映画『去年の冬、きみと別れ』ネタバレ解説 | すべての人が罠にハマってしまうワケとは?

サスペンス映画では「犯人を予想すること」が醍醐味ですが、『去年の冬、きみと別れ』では最初から犯人が分かっています。「犯人が分かっているのに、サスペンス映画なの?」と感じるかもしれません。むしろだからこそ、予想のできない展開が観る人を待っているのです。

作中に出てくるトリックや登場人物たちに込められた想い、みどころなどを含めてネタバレ解説していきます。

『去年の冬、きみと別れ』について


出典:映画『去年の冬、きみと別れ』公式Twitter

映画『去年の冬、きみと別れ』のキャッチコピーは「すべての人がこの罠にハマる」となっている通り、観ていると気づいたときには罠にハマっており、予測不能のラストを体験します。キャッチコピーを裏切らない仕上がりの作品となっています。

原作は『教団X』(2014年)などで知られる芥川賞作家の中村文則さんによるサスペンスドラマ小説です。監督は『犯人に告ぐ』(2007年)、『イキガミ』(2008年)などを手がけた瀧本智行さん、脚本は『デスノート』(2006年)『BECK』(2010年)の大石哲也さんです。

映像化は難しいとされていた本作品は制作の段階で何度も脚本を書き換え、ついに2018年に実写映画化されました。

「三代目J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE」「EXILE」の人気パフォーマー、そして俳優としても活躍の場を広げている岩田剛典さんが主演を務め、猟奇殺人事件を追うジャーナリストを演じています。爽やかな印象の強い岩田さんですが、これまでとは違った役に挑戦している点も、見どころのひとつになっています。

10秒でわかる『去年の冬、きみと別れ』の簡単なあらすじ

出典:『去年の冬、きみと別れ』公式予告YouTube

ざっくりあらすじフリーライターの耶雲恭介(岩田剛則)は盲目の女性が焼死した事件の真相を暴くため、執行猶予つきで保釈された天才カメラマン木原坂雄大(斎藤工)を取材するようになります。事件当時、焼死した盲目の女性は撮影のモデルをしていました。雄大と関わるうちに、自身の婚約者である松田百合子(山本美月)が行方不明になってしまいます。百合子が雄大に誘拐されたと考えた恭介が雄大の撮影スタジオ兼自宅に向かうと、そこでは雄大が過去に起こした事件と全く同じ光景が広がっていました——。

ラストには、想像もできなかったどんでん返しが待っています。しかし、決してハッピーエンドで終わる作品ではありません。スカッとしつつもどこかで切なく感じるような結末になっています。

この作品のテーマには「愛」があり、登場人物たちが「愛」のために決断し、「愛」に翻弄されていく様子が描かれています。人がきっかけひとつでどのように変わっていき、どのように一線を超えてしまうのか。サスペンスの要素はもちろんのこと、ヒューマンドラマの要素も備えています。

『去年の冬、きみと別れ』のネタバレあらすじ

【ネタバレあらすじ①】猟奇殺人事件を追うフリーライター恭介

去年の冬、きみと別れ ネタバレ
出典:映画『去年の冬、きみと別れ』公式Twitter

フリーライター耶雲恭介(岩田剛典)は、天才カメラマンが起こした猟奇殺人事件の企画を週刊誌編集者の小林良樹(北村一輝)に持ちかけます。

その事件とは、天才カメラマンとして世界的に知られている木原坂雄大(斎藤工)が撮影中の火事で、モデルをしていた盲目の美女を焼死させてしまったというものでした。雄大は逮捕、起訴されましたが、雄大の姉である木原坂朱里(浅見れいな)の協力もあって、過失致死傷として執行猶予つきの判決を受けて釈放されていました。

すでに判決も下り、解決ずみの事件は記事にならないと取り合おうとしない小林でしたが、恭介は「結婚を控えているため、その前にライターとして自分の力を試したい」と食い下がります。小林の上司の後押しもあり、取材を進められることになりました。

【ネタバレあらすじ②】雄大の過去と人物像

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出典:映画『去年の冬、きみと別れ』公式Twitter

取材を進めるうちに雄大の自宅兼スタジオに出入りできるようになった恭介は、事件だけでなく雄大の過去や人物像を探るため雄大の姉である朱里や同級生など、取材範囲を広げます。その過程で、雄大が子どもの頃、父親が刺殺されたことや姉と共に父親から虐待されていたこともわかります。父親が刺し殺された事件については、2人が虐待を受けていたことから姉弟の犯行とも考えられましたが、子どもにはできないような刺し傷であり、第三者の犯行という可能性もありました。しかしその事件は立証されないままでした。

恭介は取材に熱心になるあまり、婚約者・松田百合子(山本美月)とすれ違うようになってしまいます。ある日、百合子のバイト先の喫茶店でふたりが口論している様子を、雄大は車の中から見ていました。雄大は恭介の取材を受けているうち、百合子に興味を持つようになっていたのです。

