皮肉でユーモアたっぷり『ウディ・アレン』監督のおすすめ映画7選!
『What’s Up,Tiger Lily?』で監督デビューして以来40年第一線で活躍し続けるウディ・アレン。アカデミー賞に史上最多の24回ノミネートされているにも関わらず、基本的に授賞式には出席しない「授賞式嫌い」としても知られています。
今回は、そんなウディ・アレン監督の皮肉やギャグ、ユーモアがたっぷり詰まったおすすめ映画をご紹介していきます!!
目次
10秒で分かるウディ・アレン監督のプロフィール
…とその前に、まずは簡単にウディ・アレン監督についてご紹介いたします。
ウディ・アレンは1935年12月1日、アメリカのニューヨークで生まれ育ちました。高校時代は「ニューヨーク・ポスト」などにギャグを送り、誌面に何度も紹介されています。それがきっかけでギャグライターとして働き始めました。その後放送作家としても活躍し、映画『なにか良いことないか子猫チャン』で脚本・俳優デビュー。その後、1年に約1本のペースで今なお作品を精力的に製作し続けています。
ロマンスやコメディ作品を多く生み出しているウディ・アレン。自身がユダヤ人であることもあって、ユダヤ文化を風刺したセリフや自己意識を描写しています。演技に関しては、役者に演技指導などせず役者自身に任せているのです。またリハーサルをしないことも彼の特徴です。
この「役者への信頼」と「良い脚本」がスター俳優たちからも人気を集める理由なのかもしれません。
ウディ・アレン監督のおすすめ映画
出典:映画『マジック・イン・ムーンライト』公式Twitter
それでは、ウディ・アレン監督の数ある作品から、7作品を公開年度順にご紹介していきます!ウディ・アレン作品の皮肉でユーモアたっぷりの魅力に浸っていきましょう!
1.アニー・ホール
あらすじ
神経質なコメディアン、アルビー・シンガー(ウディ・アレン)。ある日、友人の紹介でアニー・ホール(ダイアン・キートン)と知り合う。悲観的で皮肉屋なアルビーに対して明るく活発なアニー。2人は正反対ゆえに惹かれあい、正反対ゆえに反発する。2人の出会いから別れまでの数年の物語。
ウディ・アレン監督『アニー・ホール』の撮影裏話
■当初は、殺人ミステリーのストーリーだった
■アニーの服装はアニー役のダイアン・キートンが選んでいる
■映画の撮影は1ショット4~7秒ほど、ところが本作は1ショット約14秒!
■アカデミー賞の授賞式には出席しなかった
アニー・ホールのみどころ!
ただ面白い、笑えるだけのコメディ作品ではありません。アニーの家族を「典型的なアメリカの家庭」と皮肉ったり、「人生は悲惨とみじめの2つしかない」と独特な人生観を語っていたり、「宇宙は膨張している。破裂したら全ておしまいだ(だから何をするのも意味がない)」と悲観的なことを言っていたり……哲学的なシーンやセリフが多いです。
純粋なロマンティック・コメディ作品を求めている人に本作をオススメしにくいのはここに理由があります。主人公のアルビーが悲観的で、終始皮肉をまくしたてているのです。アニーが疲れてしまう気持ちも分かってしまいます。この物語が素敵なのは、アルビーではなくアニーにあるのではないでしょうか。
題名にもなっているように、アニー・ホールこそがこのストーリーの主役なのです。男性的な個性のある服装にカワイイ誘い方、運転が荒いという欠点すら魅力的に見えてきます。そんな2人の一番盛り上がっている恋愛期のエピソードはまさに王道のラブストーリー!楽しそうな2人のふざけ合いが素敵です!
