映画『メッセージ』ネタバレ有りあらすじ | ”死の祝福”を描いた最高傑作
2016年に製作された『メッセージ』は、若い女性の言語学者が未知なる地球外生命体との対話を図るという新しいスタイルのSF映画です。ハードなSF的要素を持ちながら、情緒あるエンディングで締めくくられる本作品は、SFファン以外の観客からも幅広く支持を得ました!
劇中には不可解な謎めいたシーンが、いくつも見受けられることでしょう。この記事ではそんな『メッセージ』の気になる場面を、ピックアップしながらネタバレ解説していきます。
映画『メッセージ』について
映画『メッセージ』の監督は、過去『灼熱の魂』や『複製された男』など数々の人気作を密かに生み出してきた鬼才ドゥニ・ヴィルヌーヴです。またヴィルヌーヴ監督はこの『メッセージ』を撮った後、『ブレードランナー』の続編である『ブレードランナー 2049』の監督も務めています。
原作はテッド・チャンの短編小説『あなたの人生の物語』で、この物語はかつて映像化が不可能とまで言われていました。ヴィルヌーヴ監督は、見事この難題をクリアし『メッセージ』を制作することで、自身の名を世に広く知らしめることができたのです。
作家のテッド・チャンは理系畑の人のようで、過去の作品には数学や物理を題材にしたものも見受けられます。
またテッド・チャンは以前から外国語を習得するよりも、言語学の方に興味を示していたとも言われています。本作品は第89回アカデミー賞の音響編集賞や第70回英国アカデミー賞の音響賞をはじめ、数々の賞を受賞しました。
【ネタバレ無】10秒で分かる『メッセージ』のあらすじ
出典:映画『メッセージ』予告編
ある日突然、地球上の12箇所に謎の物体が出現し、世界中が突如騒然とする。言語学者の第一人者として名高い女性・ルイーズは異生物の言語らしき音声の解読をアメリカ軍から依頼される。
ルイーズは生物学者のイアン(ジェレミー・レナー)と共に、謎の物体や生物の目的を探るべく、異生物との接触を試みる。異生物の言語を研究していくにつれて新たな事実が明らかになっていき、次第に不思議な感覚を覚えていくルイーズ。彼らの目的は一体ーー。
『メッセージ』のネタバレあらすじ
【あらすじ①】プロローグ
ルイーズ(エイミー・アダムス)は海辺の家で、生まれたばかりの赤ん坊に話しかける。娘ハンナ(ジャディン・マローン:6歳時、アビゲイル・ピニョフスキー:8歳時、ジュリア・スカーレット:12歳時)は成長するが、ルイーズはどこか悲しげな表情を見せるのであった。その後娘は、不治の病に侵され亡くなる。ここまでがルイーズの記憶であった。
始まりと終わりなんて存在しないのかも知れないと、ルイーズは言う。
アメリカ、中国、ロシア、日本など地球上の12ヶ所の上空に謎の宇宙船が現れた。言語学者であるルイーズは、米軍のウェバー大佐(フォレスト・ウィテカー)からの依頼によりモンタナの基地へ向かう。目的はいきなり出現した異星人との対話を図り、彼らが地球に来た理由を知るためだ。
人々の関心はどこの国でも同じく、異星人らが敵か味方か?にあった。ルイーズは、移動中のヘリコプターの中で、数学者のイアン(ジェレミー・レナー)を紹介される。基地に到着すると、高さ450mもある細長くて真っ黒い殻のような巨大な宇宙船が浮かんでいた。ルイーズとイアンはまず医療テントに通され、防護服を着る。
【あらすじ②】異星人との交流が始まる
ルイーズらが異星人と交流を持てる時間は、限られていた。宇宙船の下の入り口が開くのは、18時間ごとと決まっていたからだ。宇宙船の途中までエレベーターで上がると、そこからは無重力状態であった。そこへ異星人が現れるが、ルイーズは恐怖のあまり呆然と立ち尽くすのみで何も話せなかった。またイアンはテントに戻ってから嘔吐した。
異星人はタコのようなシルエットで7本の足があった。2度目の交流でルイーズは、紙に“HUMAN(人間)”と書いて異星人に見せる。自分らの存在を言葉で説明し、地球の言葉を知ってもらうためだ。すると彼らも足から墨のようなものを吐き、円形のロゴグラムを見せてきた。
