ハートフル映画に胸打たれる!是枝裕和監督のおすすめ映画特集
人々の心に寄り添った、ハートフルなドキュメンタリー風映画で有名な是枝裕和(これえだ ひろかず)監督。数々のヒット作を生み出し、日本を代表する映画監督の1人です。
今回は、そんな是枝裕和監督のおすすめ映画をご紹介していきます!!
是枝裕和監督について
出典:wikipedia
是枝監督は1962年6月6日、東京都練馬区で生まれました。映画好きの母親の影響で、幼い頃からよく映画を観ていたそうです。バレーボールに没頭する中高時代を送り、その後は早稲田大学第一文学部文芸学科に進学しながらも映画館に通う生活を送っていました。
卒業後は番組制作会社テレビマンユニオンに就職し、1995年に『幻の光』で映画監督デビューを果たしています。
ドキュメンタリー作品を手がけていたこともあり、彼の作品は日々の生活に密着していて、リアリティを感じさせる作品が多い印象です。特に、デビュー以来一貫したテーマとして描いているのが「食」と「子役」です。彼の多くの作品で”家族”が食卓を囲んだり料理をしながら他愛のない会話をする、という場面が多く登場します。生活感を出すためには大切な要素ですよね。また、『万引き家族』や『そして父になる』では特に子役が大きな役割を担っています。是枝監督は子役を撮る上で、脚本よりも口頭で説明することを心がけていて、演技を演技に見せない工夫を凝らしています。
この記事では、是枝監督が手がけた映画を7作紹介します。観たことがある作品ももう一度観たくなってしまうような裏話やポイントも紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
1.幻の光
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あらすじ
大阪で生まれ、美しい女性に育ったゆみ子(江角マキコ)は、幼馴染の郁夫(浅野忠信)と結婚。息子の勇一(柏山剛毅)との3人で、裕福ではないながらも幸せな生活を送っていた。そんな彼女の祖母は四国に帰ると言って家を出ていったきり帰って来ず、引き止められなかったことを大人になった今でも後悔していた。
ある雨の日、夜遅くなっても郁夫が帰ってこないことを心配していたゆみ子の元に警察が訪ねてくる。郁夫が電車に轢かれて死んでしまったことを知らせるためだった。彼は夜中に線路を歩いていて電車のブレーキが間に合わずに亡くなったらしいが、ゆみ子は夫がなぜそんなところを歩いていたのか、理由も原因もわからない。
その事件から数年が経ち、ゆみ子は再婚することに。幸せな再婚生活を送る中、郁夫の死が一点のシミのように彼女の心に残り続ける……
是枝監督の『幻の光』撮影秘話
・映画監督デビュー作にして、多数の賞を獲得!
・今作がきっかけで”ジャパネスクの火付け役”に
映画のココに注目! 是枝作品ならではのおすすめポイント
ゆみ子の心中を表現するかのように、逆光で撮影したシーンが多いのがこの映画の特徴の一つ。人物を撮影すると真っ黒に映ってしまうのであまり適さないアングルですが、それが逆にこの映画に味を与えています! 斬新な方法ですね。
また、今作の切なさや虚しさをよりいっそう引き立てるポイントとなっているのが、ゆみ子の一人称、という語りのスタイルです。「夫はなぜあの日に線路の上を歩いていたのか」という謎を常に自分自身に問いかけ、彼の姿を探し続けているんです。是枝監督の演出の深さが引き立てられています。
2.DISTANCE
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あらすじ
”真理の箱舟”というカルト教団が起こした、無差別殺人事件。事件の実行犯が教団によって殺され、その教祖自身も自殺してから3年が経った夏の出来事。
殺害された事件の実行犯の遺族4人は命日に集まり、遺灰が撒いてある湖に向かったが、車が盗まれ、今は亡き実行犯たちが生活していたロッジで一晩を共にすることに。
果たして彼らは被害者か、それとも加害者なのか……
是枝監督の『DISTANCE』撮影秘話
・是枝監督はドキュメンタリー感を出すために、キャストに渡した台本には相手のセリフを書かなかった
・是枝監督は、オウム真理教の裁判に行ったり、捜査資料を読んだりと多くのリサーチをして映画の制作に取り組んだ(だがそれらを映画に使ってもドキュメンタリーに負けてしまうと判断し、実際に裁判や資料の内容は映画に反映させなかった)
