『もののけ姫』のあらすじから考察まで徹底解説!映画に潜むメッセージとは?

 

スタジオジブリ作品の中でも独特な雰囲気で人気の作品『もののけ姫』。上映当時には一大ムーブメントとなり、多くの観客が映画館に足を運びました。大ヒットを記録した映画ではありますが、観客に非常に多くの考察と疑問を残す作品でもあります。

この記事では、『もののけ姫』のあらすじをネタバレ有りで紹介、そして、宮崎駿監督が伝えたかったメッセージを独自視点から考察していきます!

『もののけ姫』について


出典:映画『もののけ姫』公式サイト

1997年に劇場公開を果たしたスタジオジブリの長編アニメーション映画が『もののけ姫』。7月12日に夏休み映画として大々的に上映を果たしました。

監督は宮崎駿。構想に16年・制作に3年をかけたとされる力作です。上映当時は多くの人が足を運び、当時の日本映画の興行収入記録を塗り替える193億円を記録しました。(現在は、『千と千尋の神隠し』が首位となっています。)

『もののけ姫』では古代の日本を舞台に、自然を破壊していく人間たちの営みと、それに抗う森の生き物たちの戦いを描いた作品となっています。人間たちも一概に自然破壊をする存在として描かれるのではありません。人間も差別や勢力争いなど問題を抱えており、その中で懸命に生きていく姿が描かれています。わかりやすい正義対悪として描かれていない深みも『もののけ姫』の魅力と言えるでしょう!

本作の作画に関しては14万枚というスタジオジブリ作品の中でも多い作画枚数を記録する作品であったり、本作がスタジオジブリ作品としても最後のセル画を用いたアニメーション作品だったりと作品制作の視点からも、注目ポイントの多い映画です。

10秒でわかる『もののけ姫』の簡単なあらすじ

少年・アシタカの住む村に、タタリ神と呼ばれる異形の生き物が現れます。村が襲撃されないよう、アシタカがそのタタリ神を殺すと、その右腕に呪いを受けてしまいます。

いずれ死にゆく運命となったアシタカは、なぜタタリ神が現れたのか理由を探り、そしてその呪いを解く手がかりを見つけるべく、タタリ神のやってきた西の地を目指します。

道中で手負いの人間に出会ったアシタカは、怪我人を救うべくシシ神の森を通って、村へ送り届けることにします。その森でアシタカは、大きな山犬に育てられた少女サンに遭遇するのでした。

こうして、山間部に位置するタタラ場に行き着いたアシタカは、人間と森の生き物たちの戦いへと巻き込まれていくのでしたーー。

『もののけ姫』のネタバレあらすじ

【あらすじ①】村からの旅立ち

蝦夷の末裔の隠れ里に住むアシタカ。突如、村から何者かが近づいてくる気配を感じる。その正体は、タタリ神。まもなく村を襲うのでないかというところまで迫ってきていた。

村人を救うべく戦うアシタカは見事タタリ神を殺すことに成功する。しかしその結果、アシタカは右腕に呪いを受けてしまうのだった。

里の巫女でもあるヒイ様の助言を受け、なぜタタリ神が現れたのか、そして呪いを解く術があるのかを探るべく、アシタカはタタリ神がやってきた西の地を目指し旅立つ。

【あらすじ②】シシ神の森とタタラ場

道中、地侍たちに襲われる村人たちを発見する。村人たちを救う為に、アシタカは侍たちと戦うのであった。

平穏を取り戻す村。先ほどのアシタカの戦いによって命を救われたという男、ジコ坊に遭遇する。彼曰く、シシ神の森に行けば何か手がかりがあるのかもしれないというのだ。

シシ神の森の存在を知ったアシタカ。森を目指す途中、手負いの男達と出会い、彼らの住処まで連れて帰ることにするのだった。道中、シシ神の森を通り、そこで多くの不思議な生き物たちに遭遇する。

こうして行き着いた村はタタラ場と呼ばれている、製鉄を生業としている地域だった。そこを治めるエボシ御前に話を聞き、彼女らが森を破壊し、人々の生活を守っていることを知る。そして、アシタカが呪いを受けることになったタタリ神を生み出した、そもそものきっかけこそ彼女達であったことが判明する。

