映画『キングスマン』の名言に学ぶ紳士の在り方
新時代のスパイ映画として人気を博した『キングスマン』。ハリー役のコリン・ファースのスーツ姿や、タロン・エガートンの筋肉美にメロメロになった方も多いのではないでしょうか。格式高いイギリスが舞台なのでノーブルな雰囲気と思いきや、はっちゃけ過ぎて時にはやり過ぎる彼らは世界の映画ファンの度肝を抜きました。そんな映画『キングスマン』から背筋が伸びる名言、名セリフをご紹介します。
目次
- あらすじ
- 映画『キングスマン』の紳士になるための名言・名台詞
- 【名言①】礼節が、人を、作る。/ハリー
- 【名言②】失礼ながら、アーサー。あなたはただの”紳士気取り”だ。/ハリー
- 【名言③】言いたいのは、銀のスプーンが無くても道は拓けるということだ。君が順応して学べば、変われるのだ。/ハリー
- 【名言④】スーツは現在の紳士の鎧。そして、キングスマンのエージェントは現代の騎士なのだ。/ハリー
- 【名言⑤】君たちは全員不合格だ。最も重要なことを忘れてる。チームワークだ。/マーリン
- 【名言⑥】大人になるのは嫌なものだな。/ヴァレンタイン
- 【名言⑦】紳士の名前が新聞に載るのは一生で3回だけだ。生まれた時、結婚した時、死んだ時だ。/ハリー
- 【名言⑧】紳士となるために、生まれた環境は関係ない。学ぶことで紳士となるのだ。/ハリー
- 【名言⑨】他人より優れていることは気高さではない。真の気高さとは以前の自分自身よりも優れていることだ。/ハリー
- 【名言⑩】私はカトリックの男娼でして。今は既婚の黒人のユダヤ人ボーイフレンドと楽しんでます。彼は、軍の中絶クリニックで働いてるんですよ。サタンを讃えよ。それでは良い午後を、マダム。/ハリー
- 【名言⑪】僕たちのような庶民の悪いところは、手クセが悪いということだ。/エグジー
- 【名言⑫】マティーニを。もちろんウォッカではなくジンで。栓を開けていないヴェルモットのボトルを横目で見ながら10秒ステアで。/エグジー
- 【名言⑬】もし、世界を救えたら、その時はお尻でしましょう。/ティルデ王女
- 【名言⑭】あんた、ハリーに言ったな。こいつは映画なんかじゃないって、ブラザー。/エグジー
- 【名言⑮】良き友がかつて言っていた。礼節が、人を、作る。
- まとめ
あらすじ
海兵隊を中退し、街のチンピラとして自堕落な日々を送るエグジー(タロン・エジャートン)は、ある日、些細な犯罪で逮捕されてしまう。取り調べ室にて、幼い頃にもらったペンダントの事をふと思い出す。そこに書いてある番号に電話をかけると、驚くことにすぐ釈放された。
警察署の前で待っていたのは、スーツの紳士ハリー(コリン・ファース)だった。エグジーは、彼から「キングスマン」という影のスパイ組織の入団テストを受けてみないかと持ちかけられる。
映画『キングスマン』の紳士になるための名言・名台詞
映画『キングスマン』には、紳士というのは血筋や家系で決まるものはないというテーマが根底にあります。ロンドンはサヴィル・ロウの高級テーラーに拠点を置くキングスマンは、伝統を重んずる集団としての誇りを持っています。
しかし、彼らの中には血筋や家系に関係なく、「礼節が人を作る」という哲学を持つ者もいました。また、イギリス映画らしく、ウィットに富んだ皮肉なセリフなどが楽しい作品でもあります。
【名言①】礼節が、人を、作る。/ハリー
原文:Manners maketh man.
本作において最も重要なセリフであり、この作品のテーマでもあります。原文では”maketh”という古英語のスペルで、ことわざのように使われます。ハリーは、このセリフの直後、執拗に絡んできた不良たち全員を一人で倒してしまいます。ナメてた紳士が最強のスパイというアツい展開でした。
ちなみに、キングスマンのテーラーがある「サヴィル・ロウ」の近くには「リージェントストリート」と呼ばれる通りがあります。前者には高級テーラーが立ち並び、後者には庶民的なお店が立ち並んでいます。キングスマンの登場人物を思わせるような対比ですね!
