壮絶な物語をどう受け止めていくべきか?映画『火垂るの墓』のあらすじをネタバレ解説

ネジムラ89

暑い季節になると、夏を題材にした映画を観たくなるものですが、季節ものとして忘れてはいけないのが戦争映画。日本では8月15日が終戦記念日となっており、当時の戦争を描いた映画を観て、当時を思い馳せるのも良いでしょう。

そして、そんな当時の戦時中の日本を映画としてよくピックアップされる映画の一つが『火垂るの墓』です。

その内容から多くの人の記憶に残る『火垂るの墓』がどういった映画なのか、ネタバレを含めて紹介していきます。

映画『火垂るの墓』とは

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出典:スタジオジブリ公式サイト

『火垂るの墓』は1988年4月に『となりのトトロ』との同時上映作品として劇場公開された長編アニメーション映画です。製作はスタジオジブリ。監督を務めたのは、のちに『平成狸合戦ぽんぽこ』『かぐや姫の物語』を手がける高畑勲監督です。

野坂昭如さんによって書かれた、同名小説を原作に、ストーリーの本筋はそのままに各所演出や結末などを独自のものにアレンジしています。

現在は完成版としてディスクリリースを果たしている『火垂るの墓』ですが、当時は公開予定までに製作が間に合っておらず、未完成の状態で劇場公開されました。一部のシーンが色のない状態で白いシーンで含まれる状態だったのですが、うまく演出と思わせられるように構成したおかげで、“未完成”と思わず映画の演出して受け止められることになりました。

10秒で分かる『火垂るの墓』の簡単なあらすじ

火垂るの墓 あらすじ
出典:金曜ロードショー公式Twitter

終戦直後の日本。電車の駅構内で少年・清太は今まさに息絶えようとしていた。ついに亡くなった清太は、先に亡くなった節子と再会。かつての自身の人生を振り返る。

時は遡り昭和20年6月。空襲を受け避難をした清太と節子でしたが、それを機に我が家と母を失う。西宮の親戚の家で暮らすことになる二人だったが、次第に親戚の叔母から邪険に扱われるようになってしまう。

ついに、清太は家を出て節子と二人で暮らすことを決めるが、たちまち持っていたお金も無くなってしまい、二人は貧しい暮らしを強いられることになる。ついにその貧しさから、盗みを働くようになる清太だったが、それも虚しく、節子は徐々に衰弱していくのだったーー。

映画『火垂るの墓』のネタバレあらすじ

あらすじ①過去を振り返る清太

火垂るの墓 あらすじ
出典:金曜ロードショー公式Twitter

終戦を迎えた阪急電車の駅構内。やせこけてしまった14歳の少年・清太は今まさに息絶えようとしています。ついに死んでしまった清太は、かつて先に亡くした妹の節子と再会します。節子とともに電車に乗る清太は、窓の外にかつての戦火によって悲惨な運命を辿る自分の姿を見ます。

昭和20年6月。神戸の街は、空襲を受けており、清太の家族は防空壕へ避難しようとしていました。母を先に避難へ促し、清太は庭に食料や貴重品を埋め、節子を背負い母の後を追うべく避難に出ます。しかし早くも戦火が降り注ぎ、行く手を遮られた清太と節子は、母とは別の場所へ避難することになるのでした。

空襲が収まり、母と合流する約束だった場所へ向かう清太と節子。しかしそこに母の姿はありません。母を探す二人のところへ、知人が避難所である学校へ向かうように駆けつけます。

あらすじ②母の死

火垂るの墓 あらすじ
出典:金曜ロードショー公式Twitter

学校を訪れた清太は、そこで、全身に火傷を負った母親と対面します。清太と別れた後に、その先で爆撃に遭遇してしまったのです。母はそのまま亡くなってしまうのですが、清太は母を恋しがって泣く節子を思うと、母が死んだことを打ち明けられずにいました。

西宮に住む親戚のお世話になることになっていた清太は、節子を家に預け、一人母の火葬に立ちあうことになります。結局節子には、母が亡くなったことを伝えられず、今も遠くで入院中であると嘘を伝えることになります。

