リヴァー・フェニックスの生涯を、出演映画10作と共に振り返る|壮絶な幼少期を過ごした彼の本当の最期は…
美しさに目を奪われ、演技力に心を奪われる。リヴァー・フェニックスは特別な存在感を放つ俳優でした。
彼が若くして亡くなった時の衝撃は、さぞ大きかったことでしょう。筆者は彼の死後に生まれたため、その当時を体験していません。それでも、画面の中で輝くリヴァー・フェニックスを見ていると、世間の反応は想像できます。
当時のリヴァー・フェニックスを知っている方もいれば、名作映画『スタンド・バイ・ミー』で彼の存在を知っている方、そして、彼を知らないという方もいるはず。彼の死から、もう四半世紀以上が経っているのですから。
本記事では、リヴァー・フェニックスの人生の一部と、おすすめの出演映画10本をご紹介したいと思います!
リヴァー・フェニックスのプロフィール
リヴァー・フェニックスは、本名リヴァー・ジュード・フェニックス(River Jude Phoenix)。1970年8月23日にアメリカ・オレゴン州に、5人兄弟の長男として生まれました。
出生時はリヴァー・ジュード・ボトムという名でしたが、1977年に新しい人生へ再生するという意味を込め、家族の本姓を死んでも蘇る不死鳥「フェニックス」に変更しました。
10歳の時に初めてテレビに出演したのち、広告やドラマ「Seven Brides for Seven Brothers(原題)」などへの出演を経て、1985年、15歳の時にSF映画『エクスプロラーズ』でスクリーンデビュー。翌1986年に『スタンド・バイ・ミー』に出演して注目を集めて以降、スターへの道を駆け上がっていきます。
しかし1993年、人気絶頂の中、23歳の若さで突然この世を去りました。
過酷な家庭環境で育ったリヴァー・フェニックス
リヴァー・フェニックスは特殊な家庭環境で育ちました。そんな幼少期を振り返ってみます。
宗教に傾倒する両親のもとに生まれる
出典:映画『Running On Empty』公式Facebook
※写真は映画『旅立ちの時』(1998年)より
カトリック教徒の父と、ハンガリー系=ロシア系正統派ユダヤ教徒の母の間に生まれたリヴァー・フェニックス。
彼が誕生したのは、ヒッピーが集団で暮らすボロボロの小屋の中でした。両親は当時、貧しいヒッピー生活を送っていたのです。その頃、多くのヒッピーは「精神を解放するため」などの理由でドラッグを積極的に使用しており、両親もLSDなどのドラッグにはまっていたと言います。
その後、両親はドラッグをやめるために彼を連れてカルト宗教団体「神の子供たち」に入信。それによってリヴァー・フェニックスは、南アメリカの各地を転々とする幼少期を過ごすことになったのでした。
初等教育を受けられなかった彼は、読み書きはできるものの文章の意味を読み取ることができず、歴史や文学の知識もまるでなかったとエージェントが証言しています。
宗教団体「神の子供たち」について
「神の子供たち」は、“セックス・カルト”とも呼ばれる悪名高きカルト宗教団体でした。教団に入信させられた子どもたちは、「古い道徳観からの解放」として日常的に大人たちに性的に虐待されていたのです。
リヴァー・フェニックスは1991年の雑誌インタビューで、自身も4歳の時にレイプされて童貞喪失をしたこと、「でも、それをさせないようにブロックしてきた」(Details)ことなどを告白をしています。
また、1994年に雑誌『エスクァイア』は「あいつらは気持ち悪い…あいつらは人の人生を駄目にしている」と彼が教団について話していたと言った母親の言葉を引用しました。
弟は『ジョーカー』俳優、ホアキン・フェニックス
出典:Amazon
リヴァー・フェニックスの兄弟たちも芸能界に入っており、弟は俳優として成功しているホアキン・フェニックスです。ホアキンは1982年にリヴァー・フェニックスが出演していたドラマで俳優デビューしました。
2000年の『グラディエーター』、2005年の『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』、2012年『ザ・マスター』でアカデミー賞にノミネート。そして、2019年の『ジョーカー』でアカデミー主演男優賞をはじめ数々の賞を総なめにしました。
ホアキンは、2020年に妻で女優のルーニー・マーラとの間に生まれた息子に“リヴァー”の名を授けています。
23歳で死去したリヴァー、その死因とは?
