映画『ウォッチメン』結末ネタバレ | ヒーロー達の正義とは

2009年に公開された『ウォッチメン』は、その独特の世界観から賛否の分かれるアメコミ映画です。原作がギュッと凝縮されたディープなストーリーは、鑑賞に集中力を要するような難解さを持ち合わせているとも言えるでしょう。しかし本作の面白さは、自ら志望した正義感溢れる人達が勝手にヒーロー活動をするプロットにあるのではないでしょうか。

そこでこの記事では、『ウォッチメン』のあらすじや、それぞれのヒーローの価値観、みどころなどをネタバレでご紹介します。「本作品がなぜ大人のアメコミ映画と言われるのか?」や「他のアメコミ作品と一線を画す作品と評される理由」などについて、疑問を抱いている方には特におすすめです。

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異色ヒーロー映画『ウォッチメン』について

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出典:映画『ウォッチメン』公式Facebook

本作品はアラン・ムーア原作の同名アメリカン・コミックを映画化した、社会派SFミステリーです。原作のグラフィックノベルは、アメリカで有名な漫画賞の1つであるウィル・アイズナー漫画業界賞を受賞しており、その濃厚な内容から映画にするのは不可能だとも言われていました。

これを『300〈スリーハンドレッド〉』のザック・スナイダー監督が、原作に忠実に映画化。公開当時は、これまでにはなかったようなアメコミ映画として、話題になりました。ここ数年は他のアメコミ作品でも、一筋縄ではいかないような複雑なストーリーが目立ち、大人が観ても楽しめるヒーロー映画が増え始めています。『ウォッチメン』や『ダークナイト』は、これらの作風の走りとも言えるでしょう。

原作タイトルである「ウォッチメン」という言葉は、古代ローマ時代の詩人ユウェナリスの、『女性への警告』から引用されているものです。「誰が、見張り人を見張るのか?」というフレーズはキャッチーで、映画の中でも見る者、すなわち監視する者とされるものの立場の逆転をイメージさせられます。

映画『ウォッチメン』予告編

『ウォッチメン』のネタバレあらすじ

【ネタバレあらすじ①】コメディアンが何者かに殺害される

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出典:映画『ウォッチメン』公式Facebook

1985年の10月、テレビではニクソン大統領が「アメリカは、戦争をするつもりはない」と演説している。その部屋でテレビを見ていた男が、不法侵入者によって殺害される。高層ビルの1室から、窓の外に突き落とされたのだ。

被害に遭った男は、「ウォッチメン」というアメリカのヒーロー団の主要人物であるコメディアンであり、本名はエドワード(ジェフリー・ディーン・モーガン)と言う。彼は政府からの要請により、ベトナム戦争でも活躍したヒーローだ。警察は体格の良いコメディアンを抱えて、窓から突き落とすほどの力を持つ人物はそういないと睨む。しかし犯人は謎のままであった。

コメディアン殺害事件に驚いた、元ウォッチメンのメンバーであるロールシャッハことウォルター(ジャッキー・アール・ヘイリー)は、ヒーロー仲間のダニエル(パトリック・ウィルソン)にこのことを伝え、お前も気を付けろと忠告する。またロールシャッハはこの物騒な出来事をヒーロー狩りの始まりと受け止め、単独で調査を始めたのであった。彼は調べた出来事を、いちいち手帳に記録している。

かつて1930年代に、「ミニッツメン」という名のヴィジランテ、すなわち自警団が存在した。当時、ギャングらが顔を隠すためマスクを被っていたことに対抗し、一部の警察官がマスクを被りヒーローとなったのがコスプレ自警団「ミニッツメン」の始まりである。「ミニッツメン」の記念写真には、コメディアンの姿もあった。

その後「ミニッツメン」は廃れ、その何十年後かに新しく二代目の自警団である「ウォッチメン」が結成された。しかしマスクを被った自警団は大衆からの反対により、1977年に活動中止を余儀なくさせられた。”認められたヒーロー以外のヒーロー活動を禁止する”、という条例が作られてしまったのだ。

