『雨に唄えば』他数々の名作を生み出したスタンリー・ドーネン監督映画特集!
雨の中歌うシーンが有名な『雨に唄えば』やオードリー・ヘプバーンが主演を務めた『パリの恋人』『シャレード』など、名作を世に送り出してきた監督スタンリー・ドーネン。スティーブン・スピルバーグを始め多くの映画人に惜しまれつつ、2019年2月に心不全により94歳でこの世を去りました。
今回は、生前に彼がこの世に残した作品の中からおすすめの7作品をご紹介していきます!!
スタンリー・ドーネン監督おすすめ映画
…とその前に、少し彼についてご説明しておきます。
スタンリー・ドーネンは1924年4月13日生まれ、アメリカのサウスカロライナ州コロンビア出身です。7歳の頃からダンスを始めました。1940年にブロードウェイの舞台でコーラスをやったことをきっかけにジーン・ケリーと出会います。その後ミュージカルの振付師として活躍したのち、映画監督としてデビューしました。デビュー作『踊る大紐育』はジーン・ケリーと共同監督で製作し、大ヒットとなります。
監督として、明るく楽しい娯楽ミュージカル映画を作ってきました。また、斬新なダンスで観客を驚かせてきた振付師でもあります。ミュージカル作品が多いですが、『シャレード』のようなハラハラする推理サスペンスも製作しました。
1998年にはアカデミー名誉賞を受賞します。他の監督同様、スタンリー・ドーネンも壇上でスピーチをしていたのですが……自然と歌いだし、タップダンスまで披露しました!ミュージカル作品の名監督らしい素晴らしいスピーチです。(この素敵なスピーチはアカデミー賞の公式YouTubeで見る事ができます。)
多彩な才能を持った監督スタンリー・ドーネン。そんな彼の作品7選をご紹介します。
1.踊る大紐育
出典:ワーナー公式サイト
あらすじ
朝6時、水兵たちが艦から元気よく飛び出してきた。彼らは明日の朝6時までの24時間、短い休暇をここニューヨークですごすのだ。水兵のゲイビー(ジーン・ケリー)、チップ(フランク・シナトラ)、オジー(ジュールス・マンシン)の3人もこの休暇を楽しもうと意気込んでいる。観光はもちろん女の子ともデートがしたい。
地下鉄に乗り込んだ時「ミス・地下鉄」アイヴィ(ヴィエラ=エレン)のポスターが目に飛び込んできた。ゲイビーは一目で彼女の虜になってしまった。彼女に会うため、広いニューヨークを走り回る。
スタンリー・ドーネン監督『踊る大紐育』の撮影裏話
■原作であるミュージカル『オン・ザ・タウン』では戦争による暗い影が印象的な作品。しかし、本作の舞台は戦後である為、明るく楽しいミュージカル作品になっている。
■楽曲も原作とは違う曲が使われている。
■実際に街中でも撮影が行われた。
スタンリー・ドーネン作品のみどころ!
ストーリーは至ってシンプル。3人の水兵が3人の女性と出会い、ニューヨークを楽しむ24時間の出来事です。しかし、この24時間がとても濃厚なのです。観光地を巡りつつ出会い、別れ、逃走劇もある盛りだくさんの一日をすごします。
ニューヨークを舞台に歌って踊って楽しむ姿は観ているだけで元気になります。特にジーン・ケリーが町中を駆け回って歌って踊るシーンは爽快です!
出てくる女性も皆魅力的です!ダンサーだったり学者だったりタクシー運転手だったり……都会で生きる女性として自立しています。また、尻込みする男性をリードする姿はとても格好良いです。アイヴィが見栄を張って嘘をついても、それを指摘せずこっそりフォローしあう連帯感もたまりません。恋人となってロマンチックな雰囲気になったり、昔からの友人のように励ましたり……コロコロと表情が変わる彼女たちは愛嬌がありとても可愛いです!
基本情報
上映時間:98分 監督:スタンリー・ドーネン、ジーン・ケリー 出演者:ジーン・ケリー、ヴェラ=エレン、フランク・シナトラ、ジュールス・マンシン 受賞歴:アカデミー賞 作曲賞 公開日:1949年12月8日 |
2.恋愛準決勝戦
出典:Amazon..com
あらすじ
ブロードウェイの舞台で大活躍している兄妹、トム(フレッド・アステア)とエレン(ジェーン・パウエル)。次の舞台の場所が、エリザベス女王のロイヤルウェディングで盛り上がっているロンドンに決まった。
イギリスへ向かう船の中、エレンはジョン・ブリンデール卿(ピーター・ローフォード)と知り合う。エレンは今まで多くの人とデートをしてきたが、誰とも本気になれずにいた。しかし、彼にはどんどん惹かれていく。
ロンドンに着き、舞台の準備をするトム。彼は共演者の1人アン(サラ・チャーチル)に恋をした。しかしその彼女には婚約者がいて……。
スタンリー・ドーネン監督『恋愛準決勝戦』の撮影裏話
■邦題の『恋愛準決勝戦』は「劇中で2組のカップルが出来る」為に名付けられた。
■フレッド・アステア演じるトムが壁や天井へ登って逆さになって踊るシーン。セット自体を回転させて撮影している!
