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M・ナイト・シャマランの復活作、映画『ヴィジット』が低予算でも超怖かった件

たかなし亜妖

『シックス・センス』や『OLD』など数々の代表作を輩出するM・ナイト・シャマランが手掛けたホラー映画『ヴィジット』。

公開当初は大きな話題を呼び、現在も多数のVODサービスで配信されていることから、根強い人気を誇る作品です。

本作の特徴はPOV(フェイク・ドキュメンタリー)形式で物語が進むこと。視聴者がその場にいるような気分へと陥る秀逸なカメラワーク、想像力を掻き立てる恐怖演出は多くのホラーファンの心を掴みました。

田舎にある祖父母の宅へと向かった姉弟に訪れる恐怖とは?
奇妙な行動を繰り返す祖父母に隠された真実、そして驚きのどんでん返しをどうぞお楽しみください。

本記事はネタバレを含みますので、観鑑賞の方はご注意を。『ヴィジット』鑑賞後に読むことを強く推奨します!

映画『ヴィジット』について


M・ナイト・シャマラン公式Twitter

本作は2015年アメリカで公開されたホラー映画。実家を飛び出した過去を持つ母とその子どもたち2人。

姉弟でかつて対面したことのない祖父母宅で1週間を過ごす、緊張感たっぷりのストーリーです。

本作の特徴は何と言ってもPOV(フェイク・ドキュメンタリー)であること。当時はまだこの手法が使われた作品が多くなく、目新しさに惹かれた人々は非常に多かったとか。

定番のホラー要素を程よく含みながら、要所要所で斬新さを見せる切れ味の良さに定評があります。コメディ、恐怖演出、スリルをバランスよく揃え不思議な中毒性を作り出しました。

 

『ヴィジット』生みの親M・ナイト・シャマランは『シックス・センス』や『ヴィレッジ』、『OLD』などスリラーやサスペンスを得意とする映画監督。

 

低迷期に見舞われながらも作品を発表し続け、本作で大きく挽回。「ヴィジットは彼にとっての復帰作となった」と批評家が口にするほどで、有名監督としての意地を見せました。

彼自身が作中へ出演することも多く、2023年には新作映画『ノック 終末の訪問者』の公開が決定しています。

10秒で分かる!映画『ヴィジット』の簡単なあらすじ

ユニバーサルピクチャーズ日本公式YouTubeチャンネル

姉のベッカ(オリヴィア・デヨング)と弟のタイラー(エド・オクセンボウルド)は祖父母に会ったことがありません。。

なぜなら母親は姿を消した父親と生涯を共にするため、実家を飛び出していた過去を持つからです。

 

家出して以来実家と全く付き合いがなかったものの、ある時急な誘いを受けて2人は祖父母宅へ向かいます。Wi-Fiもなく携帯の電波も通じない場所ですが、すぐに祖父母と打ち解けた姉弟はほっと一息。

そしてベッカは母の過去に基づいたドキュメンタリー映画の制作のため、タイラーの協力を得て、カメラ片手に田舎での生活を過ごします。

 

滞在期間は月曜日から土曜日までの計6日間。どんな画が撮れるのか、と胸が高鳴っていたのも束の間。初日の夜に廊下で嘔吐を繰り返す奇妙な祖母の姿を目の当たりにし……。

 

 

映画『ヴィジット』のネタバレあらすじ

映画『ヴィジット』のストーリーを解説します。物語の核心に触れていますので観鑑賞の方はご注意ください。

【あらすじ①】悩ましい過去、祖父母との対面


IMdb『ヴィジット』紹介ページ

15歳の娘・ベッカ(オリヴィア・デヨング)と13歳の息子・タイラー(エド・オクセンボウルド)と2人の子を持つ母・ロレッタ(キャスリン・ハーン)。彼女には高校時代教師の男性と恋に落ち、親の反対を押し切って実家を飛び出した過去があった。

ベッカとタイラーを授かるも夫婦生活10年目にして夫は浮気。シングルマザーとなったロレッタと子どもたちは仲睦まじく暮らしている。

駆け落ち同然で結婚をしたせいで実家とは絶縁状態で、子ども2人も祖父母の顔を知ることはない。だが、ある日ネットを経由して実の親がロレッタ消息を知り、「孫に会いたい」と連絡が入るのだった。

悩むロレッタだがベッカも彼らに会いたがっているようで、子どもたちだけで祖父母が住む田舎の家へ。2人は元から動画撮影が好きで、ベッカも今回の件を記録映画にしようと計画をしている。

