【ネタバレ解説】実はジブリではない!?『風の谷のナウシカ』【考察】
80年代に公開されて以来、長きにわたって愛される長編アニメーション映画『風の谷のナウシカ』。ただ面白いだけのファンタジー作品ではなく、社会に訴えかける風刺的な部分があることでも知られています。
あまりきちんと観たことがない、小さな頃に観て内容を忘れている方は、ぜひこの機会に観返すことをおすすめします。美しい映像やきめ細やかなストーリーだけではなく、現代社会に通ずる”何か”にハッとさせられるかもしれません。
この記事では、そんな『風の谷のナウシカ』のあらすじと解説を行っていきます。ネタバレを含みますので、未鑑賞の方はくれぐれもご注意くださいね!!
目次
実はジブリじゃない!?『風の谷のナウシカ』について
たいへん有名な『風の谷のナウシカ』ですが、公開は1984年ととなりのトトロより4年ほど古い作品なことをご存じでしたか?ついついスタジオジブリ制作のアニメーションだと思われがちなのですが、実は違うのです。製作はトップクラフトで、後にスタジオジブリ設立に伴い改組された会社なんだそう。
ただし本作の監督は宮崎駿氏、スタッフに高畑勲、鈴木敏夫など、スタジオジブリではおなじみのスタッフばかり。現在ではBlu-rayなどで『ジブリがいっぱいコレクション』の一つとして扱われていることから、ナウシカ=ジブリと思っている人が多いのです。
そして本作には原作の漫画があり、アニメ雑誌『アニメージュ』で過去に連載されていました。作者はもちろん宮崎駿氏で、1982年から1994年と長きに渡って連載が続いたのだとか!(※一時期は休載もあったようです※)コミックスは全7巻で、映画はちょうど2巻くらいまでの内容を描いています。原作と映画は設定や展開に相違がありますので、見比べてみるとより面白さが倍増することでしょう!
1分で分かる『風の谷のナウシカ』のあらすじ
出典:ディズニー・スタジオ
1000年前の戦争によって文明は崩壊。人間たちの暮らす地球は「腐海(ふかい)」と言われる毒が発される森に覆われ、恐ろしき巨大な蟲があちこちにいる状態へ陥っていました。腐海と蟲の恐怖におびえながら暮らす人間たち、それでも戦争が完全に収束することはなかったのです。
そんな中でも主人公・ナウシカの住む「風の谷」は比較的に穏やかで、自然の脅威には晒されていない平和な場所でした。それでも腐海の犠牲となった人間もおり、決して油断の出来ない状況が続いています。
そんな中、トルメキア帝国の船が現れ風の谷へと墜落していった。船には大量の蟲がこびりついており、腐海の胞子を吸ってしまえば犠牲者がまた増えてしまう。急いで行動に移す風の谷の民だが、トルメキア軍は何かを目論んでいるようで……。
『風の谷のナウシカ』のネタバレあらすじ
それではこれより、『風の谷のナウシカ』をネタバレ含めて紹介していきます。まだ観たことがない方はご注意ください!
