最新作『エスター ファースト・キル』のネタバレ解説!”どこか変”な少女の前日譚
この娘、どこかが変だ――。
印象に残るキャッチコピーと衝撃的な展開で注目を集めたホラー映画『エスター』。
公開から13年の時を経て、前日譚となる『エスター ファースト・キル』が待望の日本上陸!不気味なあの娘が再び皆さんの前に姿を現します。
今回は“エスター”という少女が誕生した理由や、孤児院に引き取られる前の出来事が全て明らかに。
期待を裏切らないストーリーと驚きのどんでん返し、そして身の毛もよだつサイコパスっぷりにどんどん引き込まれてしまうでしょう。
心霊よりも遥かに怖い?エスターに隠された過去をぜひお楽しみください。
本記事はネタバレを含みますので未鑑賞の方はご注意を。また『エスター』の続編ということで、第一作目を観ておくと面白さが倍増しますよ!
目次
映画『エスター ファースト・キル』について
見た目は子どもながら中身は成人である女性エスター。2009年に日本で公開され、あまりの衝撃的な内容に度肝を抜かれた人も多いでしょう。
彼女の持つ狂気的な思想や行動は、悪役ながら不思議な魅力があったように思います。
前日譚となる『エスター ファースト・キル』。アメリカでは2022年7月に公開。VOD配信も同時に行い、興行収入は4,400万ドルに着地しました。(日本円で約約58億5,573万5,960円)
日本ではようやく2023年にスクリーンへ登場。彼女の過去が気になるファンも多く、公開後は多くの人が映画館へ足を運んでいるそう。
今回話題を集めているのは人気作の続編というだけではなく、25歳(現在は26歳)に成長したイザベル・ファーマンが主人公を続投していること!
メイクや撮影時の工夫で子どもに大変身、過去を完璧に再現しているのも見どころと言えますね。
監督は前作と異なり、『ザ・ボーイ』シリーズや『セレパーション』など、ホラーを得意とするウィリアム・ブレント・ベルが担当。
第二作は恐怖演出に磨きがかかり、ゾクゾクするような描写が増えたのもより作品が楽しめるポイントです。
10秒で分かる!映画『エスター ファースト・キル』の簡単なあらすじ
精神病院で要注意人物としてマークされるリーナ(イザベル・ファーマン、)。彼女は幼い見た目ながら中身は31歳の女性で、誰もが驚くほどの狂気性を秘めていました。
看守を殺害し“モンスター”は病院の外へ脱出。殺害した療法士の自宅でPCを眺め、行方不明者となった子どもたちのリストと睨めっこ。
その中に自分の外見そっくりの「エスター」という少女になりすまし、アメリカに身を置くオルブライト家へ忍び込むことに。
一家は失踪した娘が帰ったことに喜びを覚えますが、母・トリシア(ジュリア・スタイルズ)はリーナを怪しみ、本当に娘なのか?と疑いをかけていたのでした。
予感は見事に的中しリーナの正体があっさりとバレてしまいます。しかし病院に通報はされず、トリシアは思いもよらぬ一言を彼女に発するのです……。
映画『エスター ファースト・キル』のネタバレあらすじ
以下は『エスター ファースト・キル』のネタバレを含んだあらすじ解説です。
核心に触れる部分を記載しておりますので、未鑑賞の方はご注意ください。
【あらすじ①】“エスター”誕生のとき
エストニアのサールーン精神病院のスタッフたちは1人の“女性”を激しく警戒していた。
彼女の名はリーナ(イザベル・ファーマン)、少女のような幼い見た目ながら中身は31歳の成人。ホルモン異常で成長が止まっており、以前一家族を殺害したことから病院へ収容されているのだ。
リーナは頭が良く、少女趣味の看守を味方につけて厳重な警備を突破。
精神病院を抜け出し、赴任したばかりの美術療法士さえ殺め、一通り脱走計画が完了したところで彼女の家へ侵入。ワイン片手にPCを眺めていた。
画面には行方不明となった子どもたちのリストが並ぶ。リーナは自分とよく似た少女「エスター」に目をつけ、失踪した子供になりすまし、その家族の一員になろうと企む。
どこかの家庭に入り込んでは金目の物を盗み、殺害行為にまで及ぶ彼女。エスターの真の家族、オルブライト家はアメリカの富豪らしい。
迷子を装ったリーナは失踪者「エスター」になりきり、ロシア・モスクワの大使館まで母・トリシア(ジュリア・スタイルズ)が迎えにやってきた。
4年ぶりの娘との再会に喜ぶトリシア。2人で飛行機へ乗り、アメリカへと向かった。
【あらすじ②】隠し通せぬ嘘と疑いをかける母
娘になりきるリーナだが、オルブライト家の情報や本物のエスターの過去については何も知らない。