・キャストの1人である浅野忠信さんには台本を用意せず、「その場その場で自己正当化し逃げる奴」を演じることしか指示しなかった
映画のココに注目! 是枝作品ならではの注目ポイント
ドキュメンタリーみたいだけどちょっと違う、ドキュメンタリーとフィクションの境目のような今作は、役者ですら映画の概要を知らされない状況で撮影することで、リアリティがにじみ出ています! セリフとセリフの間から生み出される生々しさも、独特なこの映画の雰囲気を作る上で重要な要素になっています。
3.歩いても 歩いても
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あらすじ
ある夏の日、横山良多(阿部寛)は妻のゆかり(夏川結衣)と息子のあつし(田中祥平)を連れ、自身の実家を訪れていた。というのも、今日は亡くなった良太の兄の15回忌。久々の帰郷に身が乗らない彼だったが、明るい姉のちえみ(YOU)一家も来ており、思い出話に花を咲かせていた。だが、常に父から優秀だった兄と比べられてきたことへのコンプレックスがある良多は、未だに父親への反発心を捨てきれずにいた。
そんな中、良多はふとしたことがきっかけで親の老いを感じ、人生は少しだけ間に合わないことばかりだと実感することに……
是枝監督の『歩いても 歩いても』撮影秘話
・樹木希林さんに医者の妻役というキャスティングは一見マッチしないと思われがちだが、それはあえて、医者としての一面と妻に見せる一面のミスマッチを表現するためだった
・是枝監督が作る映画はテーマが”死”のことが多いが、それは小学生の生活を撮った初めてのテレビドキュメンタリーで仔牛が死んでしまい、泣いていた子供たちを見たことが始まり
・日本独特の家庭風景を描いたため、世界への進出をためらっていた是枝監督らスタッフ陣だが、世界でも高評価
映画のココに注目! 是枝作品ならではの注目ポイント
この映画で特徴的なのは、家族の関係性を描いているヒューマンドラマでもありサスペンスでもあるということ。どういうこと!? って思うかもしれませんが、そこはさすがの是枝マジック。是枝監督が手がけるホームドラマはただぼーっと見ているだけだと、普通の家族が集まって団らんしているだけの映画ですが、それぞれの人物の言動にはしっかりと意味があるんです。それでもやはり、”リアルさ”を究極に描ききるのが是枝監督。嫁姑同士の会話や、久々に会った親戚への反応など、映画だということを忘れさせるくらいの本物感に注目です。
4.そして父になる
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あらすじ
エリート建築士の野々宮良多(福山雅治)は、妻のみどり(尾野真千子)と6歳の息子、慶多(二宮慶多)と何不自由のない生活をしていた。慶多は私立小学校を受験し、合格したばかりだった。
そんなある日、慶多が生まれた病院から野々宮一家の元に「大事なお知らせがある」と呼び出される。出生時に子供の取り間違えがあり、野々宮夫妻の本当の息子は、慶多と同じ日に生まれた斎木琉晴(黄升炫)だと知らされたのだ。斎木家は群馬で小さな電気屋を営む一家で、琉晴の他にも2人の子供がいた。子供の将来のためにはお互いの息子を交換した方がいいと病院に言われて両家は対面し、交流を始めるが……
是枝監督の『そして父になる』撮影秘話
・映画界の巨匠、スティーヴン・スピルバーグ監督が「感動した」と大絶賛! ハリウッドでリメイクが決定した
・カンヌ国際映画祭で上映後、観客総立ちの10分間のスタンディングオベーションを受け、是枝監督と主演の福山さんは思わず涙
映画のココに注目! 是枝作品ならではの注目ポイント
説明がなくても、登場人物のセリフやちょっとした行動、表情などからその人が歩んできた人生や性格が読み取れるのが、是枝監督が作る映画の良さの1つ。この作品では、福山雅治さんがエリートならではの鈍感さや、皮肉っぽい部分を絶妙に演じています。決して映画の中では終わらず、普段の生活に「こういう人いる」と感じられるような人が多く登場するのがいいですよね。
また、劇中で登場するピアノの音色も重要な役割を担っています。慶多が発表会で披露するたどたどしい演奏や、BGMで流れるクラシックのメロディーなど……ピアノの音色がキャラクターの心情を表している粋な演出。音楽にも力を入れる是枝監督ならではですね!