特に逃げ出したロブスターと格闘するさまは、観ているだけで幸せな気持ちになります。だからこそ、上手くいかなくなってからとの対比に胸が痛くなるのです。
幼いアルビーの「宇宙は膨張している。破裂したら全ておしまいだ。」というセリフの後に、先生は「破裂するまで何十億年もある。それまで楽しまなきゃ。」と答えます。アルビーは悲観的な皮肉屋ですが、コメディアンとして皆を笑わせています。
それに、「みじめなのも生きている証拠。感謝しなくちゃ」なんて意外とポジティブなことも言います。彼は悲観的で「死」に脅えながらも、だからこそ「生」を楽しんでいます。その意外と自由奔放な生き方が本作の魅力と言えるのではないでしょうか。
2.マンハッタン殺人ミステリー
出典:Amazon.com
あらすじ
ラリー(ウディ・アレン)と妻のキャロル(ダイアン・キートン)の住むマンションの同じ階には、ハウス夫婦(ジェリー・アドラー、リン・コーエン)が住んでいる。ある日このハウス夫人が心臓麻痺で亡くなってしまった。ところが、キャロルは夫のハウス氏が殺したのではないかと疑い勝手に捜査を始めた。証拠も何もなく疑うキャロルにあきれるラリーだったが、捜査していくうちに意外な事実を突き止める。
ウディ・アレン監督『マンハッタン殺人ミステリー』の撮影裏話
■キャロル役には当初、ウディ・アレンの恋人のミア・ファローが演じる予定だった。(ウディ・アレンのスキャンダルでキャンセルとなった)
■キャロル役となったダイアン・キートンはウディ・アレンの元交際相手
■後に監督としても活躍するザック・ブラフの俳優デビュー作でもある
マンハッタン殺人ミステリーのみどころ!
捜査をして暴走するキャロルと冷静に止めようとするラリーのかみ合わなさが面白い作品です。「やめろ!」「やめない!」の口喧嘩のテンポが良く、まるで漫才です。もう放っておけば良いのに、なんだかんだついて行っちゃうラリーにも笑ってしまいます。
ミステリーだけでなくロマンス要素も強い本作。物語は昔からの友人のテッド(アラン・アルダ)も巻き込んで進んでいきます。昔からキャロルの事が好きなテッドは、ラリーとは正反対に捜査にノリノリです。それがなんだか面白くないラリー。テッドからの好意に悪い気はしないキャロル。お互い嫉妬したり、ちょっと遊んでみたり……結婚生活が長くなって、今さら素直になれない2人の関係がはがゆくも可愛い作品です。
3.おいしい生活
出典:Amazon.com
あらすじ
銀行強盗に失敗した過去を持つレイ(ウディ・アレン)はある計画を思いつく。銀行近くの店を借りて、そこの地下を銀行の地下室まで掘り進めて人知れず銀行強盗をするのだという。カモフラージュするために店で妻のフレンチー(トレイシー・ウルマン)が実際にクッキー屋を始めることに。ところがそのクッキー屋が繁盛する。しまいにはフランチャイズで店舗を拡大するまでに……!
ウディ・アレン監督『おいしい生活』の撮影裏話
■日本のセゾングループが本作の日本公開を条件に、ウディ・アレンと交渉。西武百貨店CM出演が叶った。
おいしい生活のみどころ!