■原題『ロイヤル・ウェディング』。ドキュメンタリー映画との混合を避けるためイギリスでは『ウェディング・ベルズ』という題名で公開された。
スタンリー・ドーネン作品のみどころ!
なんといってもダンスシーンが素敵です。傾く船の中のトムとエレンの優雅なダンス、トムと帽子掛けとの軽快なステップのダンス、舞台上でのコミカルなダンス、そして恋に浮かれるトムのダンス!
特にアンに恋するトムのダンスがみどころです。気持ちだけでなく、実際にトムも浮かぶのです。壁に立ったかと思うと天井で踊り出す、トム役のフレッド・アステアのステップと演技に魅了されるこのシーンは観逃せません。
一見複雑そうな人間関係の本作。でも、出てくるキャラクターたちは皆人が良く前向きです。スタンリー・ドーネン作品らしくクライマックスからラストまですっきりまとまっています。
基本情報
上映時間:93分 監督:スタンリー・ドーネン 出演者:フレッド・アステア、ジェーン・パウエル 受賞歴:なし 公開日:1951年3月8日 |
3.雨に唄えば
出典:ワーナー公式サイト
あらすじ
俳優ドン(ジーン・ケリー)と女優リナ(ジーン・ヘイゲン)は今をときめく大スターだ。2人が主人公のラブロマンス映画が数多く作られている。
時代はサイレント映画から、音楽や声も入るトーキー映画へと変わっていく。映画会社はドンとリナの新作をトーキー映画に変更することに。ところがリナの声があまりに酷く、使い物にならない……。しかも劇中の音声も飛んでしまって酷い作品になってしまった。公開まで時間がなく撮り直しも出来ない。
落ち込むドンに、親友のコズモ(ドナルド・オコナー)がある提案をする。作品を編集してミュージカルに変えてしまうのだ!そしてリナの歌声をこっそり、新人女優のキャシー(デビー・レイノルズ)に吹き替えてもらうことに……。
スタンリー・ドーネン監督『雨に唄えば』の撮影裏話
■名曲を多く起用している中、ドナルド・オコナー演じるコズモの歌う「メイク・エム・ラフ」は本作の為に書かれた曲。
■ジーン・ケリーは、雨の中で歌うシーンを長時間撮影したせいで高熱が出てしまった。
■ヒロイン役のデビー・レイノルズは、実は歌・ダンス未経験だった。
■脚本、音楽監督、撮影監督等のスタッフは『踊る大紐育』と同じスタッフ。
スタンリー・ドーネン作品のみどころ!
コメディ作品としてもロマンス作品としてもミュージカル作品としても一級品の本作。不運な監督やちょっと抜けている社長など脇を固めるキャラクターたちも魅力的です。ミュージカルシーン以外も彼らのおかげで笑いが絶えない作品になっています。
キャラクターの中でも特に、ドナルド・オコナー演じるコズモが素敵です。コミカルにちょこちょこと動き、コロコロと表情が変わり、どんな絶望的な状況でも笑いを忘れず光を見出す魅力的なキャラクターです。スタジオの中を自由に駆け回る彼のソロのダンスシーンは必見です!
どのダンスシーンも素敵ですが、ドン、コズモ、キャシーの3人が家の中を飛び回りはしゃぐ場面は特に素晴らしいです。ドンは堂々と大きく動き、コズモはコミカルに動き、キャシーは女性らしい優雅に動きます。3人がそれぞれのキャラらしく踊るのです。
ジーン・ケリーが雨の中でも楽しそうに踊る姿も有名な本作。雨の日に観たくなる名作です。
基本情報
上映時間:103分 監督:スタンリー・ドーネン、ジーン・ケリー 出演者:ジーン・ケリー、ドナルド・オコナー、デビー・レイノルズ 受賞歴:ゴールデングローブ賞 最優秀主演男優賞 公開日:1952年4月11日 |
4.掠奪された七人の花嫁
出典:ワーナー公式サイト
あらすじ
舞台は1850年アメリカのオレゴン。山奥で暮らす7人の兄弟の長男アダムは、ある日村にやってきた。目的は買い物と嫁探しだ。しっかりしていて、自分達7人の食事を作ってくれるような……。そして理想的な女性を見つけた。ミリー(ジェーン・パウエル)だ。早速求婚したアダム。とんとん拍子に上手くいき、ミリーは山奥に嫁いでいった。しかし、着いた家は散らかり放題、喧嘩っ早くてまともに食事もできない兄弟が6人もいる!