【ネタバレあらすじ②】人間らしさが失われていくDr.マンハッタン

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出典:映画『ウォッチメン』公式Facebook

コメディアンの死がどうしても気にかかるダニエルは、元仲間であったエイドリアン・ヴェイト(マシュー・グッド)の会社へ出向く。ウォッチメン活動時はオジマンディアスとして人気を博したエイドリアンであるが、今は退役して社長となりヴェイト社を運営していた。エイドリアンは、世界中で最も利口な男として知られている。そこでダニエルはコメディアンの話をするが、エイドリアンは「そんなことよりも、ソ連が核攻撃をいつ始めるか分からないことの方が恐ろしい」と語った。

一方ロールシャッハは、Dr.マンハッタン(ビリー・クラダップ)とローリー(マリン・アッカーマン)の住み家である軍事ラボラトリーに向かう。彼は、誰がヒーロー狩りをはじめたのか、ジョン・オスターマンの扮するDr.マンハッタンに予知してもらうことを期待するが、相手にされずテレポートであっさり追い出されてしまう。ジョンは自分の分身を作ることや、テレポートなどが自在にできた。

超人的な特殊能力を持ち合わせているジョンは、次第に人々と関わらなくなり、今は若い恋人であるローリーと研究所に人目を忍んで住んでいる。しかし恋人のローリーも、独特の感性を持つジョンに気持ちを合わせることが難しくなっていた。ローリーは気分転換に、独り身であるダニエルを誘い食事に出かける。彼女も実はシルク・スペクターⅡというヒーローで、これは母親である初代シルク・スペクター(カーラ・グギノ)を引き継いだものだった。しかしダニエルと食事をしている間も、つい不安がよぎるせいか明るい話はあまり出ない。そんな中、後日コメディアンの葬式が行われた。

一方ジョンは、エイドリアンの研究に熱心でそのことに気を取られていた。ローリーは分身を使いお情けで性行為をするジョンに腹を立て、その場を離れる。行く当てがなくなったローリーは、ダニエルの家に行き彼に事情を話した。

【ネタバレあらすじ③】ロールシャッハが逮捕される

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出典:映画『ウォッチメン』公式Facebook

一方スーツを着たジョンは、Dr.マンハッタンとしてテレビ放送に出演する。ジョンは番組で記者たちから、彼のまわりにいた人物らが皆がんで死亡することについて言及された。またその番組にゲストで招かれたジョンの元恋人ジェイニー(ローラ・メネル)が、がんのため残りわずかの余命であると知る。人々は、「彼の周りにいる人物は皆、がんで亡くなる」と言った。ジョンはこの言葉と事実にショックを受け、失意のあまり火星にテレポートし引きこもる。彼は元々物理学者であったが、研究所の爆破事故により人とはかけ離れた力を持ってしまった悲しいヒーローなのだ。

しかしDr.マンハッタンが地球上にいないことを知ったソ連が、アフガン国境に戦車を移動させ、核戦争まで秒読みとなってしまう。そんな折、ウェイト社にピラミッド宅配社の不審人物が押し入った。これを知ったロールシャッハは、過去この会社と関係があったモーロック(マット・フリューワー)宅へ向かうが、彼は既に射殺されていた。

おまけにその場に居合わせたロールシャッハが、モーロック殺害の容疑をかけられ警察に逮捕されてしまう。刑務所には過去ロールシャッハにより逮捕された囚人が大勢いた。彼は遂に仮面をはがされ、ウォルター・コバックスという実名を公表される。

その頃、怯えながら生きることに疲れたダニエルとローリーは、遂にヒーローとしてのアクションを起こした。ジョンが火星に引きこもってから、ローリーはダニエルと暮らし、まるで恋人同士のような関係になっていたのだ。2人はダニエルの飛行船「アーチー」に乗り込み、街で起きた火災の消火活動をした後、ウォルターを脱獄させるべく刑務所へ向かった。