【あらすじ①】戦争がもたらした爪痕
かつてこの世界は「炎の7日間」とよばれる大戦争により、1000年前に産業文明は崩壊していた。地球上のほとんどは有毒性の瘴気を発する森「腐海」に覆われ、森の中は大きな蟲がぞろぞろとはびこっている。
主人公のナウシカ(島崎須美)は腐海の謎を暴くべく、森の中へ入り、植物たちの胞子の採取をしていた。瘴気を吸い込めば5分で肺が腐り果ててしまうため、マスクが必須なのである。しかし有毒性の胞子、そして「腐海」という恐ろしいネーミングでありながら、森はとても美しかった。
美しさに身を任せていると、突然銃声が聞こえる。ナウシカは誰かが蟲に襲われているのだとすぐに察知し、助けに行くと、襲われている人間はユパ(納谷悟朗)という彼女の師匠であった。彼もまたナウシカ同様、腐海の謎を解き明かすべく動いている人間の一人だ。久しぶりに旅から帰った来たことを喜ぶナウシカは、その気持ちをユパへと伝える。
彼女の成長をしかと受け止めたユパは、ナウシカへキツネリスのテトを譲った。最初は凶暴だったテトも、すぐに彼女へとなついたのだ。蟲や動物とも心を通わせることが上手であるため、ユパは彼女から特別なものを感じ取っていた。
旅から帰宅した彼はナウシカの父・ジル(辻村真人)に会うも、毒の影響は尾を引いていた。ジル自身も自分が生き永らえないことは分かっており、ユパに側にいて欲しいと本音を明かす。だがユパは立ち止まるつもりもなく、風の谷の大ババ(京田尚子)も「彼は探し求める運命を持った男だ」と言い、旅を引き留めることはなかった。
【あらすじ②】トルメキア軍の襲来
風の谷は瘴気の毒に侵された人間こそいるものの、自然の脅威からはやや離れているため比較的に平和な方だった。しかし夜中に突然、トルメキア帝国の大型船が風の谷へと墜落する事件が発生する。船には腐海をはびこる巨大な蟲がはりついており、このままでは胞子が舞い最悪の事態が待っている。平和だった風の谷は、一夜にしてパニック状態に陥ってしまう。
一方でナウシカは墜落した船の中から、一人の若い女性を助け出す。都市国家であるペジテ市の王女・ラステル(富永みーな)はすでに瀕死状態で、会話をするのも精いっぱいであった。小さな声で「積み荷を燃やしてほしい」と頼むラステル、そしてそのまま息を引き取ってしまった。
そして船の墜落を耳にしたトルメキア帝国の軍が、風の谷へと侵入してくる。父・ジルを殺し、大ババまで追い詰められている状態。ラステルを看取ったナウシカはすぐさま父の元へ駆けつけるも、時すでに遅し。怒りに打ち震えた彼女は父を手にかけた軍人を次々と殺害。しかしユパの体を張った制止によって、ナウシカは正気を取り戻し手を止めた。
トルメキアの皇女・クシャナ(榊原良子)は巨大帝国を創り上げることが目的だった。更にはペジテの地下には1000年前から眠っている「巨人兵」がいるそうで、これによって腐海を焼き払おうという計画である。ナウシカと風の谷の長老4人はトルメキアの捕虜となり、ペジテへ共に向かうことになってしまう。相手の言うことに従わなければ、このまま死者が出続けて大戦争にまで発展する可能性も高かったからだ。ナウシカはこれ以上死者を出さないためにも、首を縦に振る。
ユパが心配して、旅立つ前日にナウシカの元を尋ねた。すると彼女は地下に秘密の部屋を持っており、そこでは腐海から採取した胞子を利用して、植物を栽培していた。腐海の植物であることから驚くユパだが、綺麗な水や土さえあれば有毒性がないと言う。人々を苦しめているのは何も瘴気ではなく、我々の暮らす土が原因だったのだ。
【あらすじ③】捕虜となったナウシカと人質は……
ナウシカと人質の長老たちは、トルメキアの船に乗り込むも、早々にペジテ市の王子・アスベル(松田洋治)の襲撃に遭いあっさりと墜落してしまう。なんとかナウシカの活躍にて死人はでなかったものの、蟲たちの巣へと辿り着いてしまった。瘴気も強くマスクがなくては通用しないような場所だったのだ。
一方で襲撃をしたアスベルも、蟲たちに襲われていた。ナウシカは彼が放っておけずに助けに行くと、蟲の尾にあたってしまい、腐海の奥底へと堕ちてしまった……。地の底は想像とはまるで違い、綺麗な土や水でマスクがなくとも肺が腐らない美しい場所だったのだ。腐海の植物は何も人間に危害を与えたいわけではなく、人々の汚した土地を綺麗にしてくれていたことを知る。蠢いていた巨大な蟲たちも、森を守るべく活動していたのだ。
その事実を知ったナウシカは、自分の地下で行っていた実験が間違っていなかったことを悟る。あまりの嬉しさに、アスベルの前で涙を流してしまったほどだ。
地の底で睡眠をとり、アスベルと共にペジテへ向かう。しかしペジテ市は蟲によって浸食されており、変わり果てた姿になっていた。実はペジテの生き残った民は巨神兵をトルメキアから取り戻すため自ら都市をこの状態にし、風の谷も襲わせようとしていたのである。それを防ぐべくすぐさま行動に移そうとするナウシカだが、ペジテの民によって捕らわれてしまう。
だがアスベルは彼女の考えに賛同したため、手をまわしてナウシカを逃がすことに成功。そして風に乗って、谷へと急いで向かうのだった。風の谷は胞子が舞い上がっていて、非常に危険な状態。そしてトルメキアとの争いまでもが勃発していたのだ!