言う事を聞かない兄弟たちだったが、しっかり者のミリーを見て考えを改めるように。そしてミリーは、恋がしたい兄弟たちのために女性に対する作法を教えるのだ。果たして彼らは女性を口説くことが出来るのか……。
スタンリー・ドーネン監督『掠奪された七人の花嫁』の撮影裏話
■本作はアメリカ国立フィルム登録簿に永久保存登録されている。
■1982年にはブロードウェイで舞台化された。
スタンリー・ドーネン作品のみどころ!
未婚の娘が妊娠したことを知った父親が、娘の彼氏にショットガンを突き付けて「責任をとれ」と脅したことが由来の「ショットガンマリッジ」(日本でいうところの「できちゃった結婚」)。本作では少し違った形で面白く表現されています。是非注目してみてください。
大人数でのダンスシーンが特に印象的な本作。お祭りで女性を口説く為に村の男性たちと張り合うダンスシーンは一度見たら忘れられません。6人の兄弟と6人の女性と6人の村の男性、計18人が歌い踊るこの場面は圧巻です!
しっかり者のミリーが魅力的です!母親のように叱りつけ、姉のように面倒を見て、先生のように教えるミリー。芯がしっかりある格好良い女性です。そんな彼女の言う事を聞き、自分で考え成長する兄弟たちも好きになっていきます。とんでもないことをするアダムスも、ある出来事を通じて多方面からものを見られるようになります。全編を通して「変化」がテーマになっていると言えます。季節が変わると共に人も変わる様も楽しめる名作です。
基本情報
上映時間:102分 監督:スタンリー・ドーネン 出演者:ハワード・キール、ジェーン・パウエル 受賞歴:アカデミー賞 作曲賞 公開日:1954年10月26日 |
5.パリの恋人
出典:Amazon.com
あらすじ
ニューヨークのファッション雑誌「クォリティ」の編集長マギー(ケイ・トンプソン)とカメラマンのディック(フレッド・アステア)は大勢のスタッフを引き連れて小さな本屋にやってきた。モデルを知的に見せてくれるような古ぼけた本屋を捜していたのだ。
勝手に店に入って撮影を始めてしまった一同。それを必死に止めるのは店員のジョー(オードリー・ヘプバーン)。結局撮影を決行されてしまい店の中はめちゃくちゃ。後片付けを手伝うディックは、この時ジョーに光るものを感じる。
モデルとしてパリで撮影させたいディックは、「パリで憧れの哲学者の講演にも行けるぞ」とジョーを説得した。そしてパリへ……!
スタンリー・ドーネン監督『パリの恋人』の撮影裏話
■原作はブロードウェイミュージカルだが、台本はオリジナル。
■ケイ・トンプソン演じるマギーのモデルは、「ヴォーグ」の編集長ダイアナ・ヴリーランドだといわれている。
■オードリー・ヘプバーンの衣装は、フランスのファッションブランドのGIVENCHYがデザインしている。
スタンリー・ドーネン作品のみどころ!