家と母親を失った清太と節子は、結局その親戚の家で暮らすことになります。頼みの綱として海軍大尉である父親に手紙を送る清太でしたが、一向にその返事は返って来ませんでした。

あらすじ③叔母の家での生活

火垂るの墓 あらすじ
出典:金曜ロードショー公式Twitter

かつて家の庭に埋めた保存食などが無事なのを知り、梅干しやお米など多くを叔母さんに分けることになります。

叔母さんは、もう帰ることのない清太たちの母の着物を米に替えるよう提言します。節子は猛烈に拒絶するのですが、着物は多くの白米に変わり、美味しいご飯に節子の起源は良くなります。

しかし、それも束の間、たちまち米はなくなり、かつてこそ、保存食や米を快く思われていた清太と節子でしたが、次第に叔母の家族とは差別を受けるよりになり、二人は家でも邪険に扱われるようになります。

そんな中でも、清太は節子のために、こっそり保存食から取っておいたドロップをあげたり、海へ連れて行ってあげたりと、節子の面倒を見てあげていた。そして、清太は母とともに海へ来た時のことを思い出す。

あらすじ④二人きりの生活

火垂るの墓 あらすじ
出典:金曜ロードショー公式Twitter

家事手伝いもしない清太に対し、叔母からは食事を別にするように提言されます。限られたお金を使って七輪を購入した清太は、ついに食事を叔母の家族とも別々にします。しかしそれでも邪険に扱われ続ける清太と節子は、偶然見つけた池のそばの防空壕で暮らすことを決めます。

布団や手に入れた七輪を抱えて防空壕へやってきた清太と節子。明かりもないので怖がる節子のために清太は蛍を持ってきます。大量の蛍が二人の防空壕を明るく照らします。

しかし、翌朝。蛍たちは死んでしまっていました。そんな蛍たちのためにお墓を作ってあげる節子は、母も墓に入っていることを口にします。実は節子は叔母から母親が死んでしまっていたことを聞いていたのです。実は母の死を知っていた節子に対し、清太は涙を止めることができませんでした。

あらすじ⑤節子の死

火垂るの墓 あらすじ
出典:金曜ロードショー公式Twitter

はじめは順調かと思われた二人の生活でしたが、早々に食料はなくなり、生活はどんどん貧しくなっていきます。農家に食料を分けてもらおうとするも、親戚に頭を下げて家に帰るべきだと断られます。

どんどん衰弱していく節子。節子を救うべく清太は農家の食料を盗んだり、空襲の隙に民家に侵入して食料を手に入れようとします。それでも栄養失調で生気を失っていく節子に、ついに、貯金を全て下ろして食べ物を確保しようとします。

しかし、銀行で清太は日本の敗戦と、わずかな希望だった父親の死を知ります。ショックを受ける清太でしたが、節子もすでにやっと手に入れた食料を口にできないほどに弱っていました。朦朧としながら清太を気遣う節子は、そのまま目を閉じ、二度と目を覚ますことはありませんでした。一人、節子を火葬した清太は、ドロップの間に節子の骨を入れ、二度と防空壕へ戻ることはなかったのです。

こうして亡くなった、清太。街はすっかり現代へと移り変わり、霊となった清太と節子はそれを眺めていますーー。

『火垂るの墓』の登場人物

清太/辰巳努

火垂るの墓 あらすじ
出典:金曜ロードショー公式Twitter

『火垂るの墓』の主人公が清太です。物語は彼が死に、彼の目線で戦争によって起きた顛末を体験することになります。通っていた神戸市立中も空襲によって焼けてしまっていますが、年齢はまだわずか14歳であり、本来は学生でした。

節子のことを大切に思っており、いなくなった母親のためにも懸命に面倒を見ようとします。しかし、叔母に頭を下げてでも生き延びるという決心ができず、泥棒に手を染めてしまうという一面もありました。
結果、節子を亡くした清太は、1945年9月21日に三ノ宮駅の構内で衰弱して死んでしまいます。

そんな清太を演じたのは、当時子役として活躍していた辰巳努さんです。

節子/白石綾乃

火垂るの墓 あらすじ
出典:金曜ロードショー公式Twitter

『火垂るの墓』のもう一人の主人公が節子です。清太の妹であり、年齢はまだ4歳でした。

4歳らしく、母に会いたいと駄々をこねたり、トイレの際は兄に頼ったりと、年相応のそぶりを見せる一方で、実は清太が隠していた母の死をすでに知っており、それを受け止めていたりと、意外な一面を見せる場面もありました。

