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映画『ゴーン・ガール』の結末ネタバレ | 真骨頂は”人間ドラマ”に有

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2014年公開の『ゴーン・ガール』は、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』などを手がけた奇才デヴィット・フィンチャー監督の作品。公開されるとまたたく間に全米で大ヒット、10週連続TOP10入りという快挙。

本作では妻の失踪をベースに理想的な夫婦がゆるやかに崩壊していく様を描いています。ベン・アフレックが甲斐性なしの夫を演じるのもポイント。この記事ではあらすじネタバレや元ネタとなった実際の事件について解説していきます!!

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映画『ゴーン・ガール』について

『ゴーン・ガール』の基本ストーリーは「妻の失踪」というサスペンスですが、実際はサスペンス要素よりも「人間が持つ本性」を強く繊細に描いています。原作は2012年に発表された同名小説。

第52回NY映画祭で上映されたのち、北米で公開された初週には興行収入1位を記録したヒット作となりました。さらに米ローリングストーン紙の2014年映画ベスト5にランクイン。

冒頭から序盤までは謎解きで楽しませ、徐々に夫婦の問題を浮きぼりにしてサスペンス要素を減らす手法はデヴィット・フィンチャー監督ならでは。ブラッド・ピット主演の『セブン』や『ファイトクラブ』でも、サスペンス以上に人間模様や社会体制を色濃く描いています。

日本のレビューでは、「女を嫌な動物として描いていて気分が悪くなる」「非の打ち所がないすばらしい映画」と賛否両論の本作。どんな視点で観るかによって、自分の結婚観やジェンダー観が垣間みえるかもしれません。

『ゴーン・ガール』のネタバレあらすじ

出典:映画『ゴーン・ガール』予告編

結婚5周年をむかえた朝、妻エイミーはこつぜんと姿を消した。夫ニックは妻の捜索に奔走しながらも、身に覚えのない高額ショッピングの履歴やエイミーが書いた嘘のDV日記に困惑。警察やマスコミはニックに疑いの目を向けるが、それらはすべてエイミーの計画どおりだった。

回想では、だらしないニックにうんざりするエイミーが描かれる。自作自演で失踪したエイミーの本当の目的とは?そして用意周到なエイミーは目的を達成できるのか。出会った頃には理想的で幸せだったニックとエイミー。そんな2人の幸せが壊れたのは、夫のせいなのか妻のせいなのか。しかしラストはそんな考察がちっぽけに思えるほど、おそろしい顔を見せるエイミーだった。

ここからはネタバレ100%で『ゴーン・ガール』のあらすじを解説していきます。

【あらすじ①】面倒な記念日になるはずだった朝、妻が消える

ゴーン・ガール ネタバレ
出典:映画『ゴーン・ガール』公式Facebook

結婚5周年をむかえたエイミー(ロザムンド・パイク)とニック(ベン・アフレック)。容姿端麗でNYの裕福な家庭に育ち高学歴、現在はライターとして活躍するエイミーと、元ライターで現在はバーを経営するニックは一見「理想の夫婦」そのものとして映る。しかしニックはエイミーに対する愚痴をこぼし、記念日をめんどうに感じていた。

記念日の朝、エイミーの姿は無かった。室内には荒らされたようなあとがあり、すぐさま警察を呼ぶニック。ふたりの大きな家を見て回る警察官は、室内のところどころに小さな血痕があることに気づく。ニックは警察官に「エイミーは普段なにしてるの?これだけの経歴がある人でしょう」と聞かれるが、エイミーのことを何ひとつ知らなかった。

エイミーがふだん何をしているか、血液型すら答えられないニック。そしてニックは、NYにいるエイミーの両親を翌日の記者会見のために呼んだ。警察署での聴取を終えたニックは、家宅捜索で自宅を空けるため双子の妹・マーゴ宅へと帰宅。そこでもニックはまた、エイミーの愚痴をこぼしたのだった。