彼女達は山に住むもののけと対立しており、犬神とその犬神に育てられた“もののけ姫”ことサンがその命を狙っていたのだ。

【あらすじ③】サンと行動を共にするアシタカ

その晩、ついにサンがタタラ場へと乗り込んでくる。エボシ御前の機転により窮地に追いやられるサンだったが、咄嗟にアシタカに命を救われる。アシタカは彼女を背負いタタラ場を後にするのだが、その途中で致命傷を負ってしまう。

深手を負ってしまったアシタカ。サンはアシタカをシシ神の元へ連れていき、無事傷を癒してもらうことに成功する。次第に打ち解けていくサンとアシタカ。どうにか、この争いを止めることができないかと悩むのだった。

アシタカはサンを人間の元に返せないかとモロの君に問う。しかし、モロの君からはアシタカにできることはないから、去るようにたしなめられてしまうのだった。

そんな中、九州からシシ神の森を守りに、乙事主率いるイノシシたちが集まってくる。人間に大攻勢をかけようというのだ。

その頃タタラ場では、ジコ坊たちが集団を率いていて集まっていた。シシ神の首を狙うジコ坊たちと、もののけの退治を考えているエボシ御前は手を組んでいたのだ。タタラ場を出発したエボシ御前は、襲いかかる乙事主たち率いるイノシシの大群との戦を始めるのであった。

しかしタタラ場を留守にしたことで、タタラ場は侍達の襲撃に遭っていた。

【あらすじ④】デイダラボッチとの戦い

エボシ御前との戦いで傷だらけとなったイノシシたちの長である乙事主は傷を癒してもらおうと、シシ神の元へ急ぐ。しかし、憎しみに狂い出した乙事主は今にもタタリ神へと変貌しようとしていた。それを止めようとするサンも、シシ神に取り込まれてしまうのだった。

アシタカはエボシ御前の元へタタラ場が襲われていることを伝えに行ったが、彼女は聞く耳を持たない。ついに乙事主がシシ神に合間見える隙をつき、シシ神の首を撃ち落とすことに成功した。

しかし、シシ神はデイダラボッチへと変貌し、大量の液体状の姿へと変わっていく。この液体に触れると死んでしまうという事で逃げ惑う人々。アシタカはまだ望みはあると、サンと協力しジコ坊から首を奪還。シシ神へ首を返すのだった。

首を取り戻し朝日と共に消えるシシ神。枯れ果てた自然達は再び緑を取り戻していた。アシタカが気づくと、腕の呪いは消えていた。人間を許すことはできないと言うサンだったが、それでも共に生きることを伝え合い、二人は別れを告げる。

戦いにより腕を失ったエボシ御前も、タタラ場を再び良い村に作り直そうと決意を固めるのだった。

『もののけ姫』のキャスト

アシタカ / 松田洋治

『もののけ姫』の主人公として登場するのがアシタカ。正義感が強く、いざという時はタタリ神を殺してまで村を守ることのできるしっかり者です。実は17歳というまだまだ若い青年。

タタリ神によって右腕に呪いを受けることで、死の宿命を背負うわけですが、実はその呪いの力はそれだけではありません。矢を放つ時の勢いをより強力にさせたり、タタラ場の大門を一人で開けることができたりと、強大な力を授けられます。

心優しく、見ず知らずの相手も出来るだけ救ってあげようとする人格者。一方で運動神経は高く、咄嗟の戦いにも対応可能。弓術の技術は精度が高く、劇中でも何度もその強さを発揮しています。

そんな、アシタカ役を演じたのは、声優、そして俳優としても活躍する松田洋治

『もののけ姫』以外にも『タイタニック』や『インセプション』といった大作洋画の吹き替えに参加していたり、『仮面ライダーアマゾン』や『ウルトラマンティガ』といった特撮作品、『家族ゲーム』や『母べえ』などドラマ・映画作品にも出演経験があります。吹き替えの仕事では、ジブリの前進であるトップクラフト制作の『風の谷のナウシカ』にも出演しており、今回が再度の宮崎駿作品への参加となりました。

サン / 石田ゆり子

『もののけ姫』におけるヒロインを担う人物がサンです。人間の子供でありながら、幼い頃から山犬に育てられた存在。強気な女の子で、さすが野生児と言わんばかりの身体能力を持っています。動物たちの言葉が理解できるようで、アシタカのヤックルから事情を聞いたりと、もはや人間を越えた能力を有しています。

