを助ける決意をし、宇宙服を着た。ワトニーは自分の宇宙服に傷を入れ空気を抜き、その勢いで飛ぶ超危険な「アイアンマン作戦」を遂に実行。宇宙の中を彷徨いながら、遂にワトニーは無事ルイスの命綱を掴み、そのまま2人で船内に戻った。クルーらも喜びを分かち合い、中継を見ていた地上の人々も、歓声を上げる。
無事地球に帰還したワトニーは、宇宙飛行士を志す若者に講義をする。ワトニーは、「目の前の問題をひとつひとつ解決することが大切だ、そうして解決していけば地球に帰れる」とアドバイスした――。
『オデッセイ』のキャスト!勇敢な人物を演じた俳優陣
マーク・ワトニー/マット・デイモン
宇宙飛行士でありこの物語の主人公です。植物学者とエンジニアを兼ねた専門家。火星滞在中に大嵐に遭遇した際、1人だけ逃げ遅れてしまい死亡したと見なされました。本作品の前半は特に、このワトニーの火星でのサバイバル生活が描かれています。
この孤独な植物学者を演じたのは『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』や『サバービコン 仮面を被った街』などで知られる、マット・デイモンです。彼は同じく宇宙を舞台としたSF映画『インターステラー』のマン博士役で、キャラの立った悪役を務めています。火星での彼の一人芝居は見事で、アカデミー賞の前哨戦とも言われるゴールデングローブ賞の【ミュージカル/コメディ部門】で、主演男優賞を獲得しました。
メリッサ・ルイス/ジェシカ・チャステイン
アレス3の現場の指揮官であり、宇宙船のキャプテンです。また彼女は、地質学者でもあります。火星滞在中に大きな砂嵐に遭遇したため、直ちにミッションを中止する判断をしました。ワトニーとはぐれた際も、1人で探しに向かった責任感のある人物だと言えるでしょう。
その後彼が生きていたことを知った時には、「私が置き去りにしてしまった」という自責の念に駆られます。この真面目な性格とは裏腹に彼女の好みの音楽は、70年代のディスコミュージックでした。メリッサを演じたのは、『ゼロ・ダーク・サーティ』や『インターステラー』の出演で知られるジェシカ・チャステインです。
テディ・サンダース/ジェフ・ダニエルズ
NASAの長官ですが、リスクを回避することが常に優先で、ワトニーの救出に対しても消極的な人物です。フライトディレクターのヘンダーソンとは絶えず意見が対立し、犬猿の仲でした。NASAの体裁ばかりを気にしており、現場の飛行士のことを一切考えていない人物と言えるでしょう。
ミッチ・ヘンダーソン/ショーン・ビーン
NASAのフライトディレクター。クルー思いの人物であるため、長官であるテディとは常に意見がくい違います。物語中盤では長官に対して「あんたは腰抜けだ」と暴言を吐き、長官の指示に反した行動を取ったため辞任を言い渡されました。
しかし臆病な長官からの圧力にもめげず、彼はクルーらに大切な判断をさせるのです。おかげで、リッチが考え抜いたアイデアが採用されたことは否めません。
ビンセント・カプーア/キウェテル・イジョフォー
NASAの職員で、業務は火星探査ミッションの責任者。部下の報告により、いち早くワトニーの生存の可能性を察知した人物です。主にパスファインダーを使い、火星のワトニーと連絡を取る場面などで活躍します。
インタビュー時に多くの国民の前で、「必ずワトニーは地球に戻る」というスキャンダラスな発言をしましたが、実際は彼の言った通りになりました。
リッチ・パーネル/ドナルド・グローヴァー
ジェット推進研究所(JPL)の科学者。物語中盤以降に現れ、ヘルメス号を火星に戻しワトニーを救助するというぶっ飛んだ内容のフライトプランを提案します。大胆なアイデアですが、このプランは実に綿密に計算されたものでした。
若干オタクっぽい雰囲気で仕事熱心、誰に対してもフランクな口調の彼は、本作品のムードメーカーといってもいいでしょう。また彼の研究と提案があったからこそ、アレス3ミッションのクルーらは全員無事に地球へ帰還できたとも言えます。
映画『オデッセイ』の中での専門用語や科学技術のおさらい
この映画には、科学の専門用語や実際にNASAで研究されているテクノロジーが多数出てきます。1度の鑑賞では、人物の描写を観るのに必死でこれらの細かい部分をしっかり観ることができなかった!という方もいらっしゃるのではないでしょうか?ここでは『オデッセイ』の理解をより深めるための用語などを、大まかにご説明します。鑑賞後、「何となくもやもやするなぁ」という方は、ぜひチェックしてみてください。
ハブ
クルーらの火星滞在時の居住空間であり、劇中ではワトニーが寝起きしていた建物全体を指します。ハブにはパソコンを使用できる環境や、ベッド、トイレやシャワー室など一通りの生活ができる環境が整っているのです。劇中では食糧なども、このハブ内で保管されていました。
ソル(SOL)
火星での1日の単位はソル(SOL)と言います。地球では1日が24時間ですが、火星では1ソルが24時間39分35秒となり、地球よりも40分程度長くなるのです。
アレス3ミッション