【名言②】失礼ながら、アーサー。あなたはただの”紳士気取り”だ。/ハリー
原文:With respect, Arthur, you’re a snob.
”snob”という単語は、「似非インテリ」や「上流階級気取り」といった悪口として使われます。キングスマンのリーダーであるアーサー(マイケル・ケイン)は特権意識が強く、ブルーカラー(製造業労働者)であるエグジーや、過去にはエグジーの父親もキングスマンに入れることをよくは思いませんでした。しかし、ハリーはそんなアーサーを俗者だとキッパリ否定します。
命をかけて自分を守ってくれたエグジーの父親はハリーにとって紛れもない紳士であり、例えリーダーの発言であろうと、間違った意見に対して真っ向から立ち向かう彼の紳士っぷりがよく表れています。
【名言③】言いたいのは、銀のスプーンが無くても道は拓けるということだ。君が順応して学べば、変われるのだ。/ハリー
原文:Now, my point is that the lack of a silver spoon has set you on a certain path that you needn’t stay on.
出自や母親のせいにして自分の人生には選択肢がないとスーツ姿のハリーに歯向かうエグジー。「銀のスプーンを持って生まれきた」(ヨーロッパでは裕福な家柄を指す意味)とハリーを揶揄した彼でしたが、ハリーは彼をこのセリフで諭しました。
学ぶことが紳士になるための一歩だということを説明するために、『大逆転』『ニキータ』『プリティ・ウーマン』など数々の古い映画を引き合いに出しますが、若いエグジーにはことごとく通じず、その中でも最も古い映画である『マイ・フェア・レディ』は知っているという、ほっこりするシーンでもありました。
【名言④】スーツは現在の紳士の鎧。そして、キングスマンのエージェントは現代の騎士なのだ。/ハリー
原文:A suit is the modern gentleman’s armour. And the Kingsman agents are the new knights.
キングスマンは、普段は高級テーラーという表の顔があります。そこで繕われるスーツは現代を生きる紳士の嗜みであり、イギリスの古き良き騎士道精神における鎧でもあります。
格式高い店内のフィッティングルームはエレベーターになっており、そこを降りるとスパイグッズが所狭しとならんだ武器庫でした。スーツは鎧、傘は剣というイギリス文化ですから、高級テーラーが武器庫という設定は頷けますね。
【名言⑤】君たちは全員不合格だ。最も重要なことを忘れてる。チームワークだ。/マーリン
原文:Every single one of you has failed. You all forgot the most important thing: Teamwork.
入団テストを受けることになったエグジー達。彼らを指導するのは鬼教官のマーリン(マーク・ストロング)でした。就寝中に部屋が水で満たされるという過酷な試練をなんとか切り抜けたキングスマン候補生たちでしたが、一人が犠牲になってしまいました。まだ拙い彼らは、自分が助かることだけを考えていたのです。それは、訓練に命の危険はないとたかを括っていた彼らに現実を見せつける試練でもありました。
単独で動くミッションが多いスパイとは言え、いざという時には自分の命を顧みずに仲間や依頼人の命を守らなければいけないのが彼らの使命なのです。
【名言⑥】大人になるのは嫌なものだな。/ヴァレンタイン
原文:What a shame we both had to grow up.
身分を偽り、大富豪ヴァレンタイン(サミュエル・L・ジャクソン)の私邸を訪れるハリー。スパイ映画の話題で盛り上がりながらも、「悪役がよかった」「紳士のスパイを夢見ていた」とお互いに探りを入れる様は、ヒリヒリするような緊張感が漂う場面でした。
「最近の『007』は少しばかりシリアスだから私の好みではない」というハリーのセリフが、まさに映画『キングスマン』の雰囲気を表しているようでクスリとさせられるシーンでもありました。
【名言⑦】紳士の名前が新聞に載るのは一生で3回だけだ。生まれた時、結婚した時、死んだ時だ。/ハリー
原文:A gentleman’s name should appear in the newspaper only three times: When he’s born, when he marries, and when he dies.