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出典:映画『ウォッチメン』公式Facebook

【ネタバレあらすじ④】火星にテレポーションするローリー

刑務所で大暴れしていたウォルターを無事救出し、3人がダニエルの家に戻ったところで、突然ジョンが現れた。その後ジョンは、ローリーを火星にテレポートさせ連れ去ってしまう。火星でローリーは苛立ち、ジョンに地球を救ってほしいと懇願するが、ジョンは宇宙規模で考えれば小さなことだと言う。

ローリーは彼に「同じ視点で世界を見せて」と頼んだ。そこではじめて2人が視点を共有した際、実はローリーの父親はコメディアンであったと分かってしまう。自分の父親を初めて知ったローリーは絶望するが、ジョンにとっては刺激的な事実であった。ローリーの母親が、彼のような暴力的な男を愛した矛盾に驚き、彼は奇跡の存在を信じるようになったのだ。ジョンはローリーに「君が生まれたことは奇跡だ」と言う。その後ジョンは地球に戻る決意をする。

その頃ピラミッド宅配社に疑いを持つナイトオウルⅡ世とロールシャッハは、それについて調べるため、バーへ向かう。そこでエイドリアンの襲撃犯について聞き込みをする内に、先日テレビに出演したジョンの元彼女であるジェイニーが、この事件に絡んでいることが分かった。急いでエイドリアンに相談しようと2人は考えるが、自宅もオフィスも留守であった。エイドリアン不在の暗いオフィスに忍び込んだ2人は、彼のスケジュールを把握しようとパソコンを覗く。

【ネタバレあらすじ⑤】遂に黒幕が明かされる

しかし何とピラミッド社の親会社は、エイドリアンの経営するヴェイト社であった。ダニエルとロールシャッハは、そこではじめてコメディアン殺害以降の一連の事件の黒幕が、エイドリアンであったと悟る。

2人はエイドリアンの科学研究所がある南極へ向かった。2人は研究所内に忍び込むが、エイドリアンの戦闘力は半端なく強い。エイドリアンは、コメディアンが彼の思わくを知ったためを殺害したのだ。ジョンの愛する人々が皆ガンで亡くなったというデマを流したのも、彼であった。ジョンに精神的な圧力をかけるためだ。

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出典:映画『ウォッチメン』公式Facebook

しかしロールシャッハが英雄狩りについて単独調査を始めたのは、エイドリアンの誤算であった。そこで邪魔者を消すため、警察を手配しロールシャッハを逮捕の罠にはめたのも彼であったと分かる。しかし時は既に遅かった、残酷極まりないエイドリアンはDr.マンハッタンの力を再生し、ロスやNY、モスクワや香港など世界の主要都市を一瞬で核爆破させてしまう。

その頃地球に戻ったジョンとローリーは、この最悪の事態に唖然とする。エイドリアンに自分の力を利用されたのだと理解したジョンは、ローリーを連れ南極の科学研究所へテレポートした。ジョンはエイドリアンに「君も、私にとってはシロアリ程度だ」と言う。エイドリアンはリモコンでモニターを映し出し、米ソが和解したようすをジョンに見せる。Dr.マンハッタンを皆の共通の敵と解釈した世界各国は、1つになり始めていたのだ。

エイドリアンは、ジョンに「君と僕が世界を救ったのだ」と言う。ロールシャッハやローリーはオジマンディアスが核を使いこの大惨事を起こした事実を世の中に暴露すると言うが、エイドリアンはそんなことをすれば多くの犠牲者を出して得た平和が水の泡になってしまうと反論する。ジョンはエイドリアンに許し難いが、非難もしないと答えた。

ロールシャッハはこの事実を公表するべきだと考え、自分が殺されることを知りつつも、最後まで信念を曲げない。結果ジョンは「殺せよ」と叫ぶロールシャッハを、一瞬で殺してしまう。その後別の命をクリエイトするという目的を持ったジョンは、ローリーに別れを告げ別の星に飛び立った。ダニエルは、これらの悲劇を生んだエイドリアンに怒り狂い殴りかかるが、彼は抵抗しなかった。

