『ドラえもん』から『漁港の肉子ちゃん』まで!名アニメクリエイター・渡辺歩監督とは何者!?

ネジムラ89

2021年、STUDIO4℃制作・明石家さんまさんプロデュースによって『漁港の肉子ちゃん』の劇場公開が発表されました。どちらかといえば、プロデュースを担当するさんまさんや、ボイスキャストの方々の方が、メディアでの露出が多くなってしまうのですが、ここであえて注目して欲しいのが製作陣!

中でも知らなかった人に覚えておいて欲しいのが監督を務める渡辺歩さん。2020年末、特に注目を浴びている御方が監督を務めている映画でもあるのですが、そんな渡辺歩監督がどんな方なのかを紹介していきます。

渡辺歩監督とは?

渡辺歩 魚肉の肉子ちゃん
出典:映画『海獣の子供』公式Twitter

渡辺歩監督は1966年生まれの東京出身のアニメーション映画監督

1986年にスタジオメイツに入社しアニメーション映画界に進出します。そして1988年にシンエイ動画に入り、『ドラえもん』をはじめとした藤子アニメの多くに参加してきました。

この間に原画・作画監督・絵コンテ・演出とアニメーション制作の多くの役職を経て、長らくドラえもんを中心に活躍している方として名前を知られていました。90年代末以降からドラえもんの中編劇場版シリーズ、そして長編劇場版シリーズの監督を務め、よりその名前が知られるようになっていきます。

転機が訪れのが2011年。渡辺歩夢監督は20年以上従事してきたシンエイ動画からフリーに転身します。それまでのドラえもんの印象から離れ、そのほかのTVアニメーションシリーズを手がけるようになります。

渡辺歩監督の制作するアニメーションの特徴は、原作の持ち味を生かしつつ、カメラワークや作画で原作にはなかったような演出を加えて、よりアニメーションとしての豊かさが加わった映像を作り上げるところ。近年では監督を務めるようになっていながらも、自身も未だに絵コンテに参加することもあり、その独自の演出が作品にダイレクトに反映されることが多いです。

おさえておきたいTVアニメ作品

渡辺歩監督は、劇場版アニメシリーズ以外にも多くのTVアニメ作品を手がけてきています。どんなTVアニメシリーズを手掛けてきたのか、そしてどのエピソードを見るのがおすすめなのか、選りすぐったエピソードの数々を一挙紹介します。

『ドラえもん』シリーズ

渡辺歩 魚肉の肉子ちゃん
出典:Amazon.com

渡辺歩監督といえばやはり『ドラえもん』!そう思う人も未だに多いほど、アニメシリーズの『ドラえもん』に大きく貢献した方でした。劇場版シリーズももちろんなのですがTVアニメシリーズでも、渡辺歩監督の色が強く出たエピソードが多数存在します。

渡辺歩監督が特に活躍したのは90年代〜00代前半にかけて。当時のエピソードの多くの作画監督を渡辺さんが担当しています。大山のぶ代さんが声優を務めていた頃の『ドラえもん』シリーズにおいては、かけがえのないスタッフの一人として活躍しています。

一度は見ておきたいエピソード!

渡辺歩監督が当時携わった『ドラえもん』のエピソードは数多と存在するのですが、中でも一度は見ておきたいのが、リニューアルを前にして2004年に放送された『ためしにさようなら』というエピソード

このお話では、ジャイアンやスネ夫にも相手にされないのび太は、しずかのもとを訪れることに。しかし、しずかはちょうど引っ越してしまう友人に別れの挨拶をするところで、それを見たのび太が、自分も引っ越せば相手にしてもらえると思い、もしもボックスを使い、父親の仕事の都合で海外へ引っ越す世界にしてしまいますーー。

もしもボックスが壊れてしまうというアクシデントに見舞われ焦るのび太ですが、ついには覚悟を決めて別れを決意する感動エピソード。河原でしずかとのび太が別れの会話をするシーンや、挿入歌として『ドラえもんのび太の宇宙小戦争(リトルスターウォーズ)』の主題歌の「少年期」が起用されるなど、いつもとは違った演出が光る放送回でした。