【ネタバレあらすじ③】百合子が突然行方不明に

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出典:映画『去年の冬、きみと別れ』公式Twitter

恭介と百合子のすれ違いが続く中で、突然百合子が行方不明になりました。百合子のTwitterの裏アカウントの呟きや雄大の「人のものを自分のものにしたがる」という性格から、百合子が雄大に誘拐されたと考えた恭介は、彼の撮影スタジオ兼自宅に向かいます。百合子を返せと言う恭介に対し、「彼女は自ら望んでここに来たんだ」という雄大は百合子の写真を渡し、その場を離れてしまいます。

恭介の連絡を受けた小林が駆けつけると、雄大の自宅からは炎が上がっていました。百合子がいる部屋では、炎に包まれた百合子とその様子を一心不乱にカメラに収める雄大がいました。この件で雄大は殺人犯として逮捕されます。

百合子の遺体は誰なのか分からないほどの損傷を受け、遺留品の手帳には恭介に対して「愛してる」と書かれてありました。百合子を助けられず、失意に打ちのめされる恭介。他方、この一件で恭介の言動を不審に思った小林は、恭介について調べはじめます。すると、衝撃の事実にたどり着くのでした。

【ネタバレあらすじ④】恭介の復讐

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出典:映画『去年の冬、きみと別れ』公式Twitter

逮捕された雄大のもとに1冊の本が届きます。この本に恭介の復讐のすべてが書かれてありました。実は「耶雲恭介」とは偽名、フリーライターという肩書きも偽りで、雄大が過去に起こした猟奇殺人事件の1人目の被害者である盲目のモデルは、恭介の元恋人でした。

別れてからも元恋人の吉岡亜希子(土村芳)を忘れられなかった恭介は、亜希子が事件に巻き込まれ焼死したことを知って事件を調べはじめます。調べるうちに朱里にたどり着いた恭介は、朱里から事件の内容を聞きます。なぜ事件が起きたのか、なぜ亜希子が殺されてしまったのか、誰が事件を起こしたのか。すべてを知った恭介は復讐を決意します。

亜希子が焼死した事件には、雄大の姉・朱里も関係していました。「人が燃えている炎が一番美しい」と考える雄大は「人が燃えること」に執着し、その願いを叶えるために朱里が亜希子に火をつけたのでした。さらに、雄大と朱里の父親の殺害を計画したのも朱里でした。朱里は父親の殺害を小林に頼み、小林は2人が受けている虐待を見かねて殺人を実行してしまったのです。それ以降、小林は朱里の言いなりになっていたのでした。ふたりは肉体関係になっており、小林は朱里と薬に溺れていきます。雄大、朱里、小林の3人は互いに繋がっていたのでした。恭介の復讐心はこの3人に向けられます。

復讐を決めた恭介は自殺志願者が集まる掲示板で百合子と知り合い、雄大の「人のものを欲しがる」という性格を利用して、百合子に興味を持たせるように婚約者を演じさせていたのです。雄大にモデルの仕事を持ちかけられた百合子はわざと雄大に誘拐されます。同じころ、恭介は朱里を睡眠薬で眠らせて誘拐していました。

去年の冬、きみと別れ ネタバレ
出典:映画『去年の冬、きみと別れ』公式Twitter

百合子は撮影の合間、雄大が外出した隙を狙って朱里と入れ替わります。朱里が亜希子に火をつけたように、恭介が朱里に火をつけました。外出から戻った雄大は「人が燃えていること」に興奮し、炎に包まれている人物が最愛の姉であることも知らずに一心不乱にシャッターを切っていました。

すべてを知った小林は、恭介を「化け物だ」と言います。恭介は「亜希子の恋人が化け物であってはいけないから、亜希子と別れた」と話しました。「化け物」になると決心した、去年の冬に。

映画『去年の冬、きみと別れ』のキャスト

耶雲恭介/岩田剛典

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出典:映画『去年の冬、きみと別れ』公式Twitter

1989年3月6日生まれ、愛知県名古屋市出身の岩田剛典さん。三代目J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE、EXILEのパフォーマーです。映画の影響でダンスを始め、大学在学中にパフォーマーオーディションに参加したことがきっかけで三代目J Soul Brothersのパフォーマーとして活動を始めました。映画『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』など、俳優としても活躍の場を広げています。

本作品では結婚を前に大勝負を仕かけようと、雄大が過去に起こした事件の真相に迫る野心あるフリーライターを演じています。

松田百合子/山本美月

去年の冬、きみと別れ 
出典:映画『去年の冬、きみと別れ』公式Twitter

1991年7月18日生まれの山本美月さんは福岡県福岡市の出身です。高校3年生の時に「東京スーパーモデルコンテスト」でグランプリを獲得し、ファッションモデルとしてデビューしました。ドラマの出演をきっかけに女優としての活動を始め、映画『桐島、部活やめるってよ』などに出演しています。

雄大の婚約者を演じており、取材に打ち込む雄大を心配しつつもすれ違いが起きてしまいます。

木原坂雄大/斎藤工

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出典:映画『去年の冬、きみと別れ』公式Twitter

甘いマスクで人気の斎藤工さん。俳優としてだけでなく、映画評論家、映画監督としても活動しています。1981年8月22日生まれの東京都港区出身です。高校在学中からモデルとして活動していましたが、俳優を目指すようになります。ドラマ『昼顔』で多くの女性を虜にしブレイクしました。

