映画『思い出のマーニー』のあらすじネタバレ解説|原作小説との違いは?
2010年後半以降はガクンと減ったスタジオジブリ制作のアニメーション映画。そんな中での数少ない制作映画の一つが、『思い出のマーニー』です。
比較的新しい映画ということもあり、あのジブリ映画でありながら、実は観たことがないという人も多いのではないでしょうか。実は本作、不思議な幻想的な体験の物語としても面白く、自身のルーツを探っていく感動作としても見応えのある秀逸作だったりします。
いったいどんな内容の物語なのか今一度そのストーリーを追っていきましょう!
目次
映画『思い出のマーニー』とは
出典:スタジオジブリ公式サイト
2014年の夏休み映画として劇場公開を果たした映画が『思い出のマーニー』です。
アニメーションの制作を務めるのはスタジオジブリ。監督を務めるのは『借りぐらしのアリエッティ』を監督した米林宏昌監督でした。この映画の制作を最後にスタジオジブリの映画制作班は一度解体されることになったり、米林監督もこの映画を最後にスタジオを離れることになった意味でも特別な意味を持っている映画と言えます。
同時期に公開され大ヒットとなった『STAND BY ME ドラえもん』程ではないもの、興行収入は35.3億円の大ヒットとなり、公開以降は地上波のテレビ放送も果たしている作品です。
ちなみに本作にはイギリスのジョーン・G・ロビンソンさんによる同盟の児童文学が原作として存在していますが、舞台設定などを今回のアニメーション映画化の際に独自のアレンジを施しています。
10秒でわかる『思い出のマーニー』の簡単なあらすじ
出典:スタジオジブリ公式サイト
12歳の少女・佐々木杏奈は持病の喘息を持っており、夏休みの間義母・頼子の親戚夫婦の家で療養することになります。一見大人しく頼子の言うことを聞いている杏奈でしたが、実は表には出さない距離感を秘めていました。
そんな杏奈は親戚夫婦の家でもぎこちなく生活をすることになるのですが、近所に暮らす少女・信子と喧嘩をしてしまいとっさに逃げ出します。こうして逃げた先で見つけたのが、“湿っ地屋敷”。浮かんでいたボートで屋敷にたどり着いた杏奈は、金髪で青い目をした少女・マーニーと出会い親しくなります。
そして、この出会いが杏奈にとって秘められた自身のルーツを辿るきっかけとなっていくのでしたーー。
映画『思い出のマーニー』のあらすじ
あらすじ①親戚の家への来訪
出典:スタジオジブリ公式サイト
幼少期に親を失ってしまった少女・佐々木杏奈は、親戚の佐々木頼子のもとで育てられていた。感情をあまりに表に出さない杏奈は学校でも周囲に馴染めず、その日も写生の授業の時間を一人で過ごしていた。そんな矢先、持病の喘息の発作をきっかけに早退することになる。
後から鞄を届けてくれた同級生の様子を見た頼子は、杏奈が学校で孤立していないかを心配するのだが、主治医は環境の良い場所での療養を提案するのだった。こうして、杏奈は夏休みの間だけ親戚の大岩夫妻のもとで過ごすことになるのだった。
寛大な態度で杏奈を迎え入れる大岩夫妻だったが、相変わらず杏奈は心を開かないでいた。そんな中杏奈は荷物の中に、頼子からの手紙とハガキを発見する。なんでも良いのであったことを書いて欲しいという内容に仕方なく杏奈はハガキを書くのだった。
しかし、ハガキを出しに郵便局へ行った際、人を避けて去った先で偶然に古い屋敷を発見する。なぜだか懐かしく感じた杏奈だったが、それを機に廃屋のような屋敷の窓に金髪の少女が居る夢を見るのだった。
あらすじ②マーニーとの出会い
出典:スタジオジブリ公式サイト
杏奈は近所に住む信子らとともにお祭りに参加することになるが、気さくに接してくる信子を鬱陶しく感じてしまった杏奈は、些細なことから喧嘩をしてしまうのだった。思わずその場を逃げ出した杏奈は、いつの間にか湿っ地屋敷にたどり着いていた。ボートに乗って屋敷を目指す杏奈は、途中で止まるボートに困るがそこへ夢に出てきた金髪の少女が現れるのだった。
次の日も屋敷へやってきた杏奈は、ボートで少女は迎えにきていた。なぜか杏奈のことを知るマーニーと名乗るその少女は、杏奈のことをもっと知りたいと語るのだった。二人は1日に3回お互いを知っていくゲームをはじめ、二人は徐々に互いのことを知っていくことになるのだった。
あらすじ③館のパーティー
出典:スタジオジブリ公式サイト
