スリラー映画の火付け役!『CUBE』(1997)のネタバレ解説!この90分間に耐えられる?
スリラー映画好きならハズせない映画といえば、1997年に公開されたカナダ映画『CUBE』。ソリッドシチュエーションスリラーの火付け役とも呼べる作品で、本作をきっかけに様々な映画が生み出されたほど。スリラーと言えばまずは『CUBE』を見なくては始まりません。
立方体に閉じ込められた閉塞感、あなたは耐えることができるでしょうか?終始展開が読めず、ハラハラしっぱなしの90分間をぜひお楽しみください!!
目次
映画『CUBE』について
1997年カナダで公開された作品であり、ヴィンチェンゾ・ナタリが監督・脚本を務めています。完全オリジナルなのですが実は元ネタがあり、ナタリ監督の短編映画『Elevated(エレベイデッド)』が原点なんだそう。彼が新人の頃に作成した、たった20分のスリラー映画が基盤になっているのはなかなか面白い話ですね!
ナタリ監督は『CUBE』の他に『ハンニバル』や『イン・ザ・トール・グラス -狂気の迷路-』など様々な作品を排出している人物であり、現在はテレビドラマを中心に活躍しています。
日本での公開は1998年であり、当時はまだあまりスリラー映画の数が多くなかった時代。斬新な設定、練り込まれた脚本、トリックに鑑賞者のほとんどが衝撃を受けたのです。奇想天外な物語は評判を呼び、現在のスリラー・ホラー・ミステリー界隈でも大きな影響を与えていますよ。
【ネタバレなし】10秒でわかる!映画『CUBE』の簡単なあらすじ
出典:IMDb
とある男女が目を覚ますと、そこは見知らぬ立方体の部屋でした。何やら閉じ込められているようであり、それぞれのメンバーは面識が一切ありません。職業も何もかもがバラバラで、なぜここに召集されたのかは不明。全員は困惑するものの、この建物からの脱出を図ります。
全員に共通しているのは、同じ服と靴を履いていることだけ。部屋と部屋とをつなぐ扉を開け、一同は協力して出口を見つけることにしました。
しかし部屋には数々のトラップ、そして法則があるようで……。脱出できないことにメンバーは苛立ち、次第に落ち着きをなくしていきます。全員は無事、この建物から出ることができるのでしょうか?
映画『CUBE』のネタバレあらすじ
映画『CUBE』はトリックや法則などが多いため、観る前にネタバレを読んでしまうと、楽しみが減ってしまいます。くれぐれも、視聴前の方はお気をつけください…!
【ネタバレ①】見知らぬ立方体の部屋
出典:IMDb
ある一人の男が、立方体の部屋で目覚める。室内は妙に明るく、壁には隣の部屋をつなぐハッチタイプの扉がつけられていた。扉を開けると全く同じ形状の部屋になっており、男は迷わず隣へ移動した。するとその瞬間、彼の体はキューブ上の肉片となり、バラバラになって死んでいったのだ――。
そんなことがあっとこともつゆ知らず、とある男女が建物内の一部屋に集合していた。警察官のクエンティン(モーリス・ディーン・ウィント)、女子大生のレブン (ニコール・デ・ボア)、無口なワース(デヴィッド・ヒューレット)、初老のレン(ウェイン・ロブソン)、精神科医のハロウェイ(ニッキー・グァダーニ)……。全員が全く同じ服と靴を着用しているも、彼らは一切面識がなく、仕事も年齢も何もかもがバラバラなのであった。
全員は出口を探すべく、ハッチ式の扉を開けて隣の部屋へ向かおうとする。脱獄者であるレンは部屋に罠や仕掛けがないかを確認しながら進むことを提案、一同は不安な中、頼もしい彼を見て少し安堵する。
だが安堵したのも束の間、レンがある部屋へ降り立ったと同時に顔目掛けて酸が発射された。顔はあっという間に溶けていき、レンは早々に死亡してしまう。
【ネタバレ②】追い詰められていく人々
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死人が出たことにより重い空気となっていたが、レブンが部屋との通路にとある3つの数字が書かれていることを発見する。どうやら3つの数字が素数であると部屋には罠があるらしい。その説を頼りに進んでいき、確かにいくつかの部屋は回避できた。だがほっとしていたのも束の間、ある時周りが罠だらけの部屋に辿り着いてしまう。それによってこの説は根拠がないものとなってしまった。