自然を荒らす人間を憎んでおり、タタラ場を襲撃したり、エボシ御前の命を狙ったりと、山を守ろうと奮闘する生活を送っていました。人間嫌いの彼女がアシタカに出会い、考えが変わっていくのも本作の一つのドラマとなっています。

そんなサン役を演じるのは、女優の石田ゆり子。『Dr.コトー診療所』『逃げるは恥だが役に立つ』『北の零年』など近年も多くのドラマや映画に出演しています。実は『もののけ姫』以外にも、ジブリ作品の吹き替えに参加しており『平成狸合戦ぽんぽこ』や『コクリコ坂から』などのキャストにも名前を連ねています。

エボシ御前 / 田中裕子

タタラ場を率いている存在がエボシ御前。彼女が取りまとめるタタラ場では、山の樹木を伐採し、それで得た薪を用いて釘や石火矢を作っており、山を守るサン達にとっては宿敵とも言える存在です。

ただし彼女も運動神経は抜群。劇中でもサンと直接剣を交えるほどの能力を持っていたり、相手の特性に合わせて罠を張るなど、知略にも長けている存在です。敵対する者には容赦がなかったり、いざという時はタタラ場の人間をも見捨てることもあるのですが、基本的にはタタラ場とそこに住む人々のことを大切にしており、タタラ場の人間からの支持は絶大です。

エボシ御前役を務めるのは、ベテラン女優の田中裕子。『おしん』で主演を務め、以降も『Mother』や『はじまりのみち』など多くのドラマや映画に出演しています。ジブリ作品『ゲド戦記』にも出演し、こちらでは悪役のクモ役を演じていました。

モロの君 / 美輪明宏

もののけ姫 あらすじ
出典:金曜ロードSHOW!公式Twitter

サンの育ての親であり、二本の尾を持った大きな犬神がモロの君です。人間の言葉を使うことができ、強靭な肉体を持ち、森を守るべくエボシ御前と戦っています。2頭の犬神の子供が居り、行動を共にしています。親とは違い子供は一回り体が小さく、人間の言葉は話すことができません。

劇中では積極的に人間達と戦う姿が描かれていますが、本来は争いは好まない存在。そんなモロの君が怒りをあらわにしているのだから、余程の我慢に耐えかねていることが分かります。

宮崎駿曰く実は、かつては乙事主とも“好い仲”であったとされており、終盤はその絆もわかるような奮闘を見せてくれます。

そんな、モロの君を演じるのは、個性的な見た目や発言で知られる美輪明宏。元々は歌手であり、役者よりもタレントとして活躍する姿の方が知られているかと思います。しかし、意外とアニメの吹き替え出演は多く、『幻魔大戦』や『劇場版ポケットモンスターダイヤモンド&パールアルセウス超克の時空へ』などといった意外なタイトルにも出演経験があります。『ハウルの動く城』で荒地の魔女役を務めたのも有名ですよね!

ジコ坊 / 小林薫 

もののけ姫 あらすじ
出典:金曜ロードSHOW!公式Twitter

物語の序盤にアシタカと出会う、おじさんがジコ坊です。赤い帽子を被り、一本歯の高い下駄を履いた不思議な風貌をしています。

気さくな話し方で、人の良さそうな雰囲気はあるのですが、実はその正体は、シシ神の首を狙うように帝から勅命を受けた“唐傘連”のリーダ格とも言える存在。序盤こそ優しい道中で出会った一般人のようですが、映画後半ではどちらかという敵対者側として活躍します。

優しさと冷徹さを兼ね備えた存在として、作中の登場人物の中でも特に人間らしいキャラクターではないでしょうか。

そんなジコ坊を演じているのは、俳優の小林薫。『ナニワ金融道』シリーズや『深夜食堂』シリーズなどに出演し、渋くかっこ良い演技で人気を博しています。意外とキャラクターの吹き替えの仕事の経験は少なく、どちらかというナレーション役として番組に起用される事の方が多いようです。

『もののけ姫』に出てくる生き物について

『もののけ姫』にはいくつもの、見慣れない生き物が多数登場します。果たして彼らの正体は動物?妖怪?神様?

そんな不思議なキャラクターたちのことを紹介していきます!