銀行強盗がメインのストーリーかと思いきや、実はクッキー屋が成功してからがメインのお話です。もちろん、銀行強盗計画中もドタバタしていて楽しいです。そもそも、過去に銀行強盗を失敗しているレイ。「銀行強盗」自体向いていないのです。計画中も二転三転してしどろもどろにごまかす様はコミカルで笑ってしまいます。
クッキー屋成功後、上流階級の仲間入りをします。ここで出てくる人々や文化は富裕層への皮肉たっぷりに表現されているのです。そして「幸せとは?」と問いかけてくる内容になっています。「お金はもうあるから良いじゃないか」と言うレイと、「お金より教養」だというトレイシーの考えは対照的です。お金なのか教養なのかそれとも……。2人のそれぞれの選択と、レイの上手くいかない泥棒劇がたまりません。
4.タロットカード殺人事件
出典:Amazon.com
あらすじ
ジャーナリスト志望のアメリカ人サンドラ(スカーレット・ヨハンソン)。ロンドンに滞在中、シド(ウディ・アレン)というマジシャンのマジックショーを観に行くことに。
そのマジックショーの最中、サンドラは亡霊と出会った。亡霊の名はジョー(イアン・マクシェーン)。生前は凄腕のジャーナリストだった。彼は、ロンドンで最近起きている連続殺人鬼の犯人を突き止めたと言う。そして自分の代わりにその犯人をスクープして欲しいとサンドラに告げた。
サンドラはシドと調査に乗り出した。犯人は大富豪で好青年のピーター(ヒュー・ジャックマン)だという。捜査の為に近づくサンドラだったが、気付けばピーターにどんどん惹かれていく……。
ウディ・アレン監督『タロットカード殺人事件』の撮影裏話
■気に入った女優を繰り返して起用するウディ・アレン。スカーレット・ヨハンソンは3回出演している。(本作は2回目の出演作)
■タロットカードの死神の意味は「始まり」と「終わり」。本作でも最初と最後に出てくる。
タロットカード殺人事件のみどころ!
出典:ウディ・アレン公式Facebook ※写真右がウディ・アレン監督
ウディ・アレン作品の面白い要素の一つは「正しいのか、正しくないのか終盤まで分からない」ということではないでしょうか。例えば、マンハッタン殺人ミステリーでも「夫人が亡くなったのは殺人なのか事故なのか」曖昧なまま進むので、観客も戸惑いながら観ることになります。
本作でも「この人が犯人だ!」というシドと「違うんじゃないか」と疑問に思うサンドラに意見は分かれます。最初に犯人を挙げておいて、にも関わらず疑問に思わせるストーリーの構成が素晴らしいです。果たして本作ではどうなるのか……。
シドのキャラクターも魅力的です。調査に協力してくれていますが、警官でも探偵でもなくただのマジシャンです。少し……いや、かなり口が達者なマジシャンです。おしゃべりで、人を惹きつけるキャラクター。潜入捜査でもマジックをしながら人の輪に入っていくコミカルさに笑ってしまいます。
作中、何度か「死後の世界に行くための船」が出てきます。しかしその場面でも音楽が明るく、人々も暗くはありません。生きている人々は悲しい顔をして故人は談笑している、という対比はポジティブで素敵です。
5.恋のロンドン狂騒曲
出典:Amazon.com
あらすじ
ロンドンに住む老夫婦アルフィ(アンソニー・ホプキンス)とヘレナ(ジェマ・ジョーンズ)。アルフィが急に離婚を申し出てきたのだ。その後、彼は年の離れた娼婦シャーメン(ルーシー・パンチ)と結婚すると言い出した。ショックを受けたヘレナは胡散臭い占い師にハマるありさま。
一方その2人の娘サリー(ナオミ・ワッツ)も夫と問題があった。夫のロイは医者だったが、作家になりたくて退職。本を1作出したが、その後は出版すらしてもらえない。サリーはそんな夫を支える為、自分の夢より仕事を取った。にも関わらずロイは向かいのマンションの女性が気になり……。
ウディ・アレン監督『恋のロンドン狂騒曲』の撮影裏話
■ニコール・キッドマンも起用される予定だったが、他の作品とスケジュールが被った為叶わなかった。
恋のロンドン狂騒曲のみどころ!