タイラーの協力を得てカメラ片手に祖母・マリア(ディアナ・ダナガン)と祖父・フレドリック(ピーター・マクロビー)初対面。

Wi-Fiもなく携帯電話の電波も届かないような場所だが幸いにもネットは繋がる。スカイプで逐一ロレッタと連絡を取り、これから田舎で1週間を過ごすのだ。

一体どんな映像が撮れるのか――。胸を高鳴らせつつ初日の夜を迎える。

【あらすじ②】奇妙なルールと感じる異変

IMdb『ヴィジット』紹介ページ

「私たちはもう年寄りだから21時半に寝るよ」

フレドリックはそう言い、この家で1週間を過ごす上での約束事を2人へと伝えた。

  • 就寝は必ず21時半
  • 地下室はカビだらけなので入らないように

早々に寝床へと向かう彼。しかし今時の若者である姉弟はこんな早い時間に寝付けるはずがない。祖父が部屋に訪れてから約1時間が経過したころ、ベッカは小腹を空かせてしまい早速ルールを破ってキッチンへと向かう。

すると、その途中でマリアが室内で激しく嘔吐している姿を目の当たりにした。混乱したベッカはすぐさま部屋へ引き返し、タイラーへ「おばあちゃんは病気だ」と告げるのだった。

翌朝祖父へ昨晩の件を伝えると、どうやら祖母はお腹の調子が悪かったらしい。一晩で完治したとのことで、安心した2人はカメラを持ちながらかくれんぼを始める。

すると遊びの最中、奇妙な動きをした祖母が姉弟を驚かしてきた。彼女の格好もまた不思議なもので、寝間着の上にコートを羽織り下着をつけていない状態。衝撃の姿にベッカとタイラーは言葉を失う。

その後も敷地内の小屋に大量のオムツが放置されている、外出時に祖父が急にキレて通行人を襲うなど、おかしな事態に次々と直面する2人。

2日目の夜もマリアは相変わらずで、全裸で壁を引っ掻き続けている……。

【あらすじ③】得体のしれない恐怖


IMdb『ヴィジット』紹介ページ

深夜の奇妙な行動は日没症候群といった病気によるものらしい。祖父はそう説明し、「21時半以降は部屋から出ないように」とルールを追加した。

けれども落ち着いた口調で説明するフレドリックも奇怪な行動が多く、仮装パーティーへ出かけると言って急にタキシードを着始める。

ベッカが指摘をすると彼自身、先の予定のことも分からなくなっているとのこと。マリアは夫のことボケていると一言で片づけ、あまり気にしない素振りを見せた。

2人がおかしい、と姉弟はスカイプでロレッタに告げるが「元々あの人は裸で日光浴するタイプだからね。いつものことよ」「もう高齢だからね」とあっさり。

その返しによりベッカは安堵するが、タイラーは祖父母への不信感を募らせていたため納得がいっていない。

母の言葉を信じたベッカは映像のためにマリアへインタビューを依頼する。彼女はどうにかして、祖父母とロレッタを仲直りさせたいのだ。

渋々承諾した祖母は身なりを綺麗にしてカメラの前へ立つが、母に関する質問をすると激しく荒振り、まともな回答ができない状態へと陥る。

インタビュー映像は見事に失敗。そして3日目の夜も祖母の奇行は繰り返されるが、ベッカは祖父母が“高齢だから仕方がない”と思い込む。

だが疑念が消えることなく日中もおかしな行動を次々と取る祖父母。マリアへ壁に向かって笑い続け「暗闇さんがいるの」と意味が分からない発言が口から飛び出す。

一方でフレドリックは小屋で銃を咥えるなど、常識を逸脱した行為に走る。

 

さすがのベッカも彼らの年齢だけを理由にできなくなり不安が大きくなった結果、リビングに隠しカメラを設置。

何か真実を確認できるのでは……と淡い期待を抱いたのも束の間。深夜の彼女は隠し撮りにすぐ気付き、カメラを取り上げる。

包丁を持って姉弟が居る寝床へと向かい、ドアをガチャガチャガチャ鳴らす。まるで恐ろしきモンスターのよう……。怯えたベッカとタイラーは寝たふりをしてやり過ごすが、迫りくる身の危険に恐怖を感じていた。