作中では、栄養失調によって衰弱して死んでしまいます。死んでしまう間際も清太のことを気遣うそぶりを見せたりと兄思いの一面見せていました。
ドロップが好きで、何が食べたいかと清太に聞かれた際も、天ぷらにお造りに並んでドロップを上げるほど。作中でも印象的なアイテムということで、サクマ式ドロップのパッケージに節子がプリントされるバージョンも発売されたことがあります。

そんな節子役を演じたのは、当時子役の白石綾乃さんです。

親戚の叔母/山口朱美

火垂るの墓 あらすじ
出典:金曜ロードショー公式Twitter

西宮に住んでおり、行き場を失った清太や節子を一時的に受け入れるのが親戚の叔母です。

作中でも名前は登場せずクレジットでも名前は明らかになっていません。以前より清太の家と疎開先にしてもらう約束を取り決めていたようで、当初は清太と節子をすんなり引き取ったものの、次第に二人のことを邪険に扱うようになり、終いには出て行こうとする二人のことを止めずに追い出すような形となってしまいました。

ちなみに女学生の娘と、“下宿人”とともに暮らしており、原作通りであればすでに夫は亡くしています。原作ではその夫が清太の父親のいとこにあたります。

叔母役を演じたのは、女優として活躍していた山口朱美さんです。

清太と節子の母/志乃原良子

火垂るの墓 あらすじ
出典:金曜ロードショー公式Twitter

清太と節子が過酷な運命を辿るきっかけともなるのが清太と節子の母です。

空襲の際、二人よりも先に防空壕へ向かった際に被災して、全身に大火傷を負い、包帯で全身を巻かれた状態になってしまいます。もともと心臓病も患っており、駆けつけた清太とも会話を交わすことなく息絶えてしまいます。

作中では出番は限られているものの、冒頭や回想シーンにて穏やかで優しい性格であることが描かれており、彼女の不在は清太や節子にとってどれだけ大きいものだったかが感じられます。

母役を演じたのは、女優として活躍する志乃原良子さんでした。

清太と節子の父

作中では一切セリフは登場しないものの、清太にとって最後の望みとなっていた人物が、清太と節子の父です。劇中では写真や清太の回想シーンでその姿を確認できます。

海軍の大尉であり、物語が始まる頃にはすでに出征しており、清太は父の帰りを待ち何度も手紙を送っていたものの、一度も返事はなく、父の連合艦隊は撃沈されていたことが後に明らかになります。

知っておきたい『火垂るの墓』の背景

『火垂るの墓』は実際の出来事や、原作との関係など、知っていると作品への印象が変わる映画でもあります。そんな『火垂るの墓』の予習・復習にぜひ知っておきたい情報も併せて紹介します

『火垂るの墓』はどこのいつの出来事か?

火垂るの墓 あらすじ
出典:金曜ロードショー公式twitter

『火垂るの墓』は第二次世界大戦下の日本を舞台にした作品ですが、そのディテールも細かく再現されています。

作中の舞台となっているのは兵庫県神戸市。映画で描かれていたのは1945年6月5日に起こったとされる大空襲です。神戸はそれ以前の3月、5月にも大規模な空襲に遭遇しており、作中で描かれる空襲によって、神戸市域はほぼ壊滅状態となりました。

そして、空襲を受けて清太たちが暮らすことになるのが、兵庫県の三ノ宮です。映画のほとんどを清太たちは三ノ宮で過ごし、そして清太は三ノ宮駅構内で死んでしまいます。

現在、現地を訪れても、作中に登場した建造物や風景はあまり残っていません。ただし、原作で登場する石屋川には『火垂るの墓』の石碑が、そして2020年6月7日には西宮震災記念碑公園に、『火垂るの墓』の記念碑も設置されたばかりです。作中の光景からの変化を観に行くという意味で、兵庫を訪れてみるのも良いかもしれませんね。