現在は、あまりアーカイブとして提供されていない、リニューアル以前のドラえもんシリーズですが機会があれば一度は見ておきたいエピソードです。

その他のTVアニメシリーズ

渡辺歩 魚肉の肉子ちゃん
出典:Amazon.com

2011年以降、渡辺歩監督はシンエイ動画を退職して、フリーに転身します。それまでは藤子作品のイメージが強かった渡辺監督も、新たなTVアニメ・劇場作品を手がけていくことになります。

シンエイ動画を離れて、最初に手がけたのはTVアニメ『謎の彼女X』。月刊アフタヌーンにて連載されていた、ちょっと変わった女の子との学園恋愛物を描いた作品でした。

続いて、監督を務めたのがこれまた原作となる漫画が存在する作品『宇宙兄弟』。本作は2年間にも渡って放送される長期シリーズとなりました。

その後も、『団地ともお』『彼女がフラグをおられたら』『逆転裁判〜その「真実」、異議あり!〜』『恋は雨上がりのように』『メジャーセカンド』……と少年漫画にライトノベル、ゲーム原作作品まで様々なジャンルのTVアニメシリーズの監督を務めていくようになります。

かつては藤子作品の印象が強かった渡辺監督も、現在ではヒューマンドラマとしての側面が強い原作有りの作品を、元の持ち味を生かしつつ映像化する実力者の印象の方が強くなっており、人気の高い監督の一人となっています。

一度は見ておきたいエピソード!

数あるTVアニメシリーズでも一度は観て欲しいのが、『恋は雨上がりのように』。週刊ビッグコミックスピリッツで連載されていた同名漫画を原作に、TVアニメ化した作品です。

陸上部のエースだった女子高生の橘あきらと、かつて夢を諦めた過去があるファミレス“ガーデン”の店長である近藤正己の二人の、年の差恋愛ストーリーです。と言っても、キャラクターたちが誠実で、恋愛だけでなく挫折をいかに乗り越えるかといった生き方を、真摯に描いた内容が魅力です。

派手なアクション要素がない分、情緒に訴えかける綺麗な美術と、ちょっと変わった性格だけどまっすぐなあきらとちょっと天然な正己のキャラクターが愛らしくて、一度見だしたら止まらない作品となっています。

中でも絶妙な演出で、二人の関係が進展する第7話『迅雨』に注目。怒涛の展開と登場人物の心情を思うと胸が苦しくなること必至の“泣ける”回となっています。

渡辺歩監督のおすすめ映画5選!

渡辺歩監督はこれまでにも多くの劇場公開作品の監督を務めてきました。
TVアニメ作品はシリーズも話数は多くて苦手、という人向けにおすすめしたいのが劇場版です。今回は渡辺歩監督作品の中でも選りすぐりのおすすめ作品5作品を紹介します。

ぼくの生まれた日

渡辺歩 魚肉の肉子ちゃん
出典:Amazon.com

あらすじ

上機嫌でプールから帰宅したのび太……何を隠そうその日は8月7日、のび太の誕生日だったのだ。さぞかし良い待遇を受けられるのではないかと、舞い上がっていたのび太だったが、そんな思惑に反して、のび太の日頃の杜撰な生活態度に対して両親からはひどく叱られてしまうのだった。

あまりのショックにふてくされるのび太。自分は愛されていないのだと、家出をしてしまうのだった。そんな姿を見かねたドラえもん。家出をしたのび太の元へやってきて、自分の生まれた日を見に行かないかと誘うのだった。

こうしてドラえもんに誘われたのび太は、タイムマシンに乗って、かつて自分が生まれた日へとやって来るーー。

ここが見どころ!

渡辺監督と言えば、やはりおさえておきたいのが1998年以降長編のドラえもん劇場版シリーズの併映作品として毎年公開されるようになったドラえもん感動シリーズ

1998年の『帰ってきたドラえもん』、1999年の『のび太の結婚前夜』、2000年の『おばあちゃんの思い出』、2001年の『がんばれ!ジャイアン!!』、2002年の『ぼくの生まれた日』の5作品が該当するのですが、本来シリーズとして名前は付いていません。ただし、当時ドラえもんの声を演じていた大山のぶ代さんは、自身の著作『ぼく、ドラえもんでした。』にて、“ドラえもん感動シリーズ”として、これらの作品を評価しています。

これらの作品は、原作者の藤子・F・不二雄先生が亡くなられた後、そんな藤子先生の原作の名エピソードをベースに、中編作品としてアレンジしてアニメ化した作品たちです。中でも独自の演出が際立ったエピソードとしてオススメしたいのが『ぼくの生まれた日』