またも壁にぶつかってしまうが、扉は横だけでなく上部にもあったのだ。そこを開けると、障害を持った男性・カザン(アンドリュー・ミラー)が現れる。他に誰か人が見つかるまで、同じ部屋にずっと待機していたらしい。
人数が増え、レブンの説が敗れたまま進んでいくしかない。どんどん重くなっていく空気、更にカザンは障害があることから、みんなの足を引っ張ってばかり。出口が見えない焦りと不安で、全員は苛立ち始めるのだった。カザンをかばうハロウェイと、苛立ちがピークにあるクエンティンは険悪な雰囲気になっていく。
そして今まで黙っていたワースだが、彼は外の世界にいるとき、この建物の建設に関わっていたことを明らかにする。立方体の部屋は全部で17576個に対し、出口はたった一つしかないのであった。
【その③】現れた本性
出典:IMDb
ワースの話を元に、数学の特異なレブンは再び仮説を立てるがそれも破られてしまう。希望が見えず、とにかく部屋を移動する一同は遂に建物の上部へ到着した。壁を伝って下部へ降りることを考案し、全員の服をロープ状に繋いで試してみることに。
体の軽いハロウェイに任せ、下を見てもなにもない。その間、ロープを引っ張り続ける一同は彼女を落とさないよう踏ん張っていた。しかし先頭にいたクエンティンはハロウェイが落ちかけた瞬間、掴んだ手首をわざと離したのだ!元々相いれなかった二人であるため、「滑って落ちた」と嘘をつき、再度部屋を進んでいく。
進んでいくうちに、部屋が移動していることに気づいた。書かれた数字は素数ではなく因数、計算するには膨大な時間がかかるも、そこを突破したのはカザンだった。どうやら彼はレブン以上に計算が得意で、天才頭脳の持ち主だったそう。
【その④】脱出できたのは……
出典:IMDb
クエンティンの暴走ぶりは止まらず、部屋で休憩中レブンをこっそりと呼び出す。彼女へ別行動を提案するのが、レブンからすればクエンティンの方が怪しい。恐怖を感じた瞬間、ワースが止めに入った。殴られたクエンティンは部屋から落ち、遂に3対1で別行動をすることとなる。
部屋が移動してしまうため、カザンが取り残されてしまう。間一髪でワースが助けると、次の移動先に何やら光が差し込んでいる。そう、出口が見えたのだ。その瞬間レブンが背後から、追いかけてきたクエンティンに刺されてしまう。
ワースが彼の暴走を抑え、カザンは外の世界へ足を踏み出す。クエンティンも外へ出ようとするが、部屋は移動。彼は間に挟まれて体を切断されて息絶えていった。落ちていく部屋の中、ワースは天を仰ぎながら一点を見つめる……。揉み合いになった時に刺されてしまったため、もう助からないだろう。
外の明るい光が差し込む中、カザンだけが脱出できたのであった。
映画『CUBE』の登場人物・キャスト紹介
クエンティン/モーリス・ディーン・ウィント
出典:IMDb
警察官のクエンティンは物語の序盤、みんなのまとめ役のようなポジションでした。それぞれとコミュニケーションを取り、自己紹介をさせたりとチームをうまくまとめるリーダーシップがあるように思えます。
しかし実際は「自分さえ良ければいい」といった暴君っぷり。足を引っ張るカザンを疎ましく思ったり、ハロウェイと真正面からぶつかったりと他人を尊重することができません。挙句の果てには彼女を殺してしまうなど、とんでもない自己中っぷりを見せつけました。その結果、悲惨な死を遂げたわけですが。
クエンティンを演じるのはモーリス・ディーン・ウィント。本作で一気に知名度を上げ、現在も映画を中心に活躍しています。
レブン /ニコール・デ・ボア
出典:IMDb
毎日平凡でつまらない生活を送っていた、女子大生のレブン。数字に強く様々な仮説を立てながら部屋を進んでいく、非常に頼もしい少女です。あまり最初はやる気がなさそうに見えましたが、得意な計算を前にし、メンバーを引っ張っていきました。彼女がいないと物語は成り立たなかった、といってもいいほど!