がっくりと肩を落としたローリーとダニエルは「アーチー」に乗り込む。後日……、世界中が平和で記事のネタがないと嘆く出版社に、ロールシャッハのあの手帳が届いていた。

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『ウォッチメン』が大人向けのアメコミ映画と言われる3つの理由

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出典:映画『ウォッチメン』公式Facebook

1.バイオレンス描写など子供向けでない場面の連続

R-15指定の『ウォッチメン』は、血生臭いバイオレンス描写で有名です。また酒飲みの男が強姦未遂をするような場面があることなどから、子供が喜ぶ内容でないことは大抵察しがつくでしょう。

またロールシャッハに到っては、殺人が許せないという理由から、残酷極まりないやり方で罪人を殺します。これをカッコ良いと言えるかどうかは人それぞれの感性や価値観にもよりますが、それでもロールシャッハが人気のキャラクターであることは言うまでもありません。

このようなヒーローのカッコ良さは、辛い現実を知っている大人にこそ伝わるシブさではないでしょうか。またナイトオウルⅡ世であるダニエルは、ヒーロー活動後でないとローリーと性行為を行う気になれません。これは、ダニエルがヒーロー活動によって男性としての自信をつけていることの表れであり、このような描写は子供には到底理解しがたいものとなっています。

2.勧善懲悪の物語ではない

本作品は観終わった後に晴れ晴れとした気分になれる、勧善懲悪のストーリーではありません。大抵のヒーロー映画であれば、善と悪がはっきりと描き分けられています。しかしウォッチメンではその善、すなわち正義の定義が非常にあいまいで、何を良しとするかは観る人に委ねられているのです。オジマンディアスをはじめとするこの映画の中のヒーローたちは、その考え方の象徴とも言えるでしょう。

よってどのキャラクターに共感出来るのかを知ることで、自分や身の周りの人の考え方が見えてくるかも知れません。また『ウォッチメン』は鑑賞後、公正さとは?一体何が正しいのか?を考えさせられる、哲学的な意味を持った作品であるとも言えます。

人により見え方が違うテストの図案を、仮面として被る偏った正義感を持つ男。ロールシャッハのマスクには、その名の通りロールシャッハテストの図案がコロコロと変化し、映し出されます。彼を良しとするか否か?はこの作品の大きなテーマと繋がっているのではないでしょうか。

3.歴史改変SFであるため、アメリカの歴史の知識が必要


出典:映画『ウォッチメン』公式Facebook

本作品では、実際のアメリカの史実とは異なった偽の歴史が描かれています。言い換えればアメリカにスーパーヒーローが実在する世界がまざまざと示されているとも言えるでしょう。これらの面白みを咀嚼するためには、アメリカの過去について多少の知識が必要かも知れません。本作品はこのような理由からも、子供より大人が楽しめるアメコミ原作映画と言われているのです。

例えば劇中では、ベトナム戦争にアメリカの正義の象徴コメディアンと歩く核抑止力Dr.マンハッタンが参戦します。結果勝利した、というとんでもない歴史が描かれていますが、史実ではアメリカはこの戦争で敗北しています。本作はこのような歴史の改変が描かれており、そこが大きなみどころと言っても良いでしょう。「もしもこの世に自称スーパーヒーローが紛れ込んだら?」そんなアンビリーバブルな世界が、延々と続くのです。

『ウォッチメン』はここが面白い!4つのみどころを解説

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出典:映画『ウォッチメン』公式Facebook

【みどころ①】かつて自警団が街を守っていたという設定

①自ら名乗り出たヒーローは、仮面を被った生身の人間がほとんど

『ウォッチメン』に出てくるヒーローは生身の人間であり、無敵ではありません。体は鍛えられ戦闘能力はありますが、ウルトラマンや神のような存在ではないのです。

この自警団のそもそものルーツは、1930年代に活躍した自主的自警団「ミニッツメン」にあります。元々警察だった人々が、仮面を被ったギャングらに対抗するため、自分達もマスクやコスチュームを身に着けた……、それが自称ヒーローの集まり「ミニッツメン」の始まりでした。

