自由奔放な撮影スタイル!『セーラー服と機関銃』相米慎二監督の映画7選!
自由奔放な相米慎二監督は、その作品にも自由奔放さが現れており、出来るだけ1カットで済ます長回しや、極度な遠景などで立体的な演出を得意とします。しかし、それだけでなく、男女間の繊細な関係を描き出したりと巧妙な演出も見られます。その巧妙な演出から、「アイドル映画の名手」と評価を受けました!!
マルチな才能がある相米慎二監督は、1948年1月13日の岩手県盛岡市生まれで1980年に「翔んだカップル」でデビューしました。その時に、新人監督という立場にありながら新しい試みを次々と実行しようとし、大胆な気風で現場を盛り上げてました。さらに相米慎二監督は俳優が役柄について質問した時には「自分で考えるように」と俳優に役を委ねるスタイルで有名でした。
本人自身も「自分で考えた演技は輝き、自分で発見した演技は躍動感がある」と言っており、決められきった芝居の先にある、予想不可能な何かを求めていました。
現場で育てられた、薬師丸ひろ子さんも「演じることの厳しさを教わり、それがあったから今も女優を続けられている」と感謝していました。
そんな相米慎二監督はその奇抜なスタイルで世に名作を何本も送り出しています。なので、これからは相米慎二監督の選りすぐりの映画を7本、紹介させて頂きます‼
1.セーラー服と機関銃
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あらすじ
父と幼いころから二人で暮らしている女子高校生の星泉(薬師丸ひろ子)は、父も事故で失い独りになった。その父の火葬場で最後のお別れを果たしたのだが、見知らぬ男性が父に線香をあげるのを見かけた。
不思議に思いつつも、自宅に戻った泉はマユミ(風祭ゆき)という女性と出会う。マユミは「もし自分が死んだら泉をよろしく」と記された手紙を泉に見せ、一緒に暮らし始めるのだが…。
相米慎二監督が魅せる‼「セーラー服と機関銃」の撮影裏話!
・他社映画であるがために主演の薬師丸ひろ子は当初、出演を断られたが相米慎二監督は薬師丸ひろ子に直接脚本を送り、薬師丸ひろ子本人が角川春樹事務所を説得しました
・用意されていた衣装が気に入らなかった監督が、たまたま学校帰りの薬師丸ひろ子の制服姿を見て、その制服が採用されました
・「セーラー服と機関銃」では長回しが多用され、カットされたシーンも多かったため、別枠でその長回しが盛り込んである「セーラー服と機関銃 完璧版」が1982年に公開されました
「セーラー服と機関銃」のみどころポイント
まず、題名に目を奪われますよね。セーラー服と機関銃のギャップがもの凄くて、一体どういうストーリーなのかと思った方も多いはずです。その題名に負けないくらい、内容も奇想天外に仕上がってますね。だからといって、散らかってはおらず女子高生がヤクザと関わりをもってしまうという、まとめるのが難しい脚本をテンポよく進めた相米慎二監督の手腕には驚きます。
そして、相米慎二監督の代名詞とも言われる「長回し」や「遠景」なども盛り込まれており、その独特なスタイルのファンになった方も居るのではないでしょうか。この「長回し」などを用いたおかげで映画に「奥行」があり、セーラー服と機関銃という奇妙な物語に臨場感を与えて、親しみやすくなっています。
2.ションベン・ライダー
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あらすじ
ガキ大将のデブナガ(鈴木吉和)にいつも、いじめられている三人組のジョジョ(永瀬正敏)、辞書(坂上忍)、ブルース(河合美智子)はデブナガに仕返しをしようと考えていた。その、仕返しをしようとデブナガのもとに向かう最中、3人の前でデブナガが暴力団の男たちに誘拐されてしまう。そこでジョジョ、辞書、ブルースの三人はデブナガを救出しようと試みるのだが…。
相米慎二監督・「ションベン・ライダー」の撮影裏話!
・橋から木場へ渡るシーン、屋上から侵入しようとするシーン、すべて主演の子役3人自身が行いました
・上映時間は2時間ですが、仮編集した時には3時間30分ほどもありました
「ションベン・ライダー」のみどころポイント!