物語は同時進行でふたりの出会いまで遡り、パーティーで意気投合したロマンティックな思い出から描かれる。

【あらすじ②】ニックの駄目夫ぶりが明るみに

ゴーン・ガール ネタバレ
出典:映画『ゴーン・ガール』公式Facebook

ニックの家宅捜索中、警察官はあることに気づく。家の借主、車の所有者、カードや光熱費の支払い、さらにはニックの経営するバーを購入したのもエイミーだったのだ。もうひとつ家宅捜索では、下着の引き出しから「ヒント1」と書かれたカードが見つかった。

失踪翌日、ニックはNYから呼び寄せたエイミーの両親と記者会見を開いた。有名な絵本作家であるエイミーの母親は、娘の安否を案ずる気持ちをしっかりと伝え、ボランティアの捜索本部まで設けていた。一方、ニックは段取りも悪く、しどろもどろな記者会見に終わった。

記者会見終了後、警察署で両親とニックは事情聴取を受ける。そこでエイミーの母親はエイミーの元ストーカーについて言及。デジー・コリングス(ニール・パトリック・ハリス)はエイミーの高校時代の元彼。エイミーにふられたことを苦に自殺をはかり、その後は接近禁止令を受けていた。

さらにもうひとりの元彼からは暴行をうけたというエイミーの母親。しかしどちらも有力な手がかりとまではいかなかった。警察官は家宅捜索で見つかった「ヒント1」をニックだけに見せる。そのカードに指定されていた場所へ向かうと、そこには「ヒント2」のカードがあった。ヒントの数が増えていくと同時に、ニックはエイミーの策略にハマっていくのだった。

【あらすじ③】自作自演妻の本当の目的とは?

ニックには若い愛人がいた。採取された血痕からは、エイミーは何者かに鈍器で殴られていたことが判明。さらにエイミーと付き合いのあった隣人が、エイミーは妊娠していたと伝える。

警察は「ヒント」を追うたびに、ニックが高級なものを多数購入した履歴やエイミーの日記を見つける。そのなかには「ニックから暴力をふるわれていた」「万が一を考えて拳銃を買った」などと書かれている。

しかしそれらはすべて嘘。ニックの浮気や甲斐性の無さに嫌気がさしたエイミーが自作自演でニックを追い詰めるための罠だったのだ。警察はニックたちの自宅に争った形跡がないこと・エイミーに巨額な保険金がかけられていたことを不審に思い、ニックに疑いの目を向けはじめた。

ニックはエイミーの自作自演に気づき、かつてエイミーが暴行を受けたという元彼のもとへ向かう。予想通り、元彼もまたエイミーによって無実の罪を着せられていた。さらにニックの住むミズーリ州には死刑制度があることから、エイミーはニックを死刑に追い込もうとしていることにも気づく。

一方その頃エイミーは、髪を染め見た目を変えてモーテルに滞在するも、全財産を奪われたことによって計画が崩れてしまっていた。

【あらすじ④】世界一おそろしいハッピーエンド

ゴーン・ガール ネタバレ
出典:映画『ゴーン・ガール』公式Facebook

連日マスコミに追われ、今や全米に顔と名前が知れ渡ってしまったニック。弁護士と相談し、最悪の場合でもどうにか死刑だけは避けられるよう、「愛人がいた、自分がすべて悪い」とテレビの前で謝罪し、ひたすらにエイミーの無事を祈る。その会見の評判は上々で、それまで全米中が敵状態だったニックを応援する声があがりはじめた。

全財産を奪われて途方にくれたエイミーは作戦を変更。ストーカーとして接近禁止命令を出していたデジーのもとへと身をよせた。デジーは自分を愛してくれたと思い、エイミーをかくまうも、それもエイミーの罠。デジーが出かけたスキをねらい、エイミーは防犯カメラに映る位置で暴行された演技をし、着々と新しい作戦を決行させていたのだ。

そして失踪29日目、エイミーはデジーとのセックス中に、彼ののどをナイフで引き裂いた。血まみれのエイミーが向かったのはニックと暮らしていた家。警察からの事情聴取に、デジーに誘拐監禁されたと正当防衛を主張。当然、ニックはエイミーが殺したことに気づいていた。しかしニックはエイミーから離れられない。