シシ神 / デイダラボッチ

もののけ姫 あらすじ
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『もののけ姫』においても絶大な力を持つ存在として登場するのがシシ神です。

生と死のどちらをも司っており、大きな傷を癒す力を持っている一方で、たちまち命を奪い取ってしまう力も持っています。一見、鹿のような見た目をしていますが、赤い老人のような顔をしていたり、足は鳥のような形状をしていたりと、よく見ると実在する動物達の造形とは異なる生き物です。

夜になるとその姿を変え、巨大なデイダラボッチという存在となります。体には無数の角のようなものが生えており、体には文様のようなものが浮かび上がっています。夜には山を徘徊し、日の出と共に元の姿に戻ります。

圧倒的な存在として描かれていながらも、設定としては下級神とされています。

タタリ神

『もののけ姫』の物語のきっかけにもなる存在と言えるのがタタリ神です。蜘蛛のような動きをしていますが、途端にその形状を変える事ができたりと特定の生き物言えない行動を取ることもあります。よく見ると赤黒い蛭のような触手で身体を被われています。

その正体は巨大な猪神。憎しみと怒りによって狂った成れの果てとして、この姿になってしまうようです。

アシタカはこのタタリ神を殺してしまったことをきっかけに、その身に呪いを受けることになってしまいます。

コダマ

もののけ姫 あらすじ
出典:金曜ロードSHOW!公式Twitter

シシ神の森に出現する無数の小さな人型の精霊がコダマ。言葉は喋らず、表情の変化もないのですが、個体によって顔の形や、目や口の位置が違ったりと一見可愛いながらもどこか不気味な雰囲気も感じる存在です。作中では首を震わせ、カタカタといった音を立てる動きが印象的でした。

実は宮崎駿がどこまで本気かは分からない証言として、映画の最後に登場するコダマが後の『となりのトトロ』に登場したトトロであるという発言があり、コダマ=トトロという説があります。どこまでの本気にしていい設定かはわかりませんが、自然との関係性を考えると、コダマとトトロが近い特性を持つ存在であることは間違いなさそうです。

ヤックル

アシタカの相棒として登場する動物がヤックル。鹿のような姿をしていますが、特徴的な曲線の角を持っており、アシタカはヤックルを馬のように扱い移動します。

実在の鹿の一種にも見えますが、実はヤックルも架空の動物で、実際にこのような動物は存在しません。

実は、宮崎駿が描いた絵巻物作品『シュナの旅』にも先行して出演しており、『もののけ姫』以外でも活躍する数少ないキャラクターの一人でもあります。

『もののけ姫』のテーマと5つの疑問を徹底考察!

人間と自然の関係性を描いた、本作のストーリー。観終わった後に疑問が残る方も多いのではないでしょうか?

同じくスタジオジブリ作品であり、宮崎駿監督が手掛けたの『風の谷のナウシカ』とテーマ性が似ているとも言われていますよ。

そんな本作でわかる5つの疑問を紹介していきます!

1. アシタカとカヤの関係は?小刀の意味とは?

映画『もののけ姫』
出典:金曜ロードSHOW! 公式Twitter

タタリ神の呪いを解くため、村を旅立とうとするアシタカ。その時、カヤ(石田ゆり子)という一人の村の少女がアシタカの元に駆け寄り、玉の小刀を差し出します。

「お守りするよう息を吹き込めました。いつもカヤは兄さまを想っています。きっと…きっと…。」

とても神妙な面持ちです。こんな行動をする彼女は、一体何者なのでしょうか。
「兄さま」と呼んでいるのでアシタカの妹のようにも思えますが、実はそうではなく、彼女は里公認のアシタカの許嫁もう二度と帰ってこないであろうアシタカに対して、「永遠に想い続けるという乙女心の証として小刀を送ったのです。

「私もだ。いつもカヤを想おう。」

アシタカもこう返事をします。相思相愛、とても素敵なカップルですね。

しかし、しかしです。
森で出会った”もののけ姫”・サンに、「そなたは美しい」とすっかり惚れ込んでしまったアシタカ。なんと彼女に、カヤから貰った小刀をそのままプレゼントしてしまいます。
果たして、この小刀に込められたアシタカの真意とは?