※画像は映画『愛と呼ばれるもの』(1993年)より
リヴァー・フェニックスが亡くなったのは、1993年10月31日、ハロウィンの夜。死因は薬物の過剰摂取による心不全でした。
その日彼は弟ホアキン、姉レイン、恋人だったサマンサ・マシスらとともに、当時ジョニー・デップが所有していたハリウッドのナイトクラブ「ザ・ヴァイパー・ルーム」を訪れていました。
その入り口付近で倒れているのが発見され、ホアキンがパニックになりながらも救急隊員に通報。搬送時には、親友だったロックバンド「レッド・ホット・チリ・ペッパーズ」のメンバーであるフリーが救急車に同乗し、最期を看取ったそうです。
リヴァーの身体から検出されたのは致死量の8倍のコカインと、4倍のヘロインやマリファナ、バリウム、エフェドリンでした。
リヴァー・フェニックスの人生とともに振り返る、出演作品おすすめ10本
もう新作映画を見ることはできないリヴァー・フェニックスですが、彼の出演作品は輝き続けています。出演作品おすすめ10本を紹介しますので、ぜひ気になる作品から視聴してみてください。
1.子役デビュー作『エクスプロラーズ』
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あらすじ
コンピューター回路の中を飛ぶ夢を見たベン(イーサン・ホーク)は、その回路をスケッチして親友の天才少年ウォルフガング(リヴァー・フェニックス)に渡した。ウォルフガングがベンのスケッチをコンピュータにプログラムしてみると、謎の光の球体が現れ……。
リヴァー・フェニックスの見どころ・逸話
1985年に公開されたこのSFアドベンチャー映画で、リヴァー・フェニックスは『ガタカ』(1997年)のイーサン・ホークとともに映画デビューを果たします。
同じ1970年生まれの2人はこの作品で出会い、オーディションなどで役を争うこともあったものの、リヴァー・フェニックスが亡くなるまで親友でした。そんな2人が一緒に見られる貴重な作品ですよ。
CG技術発展前の85年の作品なのでチープな演出が多いですが、古いアドベンチャー映画が好きな方ならハマるはずです!
2.『スタンド・バイ・ミー』
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あらすじ
1959年、オレゴンの小さな町。文学少年のゴーディ(ウィル・ウィートン)、頭のいい少年クリス(リヴァー・フェニックス)、眼鏡のテディ(コリー・フェルドマン)、ノロマな肥満児のバーン(ジェリー・オコンネル)の4人は、いつもつるんでいた。
ある日、行方不明になった少年が列車に轢かれた死体が野ざらしになっていると知る。死体を発見すればヒーローになれると思った彼らは、線路を辿って冒険に出ることに。その2日間は、少年たちの心に忘れられない思い出を作るのだった……。
愛され続ける名作映画『スタンド・バイ・ミー』のネタバレ解説|原作との違いやキャスト紹介も!リヴァー・フェニックスの見どころ・逸話
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1986年公開、スティーヴン・キングの同名小説を原作とした、「青春映画の金字塔」とも呼ばれる名作映画です。メインキャスト4人のうちの1人を演じたリヴァー・フェニックスは、他の3人とともに一躍人気子役になりました。
原作者スティーヴン・キングの子供の頃の実体験から生まれたという物語ですが、クリスというキャラクターは、リヴァー・フェニックス本人とどこか重なります。
リヴァー・フェニックスは撮影で泣く演技がうまくできず、ロブ・ライナー監督が「尊敬する大人が実は嘘つきで、君を裏切ったらどう思うか想像してみて」とアドバイスすると、彼はカメラが止まっても涙が止まらなくなってしまいました。ライナー監督はしばらく彼をハグしたていたそうです。
3.『リトル・ニキータ』
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あらすじ
両親に内緒で空軍士官学校に入学願書を出した高校生ジェフ(リヴァー・フェニックス)。それにより、FBIのロイ(シドニー・ポワチエ)は彼の両親の身辺調査を行い、2人がKGBの潜入スパイ=スリーパーであることを知る。
ロイはジェフに協力を要請。両親がスパイであり、自分の本名が「ニキータ」であることを知ったジェフはショックを受ける。やがて彼はスパイ線に巻き込まれていき……。
リヴァー・フェニックスの見どころ・逸話
1988年公開のスパイ・アクション映画。リヴァー・フェニックスは主演を務め、黒人男優として初めてアカデミー主演男優賞を受賞したシドニー・ポワチエと共演しています。
ストーリーやアクションはやや地味ですが、悩める青年役がよく似合うリヴァー・フェニックスの魅力を堪能できますよ。
4.『旅立ちの時』でアカデミー助演男優賞ノミネート