早速他界した祖母を生きていると思い込み、「早く会いたいわ」と口にすると、トリシアは「もういないでしょ」と間違いを正した。
家に戻ってからも計画は順調に進まず、真のエスターとは異なった言動を繰り返すリーナ。その度にトリシアは違和感を覚え、カウンセラーへ本音を漏らす始末。
その頃、失踪事件について調査していたドナン刑事(ヒロ・カナガワ)が調査のためにリーナの周りをうろついていた。
トリシアはリーナの入浴中、目を盗んで隠し持っている古びた手帳に手を伸ばす。しかし、見られてはならないものであるため彼女は必死に拒否。
あまりの拒絶っぷりに疑念が加速するトリシア。写真を見ても若干顔が異なることから、本当に実の娘なのか?と悩むように。
全く気付いていないのはエスターが帰ったことに大きな喜びを見せる父・アレン(ロッシフ・サザーランド)と妹に興味を示さないンナー(マシュー・アーロン・フィンラン)。
特にアレンはトリシアの違和感にも気づかず、むしろ問題の解決により仕事のヤル気が倍増しているくらいだ……。
【あらすじ③】疑いをかけられるエスターと遂にバレる嘘
怪しまれていることに警戒するリーナの元へ、ドナン刑事が突如訪問。
夫婦へ警告を促している事実を知りオルブライト家を去ろうとするが、リーナは芸術家のアレンが描く絵が忘れられない。
アレンの絵はブラックライトで照らすと蛍光塗料が反応する、とても斬新な発想を含んだもの。
ライトがあるとなしとでは作品の意味がガラリと変わるギャップに心惹かれ、後ろ髪を引かれてしまった。
金品だけを盗んで姿を消そうとしたもののアレンの存在、そして作品により躊躇。そしてリーナは彼自身にも心を奪われ、露骨にトリシアへ嫌がらせを行うなど“女”の部分を見せるように……。
夫婦の外出中、グンナーが友人らと騒ぐ傍らでドナン刑事が来訪。こっそりとリーナの部屋からレコードを盗み、自宅にて諮問検証を行い、疑念が確信へと変わる。
危機感を覚えたリーナは刑事宅へ忍び込み、ドナンを強襲。だが、トドメを刺したのは急遽現れたトリシアだったのだ!
躊躇いもなく射殺した挙句「あなたが偽物と知っていた」と語るトリシア。戸惑いを隠せないリーナへ彼女はとある提案をすることに。
【あらすじ④】トリシアの秘密、奇妙な家族ごっこ
真のエスターが失踪された4年前のこと。娘はただいなくなっただけではなく、グンナーの手違いで殺害してしまったのだ。
トリシアは息子の過ちを知り、死体を隠して隠蔽。つまり母は娘の死を最初から分かっていながら、アレンを喜ばせるために敢えてリーナを迎え入れた。
リーナも自らの正体を明かし、ドナン刑事の死体を共に処理。お互いにアレンを想う気持ちが強く、彼だけのために偽の家族を演じることとなる。
だがトリシアもグンナーも精神病院にいた人間を受け入れるわけがない。リーナもまた、心を許すはずもない。アレン以外が常にピリつき、リーナが彼を好いていることに気づくトリシア。
お互いが食事に毒を盛るなどいつ殺し合ってもおかしくはない状況の中、アレンの出張が決まった。偽の家族は列車で送り出すと態度が豹変。
「あんたにもう用はない」と吐き捨てるトリシアだが、リーナも精神病院へ戻りたくはない。
駅で大暴れした挙句、家の車を盗んで逃走。逃げ切るかと思いきやスピード違反で警察に見つかり、再びオルブライト家へ連れ戻されるのだった。
【あらすじ⑤】燃え盛るオルブライト家、リーナの行く先は
真実を知る3人が揃ったところでリーナを捕獲、自殺を装って殺そうとするがうまくいかず、リーナは必死に抵抗する。
グンナーがトドメを刺そうとすると、リーナは持ち前の頭脳と行動力を活かして彼を殺害。一方でトリシアはアレンからの電話に気を取られ、息子が反撃されていることに気づかなかった。
息子の死にトリシアは発狂、2人はキッチンで攻め合い、追いかけっこ状態に。その時にコンロの火がつくが、必死なトリシアとエスターは知らない。
お互いが屋根に上った頃火は燃え広がり、オルブライト家は大家事に。タイミングよくアレンが到着し、屋根から落ちかけている2人は助けを求めた。
トリシアはリーナを「偽物の娘だ」と言い、リーナは「ママはおかしい」と言う。どちらを信じて良いのか分からないアレンが困惑しているうちに、トリシアは屋根から落下して死亡した。
引き上げられたリーナは意中の相手に抱き着くが、その際に入れ歯がポロリと落ちてしまった。
その様子を見たアレンは偽物と気づき「フリークス(化け物)」呼ばわりをされた彼女は勢いで突き落とし、またも殺害。
一家を全滅させ、身なりを整えて颯爽とオルブライト家から去るリーナ。