3回目のセッションでルイーズとイアンの2人は、防護服を脱ぎ自己紹介をした。2体の異星人らも別の形の表意文字を描いたが、ルイーズらはそれがおそらく彼らの名前であると解釈する。イアンは冗談交じりに、「アボットとコステロ」と名付けた。
イアンたちは、この得体の知れない異星人を“ヘプタポッド”と呼ぶことにした。宇宙船から医療テントに戻る際、ルイーズはあるフラッシュバックを体験する。それは彼女の幼い娘ハンナとの思い出であった。
更にルイーズのフラッシュバックはどんどんひどくなり、ハンナが幼い頃にした会話やなどもありありと思い出してしまう。ルイーズは独身であるため、身に覚えのない過去を思い出すのはなぜか?と頭を悩ませる。
ルイーズとイアンは、遂に本来の目的であるヘプタポッドが地球に来た目的を聞き出す。すると彼らは「武器を与える」という意味のロゴグラムを示した。このセッションの直後に中国やロシアが警戒体制を見せ、通信を切ってしまう。
納得のいかないルイーズらは、更にヘプタポッドとの接触を試みた。ルイーズが対話で「武器を与える」とはどういうことか?とヘプタポッドに訪ねた所2体の内向かって左側のアボットが、仕切りのガラスをこんこんと叩き始める。そこでルイーズが手を差し伸べ、アボットの足とガラス越しに重ね合せると、コステロが無数の表意文字を吐きだした。
シャン上将(ツィ・マー)の率いる中国は、異星人らに宣戦布告した。宇宙船が24時間以内に中国の領域から撤退しないのであれば、総攻撃を仕掛けると発表したのだ。ルイーズらは、ヘプタポッドが最後に残したメッセージの解読を急いだ。
イアンの解読によると、アメリカがヘプタポッドから受け取ったメッセージは全体の12分の1であり、他11ヶ国の上空に浮かぶ宇宙船からもメッセージを集める必要があることが分かった。
ヘプタポッドがわざわざ12ヶ国の上空に宇宙船を浮かばせたのは、地球上の各国が協力し合う環境を作るためであり、決して仲たがいを起こさせる意思などないとルイーズは解釈し皆に伝える。しかし、他国との通信は途絶えている。そこでイアンは、他の国にもメリットを与えることができる、ノンゼロサムゲームという取引を提案した。
【あらすじ③】エピローグ
ルイーズはヘプタポッドとの交流のたびに酷くなるフラッシュバックが、実は過去ではなく未来のものだと気付いた。つまり娘との思い出は、これから起こることのフラッシュフォワードだったのだ。
更にルイーズは未来の自分が、「ヘプタポッドの言語」という書籍を出版することが分かる。彼女は未来を見ることで、現在でもヘプタポッドの残りの言語が読めるようになった。
「武器」と解釈していた言葉は誤解で、実は「贈り物」という意味であったのだ。それは、彼らの言語であった。ルイーズはヘプタポッドの言語を理解したため、彼らと同じく時間を捉えることができるようになったのだ。そのころ軍のキャンプには、閉鎖命令が出されていた。
ルイーズは再びフラッシュフォワードを見るが、それは未来のシャン上将が「自分の携帯に電話をくれ、考え方を変えてくれた」とルイーズに礼を言う場面であった。シャン上将は「君が言った事は決して忘れない、妻が死にぎわに残した言葉だった」と言う。
ルイーズは基地のテントにあわてて戻り、その未来の情報を頼りにシャン上将に電話をかけ、誰も知るはずのない言葉をシャン上将に伝えた。
その後、中国のシャン上将が攻撃を中止すると発表し、ニュースが世界各国で流れる。宇宙船は、皆にメッセージが伝わったと分かると立ち去って行った。ルイーズはこの先に起こる悲しい出来事を知っていながら、数学者イアンの求婚を受け入れるのであった。全ての瞬間を大切に過ごす決意をするのだ。
映画『メッセージ』で気になる4つの謎
【『メッセージ』の謎①】そもそも『メッセージ』で監督が伝えたかったこととは?