また冒頭で殺されたコメディアンも、元々はミニッツメンのメンバーでした。その後結成された第2世代の自称ヒーローチームが「ウォッチメン」なのです。よって通常のヒーローとは違い、コスプレ自警団特有の不完全さが目立つことは否めません。

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出典:映画『ウォッチメン』公式Facebook

例えば、下層階級の象徴であるロールシャッハはやさぐれ感丸出しで、残酷極まりない手段でもって悪人を殺します。これでは自らが勝手にヒーローだと旗を揚げ、自分の信念を周囲に押し付けるイカレ野郎だと言われても仕方がありません。そのような経緯からウォッチメン、すなわち監視者のメンバーは、逆に一般市民から反感を買い監視される立場となってしまいました。しかし、そこがこの映画の面白いところでもあるのです。

②自警団には、政府認定のヒーローとそれ以外のヒーローがいる

市民の反感を防ぐ為、アメリカ政府が定めた「キーン条例」。これにより、覆面のヒーローたちの活動は禁止となりました。その中でも唯一政府から認められたヒーローである、Dr.マンハッタンとコメディアンだけは活動をし続けます。政府非公認ヒーローの代表格であるロールシャッハは、独特なマスクで顔を隠しひっそりと活動を続けるのでした。

またオジマンディアスは、世間にその正体を明かしています。世界で一番賢い男と言われる彼は引退後、ガリバー企業であるヴェイト社の経営者となりました。また公認であるDr.マンハッタンは人知を超えた存在であることから、世間からは歩く核抑止力などと言われ、テレビ番組からも出演を依頼されるのです。

③巨大化も可能!神的存在のDr.マンハッタン

Dr.マンハッタンはこの映画の中で唯一、常人の域を超えたパワーを持つヒーローです。彼は瞬間空間移動や分身、巨大化も自由自在。体からはブルーの蛍光色をピカピカと発しており、誰よりも目立つ存在だと言えるでしょう。他のアメコミヒーローと比較しても、圧倒的に強く、そのためウォッチメンの他のメンバーとのギャップが目立ちます。

欠点は未来の透視など他の人とかけ離れた能力を持ち合わせているため、人間らしい感情を失いつつあるところです。元々は平凡だけど幸せな原子物理学者であったのに、実験室で起こった思いがけない事故に巻き込まれ、今のようなヒーローに変貌したという悲しい過去を持ち合わせています。

【みどころ②】映像だから味わえるマニアックな楽しみ方

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出典:映画『ウォッチメン』公式Facebook

①ロールシャッハの変動するマスク

ロールシャッハは顔を隠すため、常に仮面を被っています。まるでロールシャッハテストのように、コロコロと絵柄が変わる不気味なこのマスクは、常に流動的で白と黒が入り混じることはありません。これはロールシャッハことウォルターの、白黒はっきりしたがる性格の表れとも言えるでしょう。この特殊なマスクの動く表現が楽しめるのは、映画ならではの醍醐味です。

ロールシャッハテストはインクのしみのような抽象的な図形を被験者に見せ、何に見えるかを答えてもらう心理テストです。劇中では刑務所に入れられマスクを外したウォルターが、ロールシャッハテストを受けるシーンがあります。

②リアルな世界の有名人が多数登場

『ウォッチメン』では、アメリカにスーパーヒーローが存在したら……、という現実に似た虚構が描かれているため、リアルな著名人が多数登場します。と言っても彼らは本人ではなく“そっくりさん”なのですが、劇中にはこのような偽カメオ出演が多数散りばめられているのです。