後日セラピストへ孤児院へ入ることを提案される。こうしてリーナは完璧な“エスター”を名乗り、新たな家族に引き取られるのを待ち続けるのだった。
映画『エスター ファースト・キル』の登場人物・キャスト
『エスター ファースト・キル』の物語の中心となるのはリーナとオルブライト家。
それぞれのキャラクター性や個性あふれる面々を演じるキャストについてご紹介します。
リーナ/イザベル・ファーマン
“エスター”と名乗る彼女の名はリーナ。警備の厳重な精神病院へ収容され、要注意人物としてマークされていました。
ずば抜けた頭脳と行動力、そして狂気性で次々と人を欺きます。
病院の医者たちはホルモン異常という疾患を抱えた彼女に「同情するな」と美術療法士へ厳しく注意しましたが、サイコパスっぷりを見ればかなり納得かも。
オルブライト家を全滅させたあと、彼女は次の標的を探して孤児院へ入るのでした。
リーナを演じるのはイザベル・ファーマン。前作からの続投であり、大人から子供に大変身。第一作目の子役時代に知名度が上がり、現在はアメリカで女優、モデルと幅広く活躍中です。
トリシア/ジュリア・スタイルズ
最初からリーナの存在を怪しんでいたトリシア。まさか彼女が実の娘の遺体を埋葬していたなんて!思いがけぬ告白に、リーナだけではなく視聴者もビックリ仰天だったのでは?
正体は「優しく愛情深いお母さん」ではなく、隠蔽工作を働いたワケあり人物。彼女もリーナと同じくサイコパス気質があるような気もしますね(笑)
二面性を持つトリシアを完璧に演じたのはジュリア・スタイルズ。映画を中心に活躍するアメリカの女優で代表作は『世界にひとつのプレイブック』や『ボーン』シリーズです。
アレン/ロッシフ・サザーランド
アレンは本作において最も悲惨なキャラクターでしょう……。
娘の帰りを待ち、疑うことなくリーナを受け入れ、最後の最後で真実をひっくり返されたのちに死亡。
彼自身には何の罪もありませんでしたから、完全な巻き込まれ事故状態です。ただアレンを見ていると「知らないって、幸せだな」とも少し思ってしまいますね。
アレンを演じるのはロッシフ・サザーランド。
ドラマ『ER緊急救命室』などで知られ『ポゼッサー』や『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』ホラーやコメディ、サスペンス、ディストピアなどジャンルにとらわれず、様々な作品へ出演しています。
グンナー/マシュー・アーロン・フィンラン
偽エスターと対面した時から怪しげな様子を見せたグンナー。せっかく妹が帰ってきたにも関わらず、喜びを見せなかったことに妙な違和感を覚えた人も多いのでは?
うっかり妹を殺したなんて一体何をしたのやら。トリシアと共にリーナ殺害を狙うものの、返り討ちに遭い悲しき結末を迎えました。
グンナーを演じるのは俳優のマシュー・アーロン・フィンラン。『BRAZEN』や『myfakeboyfriend』など配信系作品への出演が目立ちます。
目を奪われるほどのルックスは観ているだけ思わず虜になってしまいそう。今後の活躍が楽しみな若手俳優さんですね。
『エスター ファースト・キル』で注目すべきはリーナのサイコパスぶり!
エスターことリーナはサイコキラー。我々の想像の斜め上をいくぶっ飛び感が何よりの特徴でしょう。
現実にいたらごめんですが、映像の向こうに存在するからこそ魅力的に思えるものです。
本作の注目すべきポイントとも言える、リーナのサイコパスぶりを一緒に振り返ってみませんか?
一家全滅がデフォ。家族にこだわる執着心が異常
『エスター ファースト・キル』のタイトルながら、精神病院にいる時すでに殺人を犯していた彼女。
オルブライト家の件はある意味セカンド・キルに当たるので、ファースト・キルは物語開始前に終わっているのものの(笑)
毎回リーナは家族にこだわり、一家を崩壊させることがデフォルトですよね。
人を殺すのが好きなのではなく一員になったのちに全てを壊す……。家族といった形にこだわりを見せるのが何とも恐ろしい部分。
世の中から除外され子ども扱いを受ける人生。「化け物」と呼ばれた時過剰な反応をしていたことから、心の奥底に「どこかへ属したい」「受け入れられたい」なんて思いがあるのでしょう。
本心が歪んだ結果が異様な執着に繋がっていると筆者は推測します。ただのサイコキラーではないからこそ、他にない怖さを感じてしまいます。
時折覗かせる大人の姿。二面性にゾクリとくる
中身は31歳の女性ですからリーナは立派な大人です。
冷静に考えると30代の人間が10代の子どもになりきるだなんて、かなり無理のある話だと思いませんか?