映画『プラダを着た悪魔』の主人公と上司の関係が好きな方にオススメです。「ファッション雑誌の編集長と、それに振り回されるファッションに興味のないダイヤの原石」という構図が似ているからです。しかし、本作に出てくる編集長の方が冗談を言ったり気さくな人間なので、上司にも感情移入できます。
主人公を含め登場人物みんなワガママだったり、でも他人を放っておけなかったりと人間味あふれるキャラクターたちも魅力です。
パリに到着したマギー、ディック、ジョーの3人が、3人とも「疲れたからもうホテルでゆっくりする」と言いつつ街中で浮かれるシーン。子どものようにはしゃぐこのダンスシーンが素敵です!パリの観光地にパリの人々を巻き込みながら走り回る姿に思わず笑顔になってしまいます。
カラフルな作品です。色鮮やかで華やかなオフィスに女性たちが素敵なのです。ピンク色で着飾る女性たちの中に地味な色のオードリー・ヘプバーンがいます。地味なのですが、やはり綺麗で目が離せません。そして美しいドレスを着るとさらに綺麗になります!ディックのようにジョーに振り回されたくなる作品です。
基本情報
上映時間:103分 監督:スタンリー・ドーネン 出演者:オードリー・ヘプバーン、フレッド・アステア 受賞歴:なし 公開日:1957年2月13日 |
6.シャレード
出典:Amazon.com
あらすじ
旅行先で友人に、夫との離婚を考えていると話すレジーナ(オードリー・ヘプバーン)。フランスの家に帰ると家具も何もかもなくなっていた。さらに、レジーナのところへ警察がやってきた。夫は家のものを全て売り払い、国外へ行く列車で殺されたと言うのだ。夫の持ち物の中には複数のパスポートまで……。夫には何か秘密があったようだ。夫の葬式には親族も友人も来なかった。来たのは怪しい男3人だけ。
葬儀後、レジーナはアメリカ大使館のバーソロミュー(ウォルター・マッソー)に呼び出された。そこで彼に「お前の夫は第二次世界大戦時、金塊の輸送任務中に仲間4人とその金塊を盗んだ。そして山分けするはずだったのに、一人で持ち逃げしたのだ。仲間3人はついに探し出し、殺したが金が見つからない。だから妻が持っていると思い込んで脅しに来るだろう」と告げられる。レジーナは旅先で知り合ったピーター(ケーリー・グラント)を頼りに、夫が隠した財産を探す……。
スタンリー・ドーネン監督『シャレード』の撮影裏話
■劇中、スタンリー・ドーネンと脚本のピーター・ストーンがカメオ出演している。
■本作に加え、『踊る大紐育』『恋愛準決勝戦』は著作権表記が入っていない。その為、多くの会社が許諾・使用料なしでビデオ・DVD化した。
■脚本執筆時のタイトルは「The Unsuspecting Wife」だった。
スタンリー・ドーネン作品のみどころ!
ここまでスタンリー・ドーネンのミュージカル作品ばかりご紹介してきましたが、本作には歌って踊るシーンは出てきません。展開が二転三転するサスペンスです。序盤から伏線が張り巡らされており、最後の最後まで予想できないストーリーに目が離せません。
緊張感ある場面が続きますが、その間に挟まるレナードとピーターのロマンスが素敵です。真面目な顔をしながら馬鹿げた行動をするピーターに笑ってしまいます。危機的な状況でもレナードを笑わせてあげたいという心遣いなのです。この2人の危うい関係にドキドキします。
基本情報
上映時間:113分 監督:スタンリー・ドーネン 出演者:オードリー・ヘプバーン、ケーリー・グラント 受賞歴:英国アカデミー賞 主演女優賞、ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞 ゴールデン・プレート 等 公開日:1963年12月5日 |
7.星の王子さま
出典:Amazon.com
あらすじ
飛行機の試運転中、故障で砂漠の真ん中に不時着したパイロット(リチャード・カイリー)。修理をしようと外に出たところ、目の前に子どもが現れた。彼は星の王子さま(スティーヴン・ワーナー)。どこから来たのか、なぜこんな砂漠にいるのか、戸惑うパイロットに星の王子さまは「羊を描いて」と頼む。
スタンリー・ドーネン監督『星の王子さま』の撮影裏話
■キツネ役は、映画『夢のチョコレート工場』のウォンカ役でも有名なジーン・ワイルダー。
スタンリー・ドーネン作品のみどころ!
ストーリーは原作の本『星の王子さま』と同じように進みます。星の王子さまが通って来た星々は原作と少し違って簡単にまとめられ、地球に来てからのエピソードがメインです。ヘビ(ボブ・フォッシー)との怪しい会話や、キツネ(ジーン・ワイルダー)との友情がミュージカルで語られます。
登場人物が少なくなっている分、星の王子さまが感じた事・人の特徴、が分かりやすくなっています。そのため原作で気付かなかったことも、本作で感じられるかもしれません。
ヘビのダンスが特徴的です。演じるボブ・フォッシーのクネクネと動く腕がヘビを連想させます。ヘビは怪しい話をしていますが、話す姿勢は決して不誠実な雰囲気ではありません。ヘビを悪者として描いた方が映画として分かりやすくなりますが、スタンリー・ドーネンはそう表現はしていません。原作を大切にしつつミュージカル作品として完成させています。スタンリー・ドーネン監督の力量を感じられる作品です。
基本情報
上映時間:88分 監督:スタンリー・ドーネン 出演者:リチャード・カイリー、スティーヴン・ワーナー 受賞歴:ゴールデングローブ賞 最優秀作曲賞 公開日:1975年7月19日 |
まとめ
スタンリー・ドーネン監督の作品をご紹介しました!作品に共通することは、「見た後幸せな気持ちになること」ではないでしょうか。生き生きしたキャラクターたちに歌にダンスで少し幸せな気持ちになってみませんか?