例えば冒頭のタイトルバックのNYのスタジオ54前の場面では、オジマンディアスの後方に笑いながら話をしているデヴィッド・ボウイ(J.R.キルグルー)とミック・ジャガー(スティーブン・ストイコビッチ)を観ることができます。

またポップアートの先駆者であるアンディ・ウォーホル(グレッグ・トラビス)が、ギャラリーで描いたナイトオウルⅡ世を見せるシーンはいかにもウォーホルらしく、リアリティが感じられます。これ以外にもリチャード・ニクソン(ロバート・ウィスデン)やジョン・F・ケネディ(ブレット・スタイムリー)などが登場し、あり得ない史実がリアルに描かれていました。

③作戦指令室はキューブリックのあの映画を思い出させる

劇中のニクソンの指令室は、スタンリー・キューブリックの1963年のSF映画『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』の、ペンタゴン内の戦略会議室と酷似しています。

『博士の異常な愛情』は、キューバ危機による米ソ冷戦状態が続く中、精神を患った司令官の失態により、運悪く核戦争勃発の危機に追いやられるといった内容の、ブラックコメディです。このような粋なオマージュシーンを観てクスリと笑えるのは、映画ならではの楽しみではないでしょうか。またこの指令室の描かれ方を観れば、バッドエンドを連想せずにはいられません。

④終盤にさりげなく映る『アウター・リミッツ』

物語のラストでは初代シルク・スペクターの家のテレビから、1960年代にアメリカで放送された人気SFドラマシリーズ『アウター・リミッツ』がさりげなく映し出されます。これは何となく流れている訳ではなく、原作に忠実な監督が意図的に入れたカットだと言えるでしょう。

この場面では『アウター・リミッツ』の中の1つのエピソード「ゆがめられた世界統一」へのオマージュであり、『ウォッチメン』の原作がこのドラマから影響を受けたことを、やんわり仄めかしていると考えられます。

【みどころ③】ミステリー要素を含んだSF作品

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『ウォッチメン』は謎解き、すなわちミステリー作品というジャンルから捉えても、秀逸な作品です。冒頭ではかつてのヒーローである、コメディアンが殺害されました。こんなタフな男が、いともたやすく殺されたのはなぜか?この殺害犯は一体誰なのか?を観客は、ロールシャッハの観察を通して追っていくこととなります。そして物語終盤では意外な人物、オジマンディアスが犯人であったことが明かされるのです。

その動機や目的は、独善的な考えに基づいたものでした。ロールシャッハの手帳が出版社に届くラストも印象的で、今後の行く末が分からない、ミステリアスな締めくくりとなっています。

【みどころ④】効果的な挿入歌

映画『ウォッチメン』は、躍動的で生き生きした映像表現が魅力です。それらをより重厚にしているのが、古い時代のヒットソングの挿入です。

劇中のコメディアンの葬式のシーンでは、サイモン&ガーファンクルの大ヒット曲『サウンド・オブ・サイレンス』が悲しげに流れます。この曲に哀愁が漂うのは、「ケネディ大統領暗殺事件」後、その喪失感によって作られた曲だからとも言えるでしょう。しかし『ウォッチメン』の歴史内では、コメディアンがケネディを暗殺したことになっているのが何とも皮肉です。

またオープニングタイトルでは、ボブ・ディランの『時代は変わる』に合わせて、つぎはぎされた短い映像が、スライドショーとして流れます。このシーンでの映像表現が素晴らしく、たった6分ほどの間に20以上のアメリカの虚構の歴史が、“さもあったこと”のように描き出され、退屈させられません。またその視覚表現が極めてスタイリッシュなことからも、このオープニングシーンは多くの映画ファンから賞賛されました。

『ウォッチメン』で描かれた3つの正義を紐解く!