劇中では、アレス3やアレス4などの言葉が出てきました。劇中でのアレス3ミッションとは、NASAによる火星有人探査計画のことです。すなわち本作品で描かれているクルーらの探査計画がアレス3、更に4年後に予定されている火星有人探査計画がアレス4となります。アレス3という名称が付いている以上、過去にアレス1やアレス2などの計画も存在しているのかも知れません。
パスファインダー
正確には、マーズ・パスファインダーと言い、1996年に地球から打ち上げられた探査機の名前です。ワトニーは、このパスファインダーの通信機能を修復させ、地球との接触を図りました。実際の歴史でもパスファインダーは1996年に打ち上げられており、劇中のパスファインダーのデザインも実際のものとかなり印象が近い仕上がりとなっています。
ローバー
劇中では、人が火星の地表を移動する際に使用する車をローバーと呼んでいました。主にワトニーがパスファインダーを回収するシーンや、アレス4ミッションのMAVの所まで移動する際に登場しています。
要は火星探査機の中でも、自走して探査するものがローバーと呼ばれるのです。火星探査ローバーは、現実の火星探査にも使用されています。今のところ実際に人が乗れるものではないようですが、今後はこのような車が活躍するかも知れません。
MAV(マーズ・アセント・ビークル、Mars Ascent Vehicle)
MAVとは火星上昇機のことで、打ち上げると火星の地表から軌道まで上昇します。宇宙船ヘルメス号は軌道上にあり、火星にそのまま着陸しているわけではありません。よってクルーらが火星の探査を終えた時、宇宙船に戻るためにはMAVが必要となるわけです。冒頭では、緊急事態にメリッサ船長をはじめ、クルーらがMAVに乗り込むシーンがありました。
よってMAVは、母船ヘルメスに戻る時に必要な乗り物と言えるでしょう。ストーリー終盤ではワトニーがアレス4のミッションのため用意されたMAVを使用して、ヘルメス号に戻ることになりました。
映画『オデッセイ』に見え隠れする、サバイバルのヒント
火星からの脱出劇が描かれた本作品はSF作品ですが、生き残る術という普遍的なテーマが扱われているため、幅広い層の人々が楽しめる作品となっています。創造力豊かなワトニーの前向きな行動には、サバイバルのヒントがたくさん隠されているのではないでしょうか?ここでは、劇中の注目ポイントをピックアップしてみました。
専門知識を生かす
ワトニーの強みは植物学者であることです。彼はこの強みを生かし、火星でジャガイモを育てることに成功しました。得意なことは武器である、これは劇中の「火星よ、植物学の力を思い知るが良い!」というワトニーのセリフが物語っています。このセリフからは、専門知識を持っていることがいかに有利であるか、を実感させられるのではないでしょうか?
またワトニーは同時にエンジニアでもあったから、パスファインダーを修理することができました。これを見る限りでは、専門分野は1分野でなく2~3分野あった方が有利という解釈もできます。
笑いを取り入れる
劇中でワトニーは、センスの良いジョークをずっと言い続けます。ピンチの時こそ、笑いは重要かも知れません。ワトニーを演じたマット・デイモンは「宇宙飛行士らは、実際陽気な人が多い」と話していました。
音楽を聴きリラックスする
劇中でワトニーは、ルイス船長の私物である70年代のヒットナンバーを聴き続けていました。ワトニーにとっては趣味の合わない音楽ですが、文句を言いながらも彼はこれを楽しんでいるようにも見えます。ワトニーの置かれた状況はへヴィなものですが、デヴィッド・ボウイの『スターマン』をはじめ、軽快なメロディーが重苦しいイメージを吹き飛ばしてくれるのかも知れません。
目の前の問題を1つ1つ解決する
物語の最後にワトニーは、これから宇宙飛行士になる若者に「問題を1つ解決し、また次の問題を解決する」ことの大切さを教えました。『オデッセイ』の鑑賞後、爽快感が味わえるのは、実際に具体的な努力をした人物が報われる物語だからです。劇中のワトニーのセリフには、「宇宙はある時点で人間を見はなす。覚悟しておけ」というのがあります。
宇宙には神も存在しないかも知れない、そんな中1人の人間のコツコツとした積み重ねが描かれ、物語は進行していきます。サバイバルの現場でくよくよ悩む暇などない……。望みがないように思えても神に祈るわけでなく、目の前のことを一つ一つ冷静に解決し続けるワトニーの聡明さがクローズアップされているのは、いかにもリドリー・スコットらしい作風だと言えるでしょう。
まとめ
以上映画『オデッセイ』のあらすじや、サバイバル映画としての魅力をご紹介しました。絶体絶命のピンチを乗り越えていく主人公のワトニーを見ていると、勇気や希望が湧いてきます。また、人はこのような究極の環境に身を置いた時に、思いがけない力を発揮するのではないでしょうか?
生活に今ひとつパンチが足りないなと感じる時や、困難なできごとに遭遇した時、物事が上手く進まず気持ちが折れそうになった時など、本作品は勇気を与えてくれる映画になるかも知れません。未見の方はもちろん、再度ご鑑賞してみてください!