質問を交わし合い、帰ろうとした頃に突如マーニーは自分の家のパーティーに杏奈を誘うのだった。屋敷では盛大なパーティーが開かれており、そこには大勢の人々が集まっていた。ドレス姿のマーニーは、ばあやと呼ぶ世話役のショールを杏奈に被せて屋敷に招き入れるのだった。ばあやに見つかる二人だったが、マーニーの機転でばあやを部屋に閉じ込めることに成功。マーニーの父親に可愛い花売り娘が来ていると、杏奈のことを大勢の客人たちに紹介してもらうのだった。
杏奈はそのパーティーで、マーニーと踊る和彦と言う幼馴染の存在を知る。嫉妬して不機嫌な杏奈をマーニーは一緒に踊るのだが、気づくと杏奈は郵便局の前で倒れていた。
翌日再びマーニーの屋敷へやってきた杏奈だったが、屋敷には誰も住んでいないのを見つける。
あらすじ④サイロに立ち向かう二人
出典:スタジオジブリ公式サイト
それ以来、しばらく杏奈はマーニーに会えずにいた。そしてマーニーの屋敷には、新たなに別の人たちが引っ越して来ようとしていた。その様子を見ていた杏奈にメガネの少女・彩香が杏奈のことをマーニーではないか?と声をかけるのであった。驚く杏奈に対して屋敷まで案内する彩香は、引き出しからマーニーの日記を見つけたことを教えてもらう。
マーニーのことを自分の空想だと思っていた杏奈は驚くが、その夜に夢の中でついにマーニーと再会する。
杏奈は自分の境遇や義母への思いをマーニーに打ち明け、マーニーも自分の境遇やばあやに意地悪をされていたことを語る。それをきっかけに、二人はマーニーのトラウマの場所であるサイロへ共に足を運ぶ。しかしマーニーは自分のことを和彦と度々呼んで、ついには迎えに来た和彦と共にサイロを出て行ってしまうのだった。
あらすじ⑤マーニーの秘密
出典:スタジオジブリ公式サイト
気づくと杏奈は雨に打たれて倒れており、彩香とその兄の武に助けられていた。杏奈は夢の中でマーニーと別れの挨拶を交わしていた。
サイロでの出来事を覚えていない杏奈は、彩香に日記の切れ端を見せてもらい久子と言う女性の存在を教えてもらう。実は久子とは近所で屋敷の絵を書いている女性だった。久子に直接話を聞きにいく杏奈たちは、ついに久子とマーニーが友人であったこと、そしてマーニーがその後どう行った生涯を歩んでいったのかを教えてもらうのだった。
そして杏奈は、頼子から見せてもらった自身の写真からマーニーこそ杏奈の実の祖母であり、幼い頃にマーニーの境遇を聞かされていたことを知るのだった。
不思議と明るくなった杏奈は頼子とわだかまりについて話し合い、和解する。頼子のことを母と呼べるようになった杏奈は、町の人たちに別れを告げながら元いた町へ帰っていくのだった。
映画『思い出のマーニー』の登場人物
佐々木 杏奈 / 高月彩良
出典:スタジオジブリ公式サイト
『思い出のマーニー』の主人公が佐々木杏奈。12歳の中学1年生の女の子です。
幼い頃に両親を亡くしており、心を閉ざしがちな性格からか、学校でもクラスにあまり馴染めず人との交流を基本的に避けがちです。コミュニケーションを取るのもあまり得意ではなく、作中でも思わず悪口を言い放ってしまい揉め事になってしました。
そういった傾向からも自身を周囲の人間たちとは外側の人間と思っており、自分のことを嫌悪しています。そんな心情や状況も、マーニーとの出会いをきっかけに変化を迎えていきました。
趣味は絵を描くことで、作中でも風景画を率先して描くシーンが描かれています。
杏奈役の声優を務めるのは、女優の高月彩良さんです。映画『翔んで埼玉』や映画『黒崎くんの言いなりになんてならない』などにも出演しており、ドラマや舞台にと様々な作品で活躍しています。
マーニー / 有村架純
出典:スタジオジブリ公式サイト
映画のタイトルにもなっており、杏奈を不思議な体験に導く存在がマーニーです。
湿っ地屋敷に住んでいるお嬢様であり、金髪と青い瞳を持っています。性格も明るく、杏奈のことを優しく受け入れてくれたり、両親のことを誇りに思い自慢げに紹介する一方で、十分に世話をしてもらえていないことに不満を持っていたり、世話係の婆やに意地悪をされていたりといった悩みも抱えています。崖の上にあるサイロを恐れています。
ちなみにマーニーは愛称であり、本名はマリアンです。
周囲の人間はマーニーの存在を知らないのですが、その秘密は作中の最後に明かされることとなります。
そんなマーニー役を担当したのは、女優の有村架純さん。ドラマ『ひよっこ』や映画『花束みたいな恋をした』など多くのヒット作に出演していましたが、声優としての活躍は限られており、今作が初めての挑戦となりました。