ジョジョ、辞書、ブルースの子ども三人組が横浜、名古屋、など様々な場所でデブナガを一生懸命追うシーンが多く撮られていて、その頑張る姿に思わず夢中になってしまう映画です。
車が校門について、虫網で捕まえられるシーンから、こうも場面展開するとは想像もつきません。そんな子どもたちの冒険談の導入が「ヤクザに捕まる」からで、インパクトが絶大です。さらに、その最初のインパクトに負けず、屋上侵入シーンや軽トラを自転車で追いかけるシーン等、手に汗握るシーンが数多く、自分が子どものように思えるほど夢中してしまいます。
しかし、衰えない勢いに嫌々協力するヤクザの立場や、子ども三人組の中で唯一女の子であるブルースの葛藤もみどころで、女の子としての自覚が身体に現れるシーンは、ジョジョ、辞書との違いを際立たせており、何ともいえない気持ちになります。
「ションベン・ライダー」は迫力満点の勢いだけじゃなく、こういった繊細な表現もあり、2面性のもった映画となっている場面も必見です。
3.魚影の群れ
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あらすじ
初老の漁師、小浜房次郎(緒形拳)は周りが漁師を辞めていく中でもマグロ漁師を続けていた。
そんな最中、房次郎の娘トキ子(夏目雅子)の恋人・依田俊一(佐藤浩市)が「トキ子と夫婦になりたい」と房次郎に告げる。俊一は漁師である房次郎に憧れ、実家の家業を捨ててまで漁師になる気でいた。頑固者の房次郎は当然反対し会う気がないと娘に言い捨てた。しかし、そう言いつつも俊一の家業である喫茶店まで向かい、会いに行くことになったのだが…。
「魚影の群れ」の監督、相米慎二の撮影裏話!
・原作が小説であるこの作品の世界観を映画で表現するのは不可能、と言われた中、相米慎二監督が見事に実現しました
・マグロ漁の撮影シーンのために、実際のマグロ漁師とともに一緒に船に乗り込み、マグロ漁師としての立ち振る舞いを覚えていました
・舞台が青森だった為に、まず標準語で脚本を作り、後で方言への翻訳を現地スタッフが行いました。
ココがスゴい‼「魚影の群れ」のみどころ!
この映画は、最初に圧倒的な迫力と臨場感に驚くことになります。これほどまでに「骨太」と評される映画も少ないです。アイドル映画などを作る傍らで、こういったリアリティのある大迫力な映画をも手掛ける相米慎二監督はさすがの一言に尽きます。もちろん映画が内容が異なっていようと相米慎二監督の得意の手法はあちこちに見られ、立体感のある映画になっています。
しかし、みどころはそれだけで終わらず、漁をする以外にも魅力的なシーンは沢山あります。頑固な漁師・房次郎を引き立たせる娘トキ子の恋人・俊一が房次郎の弟子になろうと説得する場面だったり、房次郎が抱える悩みだったりが細かく描写されており、複雑で深いヒューマンドラマが繰り広げられる場面は無意識に固唾を飲み込んで見守ってしまいます。
4.ラブホテル
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あらすじ
3千万の借金がある村木(寺田農)は会社が倒産し、ヤクザに終われ、人生に絶望していた。
誰かを道連れに自殺を考えていた村木はラブホテルでデリヘル嬢の名美(速水紀子)を呼び、二人で自殺しようと考えていた。しかし、そんな彼女に惹かれ、自殺出来ずに終わった。
そこから2年後、村木はタクシー運転手として新たに職を得た。そんな中、ある日乗客として2年前に会った名美が入ってきた…。
知られざる撮影裏話‼相米慎二監督の「ラブホテル」
・当初は村木役に別の俳優を考えていたのにもかかわらず、寺田農さんが担当しました
・10日しかないという超短期間での撮影で映画を作っていました
・その為ほぼ徹夜で撮影をすることになり、監督と役者がリハーサルしているときにスタッフは睡眠し、スタッフが準備しているときに役者が寝ていました
映画「ラブホテル」の豊富なみどころ
ロマンポルノで成人映画として発表された映画「ラブホテル」は良い意味で見る人を裏切ってきます。村木役の寺田農は自ら村木役に立候補し、巨額の借金を作って絶望する役を上手く表現していました。そして、そこからデリヘル嬢に惹かれる過程に漂う無気力感には、かなりのリアリティがあります。
そして、そこから次は真逆の立場になってしまうという監督の演出には驚いてしまいます。かつて自分が居た立場にいる彼女を救いだそうと協力するようになりますが、複雑な関係が絡み、重く叙情的な物語として進行します。さらにそれを加速させるような挿入歌の「夜へ」の歌詞「許して…行かせて…怪しく甘やかな夜」はとても印象的です。
歌詞とストーリーを重ねて、雰囲気が伝わってきて、とても切ない映画になっています。とどめを刺すように最後の演出である、桜吹雪と会談で遊ぶ子どもたちのシーンが今でも記憶に焼き付いてきます。
5.台風クラブ
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あらすじ
田舎町に住む、中学生の少年少女は普通の中学生活を日常的に送っていた。
プールへ夜中に忍び込んだり、恋愛したり、大人に対して反抗的になったりと青春を謳歌していた。しかし、そんなある日、大型台風が夜から来る予報を目にする。その最中に、先生が生徒を学校に置き去りにしたまま突然帰宅してしまう。
学校に残された少年少女たちはしだいに感情を高ぶらせ始めるのであった…。
映画「台風クラブ」の相米慎二監督・撮影裏話!