最後まで諦めなかった彼女ですが、出口寸前のところでクエンティンに刺され死亡。懸命に頑張っていたのに殺されてしまう、本作では一番悲惨なキャラクターではないでしょうか……。
レブンを演じるのはニコール・デ・ボア。『メタル・トランスフォーム』などに出演していることで知られていますね、現在はあまり精力的な活動を行っていないようです。
ワース/デヴィッド・ヒューレット
無口でやる気がなさそうに見えたワースですが、立方体の建物の建設に関わっていたという重要な人物です。彼は図面担当だったために、依頼者や黒幕に関しての情報は持っていません。けれども部屋の数や出口の有無が分かったことはとても心強い情報でしたね!
無口なだけで芯は強いワース、レブンやカザンを助けるなど男らしい一面を見せました。『CUBE』では彼が一番好き!といった方もいるのでは?(笑)最終的には建物内に取り残され、いずれ息絶えるであろう描写で幕を閉じました。
ワース役はデヴィッド・ヒューレット。なんとナタリ監督とは同級生で、彼の作品には『CUBE』以降全てに出演しているんだとか!俳優業を続けながらYouTuberとしての顔を持つなど、とてもユニークな方ですよ。
カザン/アンドリュー・ミラー
出典:IMDb
途中合流したカザンは、少しばかり障害を持っています。重度のものではありませんが、他人とコミュニケーションを取ったり、集団行動があまり得意ではないのです。序盤はメンバーの足を引っ張ってしまい、クエンティンを苛立たせますが……数字の部分でレブン以上の実力を発揮。物凄く能力の高い人物だったのです!
最終的に生き残ったカザンは、立方体の世界から抜け出します。唯一の生存者、このラストにあなたはどう思ったでしょうか?
カザンを演じるのはアンドリュー・ミラー。演技力が高く、見事なまでにカザンを演じていましたね。俳優業だけでなく、脚本家としての顔を持っています。
ハロウェイ/ニッキー・グァダーニ
出典:IMDb
精神科医のハロウェイは正義感も強く、よく言えば博愛主義者。カザンの面倒を見たりと心優しき一面も見られるのですが、ハロウェイと度々衝突してしまいます。あまりに博愛主義や自分の意見が強いので、人とぶつかってしまうのでしょう。
物語に中盤までに生き残るのですが、ハロウェイと相いれなかったために死亡。しかしあのまま残っていても、誰かと衝突していたかもしれませんね。
ハロウェイ役はニッキー・グァダーニ。数本映画に出演していましたが、現在は活動をしていないようです。
レン/ウェイン・ロブソン
出典:IMDb
メンバーの中では「脱獄者」と、かなりアウトローなレン。そのアウトローさが頼りになり、様々な知識をメンバーに提供します。特に飲食物がないため、ボタンを口に含み続ける(=唾液が出る)というのには驚きましたよね!トラップにもいち早く気づいていた人物ですが、詰めが甘く死亡。最初の犠牲者となるのでした。
レン役は俳優・声優として活躍したウェイン・ロブソン。多数の賞を受賞し、実力派として有名でしたが2011年に亡くなっています。わずか64歳での逝去、更なる活躍が見られなかったことが悔やまれます。
映画『CUBE』のココが面白い!魅力的な4つのポイント
出典:IMDb
ポイント①目的が謎であること
『CUBE1』では首謀者や人々を閉じ込めた理由などが一切明らかになりません。彼らを操っている、建物の建設を依頼した人間の実態も全く分からないのです。集められた男女の法則性も、あまりに共通点がなさすぎますよね。
最近のソリッドシチュエーションスリラーなら、必ず首謀者や黒幕の影がチラつくはず。そこをあえて明かさないのがより怖く、ゾクゾクする部分でもあります!気になる方はぜひ続編『CUBE2』、『CUBEゼロ』をご覧いただきたいもの。ちなみにそれ以外は全てB級映画、あるいはパクリ作品なので、間違って借りたりしないように!(笑)
ポイント②全編通して、外部の世界が一切ないこと
90分の間、一切外の世界の様子が描かれていません。延々と立方体の部屋を観させられていると、なんだかこっちまで閉じ込められているような気分になりませんか?似たような映画だと『リミット』などが挙げられると思いますが、閉塞感がすごく、鑑賞者まで巻き込むような世界観の大きさがうかがえますよね。室内のカラフルな色合い、同一の部屋の作りに気持ち悪ささえ覚えるはず。
映画『[リミット]』に興味のある方は下記の記事をご覧ください!