彼はただの”女たらし”なのでしょうか?
…とここで思い出すのが、生きろ。」というこの作品のキャッチコピー。

映画『もののけ姫』
出典:映画『もののけ姫』公式サイト

カヤからアシタカへ、アシタカからサンへと贈られた小刀を、単なる恋愛感情として受け取るのは早計かもしれません。この小刀には、これが最期の別れであるという覚悟”と、愛する人に強く生きてほしいという祈り”が込められているのではないでしょうか。

2. サンはなぜ山犬に育てられるようになった?

映画『もののけ姫』
出典:金曜ロードSHOW! 公式Twitter

山犬といつも行動を共にしているサンですが、彼女はなぜ山犬に育てられ、森で生活するようになったのでしょうか。
その理由については、山犬の母親・モロ(美輪明宏)が語っています。

「黙れ小僧!」
「お前にあの娘の不幸が癒せるのか?」
「森を侵した人間が、我が牙を逃れるために投げてよこした赤子がサンだ!」

黙れ小僧!の名セリフについ心を奪われてしまいますが、その後のセリフも聞き逃せません。サンが山犬に育てられるようになった経緯が、しっかりと説明されていますね。

一昔前、赤子を連れた何者かが森に侵入し、モロがその人物に襲い掛かりました。その時、母親が見逃してもらうために、”生贄として差し出した赤子がサンだったのです。モロは捨てられた赤子に憐れみを抱き、我が子として育てていくことを決めたのでした。

映画『もののけ姫』
出典:金曜ロードSHOW! 公式Twitter

サンを捨てた母親の正体について、あくまで”都市伝説”の域を出ませんが、タタラ場のエボシ田中裕子)ではないかという説があります。
山犬が棲む危険な森に母親がわざわざ赤子を連れて入るというのは普通では考えられません。しかし、もしもその母親の正体が、シシ神の森で神殺しを目論むエボシだったら、と考えると無くはない話なのです。

異常なまでの憎しみをぶつけ合っていたモロとエボシ。果たして二人の因縁の関係は、サンの出生が繋いだものだったのでしょうか。

3. エボシが女性や病人を救済する理由は?

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出典:金曜ロードSHOW! 公式Twitter

アシタカが訪れたタタラ場では、女性が中心となって働く姿や、病人たちが丁重に扱われ仕事が与えられている姿が映し出されます。それらも全て、タタラ場のリーダーであるエボシの意志によるもの。エボシがタタラ場を創り、女性や病人を救済している理由とは何なのでしょうか。

そこには、作中では語られなかった彼女の過去が関わっています。

エボシは、人身売買で海外の倭寇海賊に売られたという過去があります。持ち前の美貌で頭目の妻にまで上り詰めたエボシですが、そこで頭目を殺害。金品を持って日本に戻り、現在のタタラ場を創り上げたのでした。
タタラ場が隣国が恐れるほどの石火矢の技術を有しているのも、エボシが日本に石火矢を持ち帰り、その後も継続して倭寇との関係を持っていることが理由のようです。

エボシという人物像について、宮崎駿監督はこう語っています。

「目的と手段を使い分けて、非常にヤバイこともするけれども、どこかで理想”は失っていない。”挫折”に強くて、何度も立ち直ってというね。」

 

人身売買によってエボシが味わった”挫折”。タタラ場とは、女性や病人などの弱い立場の人間が活躍できる場所を創りたいという、彼女の”理想”を実現したものなのかもしれません。

4. アシタカの涙の意味とは?

映画『もののけ姫』
出典:金曜ロードSHOW! 公式Twitter

タタラ場で受けた傷によって倒れてしまったアシタカ。サンはアシタカの傷を癒すために、シシ神の森に入ります。
意識が朦朧とする中、アシタカの元に歩み寄るシシ神。”生命の授与と奪取を行う”というその力で、彼の傷を癒しました。

「シシ神さまがおまえを生かした。だから助ける。」

サンはそう言い、まだ体を動かせないアシタカに食事をさせます。その時、アシタカの頬を一筋の涙が伝いましたこのアシタカの涙の意味とは何だったのでしょうか。

この涙は、生きていてよかった」というような、単純な生還の喜びを表しただけのものではないように思えます。もちろん、「サンに口移ししてもらえて嬉しい」などという下心から出たものでもないでしょう。

アシタカの涙の理由として、彼が2つの感情を抱いていたことが考えられます。

1つ目は、自分を助けてくれたサンへの”感謝”。これまで弱さを見せず一人で戦ってきたアシタカでしたが、こうやって他者の優しさに身をゆだねることでふと緊張の糸が切れたのではないでしょうか。

2つ目は、まだ旅が終わらないことへの”絶望感”。体の傷を癒してくれたシシ神でしたが、「タタリ神の呪い」までは取り除いてくれませんでした。この呪いがいかに根が深いものなのかを実感し、アシタカはこの先の自身の運命を憐れんだのです。

5. サンとアシタカはその後どうなった?