【あらすじ④】「お前を許すわ」安堵した言葉の先に


IMdb『ヴィジット』紹介ページ

録画映像を確認したベッカ。深夜に包丁を持った祖母がカメラに気付き……といった一部始終を観て戦慄する。今すぐ2人から離れ距離を置きたいと考えたものの、自分たちが抱える恐怖を悟られてはならない、

そう感じたベッカは弟へいつも通りに振舞うよう指示をする。タイラーは今すぐ帰りたい気持ちを抑えられないものの、ここは田舎町で電波も通じない場所。

そしてベッカは実家と母親の関係修復の仕上げが終わっていないため、フレドリックとマリアへのインタビューを挙行した。

まずフレドリックはかつて自分が工場に勤務していた時代の話をする。夜勤の際黄色い目をした何かを見たそうだが、他の人からの目撃情報はなく信じてもらえなかったらしい。

結局彼はそのまま仕事をクビになってしまった、と淡々と語るのだった。

そして一度目は激しい拒否反応を示したマリアもインタビューに応じる。彼女へ母の家出物語を架空の話を称して説明するベッカ。

涙した祖母は「お前(ロレッタ)を許すわ」と一言。この言葉をしっかりとカメラに収めることに成功。

けれども2人の録画映像を見たタイラーは祖父母の怪しさを強調し、ベッカも精神病を患っているのでは?と疑う。

母へ報告がてらスカイプを繋ぐと、ロレッタは新たな恋人とあまりうまくいっていない様子で少し落ち込み気味。

親の幸せを願うベッカはマリアの「許す」との言葉を告げて、ロレッタへ「迎えにきてほしい」と懇願する。

いくら彼女の中で任務(親子関係の修復)を完了しても、祖父母がおかしい事実は変わらないからだ。

現在の2人の様子をカメラへ映すとロレッタは絶句。この1週間彼らと生活を共にしていたのか、と口にする。

「その2人、私の親じゃない。本物はどこにいるの……?」

【あらすじ⑤】偽祖父母と最後の夜


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急いで警察へ通報し2人の元へ向かうロレッタ。子どもたちは自分たちとは全く関係がない赤の他人と共に過ごしていた事実を知り、動揺を隠せない。

一体彼らは誰なのか……と慌てているとタイミングよく偽祖父が現れ、最終日の夜はゲームをして過ごしたいと言う。

そこへ偽祖母もやってきて挟み撃ち。逃げられない状態で姉弟は地獄の夜を迎えることとなる。

平然を装って4人でゲームをするも落ち着かない。バッテリーが切れたとの理由をつけてベッカは席を外し、例の地下室で真実を確かめることに。

いざ部屋に入ると地下室には真の祖父母の写真が大量にばら撒かれ、2人の死体が転がっていた。近くにはハンマーが落ち、老人に殺害をされたことをベッカは即座に理解する。

マリアとフレドリックの正体は精神病院から逃走した患者2人。真の祖父母とはボランティアで面識があり、彼らを殺して正体を偽っていたのだ。

今までの奇行も全て精神病によるもので、完璧なまでに“ロレッタの祖父母”を演じきっていたのである。

正体がバレた2人は子どもたちを殺そうとするが、力を合わせたベッカとタイラーは老人を撃退。運よく警察と母も到着し一命をとりとめた。

後日、ロレッタへ最後のインタビューをするベッカ。

「本当はね、両親は私のことをとっくに許していたの。でもずっと突っぱねていたのは私の方。もっと早く仲直りしていれば……」

怒りの感情は早く忘れるべきだと泣く母。ベッカは勝手に出ていった父が許せなかったが、この一言により固まった心が溶けていく。

エンドロールはタイラーのラップで〆。映像記録は無事に成功し家族の生活に再び平和が訪れるのだった。

映画『ヴィジット』の登場人物・キャスト

本作は5名の主要人物により物語が展開されます。少ないキャラクター数ながら個性が際立っており、インパクト大(特に祖父母)。

それぞれの解説と役者についても紹介していきますね!

ベッカ/オリヴィア・デヨング


オリヴィア・デヨング公式Instagram

ロレッタと祖父母との仲直りを計画し、田舎へと旅立ったベッカ。女手一つで自分たちを育ててくれた恩を感じ、母の幸せを願う心優しき少女です。

15歳とは思えぬ超しっかり者。お調子者キャラの弟を温かく見守る心の広さを持ち、祖父母に襲われても諦めずに戦い抜く勇敢さを見せました。

作中ではTHE・常識人ポジションですが、ちょっぴり自由そうな母とお調子者の弟の間で生きているからなのかも……?(笑)

ベッカを演じるのはオリヴィア・デヨング。

2011年に業界入りし、2014年に『シスターフッド・オブ・ナイト 夜の姉妹団』にて長編映画デビュー。本格始動後2年目にして本作で主演の座を掴みました。

現在のオリヴィアは24歳。『エルヴィス』や『ザ・ソサエティ』など映画、ドラマに幅広く出演。誰もが振り返るほどの美貌を持つ彼女、今後の動きにも要注目です!