なかなか人の神経を逆なでするキャラクターばかり出てきます!長年寄り添ってきた妻を捨てて若い女性に走る人、オカルトの世界にどっぷりはまる人、婚約者よりもダメ男を選んじゃう人、人の作品をパクっちゃう人……個性の強すぎる人物ばかりでてきます。皆が皆自分のことしか考えていません。そんな人たちが絡み合い、二転三転するさまがこの作品の面白いところです。が、自分勝手なキャラクターばかりなので人を選ぶ作品でもあります。
シェイクスピアの「人生は単なるから騒ぎだ。意味など何ひとつない。」という言葉の通り、主人公たち皆が恋のから騒ぎをします。ロマンス映画のように「運命の恋で人生全てが好転する」なんてことは起きません。「人生はそんなものだ、それでも人は恋をするし馬鹿なことをする」というウディ・アレンの皮肉とユーモアに溢れた作品です。
6.ミッドナイト・イン・パリ
出典:Amazon.com
あらすじ
映画脚本家のギル(オーウェン・ウィルソン)は婚約者のイネス(レイチェル・マクアダムス)とパリを訪れる。パリに住んで小説を書いて暮らしたいとギルは目を輝かせるが、イネスは今まで通りアメリカで暮らしたいと言う。なんとなくすれ違う2人。ある夜、12時も回った頃ギルはタクシーを拾ってホテルまで帰ることに。ところが、降りてみるとそこは1920年代のパリだった。
ウディ・アレン監督『ミッドナイト・イン・パリ』の撮影裏話
■ウディ・アレン作品の中で本作が最高興行収入を樹立した。
■本作のポスターにゴッホの絵が使用されているが、本編にゴッホは出てこない。
ミッドナイト・イン・パリのみどころ!
パリを舞台にしたロマンスファンタジー。今までのウディ・アレン作品よりも「毒」が少なく見やすい作品ではないでしょうか。「過去への憧れ」の皮肉も分かりやすく、ハッとさせられます。また、夜のパリが幻想的でとても美しいのです。幻想的な町で憧れの作家や素晴らしい芸術家と一緒に過ごすなんて素敵ですよね。そんな彼らのセリフは皮肉やテンポも良くて笑ってしまいます。出てくる著名人の事を知っていれば知っている程、楽しめます。
タイムスリップのストーリーだけでなくロマンス要素もあり、婚約者とのゴタゴタに婚約者の父親が探偵を雇ったり……と一筋縄でいかないストーリーも魅力的です。
7.マジック・イン・ムーンライト
出典:映画『マジック・イン・ムーンライト』公式Twitter
あらすじ
舞台は1928年。一流マジシャンのスタンリー(コリン・ファース)は神やオカルトなど全く信じていない皮肉屋だ。そんな彼に友人のハワード(サイモン・マクバーニー)が助けを求めてやって来る。「友人はある占い師の言いなりになっている。どうか占い師の霊能力がペテンだと証明してほしい」と言うのだ。
その占い師ソフィー(エマ・ストーン)に会うことにしたスタンリー。ところが、見破るどころか自分の過去もどんどん言い当てられてしまう。
ウディ・アレン監督『マジック・イン・ムーンライト』撮影裏話
出典:映画『マジック・イン・ムーンライト』公式Facebook
■『ミッドナイト・イン・パリ』と同じ1920年代が舞台になっている
■公開時は北米17館でのみの公開だったが1か月もせず964館まで増えた
マジック・イン・ムーンライトのみどころ!
出典:映画『マジック・イン・ムーンライト』公式Facebook
ウディ・アレン作品らしい皮肉屋の男性が主人公の本作。対するソフィーは明るく活発です。『アニー・ホール』の2人のような構図になっています。しかし、2人の関係は『アニー・ホール』とは真逆です。
『アニー・ホール』では、最初から惹かれあう2人が段々離れてしまいましたが、本作では反発し合う2人がいつの間にか惹かれあっていきます。王道ラブスートリーな展開ですが、スタンリーがひねくれ者なので進展せずハラハラします。だからこそ、素直になれないスタンリーのラストシーンにはほっこりしてしまいます。
ソフィーと関わるうちに、全てを否定する悲観的なスタンリーの世界が一気に広がる瞬間が素敵です!
まとめ
ウディ・アレン作品を7作ご紹介しました。皮肉の利いたセリフに、クセのあるキャラクターたちに……一度はまるとクセになってしまいます!これからも精力的に作品を作り続けていくであろうウディ・アレン監督から目が離せません!