映画『もののけ姫』
出典:金曜ロードSHOW! 公式Twitter

シシ神の森を巡った争いは一件落着し、アシタカとサンに別れの時が来ます。

「アシタカは好きだ。でも人間を許すことはできない。」
「それでもいい。サンは森でわたしはタタラ場で暮らそう。共に生きよう。会いにいくよ。ヤックルに乗って。」

相思相愛の関係となったサンとアシタカ。しかし二人は一緒にはならずに、森とタタラ場という、それぞれの世界で生きていくことを選択します。その後、二人がどうなったのかは作中では描かれていませんが、宮崎駿監督はインタビューでこのように語っています。

「彼らはずっと良い関係を続けていくだろうと思います。」
「それから、サンが生きていくために、アシタカはいろいろな努力をするだろうと思います。同時に、タタラ場の人々が生きていくためにも、大変な努力を払うだろうと。」

サンが生きていくため、タタラ場の人々が生きていくため、アシタカがした”努力”とは一体何なのか。これこそがこの『もののけ姫』の終着点であり、この作品のテーマに繋がってくる部分と言えます。

もののけ姫のテーマは「自然との共存」ナウシカとの違いとは?

映画『もののけ姫』
出典:金曜ロードSHOW! 公式Twitter

この作品のテーマを読み解くために、まずは風の谷のナウシカ』のストーリーを振り返らなければなりません。

荒廃した世界で生き延びるため、自然破壊を続ける人間達。そんな中、自然を愛するナウシカは人間達の蛮行を食い止め、自然を守り、両者が共存する世界へと導いていきます。

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『もののけ姫』と比較するなら、自然を守ろうとするナウシカサン、人間を第一とするクシャナエボシ、自然界の象徴である王蟲シシ神。確かにこの2作品の関係性はよく似ています。

では、『もののけ姫』のテーマもまた、ナウシカと同じ「自然との共存」なのでしょうか。その答えとなってくるのが、両作品の共通点として挙がらなかった人物、主人公アシタカの存在です。

映画『もののけ姫』
出典:金曜ロードSHOW! 公式Twitter

サンとの別れの時、アシタカは森には行かずタタラ場で暮らすことを選択します。その上で、森で暮らすサンと「共に生きよう」と誓うのです。これは、人間自然の間に自分が立ちこの先の両者の関係を繋いでいくという覚悟の現れでもあります。

この作品の根底に、ナウシカと同じ「自然との共存」がテーマにあることは間違いありません。しかし、両者が手を取り合って生きていくことの難しさは、これまでの人類の歴史を見ても明らかです。
タタラ場はこれからも生きていくために森を切り開くでしょうし、その度にサン達と衝突するのかもしれません。それでも、互いに尊敬の念を持ち続けることができれば人間と自然は共に生きていくことができる。アシタカという存在には、そんな宮崎駿監督のメッセージが込められているのではないでしょうか。

『風の谷のナウシカ』において「王蟲」は”自然の象徴”そのものであり、ナウシカは彼らと手を取り合うことで、「自然との共存を成し遂げた姿を私たちに提示しました。しかし、『もののけ姫』における「山犬族」は、自然に生かされている1つの存在にすぎません。人間と山犬族は対等の立場であり、それ故に両者が最後まで手を取り合うことはなく、そのまま物語は幕を閉じます。

「自然との共存を成し遂げるためにはどうすればいいのか?」

この作品は『風の谷のナウシカ』と同じテーマを描きながらも、最後に私たちに大きな”宿題”を残しているのです。

まとめ

『もののけ姫』に登場する物語からキャラクター、そして不思議なその設定まで一挙に紹介していきました。古い日本の文化なども多数描かれており、日本のルーツなども考えさせられる体験が得られる作品ではないでしょうか。

繰り返し見ても楽しめる作品なので、ぜひこの作品が描く真意なんかも考えながら、鑑賞してみると深みが増すと思います。

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