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出典:映画『ウォッチメン』公式Facebook

1.ロールシャッハの正義

この映画の中で一番不健全なイメージのロールシャッハですが、潔癖と言えるほど悪に敏感であり、覆面ヒーローが法で禁止された以降も1人で私刑を続けます。このような行いの彼はある意味、異常者と言われても仕方がありません。またロールシャッハは反社会的な人物であり、妥協せず自身の正義を貫くタフガイです。

しかし彼はオジマンディアスの実行した独善的歪んだ正義を否定し、全世界に真実を暴露しようとしました。彼は自分の命をかけてこの信念を貫きますが、同時に「全世界が滅びようとも」と言っています。全世界が滅びてしまったのでは、本末転倒なのでは?という疑問を抱かずにはいられないセリフでもあるのです。どこまでも真実を知りたがり、それを伝えるのが彼の正義感なのかも知れません。

2.オジマンディアスの正義

オジマンディアスは、早い段階から米ソ冷戦状態が核戦争を誘発する危機を察知していました。これに対して1人で対策を考え、実行に移します。それはDr.マンハッタンのエネルギーを利用し大きな都市を爆破させ、大量な人を殺すことでした。つまりはDr.マンハッタンを悪者に仕立て上げることで、米ソの仲を取り持ち、核戦争を行わないように手を打ったのです。

一部の人を犠牲にして、世界平和を実現する、これがオジマンディアスの考える正義であったと言えるでしょう。苦肉の策であるとはいえ、仲間を裏切り大量の一般市民を犠牲にしたこの対策は、褒められたものではありません。この映画は正義の定義があいまいでもありますが、オジマンディアスは分かりやすく悪役として描かれています。

3.Dr.マンハッタンの正義

Dr.マンハッタンの考える正義は、とても分かりにくいものです。なぜなら彼は常人の域を超えた能力を所有しているため、通常の人間には想像のつかない視点で物事を見ていました。人前でも全裸で平気で歩ける感性は、到底人間のものとは思えません。彼にとっては地球が滅びることなんて、さほど深刻な問題ではないのでしょう。

しかし彼は恋人のローリーの父親がコメディアンだったと知り、考え方が変わります。ローリーの母親であるシルク・スペクターが、一度は強姦されかけた男を許しその偶然から愛すべきローリーが生まれたことに驚くDr.マンハッタン。

彼は理屈では説明できない混沌から生まれる人間という存在やその奇跡に感動し、地球に戻る決意をします。その後彼はオジマンディアスの企みで濡れ衣を着せられたにもかかわらず、物事が複雑化するのを防ぐ為、黙って罪を被り世間に真実を明かさず火星に帰るのです。

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出典:映画『ウォッチメン』公式Facebook

正義と正義のぶつかり合い、この問題を突き詰めていくと難解です。本作品鑑賞後は、人がそれぞれの正論を押し通そうとするとどうなるか?という疑問が生じ、そこがとても哲学的でもあります。このような観点からすると『ウォッチメン』は誰かにとっての正義は誰かにとっての暴力になり得る、ということを示唆しているのかも知れません。

オジマンディアスはナイトオウルⅡ世ことダニエルに対して、「君の子供っぽい正義は邪魔なのだ」と言いました。しかし核戦争の問題にはあえて首を突っ込まず、火災現場の被害者の救出など、自分のできる範囲のことを確実に行うダニエルの正義感にはほっとさせられるものがあります。その反面ダニエルに対しては理想主義で、中途半端なヒーローであるという意見も少なくはありません。

『ウォッチメン』に出てくる英雄達は皆、自称ヒーローです。親近感がわく一方、何をしでかすか分からずヒヤヒヤ感を与えられる、刺激的なヒーローとも言えるでしょう。それが現実的なヒーロー像なのかも知れません。

まとめ

以上、『ウォッチメン』のあらすじや、鑑賞する上での要点をご紹介しました。『ウォッチメン』は2009年の映画ですが、アメリカのHBOで2019年10月よりドラマが放映されるため、再び注目を浴び始めています。これを機に映画『ウォッチメン』を観て、おさらいすると新たな世界が広がるかも知れません。もちろん、未見の方にもおすすめです。

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