タイラー/エド・オクセンボウルド


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即興ラップが得意でお調子者のタイラー。明るく自由に振舞うベッカの弟で、とっても仲良し。

ただ調子がいいだけではなく撮影に協力したり、母の心配をしたり、咄嗟のピンチから姉を救ったり。作中では大きな活躍を見せ、ラストはお得意のラップを披露する非常に面白いキャラクターでしょう。

彼は作品の緊張を程よく緩めてくれる存在。不思議と憎めない性格に、ついつい頬が緩んでしまった人も多いのでは?

タイラーを演じるのはエド・オクセンボウルド。2012年に短編映画の主演を務め、俳優デビュー。それ以来、子役を対象とした賞を数多く受賞し『ヴィジット』出演へ漕ぎつけました。

ここ数年はあまり目立った動きがないようですが、どこかでまた彼の姿をお目にかかれるかもしれません。その日を楽しみに待ちましょう。

ロレッタ/キャスリン・ハーン


キャスリン・ハーン公式Instagram

高校時代教師と駆け落ち同然で家出、現在はシングルマザーのロレッタ。

あまり男運がないのか現在の恋人もちょっぴりダメそうな予感。恋愛事情も過去も包み隠さず子どもへ話し、序盤は「友達親子」風な印象を受けました。

しかし、子どもの危機を感じ取ると一気に母の顔へ急変。ラストは実家との確執をずっと後悔していたなど、繊細な一面を見せます。

ちょっぴり自由奔放そうですが母、そして女性として力強さを感じるキャラクターですね。

ロレッタを演じるのはキャスリン・ハーン。1981年より活動を開始し『我が家のおバカで愛しいアニキ』、『LIFE!/ライフ』、『バッド・ママ』シリーズなど有名作品へ次々と出演。

映画だけではなくドラマやアニメなどでも活躍する、アメリカで大人気の女優さんです。

祖母(マリア)/ディアナ・ダナガン


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一見優し気な雰囲気が溢れる祖母のマリア。料理上手で柔らかい雰囲気が流れているものの、深夜に奇妙な行動を繰り返すばかり。

初日の夜の裸に嘔吐、翌日のパジャマにノーパンなど衝撃的な姿&格好が多く、驚いた視聴者多数(笑)想像の斜め上をいく奇行のオンパレードで、姉弟をじわじわと追い詰めました。

最終的には精神病を患った患者という事実が発覚しましたが、あまりの名演技には驚愕。正体を見せてからの荒々しさは、モンスター級の恐怖を私たちに見せてくれましたね。

マリアを演じるのはディアナ・ダナガン。1970年のデビュー以来舞台を中心に活躍中。テレビや映画へも精力的に出演し、現在も女優業を続ける大ベテランです。

祖父(フレドリック)/ピーター・マクロビー


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体が大きく頼りがいがありそうな祖父、フレドリック。

マリアとは良い夫婦でとてもお似合いの2人……と思いきや、正体は血縁関係にもない全くの他人。精神病院を飛び出した患者同士という驚きの組み合わせで、見事に姉弟を騙します。