キングスマンの試験で最終選考まで通ったエグジーは、推薦人であるハリーと1日過ごすことになります。ハリーの家に招かれるとそこには様々な新聞記事が飾られてありました。それはすべてハリーが事前に危機を食い止めたときの新聞記事ですが、ハリーの名前はどこにもありません。そこでエグジーは、キングスマンとは、影の組織であるがゆえに紳士たる必要があることを学びます。
ハリーの初仕事である「マーガレット・サッチャー暗殺阻止」といった新聞の見出しもあれば、「ハリーポッターの新作見つかる」や「ブラッドピットが俺のサンドイッチを食べた!」「小便すべきか?しないべきか?」といったフザけた見出しが多かったのが印象的でした。
【名言⑧】紳士となるために、生まれた環境は関係ない。学ぶことで紳士となるのだ。/ハリー
原文:Being a gentleman has nothing to do with the circumstances of one’s birth. Being a gentleman is something one learns.
労働者階級出身で母親の再婚相手のパワハラに耐える日々だったエグジーは、自分にはキングスマンになる素質がないと悩みます。そんな彼を推薦人であるハリーは、キングスマンは紳士であるが、紳士になるために出自は関係ないということを諭します。
「礼節は人をつくる」とあったように、その礼節を学ぶことで人は紳士になるのだといいます。
キングスマン選抜試験を見てきたハリーは、エグジーの身体能力だけでなく、人を思いやる優しさを持っていることを最もよく知っていたのでした。
【名言⑨】他人より優れていることは気高さではない。真の気高さとは以前の自分自身よりも優れていることだ。/ハリー
原文:There is nothing noble in being superior to your fellow man; true nobility is being superior to your former self.
エグジー以外のキングスマン候補生は、みな特権階級の子孫だったり、有名大学の主席卒といったエリートでした。その中で平凡な一般家庭出身のエグジーは引け目を感じていました。ハリーはエグジーに対し、ヘミングウェイの言葉を借りて彼を勇気づけます。普段は厳しいハリーですが、エグジーが悩んだり自信をなくしたときには、いつも側にいて優しく言葉をかけてくれるのでした。
SNSなどで他人の人生と自分の日々を比較しがちな世の中ですが、そんな私たちの生活においても、この言葉は教訓になります。
【名言⑩】私はカトリックの男娼でして。今は既婚の黒人のユダヤ人ボーイフレンドと楽しんでます。彼は、軍の中絶クリニックで働いてるんですよ。サタンを讃えよ。それでは良い午後を、マダム。/ハリー
原文:I’m a Catholic whore, currently enjoying congress out of wedlock with my black Jewish boyfriend who works at a military abortion clinic.So, hail Satan, and have a lovely afternoon, madam.
ヴァレンタインの策略を知り、ハリーはアメリカ・ケンタッキー州にある過激なキリスト右派で有名な教会を訪れます。その教会で開かれていた集会は、差別的な思想を持った人々の集まりで、ハリーはその過激な演説にウンザリし、席を立とうとします。すると、隣に座っていた老婦人がハリーを怪しみ、問いただしたときに彼が返したセリフです。
男娼、黒人、ユダヤ人、人工中絶、極み付けはヘイルサタンとキリスト教原理主義者が最も忌むべき存在をラップのリリックのようにスラスラまくし立てる様はとてもクールでした。
紳士であれば、このくらいウィットの富んだ皮肉をかましてみたいものですね。
【名言⑪】僕たちのような庶民の悪いところは、手クセが悪いということだ。/エグジー
原文:The problem with us common types is, that we are light-fingered.
ヴァレンタインの策略に嵌り、犠牲となったハリー。そのことを報告しにエグジーはキングスマンのリーダーであるアーサーの元を訪れます。しかし、アーサーもヴァレンタインの仲間であることに気づき、毒を盛られたグラスをとっさにすり替え、アーサーは命を落としました。
上流階級では決して身につかないスリの手口を使い、窮地を切り抜けた様は、持たざる者が持つ者に勝った瞬間であり、非常に痛快な場面でした。このエグジーの台詞も、一昔前の明るいスパイ映画っぽい捨てセリフで、ニクい演出ですね。
また、上流階級を気取っていたアーサーは、死の間際に口汚く罵っていたのも、素晴らしい対比でした。
【名言⑫】マティーニを。もちろんウォッカではなくジンで。栓を開けていないヴェルモットのボトルを横目で見ながら10秒ステアで。/エグジー
原文:Martini. Gin, not vodka, obviously. Stirred for 10 seconds while glancing at an unopened bottle of vermouth.