5.海街diary
あらすじ
父が他に女を作って家族を捨て、家を出てから15年。鎌倉に住む三姉妹の元に、闘病の末に亡くなったという父の訃報が届く。看護師の長女、幸(綾瀬はるか)は夜勤を理由に、次女の佳(長澤まさみ)と三女・千佳(夏帆)を告別式に送り出す。
2人を山形の駅で迎えたのは、中学1年生の女の子、すず(広瀬すず)だった。父は再々婚をしていて、すずは2番目の妻との子供。現在は血のつながりも何もない義理の母とその連れ子と、共に暮らしているという。
告別式が終わった別れ際、三姉妹はすずに「鎌倉で一緒に暮らさないか」と言い、すずは「行く!」と即答。こうしてすずを含めた四姉妹での生活が始まる。
是枝監督の『海街diary』撮影秘話
・千佳の恋人を演じた池田貴史さんには台本を全く用意していなかった
・撮影期間中、四姉妹の会話に「どんな話をしているのかな?」と常に聞き耳を立てていた
・鎌倉に暮らす人から見た鎌倉の景色を撮ろうと心がけた
・北野武さんから第25回東京スポーツ映画大賞の監督賞を譲り受けた
・フードスタイリストに『かもめ食堂』や『南極料理人』でおなじみの飯島奈美さんを起用
映画のココに注目! 是枝作品ならではの注目ポイント
撮影当時は16歳だった広瀬さんにはなんと、台本を渡さずに撮影しました。自然体を引き出すために、子役を撮影する時にだけ是枝監督が使う手法なのですが、双方を試した結果両方しっくりきたんだとか。
また、この映画に多く登場するのが。家族で食卓を囲むシーン。食事をしながらその日の出来事を話したり、お互いの悩みを打ち明けたり、時には無言で過ごしたりなど、お互いの絆を深める重要な役目を担っています。また、海の街・鎌倉ならではのしらす丼やこだわりのちくわカレーなど、食卓に並ぶメニューにもこだわりが感じられます。
6.三度目の殺人
あらすじ
真実よりも勝敗を大事にする弁護士、重盛(福山雅治)は、解雇された工場の社長を殺して金を奪った容疑で起訴されている三隅(役所広司)という男の弁護を任された。三隅は30年前にも強盗殺人を犯し逮捕された前科を持っており、彼の有罪はほぼ確実。このままだと死刑判決間違いないと思われていた。
だが重盛は捜査を進めながら彼との会話を重ねるうちに、「本当に彼が犯人なのか」と思うようになる。やがて明らかになっていく衝撃の事実に謎は深まっていくばかりだが……
是枝監督の『三度目の殺人』撮影秘話
・刑事事件がテーマの今作の脚本を書く上で、弁護士からアドバイスをもらっていた
・犯人役の役所さんの演技を見ているうちに、是枝監督自身も何が真実かわからなくなっていた
映画のココに注目! 是枝作品ならではの注目ポイント
これまでの作風とは一風変わった、サスペンス映画を製作した是枝監督。彼自身も長年、法廷ドラマを手がけてみたかったらしく、全く新しい彼の作風を見ることができます。
そしてミステリー映画では珍しく、原作なしの完全オリジナル脚本となる今作は、事件に関係する様々なヒントが随所に隠されていますので、何気ないシーンにも決して油断できません!
7.万引き家族
あらすじ
東京の下町に住む日雇い労働者の治(リリー・フランキー)とその妻でクリーニング屋で働く信代(安藤サクラ)は、高校生の亜紀(松岡茉優)と11歳の祥太(城桧吏)と共に暮らしていた。一家は夫婦のわずかな給料と初枝(樹木希林)の年金、そして治と祥太が協力して行う万引きで生活していた。貧しい生活ながらも、5人の”家族”は笑顔が絶えない生活を送っていた。
ある冬の日、治は近所にあるアパートの廊下で震えていた少女・ゆり(佐々木みゆ)を見かねて家に連れて帰る。体中があざや傷だらけのみゆを見て虐待されていると察した信代と治は家族に迎え入れることを決めるのだが……
是枝監督の『万引き家族』撮影秘話
・当初はリリーさんの年齢に合わせ、信代役を40代で探していたが、街で安藤さんにばったり会ったことでキャスティングを決めた
・是枝さんが子役に取っている台本を渡さないで口頭で説明するという撮影方法を、今作では最後の尋問シーンで安藤さんと尋問する側の池脇千鶴さんに取った
映画のココに注目! 是枝作品ならではの注目ポイント
是枝監督が「10年分の日本社会に対する問題意識を全て詰め込んだ」と言っているくらい、奥が深い作品。貧困格差や年金不正受給問題、家庭内暴力や不正労働など、現在の日本が抱えている問題がまんべんなく詰め込まれている作品です。海外の日本に対するイメージが覆ったくらい、ショッキングな内容だったという評価が多く見られます。
そして是枝監督が特にこだわったのが柴田家の生活空間。家の中は物で溢れ、ゴミが散乱しています。しかも掃除をしているシーンがないのも特徴的です。さらに、その家の撮り方にもこだわっていて、家の中を撮るシーンでは必ず、子供か初枝の目線に合わせてカメラを固定しているんです。そのほうが家の中の状況がより鮮明に伝わってきますもんね。ぜひ注目してご覧ください!
まとめ
数々のヒット作を生み出し、今や”世界の是枝”と注目を集めている是枝裕和監督。彼が製作した映画を厳選して紹介しました! 観たことのある作品も、紹介した撮影秘話や観どころを元にもう一度鑑賞するのもいいかもしれません。