本作品では猟奇的で才能あふれる天才カメラマン、そして恭介が追う事件の加害者です。

木原坂朱里/浅見れいな

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出典:映画『去年の冬、きみと別れ』公式Twitter

1983年6月7日生まれ、東京都東村山市出身の浅見れいなさん。グラビアアイドルから人気ファッションモデルに転身し、モデル卒業後は女優として活動しています。プライベートでは2018年に一般男性と結婚し、2児の母です。

ミステリアスな雰囲気で、雄大に対して異常な愛情を注ぐ姉を演じています。物語の鍵を握る重要な役です。

小林良樹/北村一輝

去年の冬、きみと別れ 
出典:映画『去年の冬、きみと別れ』公式Twitter

癖のある役が多い北村一輝さん。1969年7月17日生まれ、大阪府大阪市出身です。「海賊」になるため商船高専に進学しますが、海賊になれないことに気づいて学校を中退し、役者の道を選びました。しかし役者としてなかなか芽が出ず、4年程海外を放浪していた時期もありました。現在では、映画『龍が如く 劇場版』『キル・ビル』など多くの作品に出演しています。役づくりに熱心で、歯を抜こうと歯医者で頼んだこともあったそうです。

この作品では週刊誌の凄腕編集者を演じています。

吉岡亜希子/土村芳

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出典:映画『去年の冬、きみと別れ』公式Twitter

1990年12月11日生まれの土村芳さん。出身は岩手県盛岡市です。大学進学の際に女優を志し、大学在学中から劇団に所属していました。大学卒業後、本格的に女優としての活動を始めます。映画、舞台、ドラマ、CMで幅広く活躍している女優さんです。また、小学生の頃に始めた新体操でインターハイに出場したという、異色の経歴の持ち主でもあります。

恭介が追う事件の被害者を演じています。

映画『去年の冬、きみと別れ』の3つのみどころ

【みどころ①】恭介の見た目の変化

物語のはじめは記者としてジャケットを着たりカジュアルな服装が多かったのですが、クライマックスが近づくにつれ、眼鏡を外し、無精ひげも生えています。そしてオーバーサイズの服を着たりと、作品冒頭の印象とは大きく変わってきます。

去年の冬、きみと別れ 
出典:映画『去年の冬、きみと別れ』公式Twitter

【みどころ②】化け物になった恭介

作中には、雄大の過去や執着、言動に底はかとなく恐ろしさを感じる部分が多くあります。しかし小林が言っていたように「化け物」は恭介であり、恭介自身もそのことを自覚しています。亜希子を想う気持ちが強いあまりふたりは別れることになりますが、破局の原因も、つまりは恭介の過剰な執着でした。

恭介の視点で物語が進むため、ラストで「化け物」としての恭介があらわれるとイメージがくつがえされ、キャラクターの振り幅に圧倒されます。

【みどころ③】登場人物の嘘と愛


出典:映画『去年の冬、きみと別れ』公式Twitter

この作品には、違和感を覚えるシーンが多々あります。雄大が起こした焼死事件に必要以上にのめり込む恭介や、恭介と百合子は結婚間近のカップルなのにふたりには温度差があること、小林が恭介の記事に対して消極的な態度をとっていることなどです。それぞれの登場人物が、言葉や行動で嘘をついているのです。この違和感の理由は物語が進むにつれて解き明かされていきます。

登場人物たちが嘘をつくのは、愛のためでした。恭介が「化け物」になると決めたのも、朱里が常識を超えた行動をとったのも、小林が人をあやめたのも、すべては愛する人のためだったのです。

人は何かのきっかけで変わってゆくものなのだと感じさせる描写が、随所に見られます。

【みどころ③】『去年の冬、きみと別れ』に隠されたトリック


出典:映画『去年の冬、きみと別れ』公式Twitter

物語序盤、いきなり「第2章」のテロップがあらわれて「第1章はどこ?」と観る者を惑わすといった演出が、作中に多くちりばめられています。この作品には時間軸の巧妙なトリックが仕かけられています。

ある事件を追うフリーライターがさらなる事件に巻き込まれていく展開かと思いきや、復讐にふさわしい舞台の土台ができ上がっていたのです。

恭介が雄大の撮影スタジオに出入りするようになった頃、雄大の同級生や雄大の父親が刺殺された事件を担当刑事などに取材しているシーンがいくつかありましたが、雄大以外の取材は恭介が過去に行っていたものでした。まるで同時進行で行われているかのように感じるため、罠にハマってしまうのです。最後まで観ると、トリックの内容とタイトル『去年の冬、きみと別れ』の意味がわかるようになっています。

まとめ

映像化は難しいとされていた『去年の冬、きみと別れ』ですが、原作と違う表現方法を用いるなどの試行錯誤の末、観た人が全員罠にハマってしまう作品になっています。ひとりの人間が一線を超えてしまう描写は物悲しくもあり、人間の儚さも感じさせます。