作中でも「何がママよ」と少女のふりをする自分自身に苛立っていたリーナ。
それでも嘘をつき、家族の一員を貫き通そうとする姿と、時折見せる大人の女性の二面性には思わず背筋が凍ってしまうはず。
毎回一家の大黒柱に恋をし、夫から妻を引き剥がそうとする根深さにもイヤ~な感情を覚えるもの(笑)
イザベル・ファーマンの演技も素晴らしく、“エスター”と“リーナ”の演じ分けが妙な恐ろしさを倍増させていますよ。
表と裏の顔を完璧に使い分ける彼女の狂気っぷりは、恐ろしくもつい引き込まれる不思議な中毒性を秘めているのです。
切れる頭と勢いの良さ。怪物よりもたくましい!?
何よりリーナは頭が良く、咄嗟の判断が本当にすごいのです。ピンチが訪れても回避し絶体絶命の時を逃れるほどのパワーを持っています。
下手するとホラー映画に出てくるモンスターより怪物度は高いかも。能力値が高く頭が切れる、これほど厄介な悪役はそう多くありません。
諸々の経験値も高く、殺害方法もシンプルながら確実性が高いと言いますか……。
立ち回りも何もかもがうまいので、彼女のたくましさには思わず脱帽といったところでしょう。
映画『エスター ファースト・キル』の見どころ
前作からのファンも多く、『エスター ファースト・キル』の公開を心待ちにしていたそこのあなた!
第一作を上回る見どころが満載ですので、お楽しみポイントを押さえれば鑑賞がもっと楽しくなるかもしれません。
成長したイザベル・ファーマンが子供を熱演!気になる少女の再現方法とは?
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🩸メイキング
写真解禁
︿╱︿︹╱﹀╲#イザベル・ファーマン を小さく見せるために様々な工夫が凝らし、身長差を出す為に共演者達は高さ10センチ以上もの厚底のブーツを履いたり遠近法を駆使😲😱#エスターファースト・キル#エスター #エスター前日譚#エスターヤバい pic.twitter.com/wFpz4B6UDR— 絶賛公開中🩸映画『エスター ファースト・キル』公式🎀 (@esther_movie) March 22, 2023
大人になったイザベル・ファーマンがどうやって幼き頃のキャラを演じたのか、気になる人も多いはず。
作品を鑑賞するとよーく分かるのですがなるべくリーナのカットを上半身~膝で切り、遠近法を使うことで彼女を小さく見せているとか。
- 共演者たちが10センチの厚底を履く
- イザベル・ファーマンが高い声(子ども用の声)を作って演技をしている
- メイクに工夫を凝らした
- 子ども特有の丸みを持たせるために、体重を増やした
他にも鑑賞中には確認できぬキャストとスタッフの努力の塊によって、かつての姿が再現されているのですね。
清々しいスプラッタ、リーナの暴れっぷりは前作に引き続き
エスターはホラー映画ながら心霊が登場しないため、サスペンスに近い作品でしょう。
けれどもバシャバシャと溢れ出る血、死人の続出、そしてリーナが感情を抑えきれなくなった際の暴れっぷりは健在。
“エグい”、“精神的に怖い”と呼ばれる描写は山ほどありますので、前作の期待を裏切らない完成度です。
第一作に比べるとドキッとするような脅かしの演出も増え、ハプニング系ホラーが好きな人もきっと満足できるでしょう。
リーナVSトリシア!一色触発の女のバトルを見逃すな
『エスター ファースト・キル』はリーナだけではなく、オルブライト家の妻・トリシアも問題を抱えた人物。
サイコキラーと言えない過去を持つ罪人がぶつかるのですから、恐ろしいくらいに火花が飛び散るのも無理はありません。
そこへアレンの取り合いといった要素も加わり、女性の嫌な顔をこれでもか!というくらい見せてくれるのも、ある意味見どころですね。
真実を隠しながら生活するピリついた空気を見ていると苦しくなってくること間違いなし。
終盤の2人のぶつかり合いはスピード感溢れるバトルになり、目が離せない展開となっています。
まとめ
『エスター』の前日譚にあたる最新作『エスター ファースト・キル』。エスターことリーナの狂気性が最初から最後まで詰まった、ファンにはたまらない作品です。
シリーズを通して鑑賞することで理解も深まりますし、本作を観てから第一作にもう一度触れるも良し。
ホラー界を代表すべきサイコキラーの姿を、ぜひスクリーンで目に焼き付けてくださいね。