ヴァレンタインが主催するパーティに侵入したエグジーがバーカウンターで飲み物を頼んだときの台詞です。
かつてハリーはエグジーに、紳士の条件の1つとして、マティーニの作り方を覚えることを教えていました。
このセリフには、1962年に公開された007シリーズの第1作目『ドクターノオ』からのお馴染みである、「マティーニを、ステアせずにシェイクして」という通称ボンドマティーニへのオマージュが含まれています。これまた一昔前の明るいスパイ映画へのリスペクトですね。
映画好きでお酒好きなら一度は頼んだであろうボンドマティーニ。エグジーマティーニも頼んでみてはいかかでしょうか?
【名言⑬】もし、世界を救えたら、その時はお尻でしましょう。/ティルデ王女
原文:If you save the world, we can do it in the… asshole.
ヴァレンタインのアジトに潜入したエグジーは、敵の中心部へ乗り込む途中、人質として囚われていたスウェーデンのティルデ王女(ハンナ・アムストロム)を見つけます。そこで二人はこの約束を交わし、その約束は守られることになります。
ちなみに、このとき王女が幽閉されていた部屋の扉を開ける暗証番号は「2625」なのですが、これにもちゃんとした意味があります。スマートフォンでこの数字を英語キーボードを打つと、”anal(肛門)”になるのです。
ちょっと悪ふざけがすぎるような気もしますが、このやりすぎな悪ふざけこそ、映画『キングスマン』が楽しい理由であり、この作品にとっての最高の褒め言葉なのです。
【名言⑭】あんた、ハリーに言ったな。こいつは映画なんかじゃないって、ブラザー。/エグジー
原文:It’s like you said to Harry: This ain’t that kind of movie, bruv.
ついに宿敵ヴァレンタインを倒し、ハリーの敵をとったエグジーは、ヴァレンタインに最後の捨てセリフを言います。かつてハリーに向かって自分をスパイ映画の悪役のように吹聴していた彼は”Perfect(完璧だ)”と言い残し、どこか満足そうな表情を浮かべながら息絶えました。小さい頃憧れていた悪役として活躍し、最後にはスーツ姿のスパイに捨てセリフとともに殺されたのですから、彼にとっては本望なのかもしれませんね。
【名言⑮】良き友がかつて言っていた。礼節が、人を、作る。
原文:As a good friend once said. Manners… maketh… man.
任務を終え、世界を救ったエグジーは一人前のスパイとなり、スーツを着て母親と再婚相手のディーン(ジェフ・ベル)がいる酒場にやって来ます。その酒場はかつてハリーと出会った酒場でした。そこでディーンに口汚く罵られたエグジーは、ハリーのあの言葉を述べ、ディーンを懲らしめます。
エグジーにとって全てが始まった場所であり、ハリーを思い出したのか、ニヤリと笑ってこのセリフを言うシーンはとても印象的でした。
ハリーが見定めた若者は、彼の後ろ姿から古き良き紳士像を学び、立派なスパイとなりました。彼の精神は確かに次の世代に受け継がれたのです。
まとめ
新たなスパイ映画である『キングスマン』には、古き良き紳士のあり方を教えてくれるセリフが盛りだくさんでしたね。
続編の『キングスマン:ゴールデン・サークル』では、一人前のスパイとして立派に成長したエグジーの活躍だけでなく、アメリカのキングスマンであるステイツマンの参入など、おふざけが更にパワーアップした楽しい二作目となっています。あの人も帰ってくるかも……?
また、2021年にはキングスマンの誕生を描いた『キングスマン:ファースト・エージェント』も公開されました。
ぜひ皆さんも、キングスマンの名言に紳士のあり方を学んでみてはいかがでしょうか?