マリアほどの奇行は見られませんでしたが、彼は発言のおかしさが目立ちます。仮装パーティー、工場の話、どれも聞けば顔をしかめてしまうようなものばかり。

最終日の豹変した姿は恐ろしく、一気に顔つきが変わる殺人鬼っぷりには戦慄してしまいました。

視聴者を恐怖の渦に陥れた、素晴らしき演技力を見せつけるのはベテラン俳優のピーター・マクロビー。80歳にして現役を続け、数多くの映画やドラマに出演中です。

『ヴィジット』のココが怖い!恐怖ポイント5選


IMdb『ヴィジット』紹介ページ

本作は心霊やモンスターが登場するホラー映画ではありませんが、緊迫感溢れる恐ろしき描写が特徴的。

あなたは『ヴィジット』でどんな部分が怖い!と感じましたか?筆者が注目してほしいと思う、魅惑の恐怖ポイントをまとめました。

恐怖ポイント①“視聴者参加型”と呼ぶべきPOV

一番の恐怖を煽るのはカメラアングル。POV手法を用いることで、鑑賞側はその場にいるかのような錯覚へと陥るでしょう。

カメラ越しに祖父母の奇行を目の当たりにする気分を味わうことで、恐怖を増長させているのです。

POVはカメラを固定した状態が延々と続くわけではないため、時に手振れが目立ち、不思議なアングルのまま物語が進行する時も。

画的な面だけを見れば「観づらい」「画面酔いする」「何が起こっているか分からない」のですが、逆にその不自由さがいい味を出しています。

臨場感をたっぷりと視聴者へ伝える手法だからこそ、POVはホラー作品にうってつけなのです。

恐怖ポイント②助けを呼びづらい環境での長い1週間

ホラー映画の超王道設定をしっかりと満たしている『ヴィジット』。

  • 電波が届かない場所
  • 田舎の一軒家
  • 都心から離れた場所で休暇を過ごす
  • 顔も見ぬ祖父母との生活

これは70年代頃の作品から受け継がれる伝統的なものであり、のっけから絶望的な状況に見舞われているのです。

また「田舎で休暇を過ごす」というのもド定番の設定。なぜかホラー映画は山奥で休みを過ごしたがりますね(笑)

そしていくら自分たちの祖父母と言えどベッカとタイラーは2人の顔も、性格も何も知らないのです。

彼らは「ママの親だから大丈夫!」と思っているかもしれませんが、第三者的な目線だと不安になる要素がいっぱい。

田舎と言えどネットが繋がっていたのは不幸中の幸いと言えましょう。無事に助けを呼ぶことができましたが、呼び“づらい”状況下に置かれていた2人。

近隣住民の影も見当たらず、閉鎖的な空間で生活をしなければならない窮屈さに鑑賞側は恐怖を覚えるはずです。

恐怖ポイント③祖父母の早々たる奇行と豹変っぷり

田舎で1週間を過ごす中で、いきなり初日から奇行を目の当たりにする姉弟。優しいおばあちゃんと頼りがいのあるおじいちゃん、といった印象はあっという間に崩れ去りました。

このスピード感ものっけからホラー感を楽しめる要素。突然裸で勢いよく嘔吐、なんて斬新さも目新しく(笑)私たちの恐怖を掻き立てるスパイスでしょう。

さらに怖いのは最終日のマリアとフレドリックの豹変っぷり!あれほど穏やかだった2人が突如荒々しい雰囲気を醸し出すのです。

特にフレドリックは顔つきがガラリと変わり“異常さ”を露にしていましたね。マリアも別人かのようにお菓子を貪り、その後は姉弟を追い詰める流れへ。

役者さんの演技がとても素晴らしく、畳みかけるような恐怖が加速する終盤には思わずハラハラさせられました。

序盤から偽祖父母の不穏な様子に心をかき乱されますが、終盤さらに不安を煽ってくるあの感じ。飽きさせないテンポの良さはさすがとしか言いようがありません。

恐怖ポイント④読めないタイミングでのドキッ!とした恐怖

ホラー映画では、心臓が跳ね上がるような脅かし方に期待する人が多いはず。

『ヴィジット』もそんな描写は多いのですが、意外にも読めないタイミングで仕掛けてくるため油断ができないのです。

「来るぞ、来るぞ」と先が読めてしまう作品もある中で、本作は少々“ヌルッとくる”と言いますか……(笑)

思ってもいないところで攻めが入ると意表を突かれた気分に。鑑賞中も中だるみせず、終始楽しめるポイントの一つとなっています。

また「来そうで来ない」といった点も緊張感が張り詰めるポイント。ベッカにオーブンを掃除させるシーンは扉を閉めて監禁を予想したものの、思った通りにはいきませんでしたね。

でも彼女の様子をじっと見るマリアが何をしでかすか分からないため、こちらも肩の力が一切抜けません!