【あらすじ④】風の谷、そして人々の運命は?
トルメキアと争う風の谷だが、遂に王蟲の大群が向かっているとの情報が入りこむ。焦った人々は戦いを一時中断、安全な場所へと非難する運びとなる。
一方でナウシカは傷ついた幼蟲を見て大激怒。なぜなら風の谷を襲わせるために、蟲を怒らせるよう幼蟲を犠牲にしたからだ。ナウシカはこの蟲を助けるべくたった一人で戦っているも、蟲たちの勢いは止まらない。クシャナもまだ未完成である巨神兵を使って蟲へ対抗するも、歯が立たなかった。
幼蟲は傷ついた体で仲間の元へ向かおうとするが、彼らは酸が充満した海の向こう側にいるのである。「傷ついているのにここに入ってはダメ」と全身を使って蟲を止めるナウシカ、すると彼女の片足は酸の海に浸かり、負傷してしまう。苦しむナウシカを見て、幼蟲はなんと彼女を心配する動きを見せた。そんな様子を見ていたペジテの民に、ナウシカはある要求をする。「私とこの子を、蟲の大群の前に降ろして」と。
風の谷も絶体絶命のピンチに陥った矢先に、ナウシカと幼蟲は大群の前へと降りていった。その途端蟲の勢いは止まり、赤い目から穏やかな青色へと変化していったのだ!しかしナウシカの姿は見当たらず、人々は「あの子が体を張ったから谷は守られた」と泣き始める。
しかしナウシカは生きていた。王蟲は自身の脚を使って彼女の体を天へと掲げると、傷はみるみるうちに癒えていき、目を覚ます。とても元気そうな様子で蟲たちとも分かりあい、風の谷に言い伝えにあった「そのもの青き衣をまといて金色の野に降り立つべし」という言葉の通りになったのである。
蟲たちは元の場所へと帰り、トルメキア軍も谷から撤退。再びこの地に平和が訪れるのであった。
『風の谷のナウシカ』の登場キャラクター
ナウシカ役:島崎須美
元気いっぱいで動物にも人間にも優しい、正義感溢れる少女・ナウシカ。風の谷では「姫さま」「姫ねえさま」と親しまれており、人々から愛される存在です。風使いとしての力を持ち、メーヴェという乗り物を自由自在に乗り回すカッコいい一面も。心から自然や人間と寄り添う彼女の姿は、我々も学ぶものがたくさんあるでしょう。ナウシカの真っすぐで素直な人間性がすべてを救ったと言っても過言ではありません。
ナウシカ役を担当するのはベテラン声優の島崎須美さん。宮崎駿監督の作品には多数出演しており、『カリオストロの城』や『もののけ姫』、『となりのトトロ』でもおなじみですよね。また『それいけ!アンパンマン』のしょくぱんまん役など、少女だけでなく幅広い役を演じています。
ユパ・ミラルダ役:納谷悟朗
ナウシカ同様、人々の信頼が厚いユパ。ジルの友人であり、ナウシカに剣術を教えた恩師でもあります。非常に冷静な人物で、我を忘れてトルメキア軍を殺害したナウシカを土壇場でなだめるなど、器の大きさが何よりの魅力です。
ユパ役を担当するのは『ルパン三世』銭形警部の声でおなじみ、納谷悟朗さんです。残念ながら2013年に息を引き取られたのですが、出演した作品はどれもビッグネームばかり。ちなみに声優の納谷六朗さんは、実の弟なんですよ!
アスベル役:松田洋治
物語の中盤から登場するアスベルは、ペジテ市の王子。序盤で船の墜落により死亡したラステルは彼の双子の妹で、ナウシカが彼女を看取ったことに対して感謝の言葉を述べていました。最終的にはナウシカの支援に回り、彼女にトコトン手を貸します。
アスベル役は松田洋治さんが担当し、俳優兼声優として活動を続けています。『もののけ姫』のアシタカ役も、松田さんが演じているのを知っていましたか?吹き替えなど幅広い活躍をされているため、どこかでお見かけてしている方は多いかもしれません!