友人たちとの友情が描かれることの多いドラえもんシリーズですが、本作ではのび家にフィーチャーしたありそうでなかった題材の感動作となっています。

映画ドラえもん のび太の恐竜2006

ドラえもん 映画一覧
出典:Amazon.com

あらすじ

スネ夫に恐竜の化石を自慢されて悔しがるのび太は、自分は恐竜の卵の化石を見つけてみせると思わず啖呵を切ってしまう。ドラえもんに泣きついたものの、相手にしてもらえず、自らの力で化石を見つけることを決意することに。

古い地層から化石が出てくることを知ったのび太は近所の崖で化石掘りをしていたところ、崖の下の住人に叱られて、お詫びにゴミ捨て用の穴を掘る様に言われてしまうのだった。しかしのび太がその穴を掘っていたところ、中から卵の様な大きな塊が出土する。

恐竜の卵だと確信したのび太はそれを持ち帰り、ドラえもんのタイム風呂敷でその塊の時間をはるか昔に遡らせることにする。こうして時間をかけて1億年前の姿になった塊は、本当に生き物の卵だったーー。

ここが見どころ!

『ドラえもん』の主教キャスト・キャラクターデザインを一新したリニューアル後、初の劇場公開作品であり、『ドラえもん』の劇場版シリーズの第1弾である『ドラえもんのび太の恐竜』をリニューアルするという挑戦的な企画が本作。

ストーリーの大筋は、以前の劇場版シリーズから大きく変わらない一方で、各シーンが綺麗なアニメーションへグレードアップ!より迫力のあるアクション要素も追加されて、かつて映画を観た人にも、新たなドラえもんシリーズの世代の人も、両方が楽しめる映画に仕上がっています。

本作に登場するゲストキャラクター・フタバスズキリュウの子どものピー助役には、神木隆之介さんを起用。今となっては『サマーウォーズ』、『君の名は。』、『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』といったヒットアニメ映画に引っ張りだこの状態ですが、ドラえもん映画にも一足先に出演していたと思うと、先見の明があったと言えますよね。

映画ドラえもん のび太と緑の巨人伝

ドラえもん 映画一覧
出典:Amazon.com

あらすじ

学校の裏山で昼寝をしていたのび太は、自分の0点のテストが風で飛ばされてしまったのをきっかけに、住民が家具や電化製品を山に投棄しているゴミ捨て場を発見する。そんなゴミ捨て場で見つけた小さな植物が気になったのび太は、その植物を家に持ち帰るのでした。

自宅の庭に埋めようとするのび太。しかし、ママに変なものを植えるなと叱られたのび太は、ドラえもんに相談し、植物自動化液を植物にかけるのだった。こうして、液体を浴びた植物は、手足が生まれ一人でに動き出すようになった。

生き物のように動き出したその植物に、のび太は“キー坊”という名前をつけ、家族の一員として一緒に暮らし始めるのだった。そんな矢先、ドラえもんとのび太たちは、かつてキー坊が居た裏山で、不思議な生き物たちに遭遇することになるーー。

ここが見どころ!

記念すべき『ドラえもん』リニューアル以降の劇場版第1弾の監督を務めた渡辺歩監督ですが、続いて挑戦した長編第2作目も、とある“初”挑戦作となりました。その挑戦ポイントとは、リニューアル以降は過去の映画のリメイク作を公開していた劇場版シリーズがついに、新たな長編作品の制作に挑んだのが、この『ドラえもんのび太と緑の巨人伝』でした。

物語のベースにあるのは、原作漫画でも存在する名エピソード「さらばキー坊」なのですが、映画化に伴いキー坊のデザインや物語の後半のストーリーは独自のものへアレンジ。元のエピソードからは想像もつかないスケール感で、映画的なドラマチックなクライマックスが用意されています。

環境破壊に対する痛烈なメッセージと、ポップなイメージから一歩踏み込んだまさかのシリアスな展開には、いつものドラえもんに馴染みのある人や、原作を知っている人こそきっと驚くはず!