なぜならマスコミはすでにふたりをハッピーエンドとして放送し、エイミーはニックが不妊治療で採取した精子を使い、本当に妊娠していたのだった。

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映画『ゴーン・ガール』のキャスト

ニック・ダン/ベン・アフレック

ゴーン・ガール ネタバレ
出典:映画『ゴーン・ガール』公式Facebook

主人公・ニックを演じたベン・アフレックは映画『アルマゲドン』や『バッドマン』など多くのヒット作品に出演する名俳優です。2011年には『ザ・タウン』で初監督・主演を努めています。さらに、その後2012年には通算三本目となる監督作品『アルゴ』が公開され、順風満帆な役者人生を歩んでいるひとり。

一方でプライベートではアルコール依存症の治療施設に入るなど、波乱万丈な一面も持っています。本作では、女性にも仕事にもだらしない夫ニックを熱演。

エイミー・ダン/ロザムンド・パイク

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出典:映画『ゴーン・ガール』公式Facebook

ホラー級の怖い女性・エイミーを演じたのはイギリス出身の女優・ロザムンド・パイク。学生時代から女優としてのキャリアを積んだ彼女は、2007年公開の『007』でボンドガールを努めました。本作ではアカデミー賞主演女優賞に初ノミネート。

また、音楽家の両親のもとに生まれ、エイミー同様に裕福な家庭に育った女性でもあります。『ゴーン・ガール』では非日常的な内容ながらも、多くの女性が結婚後に感じる憂鬱さを、繊細な表情で表現しています。

デジー・コリングス/ニール・パトリック・ハリス

ラストはエイミーに殺されてしまうデジーを演じたニール・パトリック・ハリス。米国の人気コメディドラマ『ママと恋に落ちるまで』にバーニー役で出演しています。

ドラマ以外にも、ブロードウェイミュージカルやアカデミー賞司会など、幅広いジャンルで活躍する注目度の高い俳優です。本作では元ストーカーをすこし不気味に演じ、新境地を開拓。

『ゴーン・ガール』を2倍楽しむ2つのポイント

ここからは、『ゴーン・ガール』をより楽しむ為のポイントを2つ解説していきます。

元ネタとなったスコット・ピーターソン事件

『ゴーン・ガール』は実際の事件をもとにしています。2002年のある日、妊娠8ヶ月となる妻・レイシーが失踪。夫・スコットは『ゴーン・ガール』のニック同様に妻を探しながらも疑いの目を向けられました。

愛人がいたところまで映画同様ですが、現実のレイシーは遺体で発見。胎児も死亡していたことから警察はスコットを二名の殺害容疑で逮捕。全米中が注目した裁判の判決は、有罪。しかしスコットは現在もなお、服役しながら無実を訴えているのです。

現実に起きて被害者遺族もいる事件ですので軽はずみな推測はできませんが、真相だけは気になるところ。ちなみに『ゴーンガール』の原作者であるギリアン・フリン氏は、映画『ゴーン・ガール』について、原作とのズレがあることも指摘しています。

「実話がもと」ではありますが、フィクションとして楽しむべき作品かもしれません。

どの視点で鑑賞すべきなのか

失踪した妻の行方を追う、というストーリーから『ゴーン・ガール』は一見サスペンスのような印象の映画です。事実、映画のジャンルとしてもサスペンス。しかし実際は映画の序盤で謎が解けはじめるため、「謎解き」としてのサスペンス要素はきわめて薄い映画といえるでしょう。

さて、それでは『ゴーン・ガール』はどのように楽しむ映画なのか?これはそれぞれの視点によって違うのではないでしょうか。「妻」、「夫」視点で『ゴーン・ガール』を観た場合、エイミーの「(あなたは)わたしが演じた女性を愛した」という言葉が響くかもしれません。これは本作のなかでも印象的といえるシーンで、結婚とは夫婦が役割を演じきることだとエイミーは言います。果たして自分は夫に、妻に、本当の姿を見せて生きているのだろうか?そして相手の姿は本当のモノなのだろうか……。

ニックとエイミーの結婚当初は、まちがいなく幸せな夫婦。しかしふたりの結婚生活は、ニックの浮気や甲斐性のなさ、エイミーの自己顕示欲の強さがあらわれるとともに、ゆるやかに崩壊していきます。きっと現実も、突然崩壊するなんてことはなく、ゆるやかに壊れていくもの。そういったリアリティがこの映画を面白くしている部分でもあります。