『風の谷のナウシカ』の知られざる秘密3つ
本作は大人も楽しめるファンタジー映画となっていますが、宮崎作品は後から知ると面白い豆知識や、隠された裏設定、そして密かな謎が作品のあちこちに散りばめられています。今回は『風の谷のナウシカ』がもっと楽しめるようなトリビアや豆知識をご紹介致します。
秘密その①ラステルの胸元には一体何が?
トルメキアの船が墜落した後、ナウシカは瀕死状態のラステルを救出しに行きます。その時彼女の胸元を開き、衝撃を受ける表情を浮かべたのに疑問を抱いた人も多いはず。実際にラステルの胸元が映し出されることはなく、実際には何があったのかハッキリと解明されていません。
ファンの間では様々な憶測が飛び交い、公開から数十年が経過した今も議論が続いています。「瘴気によって肺が驚くほど汚れていた」「墜落時のダメージが大きかった」「トルメキア軍より拷問を受けていた」などなど。確かに彼女は人質に取られていたので、体を傷つけられていた可能性も高いですし、毒によって侵されていた説も一理あるでしょう。
宮崎監督はケガという説でファンに説明をしたそうですが、それが墜落時に負ったものかは分かりません。もしかするとラステルには、作中に描かれていない壮絶な体験があるのかも……。
秘密その②ナウシカは社会風刺である作品?
『風の谷のナウシカ』は人の手によって毒と化した植物たちや、人同士の分かり合えない深刻な状況を描くなど、現代人の私たちにはハッとさせられることばかり。「蟲と人は共存できない」と一方的に幼蟲と引き離されてしまい、心優しきナウシカが涙を浮かべるシーンも忘れることはできません。
「蟲だから囮に使ってもいいだろう」「心を通わせる前に殺してしまう」など、理解しようとしない人々の姿勢に、ナウシカは徹底的に反発をするのです。最終的に王蟲は正面から向き合ってくれた彼女を助けました。つまり”心を向き合わせればお互いは分かり合える”、”共存することも可能だ”という意味が含まれているのでしょう。人種差別や戦争が止まない社会へ訴えかける、強いメッセージ性を感じます。
そして人間のせいで毒となってしまった植物も、綺麗な水や土さえあれば美しく育てられることをナウシカは証明していました。こちらも環境問題へ対する訴えであるため、非常に社会風刺であることがよく分かる作品でしょう。
秘密その③ナウシカがナイスバディなワケ
ちょっぴりヨコシマな目線になってしまうのですが、ナウシカの胸が大きいことに気づいた人はいませんか?(笑)彼女の年齢は16歳ですが、動き回る姿を見ているととってもナイスバディですよね。「アニメのキャラクターをヨコシマな目で見てしまった!」とショックを受ける必要はありません!実は宮崎監督のこだわりがつまった設定なのです。
気になる人がたくさんいるように、胸を大きく描いたのはわざとなんだそう!実際に監督はインタビューで「あれは風の谷のオジさんや、おばあさん達が死んでいくのを抱きとめるための胸。だから大きくなくちゃならない。抱きしめた時に安心して死ねるような大きさじゃないと」と自ら語っているのです。
決して性的な意味だとか、赤ちゃんにミルクをあげるためではない。心の広いナウシカだからこそ、色々な人を抱きとめてあげられる大きな胸が必要と考えた結果、あのスタイルになったそうです。
『風の谷のナウシカ』のネタバレまとめ
大人も子供も楽しめる『風の谷のナウシカ』。何度も観てもナウシカの元気な姿に勇気をもらえるはずです。社会問題にも訴えかける姿勢には思わずジーンときてしまうので、一人でじっくり考えながら鑑賞するのも良いですね!
80年代の作品ではありますが、古臭さは一切感じません。それに風の谷の風景を観ているだけで、ナウシカがどこかへ連れていってくれそうな解放感さえ覚えるほど!
一人でも、お友達とでも、家族とでも楽しめる作品です。一度観たことがある方でも、ぜひ本作の世界にまた触れてみてくださいね!
優しくて、奥深い。ジブリ映画『風の谷のナウシカ』名言特集