有村架純出演の映画一覧と代表作&おすすめ映画まとめ彩香 / 杉咲花
出典:スタジオジブリ公式サイト
東京からマーニーの暮らしていた屋敷へ引っ越してきた女の子が彩香です。赤いメガネをかけた11歳の女の子。好奇心旺盛で、新たに引っ越してきた屋敷でマーニーの秘密に興味を持ち、物語の後半で杏奈と行動を共にすることになる存在です。当初は杏奈のことをマーニーだと思っていました。面倒見の良い武という兄を持っており、作中で高熱で倒れている杏奈を一緒に救うことになります。
彩香役を務めるのは女優の杉咲花さん。映画『湯を沸かすほどの熱い愛』や映画『青くて痛くて脆い』など多くの作品に出演している彼女にとっても、今作が声優初挑戦でした。今作での起用に続いて、米林監督の次作となる『メアリと魔女の花』では主人公のメアリ役を務めました。
佐々木 頼子 / 松嶋菜々子
杏奈の母親が佐々木頼子です。厳密には義母であり、杏奈とは血の繋がりはありません。
杏奈のことを愛している一方で、気にかけしすぎるところもありその愛情で杏奈からは“おばちゃん”と呼ばれて、関係がうまくいっていないことに悩んでもいます。
自治体より給付金を受け取っていることを黙っていたものの、その真意は作中の最後に明らかに。夫は出張中という設定により作中には登場しないものの、その姿は作中の写真から確認することができます。
頼子役を務めるのは女優の松嶋菜々子さん。ドラマ『家政婦のミタ』や映画『リング』など多くの映像作品で主演として出演していますが、アニメーションの吹き替え仕事は少なく、劇場公開長編作への参加は今作が初めてです。
久子 / 黒木瞳
療養先の町で杏奈が出会う老婦人が久子です。
よく湿っ地屋敷の絵を描いているのですが、実は幼い頃にマーニーと仲良く遊んでいた友人であり、当時やその後のマーニーの境遇を知っていることから、杏奈にマーニーの正体を明かす存在となります。
そんな久子役を務めるのは女優の黒木瞳さん。映画『終わった人』など多くの作品に参加していますが、『Mr.インクレディブル』シリーズのイラスティ・ガール役や、『それいけ!アンパンマンロールとローラうきぐも城のひみつ』でローラ姫を担当したりと、アニメーションの吹き替えも複数回担当しています。
ばあや / 吉行和子
マーニーと一緒に湿っ地屋敷に住んでいる家政婦がばあやです。作中ではその名前は明らかにされていません。マーニーの世話係を担当しており“お嬢様”のお世話をする一方で、言うことを聞かない時には強く叱ったり、メイドたちとともにマーニーをいじめるような行動をとっていました。
ばあや役を務めるのは女優の吉行和子さん。映画『DESTINY 鎌倉ものがたり』や映画『羊と鋼の森』などに出演していた他、アニメーションの吹き替えでは、本作と同じくジブリ作品の『崖の上のポニョ』のトキ役も担当していました。
十一/ 安田顕
出典:スタジオジブリ公式サイト
療養先の町に暮らす、口数の少ない老人が十一(といち)です。
極度に喋らないせいか、近所の子供達にからかわれていますが、本人は気にしていないよう。満潮になって屋敷から帰れなくなった杏奈を救ったことをきっかけに、杏奈とは親しくなります。古くからこの地域に居たようで、マーニーの存在についても知っていたようです。
十一役を勤めたのは俳優の安田顕さん。映画『愛しのアイリーン』など多くの映像作品や舞台に出演する他、TEAM NACSの一員としても活躍しています。『千と千尋の神隠し』をはじめアニメーションの吹き替え出演も非常に多いです。
信子/ 頼経明子
出典:スタジオジブリ公式サイト
療養先の町に暮らす、杏奈とは一つ上の13歳の女の子が信子です。
しっかり者で仕切り屋な性格の一方で、面倒見もよく他所からやってきた杏奈にも率先して話をかけてくれます。ただ、杏奈にはお節介にも感じられ、一緒にお祭りに出かけた際に“太っちょ豚”と言われて喧嘩になってしまいます。物語の最後には杏奈の謝罪を受け入れ、和解します。
信子役を務めるのは女優としても活躍する頼経明子さん。ドラマや舞台などで活躍する方です。
おさえておきたい『思い出のマーニー』の解説
『思い出のマーニー』を観た後にも、改めて知っておくと驚きや発見があるポイントがいくつかあります。以下では、本編で語られる真相や知っていると驚かされる裏話などを紹介していきます。これらを知っていれば、もっと『思い出のマーニー』を楽しめるはず!