異星人ヘプタポッドらは地球に危機を知らせ、人類が手をとりあい協力しないとまずい状況であることを伝えにやってきます。この壮大な物語と交差して描かれるのが、主人公ルイーズの物語です。ヘプタポッドらは、地球を救う存在となるルイーズに言葉という贈り物を与えることで、彼女の未来に起こる極めて個人的なできごとも知らせました。
本作品はルイーズが「死」と対峙し、それでも新しい命を迎える覚悟をするラストで締めくくられています。いずれ夫が去っていくことや娘のハンナが自分よりも早く逝くことを既に知っているルイーズですが、彼女はそれを受け入れ愛のある選択をしました。監督は本作を「人生、あるいは生きること、さらには死を祝福する映画でもある」と語っているようです。
【『メッセージ』の謎②】円形の文字が物語っているものは?
劇中に現れる異星人ヘプタポッドがルイーズらに見せた文字は、円形の表意文字でした。表意文字とは観念を直接視覚化した文字のことを言い、アラビア数字や絵文字などがこれにあたります。ルイーズはこの文字の解読に励みますが、ヘプタポッドの言語を理解するにつれ、過去・現在・未来の観念が時系列ではなくなっていくのです。
地球はリニアな世界、即ち過去・現在・未来の順番で時系列に進んでいく直線的な世界ですが、ヘプタポッドらの住む世界はノンリニアな世界であることが分かってきます。よってヘプタポッドは、過去も未来も現在も全て同一上にあるという観念を持っているのです。彼らの表す文字が円形である理由の1つは、このためだと言えるでしょう。
【『メッセージ』の謎③】サピア=ウォーフの仮説とは?
物語中盤のルイーズとイアンの会話には、「サピア=ウォーフの仮説」という話が出てきます。イアンは「母国語以外の言語にどっぷり浸かれば、脳の回路を設定し直せる」のかとルイーズに尋ねます。ルイーズはそれに対して「サピア=ウォーフの仮説というものがあり、話す言語がその人の考え方を結成するという1つの説なのだ」と答えました。
即ちサピア=ウォーフの仮説とは、使用する言語の影響により物の捉え方が変わるという説であると言えるでしょう。その後ルイーズを心配したイアンは、「君はどうだ?」と尋ねます。ルイーズはヘプタポッドと何度も交流を重ねるごとに、既に未来が見えるようになっていました。即ちヘプタポッドの言語を習得したため、彼らの時間の観念を共有することとなったのです。
【『メッセージ』の謎④】非ゼロ和ゲームとは?
12か国がそれぞれ受けとったメッセージをパズルのように組み合わせなければ、ヘプタポッドらのメッセージを解読できないと知ったルイーズらは、各国からの協力を得たいと考えます。しかし警戒体制に入っている国から、アメリカのために協力を求めるのは極めて難しいことでした。そこでイアンは、非ゼロ和ゲームを提案するのです。
非ゼロ和ゲーム(ノンゼロサムゲーム)とは、複数の人々が存在する中誰かが利益を得ても、それにより他の誰かが必ず損失するという結果にはならないことを指します。これはある意味、取引をする両方に利益があるウィンウィンに近い考え方だと言えるでしょう。
そこで各国にアメリカのデータを渡し、他国からデータを受け取ることで情報をシェアし、互いの国にメリットが生まれるという解決策を導き出したのです。
『メッセージ』を光らせた5つの要素
①監督のこだわり
この映画を観る観客に現実感を実感してもらいたいと考えた監督は、宇宙船内部の一部をわざわざ用意しています。これは俳優らにリアルな空間を感じ取ってもらい、結果それが観客にも伝わるようするためです。しかし監督は、宇宙船内部の全ては見せていません。これはミステリアスな部分を残した方が、より強力な作品に仕上がるという考えに基づくものでした。
また監督は「何度観ても考えさせられ、人と分かち合えるような作品にする為に思考錯誤を繰り返した」と語っています。メッセージは話題性のある作品です。監督のこのような思いから、『メッセージ』は鑑賞後の人々のコミュニケーションを円滑にする役割を果たしているのかも知れません。
②ルイーズ役 エイミー・アダムスの演技
『メッセージ』で主役のルイーズを演じたのは、女性ファンからも幅広く支持を得ているエイミー・アダムスです。実生活でも幼い子供を持つエイミーは、この物語のテーマにいたく感銘を受け、育児休暇を取消してまでこの役を引き受けることにしました。
劇中でルイーズがヘプタポッドと初めて対面するシーンでは、次第に不安に襲われ恐怖のあまり何も言えなくなった彼女の名演技がみどころとも言えるでしょう。また冒頭での娘ハンナとの回想シーンでは、ハンナと幸せな時を過ごしながらもどこかに哀しみを抱えた母親を見事に演じ、この映画をより感嘆深いものにしています。
③質の高い音楽
『メッセージ』は、第89回アカデミー賞の音響編集賞を受賞しています。音響編集賞とは、録音された音源を元に素晴らしい効果音を作った映画に与えられる賞で、音響デザイナーのシルヴァン・ベルマールが受賞しました。劇中でのヘプタポッドから発せられる何とも言えない呼吸音は、山の中のムクドリの声やライスペーパーで自作した楽器などから録音されているのです!