原作『火垂るの墓』との関係

火垂るの墓 あらすじ
出典:Amazon.com

『火垂るの墓』の原作である野坂昭如さんの小説は1967年に発表された作品です。神戸大空襲に遭遇し、その後に妹を亡くしている自身の経験をもとに描いた作品とされています。

野坂さんの作品はそれまで映画化にあたり、一切注文をつけたことがないそうですが、自身の体験と重なる本作はやはり特別な作品だったようで、このアニメーション映画化を果たす以前に実写映画化の企画が3度あがっていながらも、いずれも途中で頓挫しています。そんな中、野坂さん自身が実際に過ごしたという兵庫県西宮市の防空壕をはじめとした舞台を案内し、それを参考に『火垂るの墓』は描かれています。

原作者の思い入れなども加味してか、原作のアニメーション映画では、大筋原作からの改変はありません。ただ、唯一大きな違いをあげるのであれば、清太と節子が霊となる描写です。たしかに原作でも、清太が自身の死を語るという形式で始まりますが、アニメーション映画のように具体的にまでは描かれません。

ちなみにこの原作の『火垂るの墓』は1968年には焼跡闇市体験を描いた『アメリカひじき』とともに直木賞を受賞しています。

親戚の叔母さんも苦労があった

火垂るの墓 あらすじ
出典:Amazon.com

『火垂るの墓』を語る上でよく話題になるのが、清太と節子に辛くあたる叔母の存在です。

二人に何度も嫌味を言う姿が印象的ですが、言葉に出されるシーンだけではなく食事を分ける際にも、明らかに二人の食事だけ具材が限られているのが分かります。

映画を見ていると「なんて意地悪なんだ!」と思う人も多いでしょうが、決して叔母さんの家も裕福ではありません。二人に雑炊を食べさせるシーンでは叔母さん自身も清太たち同様雑炊を食べていたりと、自身も切り詰めて生活していることが分かります。

そんな中、清太は家事の手伝いをすることもなく、住む場所と食事を頼るばかりで負担にしかなっていない状態です。当時の時代を思うと叔母も嫌味を言いたくなるのもしょうがない時代であったことを踏まえておきたいところです。

ちなみに、2005年に放送されたSPドラマ『火垂るの墓』では松嶋菜々子さんが叔母役を務め、叔母視点で物語を描く内容となり、アニメーション映画の見え方が変わる内容となっていました。

『火垂るの墓』は反戦映画ではない

火垂るの墓 あらすじ
出典:金曜ロードショー公式Twitter

壮絶なその内容から『火垂るの墓』を反戦映画と受け取る人も多いでしょう。実際、本作から二度と同じ悲劇を繰り返していけないと学ぶのも大切なことではあるのですが、製作を務めた高畑勲監督自身は本作を反戦映画と意図した作品ではないことを繰り返し明言してきています。

その真意は、自身の作品に対し、将来的に迎えるであろう戦争の抑止力になり得ないことを自覚しているから。戦争の悲惨な体験、そして平和の大切さを訴える作品と言う意図はあったようですが、『火垂るの墓』ですら反戦足り得ないと考えられていることは衝撃的です。

かつての戦いは終戦を迎えたことはたしかなのですが、まだまだ世界では戦争をなくすことを実現できていません。戦争がなぜ起こってしまったのか、いったん戦争が始まってしまった場合に人々がどう振る舞うべきなのかを考えるべきであることは改めて、『火垂るの墓』を踏まえて考えていきたいところです。

まとめ

過酷な内容ではありながらも、随所に幻想的な場面や美しい光景が描かれていることにも着目してほしい『火垂るの墓』。辛い体験として印象に残りやすい映画かもしれませんが、その中にも多くの発見や感動が詰まっている映画なので、ぜひすでに観たことがあると言う人も、機会があれば二度、三度と『火垂るの墓』を見返してみてはいかがでしょうか。

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缶バッジ販売専門店「カンバーバッチ」のオーナー兼アニメ映画ライター。アニメ映画情報マガジン「読むと アニメ映画 知識が結構増えるラブレター」をnoteにて配信中。その他いろんなとこでアニメ映画話を執筆中。古今東西関係なくアニメ映画を中心とした有益な情報を多くの人に提供できるようにやっていきます。