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あらすじ
大好きな両親と仲の良い弟を持つ17歳の少年ダニー(リヴァー・フェニックス)は、大きな秘密を抱えていた。60年代に反戦活動家だった両親は、テロリストとしてFBIに指名手配されてるのだ。
そんなダニーは音楽教師にピアノの才能を認められ、その娘のローナ(マーサ・プリンプトン)と心を通わせていく。しかしそんな中、一家を窮地に追い込む事態が発生する……。
リヴァー・フェニックスの見どころ・逸話
出典:映画『Running On Empty』公式Facebook
『リトル・ニキータ』と同じ1988年に公開された、感動の青春ドラマ映画です。『オリエント急行殺人事件』(1974年)の名匠シドニー・ルメット監督、リヴァー・フェニックス主演。
やはりどこか彼自身と重なる役どころの少年ダニー。影のある少年がハマり役だったリヴァー・フェニックスは、アカデミー賞やゴールデングローブ賞の助演男優賞にノミネートされました。
ダニーがピアノを弾くシーンでは音こそ吹き替えられているものの、リヴァー・フェニックスは指の動きを全て覚えたそうです。また、ヒロイン役のマーサ・プリンプトンとは一時期実際に交際していたリアルカップルでした。
5.『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』
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あらすじ
1938年。インディ(ハリソン・フォード)の宿敵ナチス(マイケル・シェアード)が舞い戻り、イエス・キリストの聖杯の発見のため、聖杯の権威であるインディの父親であるヘンリー・ジョーンズ教授(ショーン・コネリー)をさらった。
インディは行方不明になった父親を探して冒険へと立ち上がる!
映画『インディジョーンズ』シリーズの見る順番をあらすじ・見どころをまとめて紹介!リヴァー・フェニックスの見どころ・逸話
出典:映画『Indiana Jones』公式Facebook
1989年に公開された、製作総指揮のジョージ・ルーカス原案&スティーヴン・スピルバーグ監督による「インディ・ジョーンズ」シリーズの第3作目です。
この大人気シリーズでリヴァー・フェニックスは、少年時代のインディ・ジョーンズを演じています。彼のシーンにより、インディがなぜあの服装になったのかなどの重要な過去が明かされました。
ハリソン・フォードは、『モスキート・コースト』(1986年)でリヴァー・フェニックスと共演しており、シリーズ初の若いインディを演じる俳優としてリヴァー・フェニックスを指名しています。
6.『殺したいほどアイ・ラブ・ユー』
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あらすじ
ワシントン州タコマでピザ屋を営むジョーイ(ケヴィン・クライン)には、長年連れ添っている妻のロザリー(トレイシー・ウルマン)がいる。働き者の良い夫だが、ジョーイは女たらしで浮気するのが日課。
そんな中、ついに夫の浮気を目撃したロザリーは夫の殺害を企てるが……。
リヴァー・フェニックスの見どころ・逸話
1990年に公開されたこの映画は、1984年に実際に起きた衝撃の実話をもとにしたブラックコメディです。
すっかり大人っぽくなったリヴァー・フェニックスは、ピザ屋のアルバイトでロザリーに密かに恋をする青年ディーヴォを演じています。公開当時19歳の長めの金髪のリヴァーが、とにかく美しいのです。
リヴァー・フェニックスはこの作品で、特に親しい親友だったと言われているキアヌ・リーブスと初共演しました。
7.『マイ・プライベート・アイダホ』
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あらすじ
ストリートで男娼として生きる青年マイク(リヴァー・フェニックス)は、男性を相手に体を売って日銭を稼ぐ日々を送っていた。ある日マイクは行方不明の母親を探すため、男娼仲間のスコット(キアヌ・リーブス)とともにバイクに乗り、兄リチャード(ジェームズ・ルッソ)が暮らすアイダホへ向かう。
スコットはマイクとは対照的に裕福な生い立ちだが、マイクは彼に密かに想いを寄せていた。
リヴァー・フェニックスの見どころ・逸話
出典:Amazon
1991年公開の青春映画です。リヴァー・フェニックスとキアヌ・リーブスのW主演。売春や同性愛などを取り上げつつ、鬼才ガス・ヴァン・サント監督の手腕により、若者の切ない哀しみを美しく描かれました。
危ういほどの美しさを放ちながらマイクを演じた彼の演技は、心に消し去ることのできない痛みを残します。リヴァー・フェニックスはヴェネツィア国際映画祭で主演男優賞を受賞しました。
この頃から嫌気がさしたのかハリウッドを離れ始めたリヴァー・フェニックス。過激な内容のインディーズ映画である本作への出演を反対するエージェントを押し切って出演しています。