あっちこっちの場面をいったりきたりしないことで、より作中の緊張が高まっていくのでしょう。外の世界を描かないことで更に息苦しく感じさせる、本作に集中できる、この演出には脱帽モノです。
この閉塞感人々の限界が、うまくメイクで現わされているのもよく観てほしいですね。ストーリーが終盤になるにつれ、目の下にクマ、唇はカサカサ、顔色が悪くなるなど変化が起きていますよ。
閉じ込められた理由は?鬱映画『[リミット]』のネタバレあらすじ〜ラストポイント③追い詰められる=本性が出る、王道を押さえていること
スリラーを見慣れていれば追い詰められる=人の本性が出るといったお約束はもうお分かりですよね(笑)けれどもクエンティンの序盤と終盤、180度人が変わっているとは思えないのです。狂気で豹変してしまったというよりかは、元々持っていたものが露わになっただけでしょう。
徐々に表に出てくる部分が妙にリアルで怖いと思ってしまいました。しかしその描き方がうますぎたので、面白いと感じたのも事実。クエンティンのような暴君が酷い死に方をする、ちょっぴり自我の強いハロウェイが衝突した相手に殺される、など、王道的な部分をきっちりと押さえているのも魅力的です。
ポイント④助かったのは1人だけなこと
先ほどキャラクター紹介でカザンの欄に「助かったのは彼だけ。あなたはどう思いますか?」と書きました。このオチに対して皆さんはどう思ったでしょうか。頑張ったレブンやワースも生かせばよかったのに!といった声もあるかもしれません。
けどよく考えてみれば、立方体に閉じ込められた男女で誰かを恨まず、疎まず、罪を犯していない人物は誰かと言えば……?そう、カザンですよね。レブンもワースも必死に生き抜いてはいましたが、結局クエンティンの良く思っていなかったのです。(彼の性格をみれば仕方ないこととは思いますが)
以上のことから欲をかかず、汚れなきカザンだけが生き延びることに成功できたのでしょう。
面白ポイント⑤シンプルながら細やかなシナリオ
90分間立方体の部屋の中、出口を見つけるべく奮闘する脱出劇なので、物語自体は至ってシンプルです。その中に数字によるカギ(素数・因数)や明らかにならない陰謀、外部と繋がりのある人間(ワース)の自白、部屋の法則などなど、細やかな設定がふんだんに盛り込まれているのです。こういった要素があるからこそ、シンプルな物語がより一層面白く感じるのでしょう。
キャラクターもそれぞれの個性が際立っており、俗に言う「捨てキャラ」がいないのも完璧な部分ですよね。人間心理を上手に描き、最後まで気の抜けないシナリオとなっています。
映画『CUBE』の日本版リメイクが2021年に公開!
公開から20年以上の時が経過した今、遂に『CUBE』の日本版が公開されました!まさかこの作品が日本でリメイクとなるなんて、誰も予想してなかったことでしょう。ナタリ監督が公認ということで、ファンの間では大きな盛り上がりを見せています。
大人気俳優・菅田将暉さん主演で贈る最新作については、こちらで解説しております!
90年代版『CUBE』との違いは?
登場人物の職業がエンジニア、整備士、中学生など、設定が大幅に変わっています。原作は男女5人なのに対して、日本版リメイクは男女が6人になったり、残酷なシーンが原作ほどはなかったりと、よりソフトになっている部分が多く見られました。
オリジナル版はその独特さをやや薄め、各々の内側にフォーカスしたドラマ性の強い内容としてリメイク。まさに邦画!と言えるような、心を揺さぶるシーンで観客を魅了しています。
映画『CUBE』のネタバレ解説まとめ
迫りくる閉鎖感、緊張、そして不安。全てが画面越しに伝わってくる恐怖は一度観れば忘れられないことでしょう。人間の本性が出る瞬間を垣間見る、それが何よりの恐ろしさなんだと思います。
現在のソリッドシチュエーションスリラーに影響を与えた大作、といっても過言ではありません。巧妙なトリックと綿密なシナリオ、個性的なキャラクターをぜひお楽しみください。そしてリメイク版にも要注目!『CUBE』をシリーズで観れば、きっと日本版も楽しみになるはずですよ。
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