宇宙兄弟 #0(ナンバー・ゼロ)

渡辺歩 魚肉の肉子ちゃん
出典:映画『宇宙兄弟#0』公式Twitter

あらすじ

ペットボトルロケットの大会に出場する南波兄弟の二人。ここぞの時の集中力を持った兄の六太と、天真爛漫で大雑把な性格の弟の日々人は、二人で宇宙飛行士になる夢を抱いていた。

しかし時が経った現在。兄の六太は夢を叶えることができず、自動車会社のサラリーマンとして働いていた。現実味のない新車種の開発ばかりを企画する六太に対し、会社は六太を片田舎の支店へと出向を命じるのだった。

かつての夢とは程遠い現在を憂う六太に対して、弟の日々人はまっすぐ宇宙飛行士の道を突き進んでいた。日々人は宇宙飛行士のブライアン・Jのパイロットクルーに選ばれた日々人は自分の実力不足に悩みながらも、訓練に勤しんでいた。

かつては同じ夢を目指していた二人が、それぞれの場所でそれぞれの課題にぶつかっていくーー。

ここが見どころ!

渡辺歩監督がシンエイ動画を出て、フリーになって以降の代表作として忘れてはいけないのが『宇宙兄弟』シリーズ。TVアニメシリーズは100話近い長編なので、観るのが大変という人には、ぜひその片鱗だけでも知ってほしいということでオススメしたいのが、TVアニメシリーズの前日譚を描いたアニメーション映画『宇宙兄弟#0』

本作に主要キャラクターがどんな背景を持ったどんな性格の人物なのかがわかる上、ヒューマンドラマとしての温かみや、物語の持つポジティブなエネルギーが実感できるので、入門編としても、お試し版としても手に取ってみるのをオススメできる長編作品です。

ちなみい、本作の脚本は原作者である小山宙哉先生によって書かれたオリジナル作品であり、原作ファンもアニメファンも未知のエピソードということでも、当時は話題になりました。

海獣の子供

渡辺歩 魚肉の肉子ちゃん
出典:Amazon.com

あらすじ

中学生の琉花は、夏休みの初日に部活動の最中にチームメイトと揉めてしまい、連休早々に教師から明日から来なくて良いと言われてしまう。母親とも距離を置いていた琉花は、学校でも家でも自分の居場所を失ってしまうのだった。

行くあてのない琉花は、父が働いている水族館へと足を運び、両親との思い出が詰まった水槽でただ佇む。そんな矢先、その水槽で魚たちと一緒に泳ぐ、不思議な少年“海”の姿を見つける。

海には、“空”という兄がおり、二人はジュゴンに育てられ海で人々に発見されたという特異な境遇を持っていた。

そんな、海と空と琉花は親しくなっていくのだが、そんな出会いをきっかけに、地球上では様々な現状が起こり始めるのだったーー。

ここが見どころ!

月刊IKKIにて連載されていた五十嵐大介先生の同名漫画を長編アニメーション映画化。手描きのアニメーションと3DCGアニメーションを組み合わせて、今まで見たことのないような水の表現を再現!映像化が難しいであろう神秘的とも言える特徴的な物語を、見事なまでに再現することに成功しています。

そんな本作の主人公・琉花を演じるのは、作中のキャラクターと同世代の芦田愛菜さん。声の演技でも見事な演技を見せてくれています。

さらに主題歌には、米津玄師の「海の幽霊」を起用。この映画のための書き下ろし曲となっており、映画の後味として染みる一曲が、映画の最後に花を添えます。

高い完成度から本作は、毎日映画コンクール映画賞や、文化庁メディア芸術祭のアニメーション部門大賞など、国内の箔のあるアニメーション映画賞も受賞し、高い評価を獲得しています。

まとめ

渡辺歩監督のこれまで手がけてきた作品と、オススメの作品に至るまでを一挙に紹介しましたが、「こんな監督が居たとは!」と初めて知った人も多いのではないでしょうか。

今後の活躍にも要注目の監督なので、ぜひ名前を覚えておいて損はないはずです!

この記事を書いた人
ネジムラ89
ネジムラ89

缶バッジ販売専門店「カンバーバッチ」のオーナー兼アニメ映画ライター。アニメ映画情報マガジン「読むと アニメ映画 知識が結構増えるラブレター」をnoteにて配信中。その他いろんなとこでアニメ映画話を執筆中。古今東西関係なくアニメ映画を中心とした有益な情報を多くの人に提供できるようにやっていきます。