心臓の弱い方は要注意ですが、ハラハラドキドキしたい方にはたまらないでしょう。

恐怖ポイント⑤予想外のどんでん返し、偽祖父母の狂気

『ヴィジット』は真の祖父母は殺されており、精神患者の老人2人が“なりすまし”をしていたというオチ。これはかなりのどんでん返しで、先を想像できた人はほとんどいないでしょう。

恐らく多くの視聴者が「祖父母は何かに取り憑かれているのだ」と読んでいたと思います。

1週間見ず知らずの相手と過ごしていた……といった恐ろしさは想像してもしきれない、といっていいほど。

さらにマリアとフレドリックの正体も精神病院の患者と、真の祖父母とはボランティアで面識がある程度。

物凄く仲がいいだとか、過去に深い因縁関係があったなどはなく、“ほぼ他人”状態で真の祖父母をターゲットにしたのです。

そんな2人の狂気的な一面に注目すると、じわりと背中に冷たいものが流れてきます……。

映画『ヴィジット』の魅力


IMdb『ヴィジット』紹介ページ

M・ナイト・シャマランの復帰作と呼ばれる『ヴィジット』。

多くの人の心を掴み、今なお人気を保つ理由は王道ホラー×斬新さ×雰囲気の堅苦しくなさにあると思います。

先ほどの「『ヴィジット』のココが怖い!恐怖ポイント5選」でも紹介しましたが、本作は従来の作品に見られる王道設定がベース。

昔のホラーなら山奥で完全孤立。助けも呼べずに襲われるのが定番だったため「ネットが通じる」「物理的距離は離れていても、外部(母親)とはやり取りできる」といった新しい要素を追加。

完全な閉鎖感は取り払えど条件そのものは悪い。助かるか否かのボーダーラインが程よい緊迫感が緊張を膨らませてくれます。

オチそのものがとても斬新ですが、祖母マリアの奇妙な動きもすぐに思いつくものではありません。

明らかにおかしいのになかなか襲ってこない。けれども日に日に増していく恐怖……。この攻めと引きのバランスが絶妙すぎるのです。

ところどころコメディ要素を入れて堅苦しすぎない雰囲気作りも◎タイラーのおふざけっぷりとちょっぴり下品なラップ!

祖父母宅で初披露し、マリアがやや引き気味だったのには思わず笑ってしまいました。映像記録のエンディング代わりに彼の曲を使うオチも良かったです。

多くの魅力を含んでいるからこそ評価を受け、M・ナイト・シャマランの真の実力を改めて思い知る作品となったのでしょう。

映画『ヴィジット』に残された疑問


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異常な祖父母の奇行は精神病によるものでしたが、果たして病気だけが原因だったのでしょうか。

多くの人が「心霊に取り憑かれている」と感じた行動たち。筆者はマリアの言動が病だけのものとは、どうしても思えないのです。

壁に向かってケタケタと笑い「暗闇さんが待っているわ」というあのシーン。

“暗闇さん”が空想上の生き物(人物?)かもしれませんし、マリアにしか見えていなかった霊やモンスターと言った可能性も考えられます。

そして気になるのは彼女の動きです。四つ這いで勢いよく移動して来たり、爪で壁を勢いよく引っ掻いたり、急にフリーズし出したり。

病気の一言だけでは片づけられないような怪物らしい雰囲気に、心霊的な何かを感じてしまいますね。

精神病患者だったことは確実ですが、もしかすると霊的な要素が含まれていた……なんて考察があってもいいと思いませんか?

真の祖父母についての詳しい描写が何もないのもちょっぴり気になります。

つい深読みしてしまう『ヴィジット』の謎。明かされることがないからこそ、余計にゾクリとした違和感を覚えることでしょう。

まとめ

有名映画監督M・ナイト・シャマランの代表作の一つとなった『ヴィジット』。

ただ怖い、ただ驚かせるだけではなく骨のあるストーリーと驚異のどんでん返しが魅力。POVを用いることで視覚的にも楽しいホラーとなっています。

今となってはPOVがあまり珍しい手法ではなくなってしまいましたが、今風の映画を観たい時にはぴったり。

2015年公開ながら古さを一切感じさせないため、現代に限りなく近い舞台を楽しみたい方にも向いているはずです。

王道ホラー好きにもたまらない定番の設定で、作品を多数見慣れた方でも楽しめるのではないでしょうか。

ぜひあなたもベッカとタイラーと共に撮影をしているような気分を味わい、田舎で繰り広げられる恐怖をじっくりとご体験ください。

この記事を書いた人
たかなし亜妖
たかなし亜妖

フリーライター&シナリオライターの映画好きサブカル女子。ライター歴は一年半くらいでまだまだひよっこ。 「感動よりも恐怖を、お涙よりもスリルを!」を基準に映画を選ぶ人。ホラー、スリラーサスペンス、鬱になりそうな作品が特に好き。でもハッピーな気分になれる海外ドラマも好き。キャラクターものもアニメも好き。要するにかなりの雑食です。