・学校がロケ地で、そこの在学生もエキストラとして参加していました
・完成記念として上映会を行う予定だったが、リアリティがありすぎるために中止になっていました
・台風で大きな木が倒れるシーンの撮影は、校庭に大木を移植して行いました
「台風クラブ」の必見‼みどころポイント
大人になりたい気持ちがありながらも大人を嫌ってしまう少年少女特有の気持ちが揺れ動いてるさまは、見逃せないポイントであり、共感してしまいます。その巧妙な演出は「台風」として具現化して、それをきっかけに変わりゆく少年少女の描写は圧巻です。
学校に取り残され、台風が近づいていくという極限の状況下の中で好きな女の子に強引に迫るシーン、外で踊り狂うシーンなど普段なら考えられないような行為を上手く描き出したシーンと相米慎二監督の長回し手法がマッチして、臨場感を感じてしまいます。
そして、大人になりたくないと考える少年・三上恭一(三上祐一)は台風という状況下の中で他の少年少女たちとの狂乱騒ぎと対照的に一人生きる意味について考えていましたが、最後に答えを見つけて行動に移します。そのシーンから若さ特有のエネルギーが伝わってきます。
6.お引越し
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あらすじ
小学6年生の漆場レンコ(田畑智子)の両親は離婚寸前となっていた。そこから別居が始まり父のケンイチ(中井貴一)が家を出て、レンコは母のナズナ(桜田淳子)との二人暮らしを余儀なくされた。そんな身勝手な両親に挟まれたレンコは不満を抱え、お互いのよりを戻そうと家族旅行を計画するのであったが…。
相米慎二監督の「お引越し」撮影裏話!
・主演である田畑智子は初主演で、新人賞を獲得しました
・そんな初出演であるのにも関わらず、相米慎二監督は役作りを役者に委ねて、自由にさせていました
相米慎二監督・映画「お引越し」のみどころ!
全体を通して、親の離婚、別居に子どもが戸惑い、突然の出来事に訳が分からなくなる心理描写がとても印象的です。子どもの視点から上手く描いた、相米慎二監督の腕が目立つ映画で、まるで自分がその子どもになったかのように勘違いしてしまいます。
同時に上から見渡すような構図、見上げる構図など随所にみられるカメラワークは物語を引き立たせ、映画に取り込まれます。
そして、子どもであるレンコが、よりを戻そうと旅行を企画して自らホテルを予約していました。皮肉にも両親の離婚をきっかけに大人へと成長するレンコには何とも言えない感情を抱きます。
そんな努力を通してレンコは大人に近づき、それを認めるかのように母はレンコに謝り、レンコは「はやく大人になるから」と返しているシーンはこの映画の一番のみどころとも言えます。
7.夏の庭 The Friends
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あらすじ
わんぱく盛りの小学6年生である、木山諄(坂田直樹)、河辺(王泰貴)、山下(牧野憲一)の三人はサッカーに夢中で仲が良い。そんな中で、最近祖母を失ってしまった山下はその祖母の葬儀の様子を木山、河辺に伝えていた。やがて、「死」に興味を抱いた3人組は、近所の一人暮らしである老年の喜八(三國連太郎)を観察することになったのだが…。
「夏の庭 The Friends」・相米慎二監督の撮影裏話!
・児童文学を原作としていて、それを知った監督はすぐに映画化していました
・さらにそれだけに留まらず、舞台化、アメリカへと翻訳されるなど様々な形で広がっています
映画「夏の庭 The Friends」のみどころ
不愛想な老人・喜八が次第に少年たちに心を開いていくさま、子どもたちが徐々に喜八と打ち解ける姿、二つの過程が同時に進んで、見る人も暖かくなる映画「夏の庭 The Friends」。
喜八と子どもたちのお互いに対する印象が最初と最後で対照的に変わっていることが最大のみどころなのがこの映画です。そして、それが行動で現れ、喜八のために動く少年たちは子どもの持つ純粋さを表しており、見事に描きだした監督の圧倒的な演出に驚いてしまいます。
そして訪れる別れ。少年たちは悲しみに明け暮れるが、やがて成長し大人へと歩を進めます。それを象徴するかのように咲いていたコスモスはとても印象的に映っています。
まとめ
子どもであっても、新人であっても役者に役を委ねる相米慎二監督の器量は、どの映画でもまんべんなく見られています。リアルな少年少女たちの感情、行動が際立っており見る人に臨場感を与えてくれます。そして相米慎二監督の「長回し」などの手法が、その臨場感と融合して完成度の高い作品になっています。
そのおかげで、相米慎二監督の映画は子どもでも大人でも誰でも楽しめる映画になっているので、ぜひこれを機にチェックしてみてください。