オープニングとエンディングに流れるミニマル・ミュージックは、マックス・リヒターによるものです。また印象的なエンドロール曲をはじめ劇中の主な音楽はマックスと肩を並べるポストクラシカルの巨匠、ヨハン・ヨハンソンが手掛けています。
パターン化されたメロディが延々と繰り返されるこの曲は、ループを意識した物語である『メッセージ』にぴったりの楽曲と言えるでしょう。
④緻密に用意された「文字」
劇中でヘプタポッドが描く表意文字は、難解かつ斬新なものですが、それだけではなく見た目の美しさにも心を奪われます。この文字はプロダクションデザイナーである、パトリス・ヴェルメットによりデザインされたものです。パッと見では言語と分からないこの文字は、異星人らが時間を直線的に捉えていないことが表わされていると言えるでしょう。
ヴェルメットは「地球上の文明や既知の事実などとは一線を画した、面白く見た目も良いものを作りたかった。」と話しています。この文字の作る過程では、アーティストでもあるヴェルメットの妻の、アイデアスケッチが採用されました。ヴェルメットらはこのアイデアを基に、円からはみ出たツルの部分に違いを持たせ、100文字分の文字を制作しているのです。
更にヴェルメットらのチームは出来上がったロゴグラムの解析を、理論物理学者のスティーヴン・ウルフラムらに依頼しました。
ウルフラムとその息子はこの文字を「ピザを切る要領」で12分割し、ソフトウェアを使い解析!何と劇中でのイアンやルイーズの文字の解析方法は、このやり方を真似たものだったのです。尚この解析コードは、インターネット上でも公開されています。
⑤まさかの“ばかうけ”とのコラボ
『メッセージ』の黒くて不気味な巨大船は、これまでにない斬新なデザインであると大変話題になりました。しかし日本では、「どこかで見たことある!」という声が次々と上がります!よくよく見るとこの宇宙船は、何と日本人にはなじみのスナック菓子“ばかうけ”とそっくりであったからです。
これに対して監督は、「“ばかうけ”から影響を受けた」とリップサービスを見せてくれました。このことがきっかけとなり、栗山米菓公認のコラボポスターも製作されています。更に監督は「これまでにない宇宙船の造形にこだわり抜いたつもりだったのに、地球の裏側では皆が知っているポピュラー・スナックの形だったなんて!」と笑って話していたようです。
まとめ
『メッセージ』は異星人との交信というスケールの大きなテーマを扱った作品でありながら、たった1人の人生にスポットが当てられたとても個人的なドラマでもあります。生きることとは?死ぬこととは?など哲学的なテーマを含んだ本作品は謎が多く、観れば観るほど見応えのある作品なのかも知れません。
また本作品には、人類がピースな世界を作り上げる為のアイデアが、たくさん詰まっています。共通の言語を持ち互いに歩み寄ろうとすることの大切さ、また協力し合うことでメリットを分かち合うことができる可能性など、ポジティブなメッセージを持ったこの映画は、多くの人から共感を得る内容のものであると言えるでしょう!
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