結局マーニーは何者だったのか?
出典:スタジオジブリ公式サイト
『思い出のマーニー』最大のネタバレでもあるマーニーの正体ですが、結論から言うと杏奈の祖母がマーニーでした。杏奈は父母が交通事故によって亡くなったことをきっかけにマーニーによって一時的に育てられることになるのですが、その際にマーニーが語った自身の境遇が杏奈の頭の中に残っていたのでしょう。
そして、話に聞いていた場所そのままの屋敷にやってきたことをトリガーに、杏奈は記憶として残っていたマーニーの体験を夢の中で追体験したのでしょう。本来その場にいなかったはずの杏奈でしたが、実際にそこに居たのは久子や和彦だったということでしょう。
一見、マーニーの幽霊に遭遇したかのようにも見えますが実際は杏奈が夢の中で、マーニーに遭遇したかのように感じただけと言うのが真相となりそうです。
ちなみにそんな久子が語る晩年のマーニー役を演じているのは、歌手として知られる森山良子さん。出番こそわずかですが意外な起用となっています。
わずかな役にも豪華声優が!?
出典:スタジオジブリ公式サイト
実は森山良子さんだけでなく、『思い出のマーニー』ではほんの少しの出番しかないキャラクターにも意外な有名人を声優として起用しています。
療養先として杏奈を迎え入れてくれる親戚の夫婦の大岩家。頼子の親戚であるセツ役を務めるのは女優の根岸季衣さん。木工職人である夫の清正役を務めるのは、俳優の寺島進さんです。
そして、杏奈を療養の一環として空気の綺麗な場所で過ごすことを勧める主治医役には、なんと大泉洋さんが起用されています。実は他のTEAM NACSメンバーも参加しており、美術教師役には森崎博之さん、マーニーの父親役に戸次重之さん、町内会役員役に音尾琢真さんが起用されています。
ちなみに後に声優アワードの新人男優賞を受賞したりと、幅広い活躍をする声優の石井マークさんも、彩香の兄である武役として出演していますが、なんと本作が声優としてのデビュー作でした。本作の出演を皮切りに、『ハイキュー!!』の灰羽エリーフ役や『Gのレコンギスタ』の主人公ベルリ役などで活躍していくようになります。
原作からどうアレンジしたのか?
出典:スタジオジブリ公式サイト
映画『思い出のマーニー』の舞台こそ日本ですが、原作のジョーン・G・ロビンソンさんが外国の方である通り、実は元のお話では舞台は海外です。原作では少女アンナと、海辺の村に住む少女マーニーの交友が描かれるイギリスを舞台にした物語でした。
海外の方の名前としてもある名前として、元のお話でも杏奈の名前が一緒なのは驚きですが、日本人っぽい名前の彩香は原作ではリンジーという名前で書かれています。
映画ではそんなイギリスの地を北海道として描きなおしています。ジブリ作品で北海道を舞台にしたのは初。そこで、北海道に縁の深いTEAM NACSの面々が揃ってキャストとして起用されているわけですね。
まとめ
『思い出のマーニー』のストーリーから、がっつりネタバレとなるマーニーの正体に至るまで一挙に紹介しました。マーニーの秘密を知ると面白くなくなる物語ではなく、孤独を感じていた杏奈の救いの物語として繰り返し見てもじんと沁みる映画となっています!
むしろ、マーニーの正体を知っていればこそ杏奈がマーニーと体験する一つ一つがより感動的に感じられるのではないでしょうか。一周して真相を知っている人もぜひ二周目をおすすめします。
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