「視聴者」視点で『ゴーン・ガール』を観た場合、わたし達がいかに面白おかしく、日々起きている事件を好奇の目で見ているかに気づかされるでしょう。作中では、ワイドショーの司会者が手のひらをコロコロと変えてニックにインタビューをする描写があります。

エイミーの行方が分からなかった時には責め立て、エイミーが戻ったとたんに理想の夫婦として近づくのです。「真相」など誰にも分からないこと……、ましてや夫婦間のことなど極めてプライベートで外側からは見えないことだらけ。

テレビをとおして見ている事件には、『ゴーン・ガール』のようにさまざまなストーリーが隠されているのです。

『ゴーン・ガール』エイミーという人間を考察


出典:映画『ゴーン・ガール』公式Facebook

主人公夫婦の人生を翻弄する舵をとっているのは、妻エイミー。そして映画そのものも、エイミーの動きによってスピーディーな怒涛の展開をみせてくれます。
この「エイミー」という人間を考察するのが、本作の楽しみ方のひとつ!

①序盤:共感をえやすい女性像

映画の序盤でエイミーは、恵まれた人生を歩みながらも、母親の束縛や世間のジェンダー観に疑問を感じ、そんななかで出会った「自分を理解してくれる(と思った)」男性ニックに惹かれます。

結婚してからのニックは、エイミーへの愛は消え失せているのにも関わらず、資産家であることを理由に決して別れる素振りは見せません。そんな決して良い夫とはいえないニックに愛想をつかす以上に「憎しみ」を覚えはじめるエイミー。

ここまでは、多くの女性が共感し、男性でも寄りそうことができる女性像です。

②中盤~ラスト:異常性があらわになる

物語が中盤にさしかかるころ、エイミーは普通とはちょっと違う顔を見せはじめます。エイミーは残した日記のなかで、ニックに対して「別人を演じてくれて幸せだったのに、願い下げの男になった」と書き、夫婦とは役割を演じることと主張。

そもそもエイミーは結婚に愛など求めていなかったのかも?と思わせます。そして映画が進むにつれ、エイミーがいかに用意周到にニックを陥れる作戦をたてていたかが分かる展開に。

このあたりから、エイミーの異常性が強く描かれるのです。物語中盤では、元彼による暴行もエイミーの罠、ニックにいたっては死刑にまで追いこむつもりのエイミー。もはや観客に「共感」はありません。

クライマックスでは元彼を惨殺し、何食わぬ顔でニックのもとへ戻る。そしてエイミーが殺人をおかしていたと気づき怯えるニックに、陽性の妊娠検査薬をつきつける……。エイミーは決して普通ではない感覚と思考回路を持った人物です。

しかしエイミーの異常性が強くなるにつれて、ニックの子どもっぽさも強調して描かれ、観客が持つエイミーのイライラへの共感は継続します。そういったバランスから、異常な女性であっても、どこか自分と通じてしまう部分があるのがエイミーです。

③エイミーと母親

いったい何が彼女をこんな人物へと育てたのか?

そのカギは、エイミーの母親にあります。人気絵本作家であるエイミーの母親は、エイミーをモデルにした絵本でヒット作を出していました。しかし絵本のなかのエイミーと、実際のエイミーの生活は、まったく異なるもの。

自由で可愛い絵本のなかのエイミーに対し、現実のエイミーは厳しい母親のもとで成長したのです。観客の目にエイミーの母親は、いわゆる’毒親’としてうつります。本来は無償性をもつ「自己実現欲求」が歪んであらわれているようにも見えるエイミーですが、その裏にある成長過程を想像してしまうでしょう。

まとめ

デヴィット・フィンチャーの代表作『ゴーン・ガール』。サスペンスから人間ドラマへと変貌する構成は、さすが!妻の怖さはホラー級ですが、夫の情けなさに笑ってしまう部分も。’結婚は墓場’を映像化した作品です!

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アルファ

滋賀県在住、高卒から映画ひとっとび専属ライターになりました。 親の影響で映画が好きになり、特にアクション系が大好き。 特にトム・クルーズとキアヌ・リーブスは私のマイヒーローです!