【2023最新】多彩なキアヌ・リーヴスの出演映画おすすめ21選 !8.『スニーカーズ』
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あらすじ
ビショップ(ロバート・レッドフォード)は、警備システムの盲点を調査するハイテクプロ集団「スニーカーズ」のリーダー。学生時代は違法なハッキングをして指名手配されているが、素性を隠していた。
そんなある日、NSA(アメリカ国家安全保障局)を名乗る男たちの依頼で、違法な仕事をせざるを得なくなった彼ら。あるものを盗み出すが、それはなんと「どんなコンピュータにもアクセス可能なチップ」だった……。
リヴァー・フェニックスの見どころ・逸話
1992年に公開されたクライム・アクション映画。リヴァー・フェニックスは、「スニーカーズ」のメンバーでコンピューターハッカーのカール・アボガストを演じました。
『リトル・ニキータ』で共に主演を務めたシドニー・ポワチエと再び共演しています。
彼は前年の『マイ・プライベート・アイダホ』で精神的に辛い役を演じたため、ストレスの少ない役を演じたかったというのが、本作に出演した理由のひとつだったとのこと。
後半では彼が活躍する姿も見られます!気持ちをどんよりさせたくない時は、『スニーカーズ』がおすすめです。
9.『愛と呼ばれるもの』
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あらすじ
テネシー州ナッシュビル。カントリー歌手を目指しているミランダ(サマンサ・マシス)は、ニューヨークからオーディションを受けるためにこの街にやってきたが、遅刻して受けられなくなってしまう。
地元のライブハウス・カフェで働くことになり、そこで同じ夢を持つジェームズ(リヴァー・フェニックス)と出会う。また、女優志望のリンダ(サンドラ・ブロック)、カウボーイ・ハットのカイル(ダーモット・マローニー)とも知り合い、友情を深めていく。
リヴァー・フェニックスの見どころ・逸話
1993年7月に公開された本作は、リヴァー・フェニックスの生前に公開された最後の映画。実質の遺作となりました。
希望を胸にナッシュビルに集まった若者たちの夢を描く青春映画です。劇中ではリヴァー自作の曲「Lone Star State Of Mine」を含む数曲を演奏しており、歌声も聞くことができます。
また主演サマンサ・マシスとは、本作の撮影時前後から亡くなるまで交際していました。
リヴァー・フェニックスは撮影の初日にハイの状態で現れ、セリフをいくつも忘れたそうです。彼はその理由をピーター・ボグダノヴィッチ監督に「痛み止めとビールしか飲んでいない」「最近ガールフレンドのスザンヌ・ソルゴットと別れて落ち込んでいる」と話したといいます。
10.幻の遺作『ダーク・ブラッド』
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あらすじ
アメリカ西部の砂漠地帯。車の故障で立ち往生することになったハリー(ジョナサン・プライス)とバフィー(ジュディ・デイヴィス)の俳優夫婦は、ネイティブ・アメリカンの血を引く青年ボーイ(リヴァー・フェニックス)が暮らす小屋にたどり着く。
妻を亡くして以来、生きる理由を失っていたボーイは、バフィーに惹かれていく……。
リヴァー・フェニックスの見どころ・逸話
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リヴァー・フェニックス主演、ジョルジュ・シュルイツァー監督で制作が進められ、クランクアップ予定日の11日前に主演のリヴァーが亡くなったことでお蔵入りになっていた幻の遺作です。
2007年に病気を患い余命わずかと宣告された監督が、最後の作品として本作を完成させることを決意。撮影が不可能な部分は監督のナレーションで補い、リヴァーの没後20周年となった2013年に公開が実現しました。
彼が唯一悪役を演じた作品でもあります。偶然にも、このボーイの役は最初にジョニー・デップがオファーされて断っていたものだったそうです。
キャスティングが決定した時点で、すでにリヴァーは演技ができる状態でないほどのひどい薬物中毒の状態だったとも言われています。
まとめ
あまりにも若くこの世を去ってしまった美しきリヴァー・フェニックス。彼が一体なぜ、薬物にのまれてしまったのか、何に苦しんでいたのか……。私たちには想像することしかできません。
しかし、彼は作品の中で生き続け、これからも多くの人々の心を動かし続けることでしょう。
まだリヴァー・フェニックスの出演作を見たことがない方や、見逃している作品があった方はぜひ視聴してみてくださいね!
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